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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17ワ14972不正競争行為差止等請求事件 平成17ワ22496損害賠償等請求事件 判例 不正競争防止法
関連ワード レコード /  放送 /  放送事業者 /  有線放送 /  録音 /  再生 /  録画 /  上映権 /  ビデオ /  著作権侵害 /  損害賠償 / 
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事件 平成 11年 (ワ) 13711号 損害賠償請求事件
原告 社団法人日本音楽著作権協会右代表者理事 A右訴訟代理人弁護士 北本修二
同 七堂眞紀
被告 ミナミ商事株式会社右代表者代表取締役 B
被告B右被告両名訴訟代理人弁護士 岡田和義
被告C
被告D
被告E
被告F
被告G
被告H
被告I右被告七名訴訟代理人弁護士 木村五郎
同 臼田和雄
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2000/11/14
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 被告ミナミ商事株式会社、被告B及び被告Cは、原告に対し、連帯して、金一一○万七七六〇円及び別紙遅延損害金目録1記載の金員を支払え。
二 被告ミナミ商事株式会社、被告B及び被告Dは、原告に対し、連帯して、金二一三万八六一〇円及び別紙遅延損害金目録2記載の金員を支払え。
三 被告ミナミ商事株式会社、被告B及び被告Eは、原告に対し、連帯して、金一一八二万五四四〇円及び別紙遅延損害金目録3記載の金員を支払え。
四 被告ミナミ商事株式会社、被告B及び被告Fは、原告に対し、連帯して、金二七六万五七一〇円及び別紙遅延損害金目録4記載の金員を支払え。
五 被告ミナミ商事株式会社、被告B及び被告Gは、原告に対し、連帯して、金一三六万九四三〇円及び別紙遅延損害金目録5記載の金員を支払え。
六 被告ミナミ商事株式会社、被告B及び被告Hは、原告に対し、連帯して、金二〇〇万六三一〇円及び別紙遅延損害金目録6記載の金員を支払え。
七 被告ミナミ商事株式会社、被告B及び被告Iは、原告に対し、連帯して、金三二二万二二三〇円及び別紙遅延損害金目録7記載の金員を支払え。
八 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
九 訴訟費用は、被告らの負担とする。
一〇 この判決は、第一ないし第七項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
一 被告ミナミ商事株式会社、被告B及び被告Cは、原告に対し、連帯して、金一二○万九三一二円及び別紙遅延損害金目録1記載の金員を支払え。
二 被告ミナミ商事株式会社、被告B及び被告Dは、原告に対し、連帯して、金二三三万八三三二円及び別紙遅延損害金目録2記載の金員を支払え。
三 被告ミナミ商事株式会社、被告B及び被告Eは、原告に対し、連帯して、金一二九○万六五二八円及び別紙遅延損害金目録3記載の金員を支払え。
四 被告ミナミ商事株式会社、被告B及び被告Fは、原告に対し、連帯して、金三○一万八八五二円及び別紙遅延損害金目録4記載の金員を支払え。
五 被告ミナミ商事株式会社、被告B及び被告Gは、原告に対し、連帯して、金一四九万九三一六円及び別紙遅延損害金目録5記載の金員を支払え。
六 被告ミナミ商事株式会社、被告B及び被告Hは、原告に対し、連帯して、金二一九万一五七二円及び別紙遅延損害金目録6記載の金員を支払え。
七 被告ミナミ商事株式会社、被告B及び被告Iは、原告に対し、連帯して、金三五一万八六七六円及び別紙遅延損害金目録7記載の金員を支払え。
事案の概要
本件は、音楽著作権の管理等を目的とする原告が、被告らに対し、被告らが経営するカラオケ歌唱室において、原告の許諾を得ることなく、カラオケ関連機器を使って原告の管理する音楽著作物を再生して客に歌唱させる営業を行い、右著作権を侵害したとして、損害賠償等を請求している事案である。
