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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成11ワ3635損害賠償請求事件 判例 特許権
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平成20ワ12703著作権侵害差止等請求事件 判例 特許権
平成13ワ12680損害賠償請求事件 判例 特許権
平成16ワ19816著作権侵害差止等請求事件 判例 特許権
関連ワード 著作物性 /  創作的表現 /  著作者 /  固定 /  アイデア /  美術工芸品 /  実用品 /  模様 /  図形の著作物 /  地図 /  登録 /  差止 /  損害賠償 / 
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事件 昭和 55年 (ワ) 2009号
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裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 1984/01/26
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 被告は、別紙目録(一)(二)記載の各カレンダーを製造し、販売し、頒布してはならない。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを二分し、それぞれを各自の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨1 被告は、原告に対し、金四七八万五〇〇〇円及び内金三四〇万円につき昭和五五年三月三〇日から、内金一三八万五〇〇〇円につき昭和五七年一〇月二〇日から各支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
2 主文第一項同旨。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 第一項に限り仮執行宣言。
二 請求の趣旨に対する答弁1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
当事者の主張
一 請求原因(著作権に基づく請求)1 原告は昭和四七年四月ころ、一〇〇年以上にわたつて曜日が一目でわかるというカラフルな万年カレンダー(甲第一、二号証、以下「本件カレンダー」という)を創案し、したがつて原告は本件カレンダーの著作者である。
2 原告が創作した本件カレンダーは各月の第一日目が日曜日、月曜日、火曜日、
水曜日、木曜日、金曜日、土曜日のいずれかの曜日から始まるかによつて各々の月を七種類に区分し、各月を予め規定された七種類の色彩で表示し(以下「表示物」という)、他方、過去、現在、未来の数十年から数百年にわたり各月を右の表示物を配置することによつて表現されたものである(甲第一、二号証参照)。
従前のこの種のカレンダーは各月毎に七曜表の文字と日付の数字がぎつしりと羅列されているだけであつた。しかし、本件カレンダーは比較的狭いスペースに数十年から数百年にわたる各暦月を色彩を配置することによつて美観構図の面でもすぐれた創作物となつており、美的要素による室内インテリアとしての機能を十分に帯有するものであるほか、その用途は広い。本件カレンダーは原告の思想、感情による創作的表現をもち、美術的範囲に属するものである。ちなみに本件カレンダーのようなものは過去に例がない。
3 被告は昭和五四年六月ころから別紙目録(一)記載のカレンダーを掲載した「だれでも使える実用小字典」(以下「実用小字典」と略す)を、昭和五五年一〇月ころから別紙目録(二)記載のカレンダーを掲載した「わが家の栞」を企画、製造、販売した。
4 被告の別紙目録(一)(二)記載の各カレンダーと本件カレンダーを対比すると、表示物の色彩の一部がわずかに異なつているものの構図、配置、対象年数(一九一七年から二〇八四年)、うるう年の表示の方法、各年度の配置の方法は同じであり、被告の前記行為は本件カレンダーの複製又は事情を知つての頒布にあたる。
