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事件 平成 22年 (ネ) 10045号 著作権侵害差止等請求控訴事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2011/06/29
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成23年6月29日 判決言渡

平成22年(ネ)第10045号 著作権侵害差止等請求控訴事件

(原審・東京地方裁判所 平成18年(ワ)第5689号〔原審第1事件〕,第24

994号〔原審第2事件〕)

平成23年3月28日 口頭弁論終結

判 決



控訴人兼被控訴人(原審第1事件原告・第2事件被告)

コンセプト・テクノロジー株式会社



訴訟代理人弁護士 藤 田 謹 也

同 小 林 豊

同 鵜 澤 亜 紀 子

補 佐 人 弁 理 士 小 林 正 治

同 小 林 正 英



控訴人(原審第1事件被告) コ ム ネ ッ ト 株 式 会 社



訴訟代理人弁護士 平 野 和 宏




被控訴人(原審第2事件原告) アシュラ・インコーポレイテッド



訴訟代理人弁護士 山 口 孝 司

同 松 岡 伸 晃

同 籔 本 恭 明

1
同 堀 井 昭 暢

同 岩 崎 浩 平

同 鈴 木 麻 友

同 日 高 麗 衣

主 文

1 本件各控訴をいずれも棄却する。

2 控訴費用中,控訴人兼被控訴人コンセプト・テクノロジー株式会社と被控訴

人アシュラ・インコーポレイテッドとの間に生じたものは,控訴人兼被控訴人コン

セプト・テクノロジー株式会社の負担とし,控訴人コムネット株式会社と控訴人兼

被控訴人コンセプト・テクノロジー株式会社との間に生じたものは,控訴人コムネ

ット株式会社の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 控訴の趣旨

1 控訴人兼被控訴人コンセプト・テクノロジー株式会社の控訴の趣旨

(1) 原判決中,原審第2事件の控訴人兼被控訴人コンセプト・テクノロジー株式

会社の敗訴部分を取り消す。

(2) 被控訴人アシュラ・インコーポレイテッドの請求をいずれも棄却する。

(3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人アシュラ・インコーポレイテッドの負

担とする。

2 控訴人コムネット株式会社の控訴の趣旨

(1) 原判決中,原審第1事件の控訴人コムネット株式会社の敗訴部分を取り消す。

(2) 控訴人兼被控訴人コンセプト テクノロジー株式会社の請求をいずれも棄却


する。

(3) 訴訟費用は,第1,2審とも控訴人兼被控訴人コンセプト・テクノロジー株

式会社の負担とする。

第2 事案の概要及び当事者の主張等

2
1 事案の概要

控訴人兼被控訴人(原審第1事件原告・第2事件被告)コンセプト・テクノロジ

ー株式会社を「第1事件原告・第2事件被告コンセプト」と,控訴人(原審第1事

件被告)コムネット株式会社を「第1事件被告コムネット」と,被控訴人(原審第

2事件原告)アシュラ・インコーポレイテッドを「第2事件原告アシュラ」という。

原審において用いられた略語は,当審においてもそのまま用いる。

原審の経緯は,以下のとおりである。

〔原審第1事件〕

第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,CAD(コンピュータ支援デザイン)

ソフトウェア(32ビットアプリケーションソフトウェア)である Ashlar-Vellum

3.0 のプログラムに係る著作権及びマニュアル(使用説明書)の著作権並びに別紙

商標目録記載1,2の商標権(コンセプト商標1,2)に基づき,第1事件被告コ

ムネットが販売する製品(別紙「被告コムネット商品目録」記載1,2のソフトウ

ェア),マニュアルの販売等の差止め,廃棄等を求めるとともに,不法行為(著作

権侵害,商標権侵害)による損害賠償請求権に基づき,第1事件被告コムネットに

対し,第1事件原告・第2事件被告コンセプトに発生した損害の一部請求として,

1億2264万2447円の支払を求めた。

〔原審第2事件〕

第2事件原告アシュラが,CADソフトウェア(英語版の16ビットアプリケー

ションソフトウェア)である Ashlar-Vellum2.7 及びこれを32ビット化(32ビ

ットOS環境に搭載できるようにソースコードを書き換えること)する際に作成さ

れた Extensions のプログラムに係る著作権並びに別紙商標目録記載3の商標権(ア

シュラ商標)に基づき,第1事件原告・第2事件被告コンセプトが販売する製品(別

紙「原告コンセプト商品目録」記載1〜3のソフトウェア),マニュアルの販売等

差止め,廃棄等を求めるとともに,不法行為(著作権侵害,商標権侵害)による

損害賠償請求又は不当利得(第2事件原告アシュラの著作権,商標権の使用料相当

3
額の不当利得)返還請求として,第1事件原告・第2事件被告コンセプトに対し,

合計1億6186万9597円の支払を求めた。

〔原審の判断〕

原審は,第1事件について,第1事件被告コムネットは, Vellum3.0 のプログラ

ムに係る著作権及びマニュアル(使用説明書)の著作権を侵害しているとして,別

紙「被告コムネット商品目録」記載1,2のソフトウェアの複製等の差止め及び廃

棄,並びに454万5079円の損害賠償請求を認め,その余の請求を棄却した。

また,原審は,第2事件について,第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,

Vellum2.7 及び Extensions のプログラムに係る著作権,アシュラ商標の商標権を

侵害しているとして,別紙「原告コンセプト商品目録」記載3のCADソフトウェ

アの複製等の差止め及び廃棄,並びに5826万0284円の損害賠償請求を認め,

その余の請求を棄却した。これに対し,第1事件原告・第2事件被告コンセプト及

び第1事件被告コムネットは,原判決のうち各敗訴部分の取消しを求めて,本件控

訴を提起した。

2 争いのない事実等及び争点

原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」「2
, 前提となる事実」「3


争点」
(原判決8頁18行目ないし18頁20行目)記載のとおりであるから,これ

引用する。

3 争点に対する当事者の主張

次のとおり当審における主張を追加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の

「4 争点に関する当事者の主張」
(原判決18頁22行目ないし75頁5行目)記

載のとおりであるから,これを引用する。

(1) 争点(3)(Vellum3.0 コードのプログラム著作権の帰属)

