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事件 令和 1年 (ネ) 1187号 著作権侵害差止等請求控訴事件

控訴人(一審原告) P1
被控訴人(一審被告) 株式会社 Bee
同訴訟代理人弁護士 佐藤進
裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 2019/11/07
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴人の当審における追加請求をいずれも棄却する。
3 当審における訴訟費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
控訴の趣旨
1 原判決中被控訴人に関する部分を取り消す。
2 被控訴人は,別紙被控訴人ビデオコンテンツ目録記載の著作物を複製し,頒 布してはならない。
3 被控訴人は,別紙被控訴人ビデオコンテンツ目録記載の著作物を廃棄せよ。
4 被控訴人は,控訴人に対し,200万円を支払え。
5 訴訟費用中当審において生じた部分及び原審において控訴人と被控訴人との 間に生じた部分は,すべて被控訴人の負担とする。
6 仮執行宣言
事案の概要
以下で使用する略称は,特に断らない限り,原判決の例による。
1 前提事実(争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に 認定できる事実。書証については特に明示しない限り枝番を含む。) (1) 当事者 ア 控訴人は,「●(省略)●」の屋号で映像制作等を業として営む者であ る(甲1〜3,24)。
イ 被控訴人は,映像企画制作及び映像演出並びにブライダル等プロデュー ス等を業とする会社である(甲4)。
エフ・ジェイホテルズ(元ジー・エイチ福岡株式会社)は,福岡市にお いて本件ホテル(グランドハイアット福岡)を経営している。
被控訴人は,平成20年12月8日,エフ・ジェイホテルズから,本件 ホテルで開催される婚礼等のビデオ撮影等について業務委託を受け(甲 9),遅くとも平成26年11月29日以降,本件ホテルで開催される挙 式及び披露宴のビデオ撮影を控訴人に委託してきた。
(2) 挙式及び披露宴のビデオ撮影及び編集等 ア 控訴人は,平成26年11月29日に本件ホテルで開催された原審被告 P2及び同P3の挙式及び披露宴,並びに平成27年4月18日に本件ホ テルで開催された原審被告P4及び同P5の挙式及び披露宴(以下,これ らの原審被告4名を「原審被告P2ら」という。)について,被控訴人の 委託に基づきビデオ撮影し,撮影した映像のデータ(原告撮影ビデオ:原 判決別紙被告らビデオコンテンツ目録記載3のうち「原告が被告ビーに寄 託した被告P2及び被告P4に関する撮影著作物」がこれに当たり,別紙 被控訴人ビデオコンテンツ目録記載3がこれに当たる。)を被控訴人に納 品した。
イ 被控訴人は,控訴人から納品された映像のデータ(原告撮影ビデオ)を 編集するなどして,原判決別紙被告らビデオコンテンツ目録記載1及び2 の「記録ビデオ」(本件記録ビデオ。原告撮影ビデオと併せて「本件ビデ オ」という。)として完成させて,エフ・ジェイホテルズの委託の下,原 審被告P2らに対してそれぞれの記録ビデオ複製物を納品した。
2 控訴人の請求と訴訟の経過 控訴人は,自己が原判決別紙被告らビデオコンテンツ目録記載の著作物に ついて著作権及び著作者人格権を有しているとした上で,被控訴人及び原審 被告P2らがこれを複製,頒布するおそれがあると主張して, 被控訴人及び 原審被告P2らに対し,著作権(複製権,頒布権)及び著作者人格権(同一 性保持権,氏名表示権,公表権)に基づき,@ 同目録記載の著作物の複製, 頒布の差止め(著作権法112条1項),A 同目録記載の著作物の廃棄(同 条2項)を求めていた。