5 被告代表者は、前記行為が原告の本件カレンダーについての著作権を侵害することを知り、又は過失により知らないで右行為をなしたのであるから、被告は原告に対し右行為によつて原告が蒙つた損害を賠償すべき義務がある。
6 損害(一) 財産的損害 三四八万五〇〇〇円(1) 被告は実用小字典を昭和五四年七月までに一二万部発行し、販売している。本件カレンダーの使用料は実用小字典の小売価額三五〇円の五パーセントをもつて相当とするから右小字典による財産的損害は次の計算式により二一〇万円である。
350×0.05×120,000=2,100,000(2) また、被告はコクヨ株式会社を通じて「わが家の栞」のスタンダード版とデラツクス版を発行した。
スタンダード版 デラツクス版昭和五五年一〇月 一万部同五六年七月 五〇〇〇部 二〇〇〇部同五七年一月 五〇〇〇部合計 二万部 二〇〇〇部そして本件カレンダーの使用料は「わが家の栞」の小売価額の五パーセントであり、「わが家の栞」による財産的損害は次の算式により合計一三八万五〇〇〇円となる。
スタンダード版 1,200×0.05×20,000=1,200,000 デラツクス版 1,850×0.05×2,000=185,000(3) したがつて財産的損害は合計三四八万五〇〇〇円となる。
(二) 慰藉料 一〇〇万円 本件カレンダーは原告の日頃の苦心、研究の集積によつてできあがつたものであり、被告の無断複製、無断使用によつて原告は甚大な精神的苦痛を蒙り、これを慰藉するには一〇〇万円が相当である。
(三) 弁護士費用 三〇万円 本件訴訟はその難度、手段、専門的知識等、弁護士に委任すべき事案であり、原告と原告代理人との間に認容額の約一割である三〇万円の弁護士費用を支払う旨約した。これは被告の本件不法行為と相当因果関係にある損害である。
よつて、原告は、被告に対し、損害金四七八万五〇〇〇円及び内金三四〇万円(請求原因6(一)(1)、(二)(三)の金額)につき不法行為の日の後で本件訴状送達の日の翌日である昭和五五年三月三〇日から、内金一三八万五〇〇〇円(請求原因6(一)(2)の金額)につき不法行為の日の後で訴状にかわる準備書面送達の日の翌日である昭和五七年一〇月二〇日から各支払ずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(実用新案権に基づく請求)1 原告は次の実用新案権(以下これを「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という)を有する。
考案の名称 カレンダー出願 昭和四七年四月六日(前特許出願日援用 実願昭五一ー三六二一五)公告 昭和五七年二月二五日(実公昭五七ー九八〇六)登録 第一四七三七〇二号実用新案登録請求の範囲「各月の第一日目が日曜日、月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、土曜日から始まる七欄の曜日欄と、この曜日欄に対応する標識体とからなる索引表と、暦年の一月から一二月にいたる各暦月と、この各暦月に上記標識体を一致した暦年月欄とからなるカレンダー。」2 本件考案の構成要件及び作用効果は次のとおりである。
(一) 構成要件 各月の第一日目が日曜日、月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、土曜日から始まる七欄の曜日欄と、この曜日欄に対応する標識体とからなる索引表と、暦年の一月から一二月にいたる各暦月と、この各暦月に上記標識体を一致した暦年月欄とからなるカレンダー。
(二) 作用効果(1) 本件カレンダーは比較的狭いスペース内に過去、現在、未来の数十年から数百年にわたる各暦年の各暦月における七曜と日付が簡単に判明できるように表示している。
(2) 本件カレンダーは比較的狭いスペースで足りるので、ノート、手帳等各種事務用品、文房具等にも組み込み記載できるし、単品として例えば壁掛けカレンダーとしても利用できる。
(3) 多彩、多様な色彩や模様、記号、写真などを使用可能としたのでカレンダー面が優美華麗であり装飾的美観を十分に具備している。
3 被告は、業として昭和五四年六月ころから別紙目録(一)記載のカレンダー(以下「イ号カレンダー」という)の掲載された「だれでも使える実用小字典」を、昭和五五年一〇月ごろから別紙目録(二)記載のカレンダー(以下「ロ号カレンダー」という)の掲載された「わが家の栞」を製造し、販売し、頒布している。