[第1事件原告・第2事件被告コンセプト]

ア Vellum3.0 コードの制作経緯

(ア) ファモティクは,第2事件原告アシュラの依頼に基づき32ビット Vellum

4
3.0 コードを開発したのであるから,Vellum2.7 と Vellum3.0 との間で多数のディ

レクトリィ名(フォルダ名)が同一になるのは当然である。また,Vellum2.7 コー

ドと Vellum3.0 コードのソースコードを比較するためには,ソースコードが実行可

能か否かについての証明を行わなければならないから,単にソースコード対比表(乙

21の1〜7)により,Vellum3.0 が Vellum2.7 オリジナル英語版ソースコードに

依拠しているとはいえない。さらに,単独のモジュールで記述されたものが同一で

あるとしても,そのモジュールで記述されているすべてのコードと動作を実証しな

い限り,Vellum3.0 コードが Vellum2.7 コードを一部改変して作成されたものと認

めることはできない。

(イ) 第2事件原告アシュラは,1997年(平成9年)ころから,16ビット V

ellum2.7 オリジナル英語版ソースコードのプログラミング・メインテナンス作業を

行なっていなかった。ところが,丙15には,2002年(平成14年)以降,A

によって,
「Old−Vellum」との名称が付されて,新しい書き込みと32ビット Vel

lum3.0 からのコード移植がなされている上,全フォルダの更新日が,2006年(平

成18年)4月22日となっている。

また,丙15のソース・コードには,多くのファモティク作業者の署名(「FAM

OTIK」など)や32ビット関連の作業履歴及びコード(「Win32」「Build32」「D
, ,

LL32」など)が多数混在している(甲55によれば,Vellum2.7 コードに存在する

643ファイル中,143ファイル(約22%)のコードないし履歴に32ビット

を示す記述が存在する。。しかし,第2事件原告アシュラが Vellum2.7 コードの3


2ビット化を試みたことはない。

以上の事実によれば,丙15は,16 ビット Vellum2.7 オリジナル英語版ソース

コードではない。

(ウ) ファモティクは,所有していた漢字フォントを用いて,16 ビット Vellum2.

7 オリジナル英語版ソースコードを日本語化するため,漢字フォント文字導入ファ

イルである「KANJI.SHX」を組み込んだのであって,16 ビット Vellum2.7 オリジ

5
ナル英語版ソースコードには,「KANJI.SHX」が全く存在していなかった。とこ

ろが,丙15,38には,「KANJI.SHX」ファイルが存在し(甲122の1及び

2,甲123の1及び2),2byte コードに対応している上,両コード中に複数の

「6 MARCH 1993 FAMOTIK,LTD」との記載がある(甲123

の1及び2)。そうすると,丙15,38は,ファモティクが,1993年(平成

5年)ころ,漢字フォントの活用を目的として,16 ビット Vellum2.7 オリジナル

英語版ソースコードに漢字フォント文字導入ファイルを組み込んだ,16ビット V

ellum2.7 日本語版ソースコードであり,16 ビット Vellum2.7 オリジナル英語版ソ

ースコードではない。

これに対し,第2事件原告アシュラは,丙15について,日本語で入力しても表

示が意味不明な記号等に変換され,日本語その他の2byte 言語には完全に対応でき

ないが,英語には完全に対応するから英語版であると主張する。しかし,丙15は,

不完全ながらも日本語その他の2byte 言語に対応できるから,1byte 言語しか表示

することができない 16 ビット Vellum2.7 オリジナル英語版ソースコードではない。

イ 第1事件原告・第2事件被告コンセプトは Vellum3.0 コードの著作権を取得

したか

修正契約書(甲2)の条項2.によれば,第2事件原告アシュラがファモティク

に提供したソースコードは,Vellum2.7 のすべてのソースコードではなく,試作さ

れた,Surfaces(表面表現ライン),Rendering(色彩加工),Hidden Line Re

(陰線処理)
movable のモジュールに関するソースコードにすぎない。これに対し,

Vellum3.0 コードは,40万以上の行を持ち,16 ビット Vellum2.7 オリジナル英

語版ソースコードには含まれていない新規な機能(甲43に記載の各種機能)を備

え,それら新規な特徴が上記3つのモジュールの本質的な特徴に比してはるかに多

く,16 ビット Vellum2.7 オリジナル英語版ソースコードの創作性のある特徴部分

を感得し得ないほど独創性を備えたソースコードであるから,16 ビット Vellum2.

7 オリジナル英語版ソースコードに依拠するものではない。そうすると,Vellum3.