一 争いのない事実 1 当事者等 (一) 原告は、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」に基づく許可を受けた唯一の音楽著作権仲介団体であり、内外国の音楽著作物の著作権者からその著作権ないし支分権(演奏権、録音権、上映権等)の移転を受けるなどしてこれを管理し(内国著作物についてはその著作権者から著作権信託契約約款により、外国著作物については、著作権条約に加盟する諸外国の著作権仲介団体との相互管理契約による。)、国内のラジオ・テレビの放送事業者をはじめレコード、映画、出版、
興行、社交場、有線放送等各種の分野における音楽の利用者に対して音楽著作物の利用を許諾し、利用者から著作物使用料を徴収するとともに、これを内外の著作権者に分配することを主たる目的とする社団法人である。
(二) 被告ミナミ商事株式会社(以下「被告ミナミ商事」という。)は、昭和四七年九月一二日設立された貸ビル業等を目的とする株式会社である。
(三) 被告Bは、後記カラオケ歌唱室の営業期間において、被告ミナミ商事の代表取締役の地位にあり、同被告の業務を統括していたものである。
(四) 被告Eは被告Bの妻であり、被告ミナミ商事の監査役である。
被告Gは被告Eと被告Bの子であり、被告ミナミ商事の取締役である。
被告Iは被告Eの妹である。
被告Hは被告Iの子である。
2 本件各カラオケ歌唱室について (一) 被告ミナミ商事は、次の(1)ないし(4)の各店舗において、その開店日に先だって、カラオケ歌唱室営業のため必要な内装及び諸設備、すなわち、通信カラオケ装置、レーザーディスクカラオケ装置等のカラオケ関連機器、各室毎の防音工事、受付設備等を設置し、カラオケ歌唱室用の店舗として営業ができるように準備した。
(1) カラオケルームサザン(以下「本件サザン店」という。) 所在地 大阪市<以下略> 開店日 平成五年一二月二日 (2) カラオケルームサザンU(以下「本件サザンU店」という。) 所在地 大阪市<以下略> 開店日 平成六年二月二五日 (3) カラオケルームサザンV(以下「本件サザンV店」という。) 所在地 守口市<以下略> 開店日 平成七年一○月六日 (4) カラオケルームサザン長居(以下「本件サザン長居店」という。) 所在地 大阪市<以下略> 開店日 平成八年六月二二日 (以下、本件サザン店、本件サザンU店、本件サザンV店及び本件サザン長居店を合わせて「本件各店舗」という。) (二) 本件各店舗の歌唱室の定員及びカラオケの使用状況等 (1) 本件サザン店には、通信カラオケ装置及びレーザーディスクカラオケ装置によるカラオケ歌唱に使用される歌唱室が、一二室設置されている。
うち定員三名面積六平方メートルまでの歌唱室が一室、うち定員一○名までの歌唱室が七室、うち定員三○名までの歌唱室が四室あった。
(2) 本件サザンU店には、通信カラオケ装置及びレーザーディスクカラオケ装置によるカラオケ歌唱に使用される歌唱室が、一六室設置されている。
うち定員一〇名までの歌唱室が一〇室、うち定員三〇名までの歌唱室が六室あった。
(3) 本件サザンV店には、通信カラオケ装置及びレーザーディスクカラオケ装置によるカラオケ歌唱に使用される歌唱室が、一三室設置されている。
うち定員一○名までの歌唱室が一一室、うち定員三○名までの歌唱室が二室あった。
(4) 本件サザン長居店には、通信カラオケ装置及びレーザーディスクカラオケ装置によるカラオケ歌唱に使用される歌唱室が、一三室設置されている。
一三室とも、定員一○名までの歌唱室であった。
(5) そして、本件各店舗には、カラオケ関連機器一式、すなわち、レーザーディスク、レーザーディスクプレーヤー、通信カラオケ装置一式(受信・再生・配信装置)、リモコン装置等が、そのうち各歌唱室にはアンプ、コマンダー、モニターテレビ、マイク、スピーカー等が設置され、従業員らが来店した客をカラオケ関連機器を設置した各歌唱室に案内し、飲食を提供するとともに前記カラオケ関連機器を操作させ、原告の管理する音楽著作物(以下「管理著作物」という。)を再生し、また、伴奏音楽に合わせて客に歌唱させていた。なお、右管理著作物の使用について、原告の許諾を得ていない。
