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事件 平成 15年 (ワ) 12075号 損害賠償請求事件
平成 16年 (ワ) 5010号 損害賠償請求事件
第1事件原告 株式会社フォトライブ 第2事件原告 P1 第1事件原告、第2事件原告訴訟代理人弁護士 桂充弘
同 壇俊光 第1事件被告兼第2事件被告 株式会社宣伝会議
訴訟代理人弁護士 葉山岳夫
同 中小路大
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2005/03/31
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 第1事件被告兼第2事件被告は、第1事件原告に対し、324万0659円及びこれに対する平成15年12月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 第1事件被告兼第2事件被告は、第2事件原告に対し、85万7696円及びこれに対する平成16年5月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 第1事件原告及び第2事件原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、第1事件原告に生じた費用の10分の1と第1事件被告兼第2事件被告に生じた費用の10分の1を第1事件原告の負担とし、第2事件原告に生じた費用の5分の2と第1事件被告兼第2事件被告に生じた費用の5分の1を第2事件原告の負担とし、第1事件原告、第2事件原告及び第1事件被告兼第2事件被告に生じたその余の費用をいずれも第1事件被告兼第2事件被告の負担とする。
5 この判決は、第1、第2項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨 (1) 第1事件被告兼第2事件被告は、第1事件原告に対し、352万1000円及びこれに対する平成15年12月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 第1事件被告兼第2事件被告は、第2事件原告に対し、145万円及びこれに対する平成16年5月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 訴訟費用は第1事件被告兼第2事件被告の負担とする。
(4) 仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁 (1) 第1事件原告及び第2事件原告の請求をいずれも棄却する。
(2) 訴訟費用は第1事件原告及び第2事件原告の負担とする。
当事者の主張
1 請求原因 (1) 当事者 ア 原告P1 第2事件原告(以下「原告P1」という。)は、写真撮影や執筆等の活動を行っている者であり、第1事件原告(以下「原告会社」という。)の代表取締役である。
イ 原告会社 原告会社は、写真の撮影、管理等を目的とする株式会社であり、主に原告P1の委任に基づいて、同人が撮影した写真の使用許諾、使用料請求など、著作物の管理を行っている。
ウ 被告 第1事件被告兼第2事件被告(以下「被告」という。)は、広告宣伝に関する企画等を目的とする株式会社であり、雑誌「編集会議」等の出版物を編集、
発行している。
(2) 請負契約 原告会社は、平成13年2月ごろ、被告との間で、原告会社が、被告の発行する雑誌に掲載する写真の撮影、校正を請負い、写真の使用を被告に許諾し、被告が原告会社に対して、写真の撮影料、校正費用、使用料を支払うという内容の契約(以下「本件請負契約」という。)を締結した。
(3) 請負契約に基づく請求 ア 撮影料 被告が本件請負契約に基づいて原告会社に支払うべき撮影料のうち、未払のもの(下記各a)及びその算出根拠(下記各b)は次のとおりである。
(ア)a 「編集会議」平成13年11月号18頁ないし21頁の「雑誌偏愛主義」(甲第8号証の2、3)掲載写真の撮影料12万円及び消費税6000円の合計12万6000円 b 「編集会議」の表紙写真の撮影料は15万円(消費税別)であったが、特集記事であることを考慮してその8割として計算した。感材費、レンタカー代、ストロボ代等の実費だけでも10万円以上であり、実際は12万円以上の経費がかかっており、これらは原告会社が負担した。
(イ)a 「編集会議」平成14年1月号2頁ないし9頁の「P2大ブレイク!!」(甲第10号証の2ないし8)掲載写真の撮影料8万円及び消費税4000円の合計8万4000円 b これらの写真は、表紙写真の撮影とは別に、展示会会場、打ち上げパーティーまで同行して撮影した特集記事の写真であり、拘束時間は通常の2倍であり、フィルムは通常の4倍以上使用した。紙面で40以上のカットが用いられているから、単純計算しても1カット2000円であり、撮影料8万円は安価である。
(ウ) 前記(ア)a、(イ)aの撮影料及び消費税の合計は21万円である。
イ 使用料 被告が本件請負契約に基づいて原告会社に支払うべき使用料のうち、未払のもの(下記各a)及びその算出根拠(下記各b)は次のとおりである。
(ア)a 「編集会議」平成14年2月号65頁(甲第11号証の2)掲載のP3の写真の使用料5万円及び消費税2500円の合計5万2500円 b 写真の使用許諾等の管理を業としている株式会社世界文化フォト、
株式会社モントレ、株式会社ボンカラー・フォトエイジェンシー(以下「ボンカラー」という。)、KAWASUMI ISAOフォトライブラリー、アフロフォトエージャンシーの使用料を一覧表にしたものが、別紙料金一覧表である。別紙料金一覧表の「A雑誌・書籍/カラー」の使用料は平均3万0600円であり、最も安価なボンカラーでも2万円である。本件で問題となっている写真は、被告が企画立案したものではないし、被告が撮影に要するすべての費用を負担したものでもない。安価に販売されている著作権フリーのデジタル映像と原告P1が撮影した写真の使用料を比較するのは相当でない。
前記aの写真は著名なP3の写真であり、従前、P3の写真の二次使用について支払われた金額は、8媒体で26万2500円(消費税別)であり、
平均使用料は3万2812円である。この平均使用料を別紙料金一覧表の「I二次使用料」(以下、写真を、当初利用が予定された特定の雑誌等への掲載以外の用途に利用することを「二次使用」といい、その使用料金を「二次使用料」という。)の平均料率72%で除すると、平均の一次使用料4万5572円が導かれ、これに消費税を加算すると4万7850円となり、前記aの使用料を5万円としたことは合理性がある。
(イ)a 「編集会議」平成14年7月号30頁ないし37頁(甲第16号証の2ないし7)掲載のP4及びP5の写真5枚の使用料6万円及び消費税3000円の合計6万3000円 b 別紙料金一覧表の「A雑誌・書籍/カラー」の使用料は平均3万0600円であり、最も安価なボンカラーでも2万円である。前記aの写真については、撮影の他にデジタル画像処理にも費用を要しているから、1枚当たり1万2000円としたことは安すぎる程である。
(ウ)a 「編集会議」平成13年7月号103頁(甲第4号証の9)掲載の被告自社広告の写真の使用料5万円及び消費税2500円の合計5万2500円 b 「編集会議」に広告を掲載するためには、1頁当たり35万円の広告料を支払わなければならない。前記aの被告自社広告においては、「編集会議」の表紙写真が大きく掲載されて広告内容の中心を構成しており、その写真部分が広告の7分の1を下回ることはない。したがって、広告料を基に計算しても、写真の使用料は5万円を下ることはない。
また、別紙料金一覧表の「H雑誌・広告/モノクロ」の平均使用料3万3000円に同表の「I二次使用料」の平均料率72%を乗じて求めた二次使用料は2万3760円であり、同表の「H雑誌・広告/モノクロ」の最も安価なボンカラーの使用料2万円に同表の「I二次使用料」のボンカラーの料率80%を乗じて求めた二次使用料でも1万6000円である。
(エ)a 「編集会議」平成13年12月号50頁(甲第9号証の2)掲載のP6の写真(「編集会議」平成13年9月号114頁に掲載された写真の二次使用)の使用料1万円及び消費税500円の合計1万0500円 b 別紙料金一覧表の「B雑誌・書籍/モノクロ」の平均使用料2万8400円に同表の「I二次使用料」の平均料率72%を乗じて求めた二次使用料は2万0448円である。同表の「B雑誌・書籍/モノクロ」の最も安価なボンカラーの使用料1万4000円に同表の「I二次使用料」のボンカラーの料率80%を乗じて求めた二次使用料でも1万1200円であるから、使用料を1万円としたことは安すぎる程である。
(オ)a 「編集会議」販売促進用ポスター及び販売促進用ポップに掲載された写真16枚(「編集会議」の表紙に掲載された写真の二次使用)の使用料として、写真1枚につきポスターへの使用料7万5000円の写真16枚分120万円、及び写真1枚につきポップへの使用料2万円の写真16枚分32万円の合計152万円、並びに消費税7万6000円の総計159万6000円 b 別紙料金一覧表の「Cポスター/カラー」の平均使用料9万2000円に同表の「I二次使用料」の平均料率72%を乗じて求めた二次使用料は6万6240円である。「編集会議」の表紙写真は各界の著名人を撮影したものであり、その貴重性に鑑みれば、写真1枚につきポスターへの使用料7万5000円と計算したことは安すぎる程である。