6
0 コードの著作権は,ファモティクから権利を承継した第1事件原告・第2事件被

告コンセプトが有している。

ウ 第1事件原告・第2事件被告コンセプトは Additions のプログラム著作権を

取得したか

第1事件被告コムネットは,Autoface を含む Additions すべてのプログラムをア

ルモニコスが単独又は共同で開発したと主張し,その根拠として,甲86〜89の

記載を挙げている。しかし,甲86〜89の書面は,Additions すべてのプログラ

ムについて記載されているものではない。三次元図形表現ソフトウェアである Aut

oface に関するコンピュータプログラムは,アルモニコスが開発し,ファモティク

により Vellum3.0 及びドラフトボード用に改変されたものであり,その改変された

コンピュータプログラム(二次的著作物)の著作権はファモティクに帰属する。本

件修正契約(甲2,甲18)及びソースコードライセンス契約(乙5の1,2)の

規定,並びに,当時アルモニコスの開発担当取締役であったBの確認書(甲22)

によれば,Vellum3.0 コードのうち,Additions のプログラム著作権はファモティ

クが取得したことは明らかである。第1事件被告コムネットの上記主張は失当であ

る。

[第1事件被告コムネット]

第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,甲86〜89の書面は Additions す

べてのプログラムについて記載されているものではなく,三次元図形表現ソフトウ

ェアである Autoface に関するコンピュータプログラムは,アルモニコスが開発し,

ファモティクにより Vellum3.0 及びドラフトボード用に改変されたものであり,そ

の改変されたコンピュータプログラム(二次的著作物)の著作権はファモティクに

帰属すると主張する。しかし,上記主張は,乙55のファイルログ情報(左上に「A

bout Vellum3D」と記載されたうえで,「Developed by Armonicos」と記載され,

Autoface だけでなく,Vellum3.0 全体をアルモニコスが開発した旨の記載になって

いる。)と整合しない。また,プログラム開発委託契約においては,開発者が著作者

7
であるため,委託者が著作権を取得するためには著作権を譲り受ける旨の契約がな

ければならないところ,アルモニコスがファモティクに Additions の著作権を譲渡

したことを証する契約は存在せず,ファモティクが Additions の著作権又はその持

分を取得することはない。

[第2事件原告アシュラ]

ア Vellum2.7 オリジナル英語版ソースコードは,Vellum2.14 コードをバージ

ョンアップしたものであるが,丙15は,丙17(Vellum2.14 コード)と,多く

のソースコード及びファイル構造が一致している(なお,Vellum3.0 コードも,丙

17(Vellum2.14 コード)と,多くのディレクトリ名,ファイル名及びソースコ

ードが一致している。)。また,Ontrack と題するCD−ROM(丙38)には,

Vellum2.7 オリジナル英語版ソースコードが記録されているが,ヘッダーのコメン

ト記載等のわずかな部分を除いて,丙15のソースコードと一致している。丙15

と Ontrack コードのヘッダーのコメント記載等が一部異なるのは,第2事件原告ア

シュラのAが,2002年(平成14年)2月7日ころ,Vellum コード(Ontrac

k コード)の改変を防止するため,Vellum コードに係る履歴をソースコード管理デ

ータベースに保存し,その作業を明示するためコメントの記載を変更したためであ

る。したがって,丙15は,Vellum2.7 オリジナル英語版ソースコードである。

イ これに対し,第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,@丙15には,3

2ビットコードが22%存在すること,A丙15は,不完全ながら2byte 言語に対

応していることから,丙15は,Vellum2.7 オリジナル英語版ソースコードではな

いと主張する。

しかし, 丙15のソースコード内に,32ビットコードに対応するかのような部

分が存在するのは,第2事件原告アシュラが,1994年(平成6年)ころ,Vell

um2.7 コードの32ビット化を試みた痕跡にすぎない(なお,第1事件原告・第2

事件被告コンセプトは,第2事件原告アシュラにおいて,Vellum2.7 コードの32

ビット化が試みられていたことはないと主張し,これを裏付ける証拠として,C作

8
成の報告書(甲118)を提出しているが,時機に後れた攻撃防御方法であり却下

されるべきである。)。また,第1事件原告・第2事件被告コンセプトが主張する

32ビットコードの割合は,単なるファイルの割合にすぎず,Vellum2.7 コードに

おける16ビットと32ビットのソースコードの割合ではない。さらに,Vellum2.

7 オリジナル英語版ソースコードは,英語版であっても,地域化を予定するものと

して,日本語等の2byte 言語の表示に不完全ながら対応可能な状態にあった。

なお,Vellum3.0 コードの開発が,本件修正契約に基づくことは,Vellum2.7 コ

ードと Vellum3.0 コードにおけるソースコードの一致等により明らかになるのであ

って,その動作を実証する必要はない。また,1991年(平成3年)8月31日

付け代理店契約書(甲1)によれば,Vellum2.7 日本語版のソースコードに係る著

作権も,第2事件原告アシュラに帰属する。したがって,第1事件原告・第2事件

被告コンセプトの上記主張は,失当である。

(2) 争点(5)(第1事件被告コムネットが使用するマニュアルの著作権及びその

侵害の有無〔原審第1事件〕)

[第1事件原告・第2事件被告コンセプト]

第1事件被告コムネットとファモティクとの取引が終了したのは,第1事件被告

コムネットが使用料の支払を勝手に中断したためであり,その後,ファモティクが

第1事件被告コムネットに対してマニュアルの使用,販売続行を許諾するはずがな

い。

[第1事件被告コムネット]