原審は,控訴人の請求をいずれも棄却した。
控訴人は,原判決中被控訴人に関する部分 を不服として,本件控訴を提起 した(原審被告P2らに関する部分は確定した。)。
控訴人は,当審において,著作物の複製,頒布の差止請求,著作物の廃棄 請求の対象を別紙被控訴人ビデオコンテンツ目録記載の著作物 とする(原判 決別紙被告らビデオコンテンツ目録記載 2について,平成27年4月18日 に行われたP4及びP5の挙式及び披露宴のために制作された「オープニン グムービー」,「プロフィールムービー」を追加 し,同目録記載3について, 「収録された管理著作物」を削除している。 )とともに,不法行為(著作権 侵害,著作者人格権侵害)に基づく損害賠償請求(慰謝料200万円)を追 加した。
3 争点(当審追加請求に関するものを除く。以下同じ。)(1) 著作権侵害関係 ア 控訴人が本件ビデオの著作権を有するか (ア) 控訴人は,被控訴人に対し, 原告撮影ビデオの著作権を譲渡したか (争点1) (イ) 被控訴人は,著作権法29条1項により本件ビデオの著作権を取得 したか(争点2) イ 被控訴人による本件ビデオの複製について控訴人が許諾したか(争点3) ウ 被控訴人及び原審被告P2らが本件ビデオを複製,頒布するおそれがあ るか(争点4)(2) 著作者人格権侵害関係 著作者人格権侵害のおそれの有無(争点5)4 争点に関する当事者の主張 当審における控訴人の主張を 後記5に加えるほか,原判決「事実及び理由」 第3の1から5まで(原判決3頁23行目から7頁21行目まで。ただし, 原判決6頁22行目から26行目まで及び7頁9行目から12行目までを除 く。)に記載のとおりであるから,これを引用する。
5 当審における控訴人の主張(1) 争点2(被控訴人は,著作権法29条1項により本件ビデオの著作権を取 得したか)について 原告撮影ビデオの「映画製作者」は控訴人であり,被控訴人ではない。し たがって,被控訴人は,著作権法29条1項により本件ビデオの著作権を取 得していない。
ア 被控訴人は,映画の著作物を製作する意思を有していないこと 被控訴人は,ビデオの内容を最終的に決定していない。控訴人が,新郎 新婦や関係者と打合せをして,当日の事情を踏まえ,映画の著作物を製作 している。すべての裁量は控訴人にあった。
また,控訴人は,原告撮影ビデオについて,最終的なプログラムの脚本 を書いた上で,製作を行った。映画の著作物の製作は,思い付きで行うも のではなく,全ての段取りは脚本に集約されている。
イ 被控訴人は,映画の著作物の製作に関する法律上の権利義務が帰属する 主体となる者とはいえないこと エフ・ジェイホテルズと被控訴人との委託契約は,あくまでも当事者間 における契約にすぎず,最終的な納品義務が被控訴人にあることを意味す るにすぎない。したがって,著作権法上の「映画製作者」の認定において 特段意味を有する事実とはいえない。
ウ 被控訴人は,映画の著作物の製作に関する経済的な収入・支出の主体と なる者とはいえないこと 控訴人は,映画の著作物の製作の目的を達成するために,必要な設備投 資を行い,またそれら機材を購入して保有し,それらを利用して映画の著 作物を製作した。したがって,経済的な収入・支出の主体は控訴人という べきである。
エ 音楽著作権料に関する支払の状況も勘案すべきであること 著作権法2条1項10号の「発意と責任を有する者」とは,法律(著作 権法等)や契約を守って映画を製作する者に限られるというべきであると ころ,本件では,被控訴人は,音楽著作権料に関する契約上の義務を果た していない。
したがって,被控訴人は「発意と責任を有する者」に当たらない。
(2) 当審追加請求(損害賠償請求)について ア 被控訴人が本件記録ビデオを作成し,そのデータをDVDに記録した行 為は控訴人の著作権(複製権及び翻案権)を侵害するとともに,控訴人の 著作者人格権(同一性保持権,氏名表示権,公表権)を侵害する。