3 本件各店舗の経営名義について(なお、被告らは、次の(一)ないし(四)記載の経営名義人のみが本件各店舗を経営していた旨主張するのに対し、原告は、右経営名義人に加え、後記のとおり被告ミナミ商事及び被告Bも共同経営者である旨主張している。) (一) 本件サザン店の経営名義の推移は次のとおりである。
平成五年一二月二日〜平成八年二月二五日 被告I 平成八年二月二六日〜平成九年六月九日 被告C 平成九年六月一〇日〜平成一〇年八月一〇日 被告D 平成一〇年八月一一日〜平成一一年五月三〇日 被告E (二) 本件サザンU店の経営名義の推移は次のとおりである。
平成六年二月二五日〜平成八年二月二五日 被告E 平成八年二月二六日〜平成九年一二月二四日 被告F 平成九年一二月二五日〜平成一一年五月三〇日 被告E (三) 本件サザンV店の経営名義の推移は次のとおりである。
平成七年一〇月六日〜平成九年六月一〇日 被告G 平成九年六月一一日〜平成一〇年八月一〇日 被告H 平成一〇年八月一一日〜平成一一年五月三〇日 被告E (四) 本件サザン長居店の経営名義の推移は次のとおりである。
平成八年六月二二日〜平成九年一一月三〇日 被告I 平成九年一二月一日〜平成一一年五月二三日 被告E 二 争点 1 被告らは、本件各店舗におけるカラオケ無断使用の責任を負うか。
2 損害の額 三 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告らは、本件各店舗におけるカラオケ無断使用の責任を負うか。) 〔原告の主張〕 (一) 原告の許諾を受けることなく、カラオケ関連機器を使用して、管理著作物であるカラオケ伴奏音楽を公に再生すること及び管理著作物を公に歌唱することは、著作権の支分権の一つである演奏権を侵害する(著作権法22条)。また、
原告の許諾を受けることなく、レーザーディスクカラオケにより、録画した映画の上映とともに管理著作物たる歌詞を示し、管理著作物たる伴奏音楽を再生することは、著作権の支分権の一つである上映権を侵害する(平成一一年法律第七七号による改正前の著作権法2条1項18号26条2項。現行著作権法2条1項17号
22条の2)。上映の際に歌唱することも、演奏権を侵害するものである。
本件各店舗のようなカラオケ歌唱室における管理著作物の再生(演奏・上映)はもちろん、客がカラオケ関連機器を使って歌唱する場合についても、当該音楽著作物の利用主体は、その経営者である。
(二) 被告C、同D、同E、同F、同G、同H及び同Iは、前記一、3記載の経営に関与した各期間において、管理著作物の著作権を侵害したから、民法709条の不法行為責任を負う。また、同被告らは、管理著作物を使用するには、原告の許諾を得て著作物使用料規程所定の使用料を支払わなければならないのに、これを知りながら、許諾を得ることなく管理著作物を使用し、使用料の支払を免れて同額の利益を利得したから、民法703条704条の不当利得返還義務を負う。
(三) 被告ミナミ商事及びその代表取締役の被告Bは、次の事実からすれば、本件各店舗の経営者と同視できるもので、前記(二)で掲記した各被告と本件各店舗を共同経営していたといえる。
(1) 被告ミナミ商事及び被告B以外の被告らは、いずれも被告Bの親族かつ役員や、親族の知人であって、被告ミナミ商事と極めて密接な関係にある。
(2) 被告ミナミ商事と名義人との間の賃貸借契約書には、被告ミナミ商事が名義人の同意なしに店舗の鍵を取り替える権利があることや、被告ミナミ商事による営業のため資金援助をすることを規定しているものがある。
(3) 被告ミナミ商事は、本件各店舗の売上金を集金、管理し、立替金の名目で本件各店舗の仕入代金等の支払を行うとともに、立替金として支払った本件各店舗の仕入代金と家賃及びリース代等を合計し、売上金では不足する部分については各経営名義人に対する貸付金又は短期貸付金として記帳処理していた。
(4) 原告が本件各店舗のカラオケ使用に伴う管理著作物利用許諾契約の締結を求めて交渉した際、これに応対したのは被告ミナミ商事であって、その余の被告ら七名が応対したことはない。
(5) 本件各店舗は、「サザン」という共通の屋号を使用している上、経営名義人がしばしば変更しているにもかかわらず、変更時においても休業することがなかった。
(6) 被告ミナミ商事は、前記のとおり、本件各店舗において、カラオケ歌唱室営業のため必要な内装及び諸設備、すなわち、通信カラオケ装置、レーザーディスクカラオケ装置等のカラオケ関連機器、各室毎の防音工事、受付設備等を設置し、カラオケ歌唱室用の店舗として営業ができるように準備した。