別紙料金一覧表の「Eポップ/カラー」の平均使用料4万6000円に同表の「I二次使用料」の平均料率72%を乗じて求めた二次使用料は3万3120円である。「編集会議」の表紙写真は各界の著名人を撮影したものであり、
その貴重性に鑑みれば、写真1枚につきポップへの使用料2万円と計算したことは安すぎる程である。
(カ)a 「編集会議」平成14年2月号117頁ないし127頁(甲第11号証の3ないし13)掲載の編集者11名の写真11枚の使用料1枚当たり1万円の11枚分11万円及び消費税5500円の合計11万5500円 b 別紙料金一覧表の「A雑誌・書籍/カラー」の平均使用料は3万0600円であり、最も安価なボンカラーでも2万円である。前記aの写真の使用料を1枚当たり1万円と計算したことは、安すぎる程である。
(キ)a 「編集会議」平成14年8月号16頁(甲第17号証の2)掲載のP4の写真(「編集会議」平成14年7月号30頁に掲載された写真の二次使用)の使用料1万円及び消費税500円の合計1万0500円 b 別紙料金一覧表の「A雑誌・書籍/カラー」の平均使用料3万0600円に同表の「I二次使用料」の平均料率72%を乗じて求めた二次使用料は2万2032円であり、同表の「A雑誌・書籍/カラー」の最も安価なボンカラーの使用料2万円に同表の「I二次使用料」のボンカラーの料率80%を乗じて求めた二次使用料でも1万6000円である。前記aの写真の使用料を1万円としたことは、安すぎる程である。
(ク)a 「編集会議」平成14年9月号21頁(甲第18号証の5)掲載のP7の写真(「編集会議」平成14年8月号の表紙に掲載された写真の二次使用)の使用料1万円及び消費税500円の合計1万0500円 b 前記(キ)bと同様である。
(ケ) 前記(ア)ないし(ク)の各aの使用料及び消費税の合計は、191万1000円である。
ウ 写真の返還義務の不履行による損害 (ア) 返還義務 被告は、本件請負契約に基づき、原告会社に対し、雑誌に掲載する写真のポジフィルム及び写真プリントを掲載終了後速やかに原告会社に返還する義務を負っていた。
原告会社と被告の間で、表紙写真の撮影に応じてもらった作家や編集者へのお礼用の写真プリントについてのみ返還しなくてよい旨の合意があったが、
それ以外の写真プリントは、他へ流出して無断で使用されると原告会社又は原告P1の信用及び財産が害されるから、使用後速やかに返還する旨合意していた。
(イ) 不履行 被告は、原告会社に対し、次のポジフィルム、写真プリントを返還していない。
a 「編集会議」平成13年5月号表紙掲載のP8の写真のポジフィルム1枚 b 「編集会議」平成15年9月号の「P9」対談写真のポジフィルム1枚(番号185-6M ) c P10の講義風景を撮影した写真の写真プリント合計8枚 (ウ) 損害 ポジフィルムは1枚当たり時価50万円であり、写真プリントは1枚当たり時価5万円であるから、被告による返還義務の不履行によって原告会社が被った損害は、ポジフィルム2枚分の時価合計100万円及び写真プリント8枚分の時価合計40万円の合計140万円である。
別紙料金一覧表の「P紛失補償金(原版)」について、オリジナルのポジフィルムを貸出ししない業者が5社中2社あり、紛失補償金の平均は33万3333円以上である。オリジナルのポジフィルムと同じ写真を再現するには撮影をやり直すほかないところ、前記(イ)aの写真の撮影には、原稿料19万5386円、スタジオ代9万2080円、P8への謝礼8万8888円、編集担当者への謝礼2万円の合計39万6354円がかかり、更に各人の交通費を含めると、実費だけでも50万円以上となる。これに、前記(イ)aの写真が著名なP8の写真であることなどを加味すると、前記(イ)aのポジフィルムの時価として、50万円は安すぎる程である。
別紙料金一覧表の「N紛失補償金(複製)」の紛失補償金の平均は10万円以上であるから、前記(イ)cの写真プリント1枚の時価を1枚5万円としたのは安すぎる程である。
(4) 著作権侵害による損害 ア 著作物 原告P1が撮影した次の写真は、原告P1の著作物である。
(ア) 「編集会議」平成13年9月号114頁、115頁(甲第6号証の2、3)に掲載されたP6、P11の各写真 (イ) 「編集会議」平成13年7月号掲載の「P10が判定!いい編集者○、ダメな編集者×」のために原告P1が撮影したP10の写真のうち、同号に掲載されなかった写真 (ウ) 雑誌「環境マーケティング&ビジネス」平成15年3月号102頁、105頁(甲第20号証の2、3)に掲載されたP13の写真 イ 著作物の利用 (ア) 被告は、原告P1の前記ア(ア)ないし(ウ)の写真を、次のとおり複製して利用した。
a 被告は、前記ア(ア)の各写真を複製して、出版界就職ガイド「何が何でも出版界に入りたい」48頁、169頁(甲第22号証の2、3)に掲載した。
b 被告は、前記ア(イ)の写真を複製して、「何が何でも出版界に入りたい」296頁、297頁(甲第22号証の4)に1回、「編集会議」平成14年10月号ないし平成16年3月号の被告主催の「編集ライター養成講座」の広告(甲第29ないし第46号証の各3)に18回の合計19回掲載した。
c 被告は、前記ア(ウ)の写真を複製して、「環境マーケティング&ビジネス」平成15年4月号122頁、125頁(甲第21号証の2、3)に掲載した。
(イ) 原告P1は、被告が原告P1の写真を前記(ア)aないしcのように利用することを許諾していなかった。
ウ 損害 (ア)a 前記イ(ア)aの利用についての使用料相当額は、写真1枚当たり15万円の2枚分の30万円である。
b 別紙料金一覧表の「B雑誌・書籍/モノクロ」の平均使用料は2万8400円であり、これに同表の「I二次使用料」の平均料率72%を乗じて求めた二次使用料は2万0448円である。これに同表の「L無断使用の賠償規定による請求金額」の10倍を乗じると1枚当たり20万4480円となる。したがって、前記aの写真の使用料相当額を1枚当たり15万円と計算したことは安すぎる程である。
(イ)a 前記イ(ア)bの利用についての使用料相当額は、広告に写真を利用していることに鑑みると、100万円である。
b 別紙料金一覧表の「H雑誌・広告/モノクロ」の平均使用料は3万3000円であり、これに同表の「L無断使用の賠償規定による請求金額」の10倍を乗じると1枚当たり33万円となる。
前記イ(ア)bの写真が著名なP10を撮影したものであり、傑作であることからすると、使用料が100万円でも安すぎる程である。
前記イ(ア)bにおいて19回利用していることから、33万円に19回を乗じると627万円となり、100万円を超える。
「編集会議」の1頁の広告料は35万円であり、P10の写真が重要であることからすれば、前記イ(ア)bの広告中の写真部分の広告料は10万円を下ることはなく、前記イ(ア)bの広告数19回を乗じても190万円となる。
したがって、前記aの使用料相当額を100万円とすることは合理性がある。
(ウ) 前記イ(ア)cの利用についての使用料相当額は、15万円である。
(エ) 前記(ア)a、(イ)a及び(ウ)の使用料相当額の合計は145万円である。
(5) 結論 よって、原告会社は、被告に対し、本件請負契約に基づき、撮影料21万円(前記(3)ア(ウ))、使用料191万1000円(前記(3)イ(ケ))及び写真の返還義務の不履行に基づく損害140万円(前記(3)ウ(ウ))の合計352万1000円及びこれに対する各履行期の後である平成15年12月16日(第1事件の訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
原告P1は、被告に対し、著作権侵害による損害賠償として、使用料相当額145万円及びこれに対する不法行為後である平成16年5月21日(第2事件の訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する認否 (1)ア 請求原因(1)(当事者)ア(原告P1)の事実は認める。
イ 請求原因(1)イ(原告会社)の事実は不知。
ウ 請求原因(1)ウ(被告)の事実は認める。
(2) 請求原因(2)(請負契約)の事実は否認する。
被告は、原告P1の撮影した写真の使用許諾契約は原告P1との間で締結し、使用料の支払先も原告P1であると認識している。
後記3(被告の主張)のとおり、原告P1は、被告に対し、写真の撮影料、使用料の決定を任せたから、原告P1又は原告会社は、被告が既に支払った以上の金額について、撮影料、使用料の請求権を有しない。
(3)ア 請求原因(3)(請負契約に基づく請求)ア(撮影料)につき、被告が撮影料を未払であるとの主張は争う。
(ア) 請求原因(3)ア(ア)のうち、原告P1の撮影した写真が「編集会議」平成13年11月号18頁ないし21頁の「雑誌偏愛主義」(甲第8号証の2、
3)に掲載されたことは認め、その余は争う。
上記写真の撮影料は10万5000円であり、被告は、平成15年10月28日、原告会社に対し、これを支払った。