第1事件被告コムネットは,ファモティクとの取引終了後も,甲6のマニュアル

の使用許諾を受けていたのであり,第1事件原告・第2事件被告コンセプトの著作

権を侵害するものではない。第1事件被告コムネットは,ファモティクから請求の

あった使用料を支払っていた。第1事件被告コムネットが取引終了後も甲6のマニ

ュアルの使用許諾を受けたのは,ファモティクから Vellum の取扱説明書の提供が

できなくなるとの一方的な申出があったことによるものであって,第1事件原告・

9
第2事件被告コンセプトの上記主張は失当である。

(3) 争点(6)(別紙「被告コムネット商品目録」記載の各ソフトウェアは,Vell

um3.0 コードのプログラムに係る複製権ないし本案権を侵害するものであるか〔原

審第1事件〕)

[第1事件原告・第2事件被告コンセプト]

ア 別紙「被告コムネット商品目録」記載のソフトウェアには Additions が搭載

されているか

Vellum2.7,Vellum3.0 及び Graphite のファイルを比較すると,Graphite 中に

は,Vellum3.0 で新たに追加された Additions に該当するファイルが119個存在

する。また,Graphite のみに存在するファイル名であっても,Additions に該当す

る機能をキーワードとしたディレクトリのファイルは,Additions に当たるところ,

Graphite 中には,このようなファイルが10個存在する。

なお,第1事件被告コムネットは,第1事件原告・第2事件被告コンセプトが

Additions のうち創作的部分がどの部分であるか特定していないと主張するが,

Vellum2.7 に存在せず,Vellum3.0 において創作された Additions は,甲64で特

定されている。

イ 別紙「被告コムネット商品目録」記載のソフトウェアから Additions が削除

されているか

第1事件被告コムネットは,仮に Additions の一部が Graphite コードに含まれ

ていたとしても,Additions の機能が利用できないのであるから,第1事件被告コ

ムネットの行為は Additions の複製,翻案に該当しないと主張する。しかし,第1

事件被告コムネットは,外部から見えるメニューにマスクを掛ける masking という

単純な隠蔽行為を行ったにすぎず,第1事件被告コムネットの行為は,Additions

の複製,翻案に該当する。

差止めの必要性,許容性

第1事件被告コムネットは,Graphite コードからサーフェス(表面加工用)機能

10
を利用することはできないと主張する。

しかし,甲59,60によれば,Graphite ソースコード(乙31)の中にサーフ

ェス(表面加工用)関係のフォルダとファイル及びBMI(トランスレーター関連

プログラム)が存在する。第1事件被告コムネットは,自ら Box-Vellum がサーフ

ェス表面の図形表現が可能であることを前提として,256色もの多色彩加工性能

を売り物の1つにしており,これらの機能は,サーフェス機能そのものであり,

Additions の一部である。

また,第1事件被告コムネットは,第1事件被告コムネット商品にサーフェス等

の Additions 部分が存在するとしても,極めて単純な操作で Additions のファイル

又はディレクトリを削除することができると主張する。

しかし,上記のとおり,第1事件被告コムネットは,外部から見えるメニューに

マスクを掛ける masking という単純な隠蔽行為を行ったにすぎず,上記主張は失当

である。

エ 第1事件被告コムネットに過失があったか

第1事件被告コムネットは,著作権の変動について第三者が確認することは容易

ではない上,本件の場合,Additions の範囲の特定及びその有無の確認,並びに Ad

ditions の著作権又はその持分を有するものが誰であるかを知ることは困難であっ

たから,第1事件被告コムネットに過失はないと主張する。しかし,ファモティク

が平成16年4月9日に破産宣告を受けたことは破産手続上公告されており,これ

によって Vellum3.0 コードに係る権利関係に変動があり得べきことは第1事件被告

コムネットも知り得たこと,Vellum3.0 コードのプログラム著作権が第1事件原

告・第2事件被告コンセプトに譲渡されたことはプログラム登録原簿に登録され,

公示されていること(甲4)からすれば,上記主張は失当である。

また,第1事件被告コムネットは,第2事件原告アシュラから,Ashlar-Vellum

Graphite のプログラムについては,Additions が削除済みであるとの説明を受けて

いたこと,Ashlar-Vellum Graphite のプログラムのメニュー画面にサーフェスが

11
ないこと,既存のソフトウェアの実行環境では,サーフェス(表面加工用)機能の

呼び出しはできず,アシュラから提供を受けた英文のマニュアルにもサーフェス機

能の説明は記載されていなかったことからすれば,仮に第1事件被告コムネットが,

Additions に係る第1事件原告・第2事件被告コンセプトのプログラム著作権を侵

害したとしても過失がないと主張する。しかし,第1事件被告コムネットが第2事

件原告アシュラから Additions が削除済みであるとの説明を受けたとの証拠はない

こと,32ビットコードで初めて可能になった図形上のサーフェス機能は,Ashlar

-Vellum Graphite において自動的に生成されるものであり,使用者は32ビット C

AD には当然に備わっている機能と認識しており,説明は不要であったことからす

れば,上記主張は失当である。

[第1事件被告コムネット]