(四) したがって、被告ミナミ商事は、原告に対し、本件各店舗をカラオケ歌唱室として開設しながら、原告の許諾を得ることなく、無断演奏により、原告の管理著作物の著作権を侵害し、あるいは、名義人らによる侵害を放置したから、民法709条の不法行為責任を負い、また、著作物使用料の支払を免れて同額の利益を利得したから、民法703条704条の不当利得返還義務を負う。
(五) 被告Bは、本件各店舗の業務に関し、原告の管理著作物を侵害したことによる民法709条の責任を負い、また、被告ミナミ商事の代表取締役として業務執行をなすべき義務があるところ、悪意又は重大な過失により原告の管理著作物を侵害したことによる商法266条の3の責任を負う。
〔被告らの主張〕 (一) 被告C、同D、同E、同F、同G、同H及び同Iが前記一、3記載の期間に本件各店舗を経営していたことは認めるが、原告のその余主張は争う。
(二) 被告ミナミ商事は、本件各店舗を賃貸しているだけであり、被告ミナミ商事及び被告Bは、カラオケ歌唱室の経営者ではなく、また、賃借人らに経営させているものでもない。
2 争点2(損害の額) 〔原告の主張〕 (一) 原告は、被告らが本件各店舗において原告の許諾を得ることなくカラオケ関連機器を使って管理著作物を演奏、上映し、原告の著作権を侵害したことにより、少なくとも使用料相当額の損害を被った。
(二) 右損害額の算定の基礎となる著作物の使用料率は、次のとおりである。
(1) 平成九年八月一〇日までは、昭和五九年六月一日認可の著作物使用料規程第二章第二節演奏等3の「演奏会以外の催物における演奏(7)その他の演奏」の規定に基づき定められた「カラオケ歌唱室の使用料率表」により、ビデオカラオケによる使用の場合のカラオケ歌唱室の使用料は、以下の割合により算出した金額に消費税相当分(平成九年三月まで三パーセント、平成九年四月以降五パーセント)を加算した額である。
一部屋の定員が一〇名までの場合 一部屋月額 四〇〇〇円 一部屋の定員が一〇名を超え三〇名までの場合 一部屋月額 八〇〇〇円 なお、定員三名までで、かつ一部屋の面積が六平方メートル未満の場合の使用料は、一部屋の定員が一〇名までの場合の八〇パーセントである。
(2) 平成九年八月一一日、文化庁長官は、著作物使用料規程の一部変更を認可し、同日、施行された。同規程第二章第二節演奏等4「カラオケ施設における演奏等(1)」により、カラオケ歌唱室における同日以降の著作物使用料は、以下の割合により算出した金額に消費税相当額を加算した額である。
一部屋の定員が一〇名までの場合 一部屋月額 九〇〇〇円 一部屋の定員が一〇名を超え三〇名までの場合 一部屋月額一万八〇〇〇円 なお、定員三名までで、かつ一部屋の面積が六平方メートル未満の場合の減額扱いは、廃止された。
(三) 本件各店舗の歌唱室の定員及びカラオケの使用状況等は、前記一、
2、(二)記載のとおりであり、これに基づく各時期における月額使用料は、別紙使用料算定表記載のとおりである。
(四) そうすると、原告が被った使用料相当損害金は、別紙期間別使用料一覧表記載のとおりであり、被告別の使用料損害金及びこれらに対応する弁護士費用相当損害金の額は別紙被告別請求額一覧表記載のとおりとなる。
(五) なお、被告らは、本件各店舗の歌唱室の一部を使用していたにすぎないから、使用室数をもとにして使用料を算定すべきであると主張する。
しかし、本件各店舗の歌唱室は、いずれもカラオケ装置が備え付けられ、稼働可能な状況にあり、繁忙時には、すべての歌唱室が利用されることは明らかであるし、被告ミナミ商事は、右設備のためにリース料、通信カラオケ、レーザーディスクなどの高額の利用経費を支払っていたはずであり、全く使用しない歌唱室にカラオケ装置を備え付けておくのは不合理である。
したがって、仮に稼働率が低かったとしても、そのことが使用料相当額を減額する理由とはならない。
〔被告らの主張〕 被告らは、本件各店舗の歌唱室の一部を使用していたものであり、その使用室数及びそれをもとにした原告に対する管理著作物使用料(月額)は次のとおりである。