(イ) 請求原因(3)ア(イ)のうち、原告P1の撮影した写真が「編集会議」平成14年1月号2頁ないし9頁の「P2大ブレイク!!」(甲第10号証の2ないし8)に掲載されたこと、同写真が展示会会場、打ち上げパーティーまで同行して撮影したものであること、拘束時間が通常より長かったこと、紙面で40以上のカットが用いられていることは認め、その余は争う。
上記写真の撮影料は、「編集会議」平成14年1月号の表紙グラビアの撮影料に含まれるものであり、被告は、原告会社に対し、表紙グラビアの撮影料を既に支払った。
(ウ) 請求原因(3)ア(ウ)は争う。
イ 請求原因(3)イ(使用料)につき、被告が使用料を未払であるとの主張は争う。仮に原告P1又は原告会社が使用料の請求権を有するとしても、原告主張に係る使用料は過大である。
(ア) 請求原因(3)イ(ア)のうち、原告P1の撮影したP3の写真が「編集会議」平成14年2月号65頁(甲第11号証の2)に掲載されたこと、写真の使用許諾等の管理を業としている株式会社世界文化フォト、株式会社モントレ、ボンカラー、KAWASUMI ISAOフォトライブラリー、アフロフォトエージャンシーの使用料を一覧表にしたものが、別紙料金一覧表であること、上記写真が著名なP3の写真であることは認め、その余は争う。
別紙料金一覧表所定の使用料等は、写真家が写真の企画アイデア、撮影対象の手配(肖像権の使用許諾も含む。)、スタジオ代、感材費等撮影に要するすべての費用を負担して撮影した写真に適用されるものである。本件で問題とされている写真は、いずれも被告が企画立案し、撮影対象を手配し(肖像権の使用許諾も含む。)、スタジオ代、感材費等撮影に要するすべての費用を負担して撮影したものであるから、別紙料金一覧表は適用されない。著名人の写真は、肖像権の使用許諾料が高いことから、写真の使用料も高くなるが、本件で問題とされている写真の肖像権の使用許諾料は被告が支払っている。
写真の使用料については、65点の写真(デジタル画像)を5万円程度で使用許諾する事例(乙第1号証)、1000点の写真を8800円で包括的に使用許諾する事例(乙第2号証)もある。
雑誌における二次使用料は写真1枚当たり3000円ないし5000円であり、原告主張に係る5万円は過大である。
(イ) 請求原因(3)イ(イ)のうち、原告P1の撮影したP4及びP5の写真5枚が「編集会議」平成14年7月号30頁ないし37頁(甲第16号証の2ないし7)に掲載されたことは認め、その余は争う。
上記写真について、被告は、原告会社に対し、平成15年10月28日、使用料として3万1500円を支払った。
(ウ) 請求原因(3)イ(ウ)のうち、原告P1の撮影した写真が「編集会議」平成13年7月号103頁(甲第4号証の9)に掲載された被告自社広告に使用されたこと、「編集会議」に被告以外の者が広告を掲載するための広告料が1頁当たり35万円であることは認め、その余は争う。
(エ) 請求原因(3)イ(エ)のうち、原告P1の撮影したP6の写真が「編集会議」平成13年12月号50頁(甲第9号証の2)に掲載され、それが「編集会議」平成13年9月号114頁に掲載された写真の二次使用であることは認め、その余は争う。
(オ) 請求原因(3)イ(オ)のうち、原告P1の撮影した写真16枚が「編集会議」販売促進用ポスター及び販売促進用ポップに掲載されたこと、それが「編集会議」の表紙に掲載された写真の二次使用であること、「編集会議」の表紙写真が各界の著名人を撮影したものであることは認め、その余は争う。
(カ) 請求原因(3)イ(カ)のうち、原告P1の撮影した編集者11名の写真11枚が「編集会議」平成14年2月号117頁ないし127頁(甲第11号証の3ないし13)に掲載されたことは認め、その余は争う。
(キ) 請求原因(3)イ(キ)のうち、原告P1の撮影したP4の写真が「編集会議」平成14年8月号16頁(甲第17号証の2)に掲載されたこと、それが「編集会議」平成14年7月号30頁に掲載された写真の二次使用であることは認め、その余は争う。
(ク) 請求原因(3)イ(ク)のうち、原告P1の撮影したP7の写真が「編集会議」平成14年9月号21頁(甲第18号証の5)に掲載されたこと、それが「編集会議」平成14年8月号の表紙に掲載された写真の二次使用であることは認め、その余は争う。
(ケ) 請求原因(3)イ(ケ)は争う。
ウ(ア) 請求原因(3)ウ(写真の返還義務の不履行による損害)(ア)(返還義務)の主張は争う。
被告は、原告P1との間で、雑誌に掲載する写真のポジフィルムを掲載終了後速やかに返還することを約束し、原告P1に対してその返還義務を負っていたが、写真プリントについては、返還する旨の約束をしていなかった。
(イ) 請求原因(3)ウ(イ)(不履行)の事実は認めるが、それが債務不履行に当たることは争う。
請求原因(3)ウ(イ)a記載のポジフィルムは、被告の担当者が紛失したものであり、被告は、原告P1に対し、平成13年6月ごろ、「編集会議」同年5月号に掲載した他の写真のポジフィルムを返還する際、紛失した旨を原告P1に説明し、原告P1から、返還しなくてもよい旨の了解を得た。
請求原因(3)ウ(イ)c記載の写真プリントについて、被告は、原告P1に対し、返還義務を負わない。
(ウ) 請求原因(3)ウ(ウ)(損害)のうち、請求原因(3)ウ(イ)aの写真の撮影のためのスタジオ代が9万2080円であったことは認め、その余は争う。
ポジフィルムは1枚当たり時価5万円程度であり、写真プリントはポジフィルムから複製が可能であるから、時価は複製の実費相当額であり、1枚当たり1500円程度である。
請求原因(3)ウ(イ)aの写真の撮影のために被告が原告P1に支払った金員は、撮影料7万2222円、感材費5万4276円、交通費6万6110円であり、被告がP8に支払った謝礼は8万円(うち8000円源泉徴収)であり、他の編集者に謝礼は支払わず、交通費も支払わなかった。
(4)ア 請求原因(4)(著作権侵害による損害)ア(著作物)は認める。
イ(ア) 請求原因(4)イ(著作物の利用)(ア)の事実は認める。
(イ) 請求原因(4)イ(イ)の事実は否認する。
後記3(被告の主張)のとおり、原告P1は、被告が写真を使用することを包括的に許諾していた。
ウ 請求原因(4)ウ(損害)(ア)ないし(エ)は争う。
(5) 請求原因(5)(結論)は争う。
3 被告の主張 (1)ア 原告P1は、被告の取締役であり「編集会議」の編集長であるP12(以下「P12」という。)と従前から知り合いであった。P12は、平成13年1月、被告会社に移籍して「編集会議」の編集長に就任した。
P12は、平成13年1月4日、電話で、原告P1に対し、「編集会議」に掲載する写真の撮影を依頼するかも知れないと告げたところ、原告P1は、
撮影を行う旨申し出た。P12は、原告P1に対し、「編集会議」は専門誌であるため、撮影料も格安であり、材料費も十分に支払えず、二次使用料も支払えないと説明したが、原告P1は、どうしてもやりたいと述べ、被告に対し、原告P1が撮影した写真の包括的な使用許諾をするとともに、写真の撮影料、使用料の決定を任せた。
イ 被告は、原告P1に対し、平成13年2月13日の「編集会議」同年4月号のための撮影から、平成14年7月14日の「編集会議」同年9月号のための撮影まで、写真の撮影を依頼したものであり、「編集会議」の平成13年4月号から平成15年4月号までを献呈本として送付した。原告P1は、同人が撮影した写真が最後に「編集会議」に掲載されてから1年以上、被告に対して苦情を述べておらず、このことからも、前記アの包括的な使用許諾があったことが推測される。
(2) したがって、原告会社の撮影料、使用料の請求及び原告P1の著作権侵害による損害賠償の請求は、理由がない。
4 被告の主張に対する認否 (1)ア(ア) 被告の主張(1)アの事実のうち、原告P1が、被告の取締役であり「編集会議」の編集長であるP12と従前から知り合いであったこと、P12が、
平成13年1月、被告会社に移籍して「編集会議」の編集長に就任したことは認め、その余は否認する。
(イ)a 被告が原告P1に写真撮影を依頼した経緯は次のとおりである。
平成12年12月22日、P12から原告P1に電話で、発行予定の雑誌について「表紙のアイデア、雑誌の企画が何かないか」という相談があった。原告P1は、P12が原告に企画だけ依頼し、写真の撮影は別の写真家に依頼すると思っていた。
平成13年1月4日、P12から原告P1に電話で、作家とその担当編集者を集めて写真を撮るという企画について相談があり、原告は、良いアイデアであると思い、「面白そうだ」などと話した。
P12は、平成13年2月8日、原告P1に対し、突然、電話で、
同月13日に「編集会議」の表紙写真を撮影するよう依頼し、原告P1はこれに応じた。その際、P12は、「@編集者にコネを付けようとしないこと、A撮影者に徹すること、B欲を出さないこと」などと条件を付けてきたが、写真の使用許諾等については一切条件を出さなかった。
b このように、P12は、平成13年2月8日に突然撮影を依頼してきたのであるから、原告P1が同年1月に写真の包括的な使用許諾をすることはあり得ない。
(ウ) 写真の包括的な使用許諾は、写真から生ずる利益を処分することになるから、カメラマンが出版社の編集者に包括的な使用許諾をすることはない。原告P1は、これまで写真について包括的な使用許諾をしたことはない。各メディアが写真を二次使用する場合は、必ず貸出し依頼と目的の説明があり、その内容に応じた正当な報酬が支払われている。コマーシャル撮影等において包括的な使用許諾がされる場合があるが、その場合は、雑誌への使用料の10ないし100倍の使用料が支払われており、本件では包括的な使用許諾がされていたことはあり得ない。