ア 別紙「被告コムネット商品目録」記載のソフトウェアには Additions が搭載

されているか

プログラムのような技術的,実用的性格の強いプログラムにおいて,著作権が成

立するためには,高度な創作性が必要であるというべきであって,プログラマーが

誰でも作成し得る,ありふれたプログラムでは足りないというべきである。

この点,第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,Vellum2.7 に存在せず,Ve

llum3.0 で新たに追加されたファイルは,Additions に該当すると主張する。しかし,

Vellum3.0 は,16ビット対応のプログラムである Vellum2.7 を32ビット対応の

プログラムに改変したものであり,Additions ではないプログラムとして,Extens

ions が存在するのであり,上記第1事件原告・第2事件被告コンセプトの主張は失

当である。

また,第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,Graphite のみに存在するファ

イル名であっても,Additions の機能を有するファイルは,Additions に該当すると

して,Graphite 中の10個のファイルが Additions に該当すると主張する。しかし,

上記ファイルは,Additions の機能を有していない。そもそも,第1事件原告・第

12
2事件被告コンセプトは,「Vellum3.0 市場での必須項目」(甲43)に記載されて

いる「新 Vellum 製品の機能」も Additions の機能に含むと主張するが,本件修正

契約及びその基礎となった TERM SHEET(乙51の1,2添付資料)の規定に反

するものであって,失当である。甲43は,1995年(平成7年)に第2事件原

告アシュラにおいて,Additions に限らず Vellum3.0 全体の単なる希望を示す文書

として作成されたものであって,Additions の定義はおろか,Additions の文言さえ

ないものであり,TERM SHEET や本件修正契約に引用も添付もなされていないも

のにすぎず,これを前提とした,第1事件原告・第2事件被告コンセプトの主張は

失当である。

また,第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,Vellum3.0 において創作され

た Additions は甲64において特定されていると主張する。しかし,甲64は,第

1事件原告・第2事件被告コンセプトが表現を創作したか否かの観点から抽出した

ものではなく,単に,用語検索を行った結果にすぎないものであるから,これをも

って Additions の範囲を特定することはできない。

イ 別紙「被告コムネット商品目録」記載のソフトウェアから Additions が削除

されているか

第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,第1事件被告コムネットは,外部か

ら見えるメニューのみにマスクを掛ける masking という単純な隠蔽工作を行った

にすぎないと主張する。しかし,第1事件被告コムネットは,Graphite コードのソ

ースコードに手を加えておらず,第2事件原告アシュラから提供を受けたものをそ

のまま利用していたものであり,Additions の複製又は翻案は行っていない。プロ

グラム著作権においては,機能が最も重要であり,仮にプログラムの一部の記述が

残存しているとしても,プログラムとして求められる機能を果たさなければ,プロ

グラムの複製又は翻案に当たらない。

差止めの必要性,許容性

Ashlar-Vellum Graphite や BOX-Vellum Graphite5は,AutoSurface のコード

13
が存在せず,AutoSurface 機能,隠線処理機能及びレンダリング機能が利用できな

いことからして,その販売等を認めても,これらの購入者は Additions のプログラ

ムを使用することはできず,第1事件原告・第2事件被告コンセプトによる Additi

ons を含むプログラムの販売等の機会を奪うことはない。他方,第1事件被告コム

ネットは,Additions のプログラムを利用することができない Ashlar-Vellum Gra

phite や BOX-VellumGraphite5の販売等ができないことにより多大な損害を被る

ものである。そして,ファイル又はディレクトリにより特定される Additions につ

いては,極めて単純な操作で当該ファイル又はディレクトリを削除することができ

るのであり,Additions の可分性及びその容易性は明らかである。そうすると,第

1事件原告・第2事件被告コンセプトが著作権侵害に基づき第1事件被告コムネッ

ト商品の差止めを求めることは権利の濫用に当たり許されない。

エ 第1事件被告コムネットに過失があったか

ファモティクについて破産宣告がなされたのだとしても,ファモティクが有して

いた権利は,二次的著作物である Additions の著作権にすぎない。第1事件被告コ

ムネットは,ファモティク破産後,Vellum2.7 及び Extensions の著作権を有し,

プログラム開発の専門家である第2事件原告アシュラから,Ashlar-Vellum Graph

ite について,Additions 部分は削除済みであるとの説明を受けていたこと,現に A

dditions の機能を利用できなかったことからすれば,第1事件被告コムネットが,

これを複製,販売することが著作権侵害に該当すると予見することは困難であった。

また,一般的には著作権の移転登録がなされることはまれであり,著作権侵害

ついては特許法103条のような過失の推定規定はない上,ファモティクから第1

事件原告・第2事件被告コンセプトに Vellum3.0 に関する著作権譲渡が登録された

のは,破産宣告後1年以上経過した後である平成17年8月10日であること,フ

ァモティクからフューテックに対する著作権譲渡については登録されていないこと

(乙4)からすれば,Vellum3.0 コードのプログラム著作権が第1事件原告・第2

事件被告コンセプトに譲渡されたことがプログラム登録原簿に登録され,公示され

14
ているとしても,第1事件被告コムネットに過失があったということはできない。

(4) 争点(9)(第1事件原告・第2事件被告コンセプトの損害〔原審第1事件〕)

著作権侵害による損害(著作権法114条2項

[第1事件原告・第2事件被告コンセプト]