4 イ号、ロ号カレンダーと本件考案の構成要件を対比すると、イ号、ロ号カレンダーは本件考案の構成要件を充足し、作用効果も同一であるから本件考案の技術的範囲に属する。
5 被告は将来イ号、ロ号カレンダーを製造し、販売し、頒布するおそれがある。
よつて、原告は被告に対し、本件実用新案権に基づき、イ号、ロ号カレンダーの製造、販売、頒布の差止を求める。
二 請求原因に対する認否(著作権に基づく請求に対する認否)1 請求原因1の事実は否認する。
2 同2は争う。
3 同3の事実のうち、被告が実用小字典を販売したこと、わが家の栞を発行した点は認め、その余の事実は否認する。
4 同4、5は争う。
5 同6(一)(1)の事実のうち、被告が実用小字典を四万部販売した点は認め、その余の事実、主張は否認し、争う。
同6(一)(2)の事実のうち、被告がコクヨ株式会社を通じ、原告主張の数のわが家の栞を発行したことは認め、その余の事実、主張は否認し、争う。
同6(一)(3)、同6(二)(三)は争う。
(実用新案権に基づく請求に対する認否)1 請求原因1、2の各事実は認める。
2 同3の事実のうち被告が実用小字典を業として販売したこと、わが家の栞を業として製造販売したことは認め、その余の事実は否認する。
3 同4、5は争う。
(被告の主張)1 本件カレンダーに著作物性を有しない。
著作権法にいう著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」でなければならず、本件カレンダーのように実用品的なものは、著作物にあたらず、もつぱら実用新案権の対象となるものである。
また、本件カレンダーと構図、配置等の主要な特徴が一致している万年カレンダー(各月の表示が色彩ではなくアルフアベツト、星座等により表示されたもの)が従来より企画販売されており、本件カレンダーに新規性はなく、著作権法にいうところの創作的表現がなされているとはいえない。
2 実用小字典二八〇頁に占める本件カレンダーの割合はわずか二頁にすぎず、本件カレンダーの登載それ自体が商品の特徴となつている場合における使用料が五パーセントであることからすれば被告が販売した四万部の損害は次のとおり算定すべきである。
350×5÷100×2÷280×40,000部=5,000円 そして、わが家の栞についても同様に計算すべきである。また、わが家の栞については原告は後記のとおり一括金五万円でナカバヤシ株式会社に本件カレンダーを使用許諾しており、このことからみても原告の損害額は過大にすぎる。
三 抗弁1 原告は、本件カレンダーについての著作権をすでに上田印刷株式会社に譲渡ずみである。
2 被告が、わが家の栞に本件カレンダーを掲載することについては、初版を発行する際、将来にわたりわが家の栞に本件カレンダーを掲載することを含め一括使用料としてナカバヤシ株式会社を通じて五万円を支払い使用許諾を受けている。
3 原告は実用小字典への本件カレンダーの無断掲載による損害賠償金として、共同不法行為者である日新株式会社の破産手続における配当金として三四万円を受領しており、右金額は本件損害賠償に充当されるべきである。
四 抗弁に対する認否1 抗弁1の事実は否認する。
2 同2の事実のうち、原告がナカバヤシ株式会社から一定金額を使用料として受領している点は認め、その余の事実は否認する。
右金員はナカバヤシ株式会社がわが家の栞を特定部数印刷発行するものに限られ、
その後のものを含まない。
3 同3の事実のうち日新株式会社の破産手続の配当金として一七万円を受領したことは認め、その余は争う。
証拠(省略)
理 由
著作権に基づく請求について
一 原告本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第一、二号証、成立に争いのない甲第三号証、同第二三号証、同第二四号証、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
1 原告は昭和四七年ころカレンダーとは別に索引表を設けた万年カレンダーを考案し、本件カレンダー(甲第一、二号証)を創作し、昭和四七年四月六日本件カレンダーにつき特許出願し、右出願は実用新案に切り換えられ、その後本件実用新案として登録された。