本件サザン店 全 期 間 七室 二万八〇〇〇円 本件サザンU店 全 期 間 一〇室 四万〇〇〇〇円 本件サザンV店 平成七年一〇月六日〜平成九年六月一〇日 七室 二万八〇〇〇円 平成九年六月一一日〜平成一一年五月三〇日 八室 三万二〇〇〇円 本件サザン長居店 全 期 間 八室 三万二〇〇〇円
争点に対する判断
一 争点1について 1 本件各店舗におけるカラオケ営業の状況は、前記第二、一、2記載のとおりであり、右によれば、本件各店舗では、客は、指定された歌唱室内で、経営者が用意した特別のカラオケ用機器を使って、同じく経営者が用意した楽曲ソフトの範囲内で伴奏音楽を再生させるとともに歌唱を行うものであり、しかも右再生・歌唱は利用料金を支払う範囲で行うことができるにすぎない。
これらからすれば、客による右再生・歌唱は、本件各店舗の経営者の管理の下で行われているというべきであり、しかもカラオケ歌唱室としての営業の性質上、店舗経営者はそれによって直接的に営業上の利益を収めていることは明らかであるから、本件各店舗における伴奏音楽の再生及び歌唱の主体は、経営者であるというべきである。
そして、本件各店舗の経営者は、本件各店舗において、カラオケ機器を使って、管理著作物を公に再生及び歌唱することによって、原告の演奏権を侵害し(著作権法22条)、また、レーザーディスクカラオケにより、録画した映画の上映とともに歌詞をモニターテレビに映し伴奏音楽を再生することは、原告の上映権を侵害する(平成一一年法律第七七号による改正前の著作権法2条1項18号26条2項。現行著作権法2条1項17号22条の2)。
2 被告C、同D、同E、同F、同G、同H及び同Iが、前記第二、一、3記載の期間に経営名義人として本件各店舗の経営を行っていたことは当事者間に争いがない。
そして、証拠(甲八ないし一一)によれば、原告は、本件サザン店については平成五年一二月一三日に趣意書を発送し、本件サザンU店については平成六年三月七日に店舗に電話をして従業員に説明し、本件サザンV店については平成八年一月三〇日に趣意書を発送し、本件サザン長居店については平成八年八月二六日に店舗に赴き、カラオケの利用について管理著作物利用許諾契約を締結する必要がある旨通告し、その後も、平成一〇年二月ころまで、本件各店舗を原告職員が訪れたり、電話をかけたり、趣意書を再度送付するなどして、何度も交渉を重ねたことが認められ、右事実によれば、経営名義人である右被告らは、原告の管理著作物の無断使用について故意又は少なくとも過失があるものと認められる。
よって、右被告らは、右各期間における原告の管理著作物の無断使用に伴う不法行為責任(民法709条)を負い、原告に対し使用料相当損害金の賠償責任を負う。
3 被告ミナミ商事及び被告Bの責任について (一) 証拠(乙三、丙一ないし八、九の1、2、一〇ないし一六、一七の1、2、一八、一九の1、2、二〇ないし二三)によれば、被告ミナミ商事は、経営名義人との間で本件各店舗について賃貸借契約を締結し、経営名義人は、自己の名で本件各店舗における営業に関し、営業の種類を飲食店営業とする食品衛生法21条の許可を取得し、右営業について税務申告をしていることが認められ、右事実関係からすれば、被告ミナミ商事と各経営名義人との関係は、被告ミナミ商事は本件各店舗の賃貸人として関与し、営業許可や税務申告等の手続上の経営主体は、経営名義人であった事実が窺われる。
(二) しかしながら、被告ミナミ商事が、本件各店舗において、カラオケ歌唱室営業のため必要な内装及び諸設備、すなわち、通信カラオケ装置、レーザーディスクカラオケ装置等のカラオケ関連機器、各室毎の防音工事、受付設備等を設置し、カラオケ歌唱室用の店舗として営業ができるように準備したこと、被告E、同G、同I及び同Eは、被告Bの親族であり、被告E及び同Gは被告ミナミ商事の取締役ないし監査役であることは、前記第二、一記載のとおりであり、さらに、証拠(甲七ないし一一、一二の1ないし6、一三、一四、乙二、四ないし八、被告B兼被告ミナミ商事代表者)によれば、次の事実が認められる。
(1) 被告Bは、被告ミナミ商事の全株式を有し、代表取締役として貸ビル業等の経営に当たっていたが、平成五年ころ、経済状況の悪化に伴い空き店舗が増えてきたため、本件各店舗内にカラオケ関連機器を備え、いずれも「サザン」という共通の名称部分を有する店名を付し、右店名を用い右カラオケ関連機器を用いてカラオケ営業を行うことを前提として、本件各店舗を賃貸することとした。