ア 第1事件被告コムネットは,仮に第1事件被告コムネットの行為が

Additions の複製,翻案に当たるとしても,Ashlar-Vellum Graphite や BOX-Vellum

Graphite5 では,Additions の機能が利用できず,ユーザーにとって Additions の

存在が購入動機に影響を与えないから,第1事件被告コムネットに Graphite の販

売を認めても第1事件原告・第2事件被告コンセプトのプログラムの販売等の機会

を奪うこともなく,第1事件原告・第2事件被告コンセプトに損害は発生していな

いと主張する。

しかし,第1事件被告コムネットの販売する商品と第1事件原告・第2事件被告

コンセプトの販売する商品が市場で競合する以上,第1事件被告コムネットに

Graphite の販売を認めれば,第1事件原告・第2事件被告コンセプトのプログラム

販売等の機会を奪い損害が発生することは明らかであって,Additions の機能が利

用できるか否かは損害の発生と無関係である。また,第1事件被告コムネットは,

外部から見えるメニューにマスクを掛ける masking という隠蔽行為を行ったにす

ぎず,Graphite コード(乙31)の中には,サーフェス機能及びBMIのフォルダ

が存在する。さらに,第1事件被告コムネットは,Box-Vellum について,サーフ

ェス表面の図形表現が可能であるとし,256色もの多色彩加工性能を売り物の1

つにしていた。したがって,第1事件被告コムネットの上記主張は失当である。

イ 第1事件被告コムネットは,第2事件原告アシュラとファモティクとの間に

おいて,ロイヤリティの支払がほぼ同一とされているのは,Additions の機能を有

するファイルすべてを含み,かつ,当該機能を利用できるソフトウェアであること

が前提であるから,一部であれ Additions が存在しない場合やその機能を利用する

ことができない場合には,ロイヤリティの料率はより低いものとなるはずであり,

15
Ashlar-Vellum Graphite や BOX-Vellum Graphite5 における Additions の寄与率

はわずかであると主張する。

しかし,第1事件被告コムネットの上記主張は,Graphite は Additions の機能を

有するディレクトリないしファイルすべてを含むソフトウェアではないこと,及び

Additions の機能を利用できないソフトウェアであることを前提とするものである

ところ,上記のとおり,その前提に理由がなく失当である。甲64からすれば,

Ashlar-Vellum Graphite や BOX-Vellum Graphite5 から,Additions が削除され

ているということはできない。また,第2事件原告アシュラとファモティクとの間

では,第2事件原告アシュラがファモティクに対して支払うべきロイヤリティと,

ファモティクが第2事件原告アシュラに対して支払うべきロイヤリティとがほぼ同

率と定められていることからすれば,Vellum3.0 コードにおける,Vellum2.7 基本

コード及び Extensions コードの寄与率と Additions の寄与率は,同一というべき

である。

なお,第1事件被告コムネットは,Additions のうち新たに付与された創作的部

分の寄与率が考慮されなければならないと主張するが,Additions はすべて創作的

部分であり,かつその著作権はすべて第1事件原告・第2事件被告コンセプトに帰

属している。

[第1事件被告コムネット]

ア Additionsの機能を有するディレクトリないしファイルすべてを含み,かつ,

当該機能を利用できるソフトウェア(Vellum3.0)における,Vellum2.7基本コード

及びExtensionsとAdditionsの寄与率を前提として,Additionsの機能を有するディ

レクトリないしファイルすべてを含むものではなく,かつ,当該機能を利用できな

いソフトウェア(Ashlar-Vellum Graphite,BOX-Vellum Graphite5)に係る損害

額を算定することは失当である。仮に,第1事件被告コムネット商品において,

Additionsの寄与が認められるとしても,当該寄与率は極めて低く,第1事件原告・

第2事件被告コンセプトに賠償すべき損害はほとんどない。

16
二次的著作物の著作権は,二次的著作物において新たに付与された創作的部

分についてのみ生じ,原著作物と共通し,その実質を同じくする部分には生じない

から,二次的著作物であるAdditionsの著作権に基づく損害賠償請求についても,上

記創作的部分の寄与率が考慮されなければならない。この点,第1事件原告・第2

事件被告コンセプトは,少なくともAdditionsのうちAutofaceの部分が二次的著作

物であることを認めており,原著作物についての著作権はアルモニコスないしエリ

ジオンが有している。Additionsのうち第1事件原告・第2事件被告コンセプトが著

作権侵害を主張し得ない部分(二次的著作物において新たに付与された創作的部分

以外の部分)が存することは明らかであり,Additionsのうち創作的部分がGraphite

コードに存するのでなければ,複製又は翻案に当たらない。

ウ 第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,Graphiteコード(乙31)の中

にサーフェス機能及びBMIフォルダが存在する,メニューにはmaskingをし隠蔽

して外部から見えなくしてあるが,Graphite製品内部にはサーフェス・コードが存

在している,第1事件被告コムネット自ら,BOX-Vellumがサーフェス表面の図形

表現が可能であり,かつ256色もの多色彩加工性能を有することを売り物の1つ

にしている,と主張する。

しかし,上記第1事件原告・第2事件被告コンセプトの主張は,本件修正契約や

その基礎となったTERM SHEETの規定に反するものまでAdditionsに含まれるこ

とを前提としており,失当である。

エ 著作権法114条2項が適用される場合であっても,権利者が現実に被った

損害を超える賠償は認められない。この点,第1事件原告・第2事件被告コンセプ

ト商品目録記載1〜6のソフトウェア販売による1本当たりの利益は,第1事件原

告・第2事件被告コンセプトの第2事件原告アシュラに対する主張を前提にすると

5315円であるから,これに第1事件被告コムネットの販売本数と Additions の

寄与率を乗じた額を超える損害賠償請求は認められない。

(5) 争点(10)(第2事件原告アシュラの損害又は損失)について

17
[第2事件原告アシュラ]

著作権侵害による損害(著作権法114条2項〜4項)又は損失(同条3項)