イ 被告の主張(1)イの事実は否認する。
原告P1又は原告会社は、被告に対し、使用料の請求を平成13年から数回にわたって行っている。
(2) 被告の主張(2)の主張は争う。
理 由1 請求原因(1)(当事者)について (1) 原告P1 原告P1が、写真撮影や執筆等の活動を行っている者であり、原告会社の代表取締役であることは、当事者間に争いがない。
(2) 原告会社 甲第73号証、原告会社代表者兼原告P1本人尋問(以下「原告P1本人尋問」という。)の結果及び弁論の全趣旨によれば、原告会社は、写真の撮影、管理等を目的とする株式会社であり、主に原告P1の委任に基づいて、同人が撮影した写真の使用許諾、使用料請求など、著作物の管理を行っていることが認められる。
(3) 被告 被告が、広告宣伝に関する企画等を目的とする株式会社であり、雑誌「編集会議」等の出版物を編集、発行していることは、当事者間に争いがない。
2 請求原因(2)(請負契約)について (1) 甲第1号証の1ないし4、第2号証の1、第3号証、第4号証の1ないし7、第5号証、第6号証の1ないし3、第7号証、第8号証の1ないし3、第9号証の1、第10号証の1ないし8、第13ないし第15号証、第16号証の1ないし7、第73号証、第75号証の1、2、証人P12の証言(後記の信用することができない部分を除く。)、原告P1本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。
ア 原告P1は、平成12年3月29日ごろ、当時株式会社角川書店に在籍していたP12の紹介で、被告から、編集者の養成を目的とする「編集ライター養成講座」の大阪での開講に当たり、講師の紹介と講師としての講演の依頼を受け、これに応じた。
原告P1は、平成12年12月、被告の発行する雑誌「販促会議」の写真の撮影を依頼され、これに応じた。
イ P12は、その後、株式会社角川書店を退職し、平成13年1月1日、被告に入社して雑誌「編集会議」の編集長に就任した。
ウ P12は、株式会社角川書店に在籍する以前にも、複数の会社を転職し、
各社で雑誌の編集などを担当してきたものであり、原告P1とは昭和59年以来の知り合いで、従前から、原告P1に対し、雑誌に掲載する写真の撮影を依頼することがあった。P12が原告P1に写真の撮影を依頼する際には、契約書が作成されたことはなく、撮影料や写真の使用料について金額を細かに決める交渉がされたこともなく、口頭で、撮影の依頼と承諾が行われるだけであり、後に、原告会社に対して、相当額の撮影料、感材費、使用料などが支払われていた。
エ P12は、平成13年1月4日、原告P1に、電話で、「編集会議」の表紙について、作家とその担当編集者を集めて写真に撮ろうと思う旨述べ、原告P1は、「面白そうだ。」と答えた。
オ P12は、平成13年2月8日、原告P1に対し、電話で、「編集会議」の表紙の写真撮影を依頼した。撮影は同月13日に行うということであり、撮影日までに日数がなかったが、原告P1は、これに応じた。その際、P12は、P3と編集者11人を六本木スタジオに集めるから、それまでに撮り方を考えておくこと、編集者にコネをつけようとしないこと、撮影者に徹すること、欲を出さないことなどを述べた。
カ P12は、「編集会議」の表紙写真等の撮影について、原告P1に対し、
撮影料や使用料の具体的な金額は述べなかった。その際、P12と原告P1との間で、原告P1の撮影した写真の二次使用料についての明示の合意はなされなかった。
キ 原告は、平成13年2月13日、前記オの依頼に係る写真を撮影し、その写真は、「編集会議」の同年4月号(創刊号)に掲載された。
原告は、「編集会議」の平成13年4月号から平成14年1月号まで及び同年4月号から同年7月号までの表紙写真を撮影し、また、「編集会議」の特集記事の写真を数回撮影した。
以上の事実が認められる。
(2)ア 被告は、P12が、平成13年1月4日、電話で、原告P1に対し、「編集会議」に掲載する写真の撮影を依頼するかも知れないと告げたところ、原告P1は、撮影を行う旨申し出たこと、P12は、原告P1に対し、「編集会議」は専門誌であるため、撮影料も格安であり、材料費も十分に支払えず、二次使用料も支払えないと説明したが、原告P1は、どうしてもやりたいと述べ、被告に対し、原告P1が撮影した写真の包括的な使用許諾をするとともに、写真の撮影料、使用料の決定を任せたことを主張する(前記事実欄第2(当事者の主張)、2(請求原因に対する認否)(2)、3(被告の主張)(1)ア)。
イ また、P12の陳述書である乙第5号証には、次のとおり記載されている。
「私は、『編集会議』の表紙を作家と編集者が並んだ写真にすることにしました。そして、私は、撮影を誰にするかを考えました。私としては、誰でもよかったのですが、平成13年1月4日、P1氏に電話をして、声をかけてみることにしました。私がP1氏に対し、編集会議の表紙を作家とその担当編集者を並んだ写真とすること、この撮影をP1氏に頼むかもしれないことを述べたところ、P1氏は、『やらしてえな』と言いました。そこで、私は、P1氏に対し、『編集会議』は、専門誌であるため、撮影料も格安、感材費も十分に払えない、二次使用料も支払えないことを説明しました。すると、P1氏は、『どうしてもやりたい。ギャラについては任せる』と述べて、私が提示した条件を了承しました。
また、私は、P1氏に対し、二次使用料が支払えない理由として、宣伝会議は、専門誌中心で、写真撮影は、全て著作権買い取り制でやっていること、このため、二次使用料を支払わないことは、社の決まりで、P1氏だけ特別扱いできないことを説明しました。しかし、著作権買い取りでは、P1氏が納得しないだろうと思い、著作権はP1氏が取得することとし、ポジも返還することを約束したのです。」 さらに、P12は、その証人尋問において、乙第5号証の上記記載に沿う証言をしている。
ウ(ア) しかし、原告P1の陳述書である甲第73号証には、「編集会議」に掲載する写真の撮影について、無償で使用許諾するとか、著作権を譲渡するなどの話はなかった旨記載されており、原告P1は、その本人尋問において、同旨の供述をしている。
(イ) そもそも、撮影した写真の二次使用を無償で許諾するならば、写真家又はその写真を管理する者は、使用の態様、回数にかかわらず使用の対価を得られなくなり、多くの利益を失うこととなるから、二次使用が無償か有償かは重要な問題である。本件請負契約で撮影の対象となる著名人の写真等は、当初の撮影目的以外の用途にも使用できる可能性が少なくないため、尚更である。
そして、原告P1本人尋問の結果によれば、原告P1は、被告以外の会社との間で、無償で二次使用を許諾する契約をしたことはなく、P12が従前被告以外の会社に在籍しているときに同人から依頼を受けた写真撮影について二次使用料が支払われた例があることが認められる。また、証人P12の証言によれば、同証人が被告以外の会社に在籍しているときに、編集長として原告P1の撮影した写真を使用した際、無償で二次使用するという契約をしたことはないことが認められる。したがって、P12と原告P1の間では、二次使用は有償であるというのが従来の慣行であったと認められる。
そうだとすると、そのような重要な問題について従来の慣行と異なる内容の契約をする際に、暗黙裏に合意するということは考え難く、明示の確認をし、
改めて念押しする、あるいは書面を作成するなど、誤解や後の紛争を避ける方法が採られることが普通であるように思われる。しかし、このような方法が採られたことを認めるに足りる証拠はない。かえって、P12は、その証人尋問において、原告P1が二次使用料の支払がないことを承諾した際の受け答えについて、平成13年1月4日、原告P1に対し、電話で、二次使用料を支払えないと述べたところ、
原告P1が、それでもやらせてほしいと述べたことから、原告P1が二次使用料の支払がないことを承諾したと理解している旨証言しており、また、原告P1に対して二次使用料の支払のないことを確認することはなかった旨証言しており、P12の証言においてさえも、原告P1が二次使用料の支払のないことを明確に承諾したことは述べられていないところである。
(ウ) また、前記(1)ア認定のとおり、原告P1は、平成12年12月、被告の発行する雑誌「販促会議」の写真の撮影を依頼され、これに応じている。もし、
P12がその陳述書や証人尋問において陳述するように、被告が写真撮影について全て著作権の譲渡を受けており、被告社内の決まりとして二次使用料を支払わないなどの事実があったならば、それは、重要な点について被告と原告P1の間の従来の慣行と異なる内容であるから、原告P1が「販促会議」の写真撮影に応じた際に、既にそのようなことが被告から原告P1又は原告会社に告げられ、原告P1又は原告会社と被告との間で交渉が行われるなどしたはずであるが、そのようなことを窺わせる証拠はない。
(エ) 前記(イ)認定に係る本件請負契約で撮影の対象となる写真の二次使用について有償無償の重要性、原告P1が被告以外の会社との間で、無償で二次使用を許諾する契約をしたことはないことからすれば、原告P1は、通常は、二次使用を無償で許諾するようなことは行わないものと認められる。ところが、本件において、原告P1が、二次使用料の支払を受けないことにしてまでも被告の写真撮影の依頼に応じたことの理由となるべき特別の事情を認めるに足りる証拠はない。