(2) 被告ミナミ商事は、本件各店舗の電気代、ガス代、電話代、喫茶材料の仕入費用、求人広告費、カラオケ事業者に係るリース料等の費用等を支払い、これを本件各店舗のための立替金として会計処理する一方、月末等に帳簿上「立替分回収」の名目で本件各店舗の売上金から前記費用の返済を受けた旨の会計処理をし、本件各店舗の仕入代金、家賃、リース代等を合計し、売上金では不足する部分については各経営名義人に対する貸付金として計上するという処理を行っていた。
右処理により、本件各店舗の経営名義人は、本件各店舗に赤字が生じてもほとんどリスクを負担することはなかった。
(3) 被告ミナミ商事は、カラオケルーム「サザン」として本件各店舗の名称を付し、すべての店舗で使用できる共通のメンバーズカードを作成して配布するとともに、本件各店舗の広告、宣伝を一括して行っていた。
(4) 本件各店舗の経営名義人には、被告Bの親族以外の被告C、同D及び同Fも含まれているが、そうした親族以外の者の借り手が見つからない場合には、
被告Bの親族が本件各店舗の経営名義人になってその営業を継続し、休業しないようにしていた。
(5) 原告からミナミ商事に対して、本件各店舗のカラオケ営業について管理著作物の使用に関する契約を締結する必要がある旨申し入れた際、被告Bないし被告ミナミ商事の営業部長が対応し、経営名義人であるその余の被告らが対応したことはなかった。
(三) 右事実関係によれば、被告ミナミ商事は、本件各店舗に自らの費用によりカラオケ関連機器一式を設置した上、「サザン」という共通の屋号を付した同一グループのカラオケ店舗として開店させたばかりでなく、その開店後も、営業に伴う経費の大部分を支出し、本件各店舗の収支が赤字になった場合には帳簿上経営名義人に対する貸付金として会計処理し、実質的にはその損失部分を負担し、本件各店舗の売上げをのばすための広告、宣伝を一括して行うなど、賃貸人として経営名義人に建物を使用、収益させる義務を超えて、本件各店舗の経営に実質的に関与していたのであり、原告との管理著作物使用契約締結をめぐる交渉についても、各経営名義人に代わって一括して担当していたのであるから、本件各店舗の共同経営者と同視できるというべきである。
(四) また、被告Bは、被告ミナミ商事の全株式を有し、その代表者という立場で、本件各店舗でのカラオケ営業を企図し、本件各店舗の借り手が見つからない時等に自らの親族に経営名義人になってもらうなど、被告ミナミ商事が行った本件各店舗の経営管理について、その代表者として関与した上、前記2記載のとおり、原告から、管理著作物の使用に関する契約を締結する必要がある旨の申入れを受けたことを知りながら、右使用許諾契約を締結することなくカラオケ営業を継続したものであるから、本件各店舗におけるカラオケ営業に伴う原告の管理著作物の著作権侵害行為に加担したものというべきであり、また、右加担について、故意ないし過失があるものというべきである。
(五) よって、被告ミナミ商事及び被告Bは、本件各店舗における原告の管理著作物の無断使用に伴う不法行為責任(民法709条)を負い、原告に対し経営名義人と連帯して使用料相当損害金の賠償責任を負う。
二 争点2について 1 本件各店舗の歌唱室の定員及びカラオケの使用状況は、前記第二、一、2記載のとおりである。
被告らは、本件各店舗の歌唱室の一部を使用していたものであり、その使用室数をもとにして原告に対する管理著作物使用料を算定すべきであると主張するが、本件各店舗の歌唱室の設備は前記のとおりであり、その一部が使用できない状況にあったことを認めるに足りる証拠はなく、かえって、被告らは、右各設備のためのリース料、通信カラオケ、レーザーディスク等の使用経費を支払い、右各設備がいつでも稼働できるようにしていたこと、利用客が少ない時は使用しない歌唱室があるとしても、繁忙時には右各設備をすべて使用していたことが推認できる。
したがって、原告に対する管理著作物使用料を算定する際には、前記第二、一、2記載の各歌唱室すべてを対象にすべきであるから、被告らの右主張は理由がない。