2 従来のカレンダーとしては当年限りの各暦月と暦日、七曜の表示に止まるものが一般的であり、万年暦としては回転式、スライド式、或いは複雑な換算表や計算表を用いたり、各月毎に七曜表の文字と日付の数字をぎつしり羅列したものがあつたが、本件カレンダーのような索引表を設け色彩で分類した万年カレンダーはなかつた(なお、証人【A】は、乙第一号証のようなカレンダーとは別に索引表を設けアルフアベツトで分類した万年カレンダー或いは星座による分類の万年カレンダーを昭和四六年以前に色々見ている旨証言しているが、乙第一号証は昭和四八年八月一日初版発行の本の中に挿入されており右証言を裏付ける証拠とはなりえず、他に右証言を客観的に裏付ける証拠はない以上右証言を直ちに採用することはできない。)。
3 本件カレンダーは、甲第一号証が最上段に「numberless COLOR CALENDAR 1917〜2084」、中段に万年暦、下段に索引表を設ける構成になつており、右索引表は「カレンダーの見方(知りたい年月日即ち年号(横の数字)と月(上欄の数字)の交点の色を下のカレンダー(数字が印刷されたもの)の色にあわせて見て下さい。)」の文字の下に赤色、橙色、黄色、緑色、青色、藍色、紫色に塗られた各月の第一日目が日曜日、月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、土曜日から始まる七つの月を設けており、前記万年暦は、左欄に一九一七年から二〇〇〇年までを二八年ごとに三列に配し(ただし、一部昭和の表示を併記し、うるう年には特別な記号を付している)、右欄にも同様に二〇〇一年から二〇八四年を三列に配し、中央上段に一月から一二月までを表示し、年を横軸とし、月を縦軸とし、その交差する所に索引表と同じ色で塗られた長方形を配しており、甲第二号証はカレンダーの左欄に大文字で「色でみるふしぎなカラーカレンダー」その右横に小文字で「過去・未来にわたつて168年間つかえるカレンダーです。楽しかつた思い出や将来のご計画などにいつまでもご愛用ください。」と表示し、その下に各祝日を記載し、カレンダーの中央に甲第一号証と同じ万年暦を表示し、その下に「カレンダーのみかた 知りたい年号(横の文字)と月(上段の数字)の変わる色をさがし、右側にあるその色のついたカレンダーを見ます。たとえば、あなたの誕生日が一九四五年(昭和二〇年)一月一日なら橙色の色のカレンダーを見ます。一日は月曜日です。」と表示し、更にカレンダーの右欄には甲第一号証と同じ索引表(ただし、カレンダーの見方を除く)を設けその下に各月の誕生石が記載されている。
4 被告のカレンダーは別紙目録(一)(二)記載のとおりであり、本件カレンダーとは索引表の色彩の一部や文字の一部が異なつているものの、万年暦の構図、対象年数、うるう年の表示の方法は同一である。
二 そこで、本件カレンダーの著作物性について判断する(以下この項中「法」とあるのは著作権法をいう。)。
1 著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(法2条1項1号)が本件カレンダーが文芸或いは音楽の範囲に属しないことは明らかであるからまず美術の著作物にあたるか否かについて検討するに(原告は美術の範囲に属すると主張している)、
法所定の美術の著作物とは純粋美術の作品や一品製作でつくられる美術工芸品のような鑑賞の対象となるものに限られるものと解すべきところ、本件カレンダーは前認定のとおり原告が本件考案に基づく実施品として作成したものであつて、その考案の一要素である標識体に色彩を採用したことによつて、中段部分の長方形の配列が七色に彩られ、下段部分の七個の月暦が七色に塗り分けられることとなつて、一応看者に綺麗な感じを与えるけれども、とうてい純粋美術の作品といえるものではないし、その長方形の色分け(どの個所をどの色にするか)は右本件カレンダーが本件考案の実施品であり、その標識体に色彩を採用したことに因つて固定的に決まつてしまうものであるから、その美的構成において作者の美術的個性が発露される一品製作性を有するものでもなく、これを鑑賞の対象となる美術工芸品とも目することはできない。そうして、本件考案において必要とされる七個の標識体を色彩によつて区別しようとすれば、本件カレンダーの如き虹の七色に類する七色を採用することは何人も思いつくことであつて右色の選択にも何ら独創性を見出すことはできない。