ア 第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,著作権法第114条第2項の「そ

の利益の額」について,商品の売上額から仕入額を差し引いた粗利益の額ではなく,

商品の売上額から仕入額,宣伝広告費用,人件費,店舗又は展示会場等の賃料等の

売上げに要したすべての費用を差し引いた額をいうものと解すべきであると主張す

る。

しかし,著作権法114条2項は,権利者の立証責任を緩和する規定であるとこ

ろ,一般管理費用等の控除項目は権利者にとっては証明困難であり,侵害者の方が

証明しやすいことを考えれば,同項の「利益」は,権利者が最大限逸失する可能性

のある「粗利益」であり,その主張,立証があれば,権利者は同項の推定を受ける

ことができ,その上で,侵害者は,自己の一般管理費用等を立証するだけでは,推

定額からの控除を受け得ないというべきである。

また,ソフトウェアは,開発された後はCD−ROMに複製して製造することが

容易であり,部材費や輸送費も小さい(インターネットを通じた販売等の態様によ

れば部材費や輸送費が不要となる。)から,その製造及び販売に要する経費は少な

く,利益率が高くなる。第1事件原告・第2事件被告コンセプトも,別紙「原告コ

ンセプト商品目録」記載1〜6のソフトウェアの販売(平成16年5月18日から

平成20年3月31日まで)に係る粗利益率について,売上げの68.30%である

と主張しており,当該粗利益率をもって第2事件原告アシュラの損害額を算定すべ

きである。

なお,第1事件原告・第2事件被告コンセプトの利益率が68.30%であるとの

主張については,第2事件原告アシュラの(予備的な)援用により,裁判上の自白

が成立し,かつ当該自白の撤回は許されない。また,仮に上記裁判上の自白が成立

しないとしても,第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,原審において売上げ

から更に控除されるべき費用について何ら主張,立証をしていない上,第1事件被

18
告コムネットの利益率が70%であると主張していたのであるから,当審において,

上記主張を撤回することは,訴訟上の信義則違反及び時機に後れたものとして却下

されるべきである。さらに,第1事件原告・第2事件被告コンセプトの著作権法1

14条2項の「利益」に関する新たな攻撃防御方法の提出は,時機に後れたものと

して却下されるべきである。

イ 第1事件原告・第2事件被告コンセプトの個々の費用項目に関する主張も,

失当である。すなわち,

第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,部材費,開発費,販売支援費,販促

経費について,第1事件原告・第2事件被告コンセプト作成に係る証拠(甲65,

甲110〜115)を提出するのみであり,客観的な証拠は存在しない。

著作権侵害に基づく損害額の算定において,寄与率の認定は,複製部分の客

観的数量割合のほか,当該侵害物における著作物の重要度も斟酌する必要がある。

この点,第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,甲26の電子メールを根拠と

して,Vellum2.7 base code 及び Extensions コードと Additions コードの寄与率

が2500対4000であると主張する。しかし,Vellum2.7 base code 及び Ext

ensions コードに係るロイヤリティ額は,第2事件原告アシュラが Vellum3.0 コー

ドに係るソフトウェアを日本国外で販売でき,ファモティクからのロイヤリティ以

外でも利益を得られること,ファモティクが第2事件原告アシュラの代理店であり,

良好な信頼関係が継続する可能性があることなどを考慮して,極めて低額に設定さ

れたものである。

したがって,著作権法114条2項に基づき算定される第2事件原告アシュラの

損害額は,6500万円を下らないというべきである。

なお,著作権法114条2項又は3項による損害額の主張の区別を,弁護士費用

相当額の損害の主張の有無と関連させて解釈することは相当でなく,本件において,

著作権法114条2項に基づき著作権侵害に基づく損害賠償の算定をする場合であ

っても,弁護士費用相当額が認定されるべきである。

19
[第1事件原告・第2事件被告コンセプト]

著作権侵害による損害(著作権法114条2項〜4項)又は損失(同条3項)

(ア) 第1事件原告・第2事件被告コンセプトの売上金額について

別紙「第1事件原告・第2事件被告コンセプト商品目録」記載1〜3のソフトウ

ェアの売上金額は,平成16年9月1日から平成18年10月31日まで7353

万6816円,同年11月1日から平成20年3月31日まで3633万4948

円,平成20年4月1日から平成21年7月15日まで2435万8500円,合

計1億3423万0264円である。また,別紙「原告コンセプト商品目録」記載

4〜6のソフトウェアの売上金額は,平成16年5月18日から平成17年6月3

0日まで1934万8969円である。したがって,別紙「原告コンセプト商品目

録」記載1〜6のソフトウェアの販売合計額は,合計1億5357万9233円で

ある。

(イ) 第1事件原告・第2事件被告コンセプトの利益率について(主位的主張)

著作権法114条2項の「その利益の額」とは,商品の売上額から仕入額を差し

引いた粗利益の額ではなく,商品の売上額から仕入額,宣伝広告費用,人件費,店

舗又は展示会場等の賃料等の売上げに要したすべての費用を差し引いた純利益をい

うものと解すべきである。

この点,第1事件原告・第2事件被告コンセプトが,平成16年5月18日から

平成21年7月15日までに販売した別紙「原告コンセプト商品目録」記載1〜6

のソフトウェアの売上げに要した費用は,「月別利益一覧」(甲110)のとおり,

合計金1億1736万3776円である。その内訳及び詳細は,以下のとおりであ

る。

a 部材費

平成16年5月18日から平成21年7月15日までの別紙「原告コンセプト商

品目録」記載1〜6のソフトウェアそれぞれに使用されている部材及びその費用は,

「部材費計算一覧」(甲111)のとおり,合計2423万7435円(税抜き)