(オ) P12は、その証人尋問において、平成13年1月4日、原告P1に電話で「編集会議」の表紙写真の撮影を依頼した際、原告P1と話した時間は、
5、6分から10分くらいの間だったと思う旨証言する。しかし、二次使用料を支払わないということは、P12と原告P1との従来の慣行と異なる条件であるから、P12が原告P1に、表紙写真のアイデアと撮影すべき内容を説明して写真撮影を依頼し、その上二次使用料を支払わないことを説明して承諾を得たにしては、
上記の時間は短いように思われる。
エ 前記ウ(ア)ないし(オ)の事情に照らせば、被告が二次使用料を支払わないことについて原告P1が承諾をした旨の乙第5号証の記載及びそれに沿うP12の証言(前記イ)は、採用することができない。
したがって、前記アの被告の主張は、採用することができない。
(3)ア 被告は、原告P1に対し、平成13年2月13日の「編集会議」同年4月号のための撮影から、平成14年7月14日の「編集会議」同年9月号のための撮影まで、写真の撮影を依頼し、「編集会議」の平成13年4月号から平成15年4月号までを献呈本として送付したこと、原告P1は、同人が撮影した写真が最後に「編集会議」に掲載されてから1年以上、被告に対して苦情を述べておらず、このことからも、包括的な使用許諾があったことが推測されることを主張する(前記事実欄第2、3(1)イ)。
イ しかし、後記(5)イ(ア)、(イ)認定のとおり、原告会社は、平成14年9月20日ごろから、被告に対し、原告会社作成名義の請求書を送付し、平成15年3月13日ごろ、同月11日付け通知書を被告に送付し、出張校正費及び撮影費、写真の二次使用料の支払などを求めていたから、前記アの被告主張のように、原告P1が、同人の撮影に係る写真が最後に「編集会議」に掲載されてから1年以上、被告に対して苦情を述べていなかったとは認められない。また、被告が原告P1に対して献呈本を送付していたとしても、それによって包括的な使用許諾が裏付けられるとは認められない。
したがって、前記アの被告の主張は、採用することができない。
(4) 前記(1)カ認定のとおり、P12は、原告P1に対し、撮影料や使用料の具体的な金額については述べなかったが、前記(1)ウ及び(2)ウ認定のとおり、従前から、P12が原告P1に写真の撮影を依頼する際には、契約書の作成や金額についての細かな交渉はなく、口頭で、撮影の依頼と承諾が行われるだけであり、後に、
原告に対して、相当額の撮影料、感材費、使用料などが支払われており、また、二次使用は有償であるというのが従来の慣行であったものである。このことに、前記1(2)認定のとおり原告会社が原告P1の著作物の管理を行っていること、前記(1)アないしキ認定の契約成立の経緯等を合わせ考えると、原告会社は、平成13年2月ごろ、被告との間で、原告会社が、被告の発行する雑誌に掲載する写真の撮影、
校正を請負い、写真の使用を被告に許諾し、被告が原告会社に対して、相当額の写真の撮影料、校正費用、使用料を支払うという内容の契約(「本件請負契約」。前記事実欄第2、1(2))を締結したものと認められる。
(5)ア なお、被告は、原告P1の撮影した写真の使用許諾契約は、原告P1との間で締結し、使用料の支払先も原告P1であると認識している旨主張する(前記事実欄第2、2(2))。
イ しかし、甲第24ないし第28号証によれば、次の事実が認められる。
(ア) 原告会社は、平成14年9月20日ごろから、被告発行の雑誌「映画館へ」及び「編集会議」についての出張校正費及び撮影費などにつき、被告に対し、原告会社作成名義の請求書を送付し、それらの支払を求めていた。
(イ) 原告会社は、平成15年3月13日ごろ、同月11日付け通知書を被告に送付し、被告発行の雑誌「映画館へ」及び「編集会議」についての出張校正費及び撮影費などのいわゆる原稿料52万5000円、「編集会議」の表紙及びグラビアに掲載された作家及び編集者への謝礼用プリント代金44万1000円、「編集会議」の平成13年4月号から平成14年1月号まで及び同年4月号から同年9月号までの表紙等に掲載された写真の二次使用料の支払などを求めた。
(ウ) 被告は、上記平成15年3月11日付け通知書に対する回答として、
原告会社に対し、同月22日付けの「通知書の件」と題する書面を送付し、出張校正費31万5000円及び謝礼用プリント代金44万1000円の合計75万6000円については同年4月10日までに支払うが、それ以外については、P12と原告会社との話合いにより解決の上決定したいと思う旨通知した。
(エ) 原告P1及び原告会社は、平成15年10月1日、被告に対し、同年9月29日付け通知書(原告P1及び原告会社の代理人名義)を送付し、「編集会議」に掲載された写真の撮影料、「編集会議」の平成13年4月号から平成14年1月号まで及び同年4月号から同年9月号までの表紙等に掲載された写真の二次使用料の支払、ポジフィルム及び写真プリントの返還などを求めた。
(オ) 被告は、上記平成15年9月29日付け通知書に対する回答として、
原告P1及び原告会社の代理人に対し、同年10月21日付け回答書(被告代理人名義)を送付した。同回答書には、「編集会議」に掲載された写真の撮影料について適正と考える金額を被告が原告会社に支払う旨、また、「編集会議」の平成13年4月号から平成14年1月号まで及び同年4月号から同年9月号までの表紙等に掲載された写真の二次使用について、原告会社から事前に許諾を受けているので、
二次使用料の支払義務はない旨、さらにポジフィルム及び写真プリントの返還請求には応じかねる旨記載されていた。
(カ) 被告の平成15年3月22日付けの「通知書の件」と題する書面(前記(ウ))及び同年10月21日付け回答書(前記(オ))には、被告との契約の相手方が原告P1であることを理由として、被告と原告会社の間の契約の成立を否定する趣旨の記述は存在しなかった。
以上の事実が認められる。
ウ 前記イ(ア)ないし(カ)認定の事実によれば、被告は、原告会社との間で契約が締結されたことを前提として、撮影料等を支払い、二次使用料等についての交渉を行っていたことが認められ、このことから、本件請負契約は、被告と原告会社との間において成立したものと認められ、前記アの被告の主張は、採用することができない。
3(1) 請求原因(3)(請負契約に基づく請求)ア(撮影料)について ア(ア) 原告P1の撮影した写真が「編集会議」平成13年11月号18頁ないし21頁の「雑誌偏愛主義」(甲第8号証の2、3)に掲載されたことは当事者間に争いがない。
(イ) 被告は、前記(ア)の写真の撮影料は10万5000円であり、平成15年10月28日、原告会社に対し、これを支払ったと抗弁し、乙第5号証には、
それに沿う記載がある。
しかし、弁論の全趣旨によれば、前記(ア)の写真の感材費、レンタカー代、ストロボ代等の実費だけでも10万円以上であったことが認められるから、その撮影料が10万5000円であったということは、にわかに信用し難い。また、
甲第24、第25号証によれば、原告会社は、被告に対し、前記(ア)の写真の撮影料について、平成14年9月25日付けの請求書(金額12万6000円)をもって請求したことが認められるから、同写真の撮影料について被告抗弁のとおり支払があったとすれば、領収証や振込書類等(金額は、被告抗弁のとおりであれば10万5000円となるはずである。)が存在するはずであるところ、被告による支払を裏付ける証拠は、乙第5号証の記載があるのみで、領収証や振込書類等は提出されていない。したがって、被告による支払を認めるに足りる証拠はなく、被告の上記抗弁は、採用することができない。
(ウ) 甲第73号証及び弁論の全趣旨によれば、「編集会議」の表紙写真の撮影料は15万円(消費税別)であったことが認められるところ、前記(ア)の写真は、撮影対象とされた編集者の数が、表紙写真と同様に多く、写真の大きさも、表紙写真と同様に大きいことからすると、その撮影料は、表紙写真の8割である12万円と認めるのが相当であり、被告が支払うべき撮影料は、12万円に消費税6000円を加算した12万6000円であると認められる。
イ(ア) 原告P1の撮影した写真が「編集会議」平成14年1月号2頁ないし9頁の「P2大ブレイク!!」(甲第10号証の2ないし8)に掲載されたこと、
同写真が展示会会場、打ち上げパーティーまで同行して撮影したものであること、
拘束時間が通常より長かったこと、紙面で40以上のカットが用いられていることは、当事者間に争いがない。
(イ) 被告は、前記(ア)の写真の撮影料は、「編集会議」平成14年1月号の表紙グラビアの撮影料に含まれるものであり、被告は、原告会社に対し、表紙グラビアの撮影料を既に支払ったと主張し、乙第5号証には、それに沿う記載がある。
前記ア(ウ)認定のとおり、「編集会議」の表紙写真の撮影料は15万円(消費税別)であったことが認められるところ、上記の被告の主張は、前記(ア)の写真の撮影料が、表紙の撮影料に含まれるという趣旨であると解される。
しかし、前記(ア)の写真は、40以上に及ぶ多数のカットが用いられており、その撮影のための拘束時間が通常より長かったことからすると、それらの撮影料が表紙の撮影料に含まれていたことは、にわかに信用し難く、被告の上記主張は、採用することができない。