してみれば、本件カレンダーは法にいう美術の著作物に属さないものといわざるを得ない。
2 次に学術の著作物に属するか否かについて検討するに(甲第九号証の原告の被告に対する警告書の中で原告は、本件カレンダーは法10条1項6号の「地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物」に該当する旨述べている)、本件カレンダーの万年暦と索引表の組合わせ、左右に暦年を配し、上段に各月を配し、その交点に長方形の色彩を配する万年暦の構成は、回転型式やスライド型式で既知のものとなつている万年暦の構想を、索引表と標識体の組合わせによるカレンダー方式に置き換えただけのものであつて(甲第二三号証。別紙実用新案公報一欄三〇行ないし二欄一九行参照)、右既知の万年暦の思想を伝達するものとして特に学術的な創作的表現といい得るかどうかには、それが実用新案法上、新規な考案として認め得るにしても、いまだちゆうちよを覚える。
のみならず、前記本件カレンダーの構成は、本件考案が実施された結果の具体的表現形態そのものであり、本件カレンダーは結局のところ本件考案の一実施例品というべきものである。そうだとすると、左様な考案を考案それ自体として実用化した作品は、たとえその考案が学術的なものであり、新規独創性を有するにせよ、単なる実用品であつて当該思想(考案)を「創作的に表現する」著作物には該らない(右考案の内容を説明するための記述や図表は学術思想の表現として著作物性を有するが、考案の実施である作品そのものには著作物性がない)ものと解すべきである。
3 以上のとおり本件カレンダーはこれを法10条1項四、六号のいずれの著作物にもあたらず、他に著作物性を見出すべき根拠はないといわざるを得ないのであるが、それは、本件において原告が著作物性を有すると主張するもの(請求原因1項及び2項前段、訴状請求の原因第一項及び第一回準備書面第一項に同じ)が、前認定の甲第一、二号証の構成要素の共通項として把握される万年カレンダーの構成及びその標識体に色彩を採用した着想(アイデア)そのものに帰着するところ、法はかかる着想(アイデア)そのものには著作物性を与えていないために他ならないからである。
したがつて、カレンダーとは別に索引表を設ける考案が実用新案権の対象となることは別として、本件カレンダーに著作物性を認めることはできない。
三 よつて、本件カレンダーが著作物であることを前提とする原告の請求はその前提を欠き理由がない。
実用新案権に基づく請求について
一 請求原因1の事実(原告が本件実用新案権を有すること)は当事者間に争いがなく、右争いのない本件考案の「実用新案登録請求の範囲」の記載、成立に争いのない甲第二三号証(本件考案の実用新案公報、別添実用新案公報に同じ)によれば、請求原因2の事実(本件考案の構成要件及び作用効果)を肯認することができる(この点は被告の認めるところである)。
二 被告がイ号カレンダーを業として販売したこと及びロ号カレンダーを業として製造販売したことは当事者間に争いがない。
そして本件全証拠によるも被告がイ号カレンダーを製造し、頒布していること、ロ号カレンダーを頒布している事実を認めるに足りない。
三 本件考案とイ号、ロ号カレンダーを対比すると、イ号、ロ号カレンダーは本件考案の構成要件を充足することは明らかであり、別紙目録(一)(二)記載の説明及び図面、成立に争いのない甲第三号証、同第二四号証によれば、イ号、ロ号カレンダーが本件考案の有する作用効果(請求原因2(二)参照)を有することが認められる。したがつてイ号、ロ号カレンダーは本件考案の技術的範囲に属する。
四 前記のとおり被告はイ号カレンダーを販売したこと、ロ号カレンダーを製造販売したものであり、被告は両カレンダーが本件考案の技術的範囲に属することを争つていることは弁論の全趣旨により明らかであるから、被告は将来イ号、ロ号カレンダーを製造し、販売し、頒布するおそれがあるということができる。
結論
よつて、原告の請求は、実用新案権に基づき被告のイ号、ロ号カレンダーの製造、販売、頒布の差止を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法89条92条を適用して主文のとおり判決する。
裁判官 潮久郎
裁判官 鎌田義勝
裁判官 徳永幸藏