イ 被控訴人の上記行為は不法行為を構成する。控訴人の受けた財産的損害 及び精神的損害の額は,200万円を下らない。
当裁判所の判断
1 認定事実 次のとおり補正するほか,原判決「事実及び理由」第4の1(原判決7頁2 3行目から10頁1行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する (以下,上記引用にかかる認定事実を「認定事実(1)」などという。)。
(1) 原判決8頁8行目の「新郎新婦の依頼により」を「新郎新婦の依頼がある 場合は」に改める。
(2) 原判決8頁9,10行目の「エンドロール」を「エンドロール(当日の挙 式及び披露宴の映像をダイジェストにまとめたもの)」に改める。
(3) 原判決9頁25行目の「行使する」を「構成する」に改める。
(4) 原判決10頁1行目末尾の次に,改行の上,次のとおり加える。
「(8) 控訴人は,平成29年6月30日から同年9月26日までの間,日本 音楽著作権協会に対し,少なくとも,合計96万9092円を支払った(甲 86)。」2 被控訴人ビデオコンテンツ目録記載の著作物のうち,本件ビデオ(原告撮影ビデオ及び本件記録ビデオ)を除くものの著作権の帰属について(1) 被控訴人ビデオコンテンツ目録記載1及び2の著作物について 上記著作物のうち本件 記録ビデオを除いた「オープニングムービー 」, 「プロフィールビデオ」,「フォトムービー」及び「エンドロール」は,前 記1で引用した原判決「事実及び理由」第4の1(2)に記載のとおり,新郎 新婦の依頼があった場合に,控訴人が撮影するビデオとは別に,被控訴人が 製作し,披露宴で上映されるのであり,控訴人は,その作業に関与していな い(甲26)。
したがって,原審被告P2及び同P3の挙式及び披露宴に際して「フォト ムービー」及び「エンドロール」が製作されことが認められるものの,控訴 人はその著作者ではなく,著作権及び著作者人格権を有するものではない。
同様に,原審被告P4及び同P5の挙式及び披露宴に際して「オープニン グムービー」,「プロフィールムービー」,「エンドロール」が製作された としても,控訴人は著作者ではなく,著作権及び著作者人格権を有するもの ではない(なお,原審被告P4及び同P5に係る「映像お申込み書」におい ては,「映像商品」欄は「当日エンディングムービー」の部分だけ○が記入 され,それ以外は空欄となっていること(文書提出命令申立てに係る疎甲1) からすると,「オープニングムービー」及び「プロフィールムービー」は製 作されていないことがうかがわれる。)。
(2) 被控訴人ビデオコンテンツ目録記載3の著作物について 上記著作物は,原告撮影ビデオをいうものであり,それ以外のものは含ま れない。原告撮影ビデオについての著作権の帰属については,本件記録ビデ オについての著作権の帰属とともに,後記3において,改めて検討する。
3 争点2(被控訴人は著作権法29条1項により本件ビデオの著作権を取得したか)について(1) 本件記録ビデオについて 当裁判所も,本件記録ビデオは,映画の著作物であるところ,その製作に 発意と責任を有する者は被控訴人であって,被控訴人が「映画製作者」に当 たるところ,控訴人は被控訴人に対して本件記録ビデオの製作に参加するこ とを約束したということができるので,著作権法29条1項により本件記録 ビデオの著作権は被控訴人に帰属し,控訴人は著作権を有しないと判断する。
その理由は,次のとおり補正するほか, 原判決「事実及び理由」第4の3 (原判決10頁23行目から13頁9行目まで)に記載のとおりであるから, これを引用する。
(原判決の補正) ア 原判決11頁6行目の「認められるから,」から9行目末尾までを「認 められる。」に改める。
イ 原判決11頁25行目の「納品する」の次に「法律上の」を加える。