前記(ア)の写真中には、多数の人物を撮影し、雑誌の紙面に大きく掲載された写真も含まれていることからすれば、1カット当たりの撮影料は少なくとも2000円と認めるのが相当であり、そうであるとすると、前記(ア)の写真の撮影料は、8万円(2000円×40カット=8万円)と認めるのが相当であって、被告が支払うべき撮影料は、8万円に消費税4000円を加算した8万4000円であると認められる。
ウ 前記ア(イ)、イ(イ)の撮影料及び消費税の合計は、21万円(12万6000円+8万4000円=21万円)であると認められる。
(2) 請求原因(3)イ(使用料)について ア(ア) 原告P1の撮影したP3の写真が「編集会議」平成14年2月号65頁(甲第11号証の2)に掲載されたこと、写真の使用許諾等の管理を業としている株式会社世界文化フォト、株式会社モントレ、ボンカラー、KAWASUMI ISAOフォトライブラリー、アフロフォトエージャンシーの使用料を一覧表にしたものが、別紙料金一覧表であること、上記写真が著名なP3の写真であることは、当事者間に争いがない。
(イ) 原告P1の撮影した写真の使用料について、原告らは、別紙料金一覧表を適用することを主張し、被告は、同表所定の使用料等は、写真家が写真の企画アイデア、撮影対象の手配(肖像権の使用許諾も含む。)、撮影に要するすべての費用を負担して撮影した写真に適用されるが、本件では、それらは被告がしたものであるから、同表は適用されるべきではないと主張する。
本件請負契約に基づく写真の使用料は、原告会社又は原告P1と被告又はP12との関係を前提として、契約当事者である原告会社と被告間の契約の合理的意思解釈により認定されるべきである。しかるところ、別紙料金一覧表所定の使用料等は、写真の使用料の一応の基準を示すものとして、本件における使用料を決める上でも、判断の一要素となることは否定し得ない。しかし、同表は、写真家が写真の企画アイデア、撮影対象の手配(肖像権の使用許諾も含む。)、撮影に要する費用を負担して撮影した、いわば既に完成している写真を他の者に利用させる場合を前提とするものであるから、写真が完成するについて被告の寄与も認められる本件の使用料を決するに当たって、そのまま適用するのは相当でない。すなわち、
乙第5号証(前記及び後記の信用することができない部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば、本件で使用料が問題とされる写真について、企画を立て、前記(ア)の写真に撮影されたP3らを始め、撮影対象となった者をスタジオ等に集めるよう手配し、その肖像の使用について許諾を得たのは被告又はP12であり、スタジオ代等も、少なくとも相当程度を被告が負担したことが認められる。他方、原告P1本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、構図、撮影条件等を決め、実際の撮影を行ったのは原告P1であることが認められ、前記(ア)の写真を始め、本件で使用料が問題とされる写真は、原告P1の創作性が反映された同原告の著作物であると認められる。このように、本件において使用料が問題とされる写真は、原告P1の著作物ではあるが、その完成に至るまでに被告又はP12の寄与があったものであり、その写真の利用価値は、構図、撮影条件等によって創出される写真としての創作性とともに、撮影対象となった者の著名性や著名人が撮影されていることによる写真の希少性など、被告又はP12による写真の企画や撮影対象者の手配等に由来する事情が相まって生じ、高められているものと認められる。そうであるとすれば、本件請負契約に基づく写真の使用料は、別紙料金一覧表所定の使用料等も参考にしつつ、写真が完成するに至るまでの被告の寄与も考慮に入れて認定すべきである。
なお、本件において、二次使用とは、具体的には、撮影の際に当初予定されていた号の「編集会議」に掲載された写真を、更に別の号などに二次使用するものである。弁論の全趣旨によれば、この場合、被告は、写真の企画、撮影対象の手配、撮影料の支払等に経費をかけて撮影した写真の利用の対価を、当初予定されていた号の「編集会議」に掲載することによって得ているものと認められ、二次使用料をめぐる関係は、いわば既に完成している写真を他の者が二次使用する場合と余り変わらないものというべきである。したがって、二次使用に関しては、本件の二次使用料を、別紙料金一覧表所定の使用料等に基づいて算出することが相当とされる場合もあるというべきである。
(ウ) 別紙料金一覧表の「A雑誌・書籍/カラー」の使用料は平均3万0600円である。前記(ア)の写真は著名なP3の写真であり、甲第54号証、第61号証の2によれば、従前、原告P1の撮影したP3の写真の二次使用について支払われた金額は、8媒体につき26万2500円(消費税別)であり、1媒体当たりの平均使用料は3万2812円であったことが認められる。この平均使用料を別紙料金一覧表の「I二次使用料」の平均料率72%で除すると、一次使用料は4万5572円と導かれる。
前記(ア)の当事者間に争いのない事実及び上記認定事実によれば、前記(ア)の写真の使用料は、4万円と認めるのが相当であり、被告が支払うべき使用料は、4万円に消費税2000円を加算した4万2000円であると認められる。
乙第1、第2号証によれば、市販の写真のソフトウェアには、65点の写真を5万円程度で使用許諾し、また、1000点の写真を8800円で包括的に使用許諾する事例があることが認められる。しかし、それらは、一般的なテーマについて予め撮影されたデジタル写真の使用許諾をする場合の事例である。弁論の全趣旨によれば、前記(ア)の写真は、原告P1が、「編集会議」に掲載するために撮影したものであることが認められ、原告P1本人尋問の結果によれば、前記(ア)の写真には、撮影に技術を要する大型のフィルム(4×5)を使用し、撮影に際してアシスタントを使用したことが認められるから、その使用料は、上記のデジタル写真の事例と比較して高額であると認めるのが相当である。
イ(ア) 原告P1の撮影したP4及びP5の写真5枚が「編集会議」平成14年7月号30頁ないし37頁(甲第16号証の2ないし7)に掲載されたことは、
当事者間に争いがない。
(イ) 別紙料金一覧表の「A雑誌・書籍/カラー」の使用料は平均3万0600円であり、最も安価なボンカラーでも2万円である。そのことに照らすと、前記(ア)の写真の使用料は、原告主張のとおり1枚当たり1万2000円と認めるのが相当である。
(ウ) 被告は、前記(ア)の写真について、原告会社に対し、平成15年10月28日、使用料として3万1500円を支払ったと抗弁する。しかし、その支払を裏付ける証拠は、乙第5号証の記載があるのみで、領収証や振込書類等は提出されていないから、その支払を認めるに足りる証拠はないといわざるを得ず、被告の上記抗弁は、採用することができない。
(エ) そうであるとすると、前記(ア)の5枚の写真の使用料は、6万円(1万2000円×5枚=6万円)と認めるのが相当であり、被告が支払うべき使用料は、6万円に消費税3000円を加算した6万3000円であると認められる。
ウ(ア) 原告P1の撮影した写真が「編集会議」平成13年7月号103頁(甲第4号証の9)に掲載された被告自社広告に使用されたこと、「編集会議」に被告以外の者が広告を掲載するための広告料が1頁当たり35万円であることは、
当事者間に争いがない。
(イ) 原告は、原告P1の撮影した写真が前記(ア)の被告自社広告の7分の1を下回ることはないから、同写真の使用料は、広告料35万円の7分の1に当たる5万円を下ることはない旨主張する。しかし、広告に用いられる写真の使用料が、当該広告の広告料のうちから賄われるであろうことは推測されるとしても、弁論の全趣旨によれば、広告料を決めるに当たっては、広告収入を始め、写真の使用料以外の様々の事情が考慮されていると推認されるから、広告料の総額のみから写真の使用料を算定することは困難であるというべきである。
(ウ) 甲第4号証の9によれば、前記(ア)の被告自社広告には、「編集会議」の平成13年4月号の表紙がモノクロにより写されており、その表紙に掲載されたP3の写真がモノクロによって二次使用されていることが認められ、その使用態様は、別紙料金一覧表のうちでは、「H雑誌・広告/モノクロ」に該当すると認められる。
ところで、前記ア(ア)の写真も、P3の写真であり、その使用態様は、
別紙料金一覧表の「A雑誌・書籍/カラー」に該当し、前記ア(ウ)のとおり、使用料は4万円と認定された。別紙料金一覧表の「H雑誌・広告/モノクロ」の平均の使用料は3万3000円で、「A雑誌・書籍/カラー」の平均の使用料である3万0600円の1.08倍(3万3000円÷3万0600円=1.08)であり、
また、二次使用料の平均料率は、同表の「I二次使用料」によれば、一次使用料の72%である。
したがって、前記(ア)の被告自社広告における原告P1の写真の使用料は、前記ア(ア)の写真の使用料である4万円に、1.08倍と72%を乗じた3万1104円(4万円×1.08×0.72=3万1104円)と認めるのが相当であり、被告が支払うべき使用料は、3万1104円に消費税1555円を加算した3万2659円であると認められる。