2 証拠(甲三ないし五)及び弁論の全趣旨によれば、平成九年八月一一日に一部変更が認可される前の著作物使用料規程(昭和五九年六月一日一部変更認可以降のもの)においては、カラオケ歌唱室における著作物の使用料率を直接定めた規定は存在せず、同規程第2章第2節演奏等の3「演奏会以外の催物における演奏」の(7)「その他の演奏」の規定において「本規定の(1)の規定の範囲内において、使用状況等を参酌して使用料を決定する。」とされ、原告は、カラオケ歌唱室における音楽著作物の使用料徴収について、「カラオケ歌唱室の使用料率表(年間の包括的利用許諾契約を結ぶ場合)」と題する使用料率表を策定し、これに基づいて徴収していたことが認められるから、これを平成九年八月一一日一部変更認可にかかる著作物使用料率規程施行前の使用料相当損害額の算定の基礎となし得るものと解するのが相当である。
また、証拠(甲五)によれば、平成九年八月一一日一部変更認可にかかる著作物使用料規程には、その第二章第二節演奏等4「カラオケ施設における演奏等(1)」において、カラオケ歌唱室における著作物使用料が定められており、右規程は同日施行されたことが認められるから、同日以降は、右規程が使用料相当損害額の算定の基礎となるものということができる。
そこで、これらに基づいて、原告が通常徴収するビデオカラオケ使用によるカラオケ歌唱室における著作物の使用料についてみると、前掲各証拠によれば、
平成九年八月一〇日までは、一部屋当たり定員一〇名までの場合は月額四〇〇〇円、定員が一〇名を超え三〇名までの場合は月額八〇〇〇円、定員三名まででかつ一部屋の面積が六平方メートル未満の場合の使用料は一部屋の定員が一〇名までの場合の八〇パーセント(三二〇〇円)に消費税相当額を加算した額であったこと、
また、平成九年八月一一日以降は、一部屋当たりの定員が一〇名までの場合は月額九〇〇〇円、定員が一〇名を超え三〇名までの場合は月額一万八〇〇〇円に消費税相当額を加算した額であることが認められる。
3 そうすると、本件各店舗におけるカラオケ使用料は、別紙使用料算定表記載のとおり、各被告の経営期間に応じたカラオケ使用料は、別紙期間別使用料一覧表のとおり、各被告が原告に対して負うべき使用料相当損害金の合計額は、別紙被告別請求額一覧表の使用料相当額損害金欄記載のとおりとなる。
4 原告は、本件訴訟の提起、遂行を弁護士である原告訴訟代理人に依頼したが、本件事件の一切の事情を考慮すれば、弁護士費用相当損害金としては、
(一) 被告Cの経営に係る期間の損害賠償につき一〇万円 (二) 被告Dの経営に係る期間の損害賠償につき一九万円 (三) 被告Eの経営に係る期間の損害賠償につき一〇七万円 (四) 被告Fの経営に係る期間の損害賠償につき二五万円 (五) 被告Gの経営に係る期間の損害賠償につき一二万円 (六) 被告Hの経営に係る期間の損害賠償につき一八万円 (七) 被告Iの経営に係る期間の損害賠償につき二九万円 が相当である。
そして、被告ミナミ商事及び被告Bは、右弁護士費用相当損害金につき、
連帯して賠償する責任を負う。
5 以上によれば、原告の請求は、
(一) 被告ミナミ商事、被告B及び被告Cに対し、連帯して、金一一○万七七六〇円及び別紙遅延損害金目録1記載の金員を (二) 被告ミナミ商事、被告B及び被告Dに対し、連帯して、金二一三万八六一〇円及び別紙遅延損害金目録2記載の金員を (三) 被告ミナミ商事、被告B及び被告Eに対し、連帯して、金一一八二万五四四〇円及び別紙遅延損害金目録3記載の金員を (四) 被告ミナミ商事、被告B及び被告Fに対し、連帯して、金二七六万五七一〇円及び別紙遅延損害金目録4記載の金員を (五) 被告ミナミ商事、被告B及び被告Gに対し、連帯して、金一三六万九四三〇円及び別紙遅延損害金目録5記載の金員を (六) 被告ミナミ商事、被告B及び被告Hに対し、連帯して、金二〇〇万六三一〇円及び別紙遅延損害金目録6記載の金員を (七) 被告ミナミ商事、被告B及び被告Iに対し、連帯して、金三二二万二二三〇円及び別紙遅延損害金目録7記載の金員 の各支払を求める限度で理由がある。
三 よって、主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結の日 平成一二年九月一九日)
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 阿多麻子
裁判官 前田郁勝