ウ 原判決12頁6行目から7行目の「編集も行っているから」を「編集を 行う場合もあったのであるから」に改める。
エ 原判決12頁12行目から13行目の「支払をしていないが」を「支払 をしておらず,むしろ控訴人が合計96万9092円を支払っているが」 に改める。
(2) 原告撮影ビデオについて 前記認定のとおり,控訴人は,被控訴人から委託を受けて原審被告P2ら の各挙式及び披露宴のビデオ撮影を行い(認定事実(4)),控訴人はそれを 記録した媒体を被控訴人に納品した。控訴人が行った上記ビデオ撮影は,被 控訴人からの委託に基づき,本件記録ビデオ制作のためだけに行ったもので, それ以外の用途は予定されておらず,控訴人は,被控訴人による本件記録ビ デオの製作に参加することを約束して上記撮影を行ったとみることができる。
その後,被控訴人は,原告撮影ビデオを編集して本件記録ビデオを完成さ せ,DVDに記録したものを 新郎新婦 に納品するに至っている(認定事実 (5))。
そうすると,本件記録ビデオのみならず,原告撮影ビデオの著作権も,著 作権法29条1項により被控訴人に帰属し,控訴人は著作権を有しないもの と解するのが相当である。
(3) 当審における控訴人の主張(1)について ア 前記(1)のとおり,本件では,婚礼ビデオを適切に製作し,納品する法 律上の義務は被控訴人が負っていたこと,製作するビデオの内容を最終的 に決定していたのは被控訴人であったこと,被控訴人は撮影料と交通費を 控訴人に支払い,それ以外の製作費用も負担し,経済的な収入・支出の主 体となっていることからすると,被控訴人が「映画製作者」に当たるとい うべきである。
イ これに対し,控訴人は,ビデオ撮影に当たっては裁量を有しており,こ れに先立ち脚本も書いていた旨主張する(前記第2の5(1)ア)。
しかし,控訴人がビデオ撮影に当たって裁量を有し,また,これに先立 ち自ら脚本を書き,これに沿った進行がなされたとしても,被控訴人が映 画の著作物を製作する意思を有していたことが直ちに否定されるわけでは ない。控訴人の上記主張は,控訴人が原告撮影ビデオ著作者であること を基礎付けるものにとどまるというべきであり,前記判断を左右するもの ではない。
ウ また,控訴人は,エフ・ジェイホテルズと被控訴人との委託契約は「映 画製作者」の認定において重要でないと主張する(前記第2の5(1)イ)。
しかし,被控訴人は,エフ・ジェイホテルズとの委託契約のもとで新郎 新婦からビデオ製作の申込みを受け,最終的に新郎新婦に本件記録ビデオ のDVDを納品しているのであり,他方で,控訴人は,エフ・ジェイホテ ルズとも新郎新婦とも直接の契約関係に立たないのであるから,被控訴人 が著作物の製作に関する法律上の権利義務が帰属する主体であることは明 らかである。控訴人の上記主張は失当というべきである。
エ さらに,控訴人は,必要な設備投資を行うなどしているので,経済的な 収入・支出の主体は控訴人であると主張する(前記第2の5(1)ウ)。
なるほど,控訴人は,映像製作等を業として営む者であって,個々の撮 影に先立ち,相応の設備投資を行っていると考えられる。しかし,上記設 備投資は,本件記録ビデオの制作のためだけの支出とはいえず,また,被 控訴人から受け取るのは,撮影料(1件3万円)と交通費に過ぎない。こ れに対し,被控訴人は上記撮影料と交通費を含む経費を負担する一方,新 郎新婦から本件記録ビデオの代金を受け取っているのであるから,本件記 録ビデオについて,収入・支出の主体は被控訴人というべきであり,控訴 人の上記主張は採用することができない。
オ なお,控訴人は,被控訴人は音楽著作権料の支払を怠っているので, 「映画製作者」には当たらないとも主張する(前記第2の5(1)エ)。
しかし,音楽著作権料については,別途,権利者である日本音楽著作権 協会等との間で解決されるべき事柄である(なお,日本音楽著作権協会等 が被控訴人に対して金員の支払を請求し,訴訟を提起したことを認めるに 足りる証拠はない。)。控訴人の上記主張は,前記判断を左右するもので はない。