エ(ア) 原告P1の撮影したP6の写真が「編集会議」平成13年12月号50頁(甲第9号証の2)に掲載され、それが「編集会議」平成13年9月号114頁に掲載された写真の二次使用であることは、当事者間に争いがない。
(イ) 別紙料金一覧表の「B雑誌・書籍/モノクロ」の平均使用料2万8400円に同表の「I二次使用料」の平均料率72%を乗じて求めた二次使用料は2万0448円であり、同表の「B雑誌・書籍/モノクロ」の最も安価なボンカラーの使用料1万4000円に同表の「I二次使用料」のボンカラーの料率80%を乗じて求めた二次使用料でも1万1200円である。
そうであるとすると、前記(ア)の写真の二次使用料は、原告主張のとおり1万円と認めるのが相当であり、被告が支払うべき使用料は、1万円に消費税500円を加算した1万0500円であると認められる。
オ(ア) 原告P1の撮影した写真16枚が「編集会議」販売促進用ポスター及び販売促進用ポップに掲載されたこと、それが「編集会議」の表紙に掲載された写真の二次使用であること、「編集会議」の表紙写真が各界の著名人を撮影したものであることは、当事者間に争いがない。
(イ) 別紙料金一覧表の「Cポスター/カラー」の平均使用料9万2000円に同表の「I二次使用料」の平均料率72%を乗じて算出した二次使用料は6万6240円である。「編集会議」の表紙写真は各界の著名人を撮影したものであり、利用価値が高いと認められるから、前記(ア)の写真1枚についてのポスターへの使用料は、上記のとおり算出された使用料6万6240円よりも高額であると認められ、7万5000円と認めるのが相当である。
別紙料金一覧表の「Eポップ/カラー」の平均使用料4万6000円に同表の「I二次使用料」の平均料率72%を乗じて求めた二次使用料は3万3120円である。そのことに照らすと、前記(ア)の写真1枚についてのポップへの使用料は、原告主張のとおり2万円と認めるのが相当である。
(ウ) そうであるとすると、前記(ア)の写真16枚のポスターへの使用料は120万円(7万5000円×16枚=120万円)、写真16枚のポップへの使用料は32万円(2万円×16枚=32万円)で、その合計は152万円であり、
被告が支払うべき使用料は、152万円に消費税7万6000円を加算した159万6000円であると認められる。
カ(ア) 原告P1の撮影した編集者11名の写真11枚が「編集会議」平成14年2月号117頁ないし127頁(甲第11号証の3ないし13)に掲載されたことは、当事者間に争いがない。
(イ) 別紙料金一覧表の「A雑誌・書籍/カラー」の平均使用料は3万0600円であり、最も安価なボンカラーでも2万円である。そのことに照らして、前記(ア)の写真の使用料は、原告主張のとおり1枚当たり1万円と認めるのが相当である。
(ウ) そうであるとすると、前記(ア)の写真11枚の使用料は11万円であり、被告が支払うべき使用料は、11万円に消費税5500円を加算した11万5500円であると認められる。
キ(ア) 原告P1の撮影したP4の写真が「編集会議」平成14年8月号16頁(甲第17号証の2)に掲載されたこと、それが「編集会議」平成14年7月号30頁に掲載された写真の二次使用であることは、当事者間に争いがない。
(イ) 別紙料金一覧表の「A雑誌・書籍/カラー」の平均使用料3万0600円に同表の「I二次使用料」の平均料率72%を乗じて求めた二次使用料は2万2032円であり、同表の「A雑誌・書籍/カラー」の最も安価なボンカラーの使用料2万円に同表の「I二次使用料」のボンカラーの料率80%を乗じて求めた二次使用料でも1万6000円である。そのことに照らして、前記(ア)の写真の使用料は、原告主張のとおり1万円と認めるのが相当である。
(ウ) そうであるとすると、前記(ア)の写真の使用につき被告が支払うべき使用料は、1万円に消費税500円を加算した1万0500円であると認められる。
ク(ア) 原告P1の撮影したP7の写真が「編集会議」平成14年9月号21頁(甲第18号証の5)に掲載されたこと、それが「編集会議」平成14年8月号の表紙に掲載された写真の二次使用であることは、当事者間に争いがない。
(イ) 別紙料金一覧表に基づいて算出された使用料に照らし、前記キ(イ)と同様に、前記(ア)の写真の使用料は、原告主張のとおり1万円と認めるのが相当である。
(ウ) そうであるとすると、前記(ア)の写真の使用につき被告が支払うべき使用料は、1万円に消費税500円を加算した1万0500円であると認められる。
ケ 前記ア(ウ)、イ(エ)、ウ(ウ)、エ(イ)、オ(ウ)、カ(ウ)、キ(ウ)、ク(ウ)認定の各使用料及び消費税の合計は、188万0659円(4万2000円+6万3000円+3万2659円+1万0500円+159万6000円+11万5500円+1万0500円+1万0500円=188万0659円)であると認められる。
(3) 請求原因(3)ウ(写真の返還義務の不履行による損害)について ア(ア) 被告は、ポジフィルムの返還義務について、被告が原告会社ではなく原告P1に対して返還義務を負っていた旨主張する。
しかし、前記2(4)認定のとおり、原告会社と被告の間で本件請負契約が締結されたものであるから、被告は、本件請負契約に基づいて、原告会社に対し、
雑誌に掲載する写真のポジフィルムを掲載終了後速やかに返還する義務を負っていたものと認められる。
(イ) 被告は、前記第2、1(請求原因)(3)ウ(イ)a記載のポジフィルム(後記イ(ア)a記載のポジフィルム)は、被告の担当者が紛失したものであり、被告は、原告P1に対し、平成13年6月ごろ、「編集会議」同年5月号に掲載した他の写真のポジフィルムを返還する際、紛失した旨を原告P1に説明し、原告P1から、返還しなくてもよい旨の了解を得たと主張し、乙第5号証には、それに沿う記載がある。
しかし、原告P1本人尋問の結果によれば、P12は、原告P1に対し、上記ポジフィルムについて、早急に担当者に探させて返却する、もうしばらく待ってくれという趣旨を述べたことが認められるにとどまり、原告P1が返還しなくてもよい旨了解したことは認められない。また、甲第73号証及び原告P1本人尋問の結果によれば、ポジフィルムが紛失された場合、再び撮影し直さない限り、
同様の写真を得ることができないこと、上記ポジフィルムは、芥川賞作家であるP8の写真に係るもので、後々価値の上がる可能性のあるものであったことが認められ、さらに、別紙料金一覧表によれば、「P紛失補償金(原版)」の補償金は、平均でも33万3333円以上である。したがって、上記ポジフィルムにつき、紛失により返還が不可能であることが明らかになったとすれば、相当程度高額の補償金などについて交渉されることがあってしかるべきところ、そのような交渉などがあったことは窺われない。そうであるとすれば、前記認定のとおり、P12が原告P1に対し、返却を待つように述べたことがあったとしても、原告P1が、P12に対し、返還しなくてもよい旨了解したと認めることはできない。
(ウ) 被告は、写真プリントについて、返還義務を負わない旨主張し、乙第5号証には、写真プリントを返還する旨の約束はしていなかった旨の記載がある。
しかし、弁論の全趣旨によれば、雑誌社である被告にとって、写真を二次使用などする場合でない限り、写真プリントを保有しておく必要性はないこと、
他方、原告会社にとっては、当該写真を管理し、その無断使用を防ぐなどのために、写真プリントの返還を受ける必要性のあることが認められ、また、甲第73号証によれば、原告P1が平成12年12月に被告の発行する「販促会議」の写真の撮影を依頼され、これに応じた際、写真プリントの返還を受けたことが認められる。これらの認定事実によれば、被告は、本件請負契約に基づき、原告会社に対し、雑誌に掲載する写真の写真プリントを、掲載終了後速やかに返還する義務を負っていたと認めるが相当である。
イ(ア) 被告が、原告会社に対し、次のポジフィルム、写真プリントを返還していないことは、当事者間に争いがない。
a 「編集会議」平成13年5月号表紙掲載のP8の写真のポジフィルム1枚 b 「編集会議」平成15年9月号の「P9」対談写真のポジフィルム1枚(番号185-6M ) c P10の講義風景を撮影した写真の写真プリント合計8枚 (イ) 前記ア(ア)ないし(ウ)認定のとおり、被告は、本件請負契約に基づき、原告会社に対して、ポジフィルム及び写真プリントの返還義務を負っていたから、前記(ア)のとおりポジフィルム、写真プリントを返還していないことは、上記返還義務の不履行に該当するというべきである。
ウ(ア) 前記ア(イ)認定のとおり、ポジフィルムが紛失された場合、再び撮影し直さない限り、同様の写真を得ることができない。弁論の全趣旨によれば、前記イ(ア)aのポジフィルムに係る写真の撮影について、少なくとも、撮影料、感材費等19万5386円、スタジオ代9万2080円、P8への謝礼8万8888円、
編集担当者への謝礼2万円の合計39万6354円を要したことが認められる。また、別紙料金一覧表の「P紛失補償金(原版)」について、オリジナルのポジフィルムを貸出ししない業者が5社中2社あり、紛失補償金の平均は33万3333円以上である。これに、前記イ(ア)aのポジフィルムに係る写真が芥川賞作家であるP8の写真であることを合わせ考えると、上記ポジフィルムの時価は、40万円と認めるのが相当である。
(イ) 前記ア(イ)認定のとおり、ポジフィルムが紛失された場合、再び撮影し直さない限り、同様の写真を得ることができず、別紙料金一覧表の「P紛失補償金(原版)」について、オリジナルのポジフィルムを貸出ししない業者が5社中2社あり、紛失補償金の平均は33万3333円以上である。また、弁論の全趣旨によれば、前記イ(ア)bのポジフィルムに係る写真は、人気の漫才コンビである「P9」の写真であることが認められる。これらの事実によれば、前記イ(ア)bのポジフィルムの時価は、35万円と認めるのが相当である。
(ウ) 別紙料金一覧表の「N紛失補償金(複製)」の平均は10万円以上であり、そのことに照らすと、前記イ(ア)cの写真プリントの時価は、原告主張のとおり、1枚5万円と認めるのが相当である。したがって、前記イ(ア)cの写真プリント8枚の時価の合計は40万円であると認められる。
(エ) したがって、原告会社が、被告によるポジフィルム及び写真プリントの返還義務の不履行によって被った損害は、115万円(40万円+35万円+40万円=115万円)であると認められる。
4 請求原因(4)(著作権侵害による損害)について (1) 原告P1が撮影した次の写真が同原告の著作物であることは、当事者間に争いがない。
ア 「編集会議」平成13年9月号114頁、115頁(甲第6号証の2、
3)に掲載されたP6、P11の各写真 イ 「編集会議」平成13年7月号掲載の「P10が判定!いい編集者○、ダメな編集者×」のために原告P1が撮影したP10の写真のうち、同号に掲載されなかった写真 ウ 雑誌「環境マーケティング&ビジネス」平成15年3月号102頁、105頁(甲第20号証の2、3)に掲載されたP13の写真 (2)ア 被告が、原告P1の前記(1)アないしウの写真を、次の(ア)ないし(ウ)のとおり複製して利用したことは、当事者間に争いがない。
(ア) 被告は、前記(1)アの各写真を複製して、出版界就職ガイド「何が何でも出版界に入りたい」48頁、169頁(甲第22号証の2、3)に掲載した。
(イ) 被告は、前記(1)イの写真を複製して、「何が何でも出版界に入りたい」296頁、297頁(甲第22号証の4)に1回、「編集会議」平成14年10月号ないし平成16年3月号の被告主催の「編集ライター養成講座」の広告(甲第29ないし第46号証の各3)に18回の合計19回掲載した。
(ウ) 被告は、前記(1)ウの写真を複製して、「環境マーケティング&ビジネス」平成15年4月号122頁、125頁(甲第21号証の2、3)に掲載した。
イ 被告は、原告P1が、被告による写真の利用を包括的に許諾していた旨主張する。
しかし、前記2(2)、(3)認定のとおり、原告P1が、被告による写真の利用を包括的に許諾していたことは認めることができない。
(3)ア(ア) 別紙料金一覧表の「B雑誌・書籍/モノクロ」の平均使用料は2万8400円であり、これに同表の「I二次使用料」の平均料率72%を乗じて求めた二次使用料は2万0448円であるから、このことに照らして、前記(1)アの各写真の使用料は、それぞれ2万0448円と認めるのが相当である。
(イ) 原告P1は、使用料の算出に当たり、別紙料金一覧表の「L無断使用の賠償規定による請求金額」の10倍を乗じることを主張する。
しかし、我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれを賠償させることにより、被害者が被った不利益を補填して、不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり、加害者に対する制裁や、将来における同様の行為の抑止を目的とするものでないから、著作権侵害について、使用料相当額の賠償によって、被害者が被った不利益を補填し、不法行為がなかったときの状態に回復させることができるならば、それを超える金額の賠償は、認められないというべきである。本件においては、被告が原告P1の著作物である写真を無断利用して、原告P1がその使用料を得ることができなかったものであり、使用料相当額の賠償がされれば、被害者である原告P1が被った不利益を補填し、不法行為がなかったときの状態に回復させることができると認められるから、それを超える金額の賠償は認めることができないというべきである。
また、別紙料金一覧表所定の使用料は、本来的には、写真の利用許諾契約の契約当事者間における使用料を予定したものである。しかし、証人P12の証言及び弁論の全趣旨によれば、前記(1)アの各写真は、被告が、写真の企画をし、撮影対象たる人物の手配をするとともにその肖像権の使用許諾を受け、被告発行の雑誌に掲載するために原告会社に撮影料を支払って撮影に至ったものであることが認められるところであって、上記事実を考慮すれば、本件においては、原告P1が上記各写真の著作権の行使につき被告から受けるべき使用料相当額は、別紙料金一覧表の使用料を踏まえて算定するのが相当である。
したがって、原告P1の前記主張は、採用することができない。
(ウ) 被告による前記(2)ア(ア)の利用による使用料相当額は、4万0896円(2万0448円×2枚=4万0896円)であると認められる。
イ(ア) 別紙料金一覧表の「H雑誌・広告/モノクロ」の平均使用料は3万3000円である。これに、前記(1)イの写真が、著名なP10の写真であることを合わせ考えると、同写真の使用料は、4万円と認めるのが相当である。
(イ) 被告による前記(2)ア(イ)の利用は、前記(1)イの写真を合計19回使用したものであるから、使用料相当額は76万円(4万円×19回=76万円)と認められる。
(ウ) 甲第73号証には、前記(1)イの写真の使用について、事前に確認されれば原告P1は承諾しなかったとの記載がある。しかし、上記写真は、原告P1が、被告発行の雑誌のために撮影したものの、被告において同雑誌に掲載しなかったというものであること、及び撮影についてP10の承諾を得たのは被告であることを考慮すれば、やはり、原告P1が上記写真の著作権の行使につき被告から受けるべき使用料相当額は、別紙料金一覧表の使用料を踏まえて算定するのが相当である。
ウ(ア) 別紙料金一覧表の「B雑誌・書籍/モノクロ」の平均使用料が2万8400円であることに照らすと、前記(1)ウの各写真の使用料は、それぞれ2万8400円と認めるのが相当である。
(イ) 被告による前記(2)ア(ウ)の利用は、前記(1)ウの写真2枚を使用したものであるから、使用料相当額は5万6800円(2万8400円×2枚=5万6800円)と認められる。
エ 前記ア(ウ)、イ(イ)、ウ(イ)の使用料相当額の合計は、85万7696円(4万0896円+76万円+5万6800円=85万7696円)であると認められる。
5 遅延損害金の起算日について (1) 被告の原告会社に対する本件請負契約に基づく撮影料の支払義務の履行期は、撮影後相当期間が経過した時点であり、使用料の支払義務及び写真の返還義務の履行期は、写真の使用後相当期間が経過した時点であって、本件において請求されている撮影料及び使用料の支払義務、写真の返還義務の履行期は、それらに係る写真の掲載された雑誌の発行時期に照らして、いずれも、平成15年12月16日(第1事件の訴状送達日の翌日)には、既に経過していたものと認められる。
したがって、原告会社の本件請負契約に基づく撮影料、使用料の支払義務及び写真の返還義務の不履行に基づく損害賠償の遅延損害金の起算日は、原告会社主張のとおり、平成15年12月16日と認められる。
(2) 甲第46号証の1によれば、「編集会議」平成16年3月号は、同月1日に発行されたことが認められるから、被告による最後の著作権侵害の不法行為(前記4(2)ア(イ))は、遅くとも同日までに行われたものと認められる。
したがって、原告P1の著作権侵害に基づく損害賠償の遅延損害金の起算日は、原告P1主張のとおり、不法行為後である平成16年5月21日(第2事件の訴状送達日の翌日)と認められる。
6 結論 (1) 以上の認定、判断によれば、原告会社の請求は、被告に対し、本件請負契約に基づき、撮影料21万円(前記3(1)ウ、消費税を含む。)、使用料188万0659円(前記3(2)ケ、消費税を含む。)及び写真の返還義務の不履行に基づく損害賠償115万円(前記3(3)ウ(エ))の合計324万0659円及びこれに対する各履行期の後である平成15年12月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。
(2) 原告P1の請求は、被告に対し、著作権侵害による損害賠償として、使用料相当額85万7696円(前記4(3)エ)及びこれに対する不法行為後である平成16年5月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。
(3) よって、原告会社の請求は、主文第1項の限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、原告P1の請求は、主文第2項の限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条64条本文、65条1項ただし書を、仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山田知司
裁判官 中平健
裁判官 守山修生