4 争点5(著作者人格権侵害のおそれの有無)について(1) 同一性保持権について 原告撮影ビデオについては,認定事実(1),(3)及び(5)からすると,控訴 人は,被控訴人がこれを適宜編集することを承諾していたと認められるから, 本件記録ビデオは控訴人の同一性保持権を侵害して製作されたものではない (なお,控訴人は,上記承諾は,被控訴人が音楽著作権料の不払をしないこ とが前提であった旨主張するが,音楽著作権料の問題は,別途,日本音楽著 作権協会等との間で解決されるべき事柄であって,上記判断を左右するもの ではない。)。また,本件記録ビデオについても,それが完成した後に,控 訴人の意に反する改変がされたことを認めるに足りる証拠はなく,今後その ようなおそれがあることを認めるに足りる証拠もない。
したがって,仮に被控訴人が本件記録ビデオを複製,頒布するとしても, 意に反する改変を行うことにはならないから,同一性保持権の侵害は生じな い。
(2) 氏名表示権について 氏名表示権は,著作物の「原作品」に,又は「その著作物の公衆への提供 若しくは提示に際し」,又は「その著作物を原著作物とする二次的著作物の 公衆への提供又は提示に際して」,著作者名を表示し又は表示しないことと する権利である(著作権法19条)ところ,控訴人は,本件記録ビデオが控 訴人の氏名を表示しないままで複製され,頒布されることが氏名表示権の侵 害に当たると主張しているものと解される。
しかし,被控訴人が,本件記録ビデオの製作を依頼した新郎新婦以外のた めに,本件記録ビデオを新たに複製し,頒布した事実を認める証拠はなく, 将来,そのようなことをするとは考え難い。
また,著作物又は二次的著作物の「公衆への提供又は提示」とは,特定多 数の者に提供又は提示することも含む(著作権法2条5項)が,上述のとお り,本件記録ビデオが顧客である新郎新婦の挙式及び披露宴の様子を収録し たものであることからすると,被控訴人が特定多数の者に対して本件記録ビ デオを複製し,頒布するおそれがあるとは認められない。
したがって,被控訴人が控訴人の氏名表示権を侵害するおそれがあるとは 認められない。
(3) 公表権について 上 記 (2)で 指 摘 し た 点 に 照 ら せ ば , 被 控 訴 人 が , 本 件 記 録 ビ デ オ を 公 表 (著作権法4条,3条)した事実を認める証拠はなく,将来,そのようなこ とをするとは考えがたい。したがって,被控訴人が控訴人の公表権を侵害す るおそれがあるとは認められない。
(4) まとめ 以上のとおりで,被控訴人が控訴人の著作者人格権を侵害するおそれがあ るとは認められない。
5 当審における控訴人の主張(2)(当審追加請求)について(1) 著作権(複製権及び翻案権)侵害に基づく請求について 前記3に説示したとおり,控訴人は,本件記録ビデオについても原告撮影 ビデオについても著作権を有していない。したがって,控訴人の著作権(複 製権及び翻案権)侵害に基づく請求は,前提を欠く。
(2) 著作者人格権(同一性保持権,氏名表示権,公表権)侵害に基づく請求に ついて 前記4(1)において説示のとおり,原告撮影ビデオについても,本件記録 ビデオについても,控訴人の意に反する改変がされたということはできない。
また,被控訴人が控訴人の氏名表示権公表権を侵害したことを認めるに 足りる証拠はない。
結論
以上によれば,控訴人の被控訴人に対する請求は,その余の点を判断するま でもなく理由がないからいずれも 棄却すべきところ,これと同旨の原判決は 相当であるから,本件控訴を棄却する とともに,当審追加請求をいずれも棄 却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官 倉地康弘
裁判官 三井教匡