20
である。

b 開発費

ソフトウェアの開発には,開発に携わる人間への人件費あるいは業務委託費が不

可欠の経費であるため,売上金額から控除するべきである。

この点,第1事件原告・第2事件被告コンセプトにおいて,D及びEは勤務時間

のうち30%を,F及びGは勤務時間のうち5%を,別紙「原告コンセプト商品目

録」記載1〜6のソフトウェアの開発やバージョンアップ等の時間に費やしている。

さらに,第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,別紙「原告コンセプト商品目

録」記載1〜6のソフトウェアについてディ・アイ・アジア株式会社及び株式会社

エリジオンに対し業務委託を行っている。

そうすると,平成16年5月18日から平成21年7月15日までに別紙「原告

コンセプト商品目録」記載1〜6のソフトウェアの開発等にかかった開発費は,
「開

発費計算表」(甲112)のとおり,2329万6915円である。

c 販売支援費

ソフトウェアの販売には,受注したソフトウェアの発注作業,顧客管理などの作

業が不可欠であるため,これに従事する従業員の人件費は,売上金額から控除する

べきである。

この点,第1事件原告・第2事件被告コンセプトにおいて,D及びHは勤務時間

のうち40%を,F及びGは勤務時間のうち65%を,E及びIは勤務時間のうち

70%を, 「原告コンセプト商品目録」
別紙 記載1〜6のソフトウェアの発注作業,

顧客管理などの作業に費やしている。

そうすると,平成16年5月18日から平成21年7月15日までに別紙「原告

コンセプト商品目録」記載1〜6のソフトウェアの発注作業,顧客管理などの作業

にかかった販売支援費は,「販売支援計算表」(甲113)のとおり,5776万

5275円である。

d 販促経費

21
第1事件原告・第2事件被告コンセプトにおいては,別紙「原告コンセプト商品

目録」記載1〜6のソフトウェア及びシャークシリーズの販売に,2933万25

71円の販売経費がかかっている。このうち,別紙「原告コンセプト商品目録」記

載1〜6のソフトウェアの販売に関係する販促経費は,「月別利益一覧」(甲11

0)「Draftboard 経費一覧」(甲114)のとおり合計金1206万4152円で

あり,詳細は以下のとおりである。

@ 部材保管料(社内) 30%

A 部材保管料(土谷商店) 100%

B 部材保管料(デジタルパワーステーション) 100%

C ホームページ費 100%

D DM費用(発送,ビニール,ラベル) 70%

E CD−R(体験版様CD) 70%

F カタログ 70%

G 展示会出店費用(会場小間料,交通費,工事費等) 70%

H 販売業務委託費 70%

I その他

以上によれば,別紙「原告コンセプト商品目録」記載1〜6のソフトウェアの販

売に際してかかった販促経費は,合計金1206万4152円となる。

e 以上のとおり,第1事件原告・第2事件被告コンセプトが,平成16年5月

18日から平成21年7月15日までの別紙「原告コンセプト商品目録」記載1〜

6のソフトウェアの販売によって得た「利益の額」は,売上合計1億5357万9

233円から,部材費,開発費,販売支援費及び販促経費の合計1億1736万3

776円を控除した残金3621万5457円となる。上記利益の額は,第1事件

原告・第2事件被告コンセプトの第1期から第5期の決算書からも,その妥当性が

証明される。

なお,第2事件原告アシュラは,第1事件原告・第2事件被告コンセプトが甲6

22
5において「粗利率」を「68.30%」と記載していたことをもって,第2事件

原告アシュラの援用により,裁判上の自白が成立し,かつ当該自白の撤回は許され

ないと主張するが,法律の解釈に関する事項であるから,裁判上の自白は認められ

ない。仮に裁判上の自白が成立するとしても,第1事件原告・第2事件被告コンセ

プトの「粗利率」が「68.30%」であることについてのみであり,著作権法1

14条2項の「その利益の額」を算出する際の利益率が「68.30%」であるこ

とについて自白は成立しない。また,第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,

著作権法114条2項所定の「その利益の額」について,攻撃防御方法を適時に提

出しており,時機後れていないし,かかる主張,立証が信義則に違反することもな

い。

(ウ) 第1事件原告・第2事件被告コンセプトの利益率について(予備的主張)

仮に著作権法114条2項所定の「利益」を「純利益」とすることが認められな

かったとしても,侵害者が侵害製品の製造,販売のみに要する専用の設備や従業員

を新たに設置し,あるいは雇い入れたといった例外的な事情がない限り,侵害製品

の売上額から仕入れ,加工,梱包,保管,運送等の経費のうち侵害製品の製造,販

売のみのために要した部分を控除した限界利益とすべきである。この点,本件では,

第1事件原告・第2事件被告コンセプトの販売支援費のうち,少なくともEについ

ては,別紙「原告コンセプト商品目録」記載1〜6のソフトウェアの開発等及び発

注作業等販売支援のために派遣会社に派遣を依頼したことから,その給与の全額が

控除対象となり,売上金額から控除すべきである。また,販促経費についてはすべ

て,その他については別紙「原告コンセプト商品目録」記載1〜6のソフトウェア

の売上金額とシャークシリーズの売上金額の比率7対3に応じてそれぞれ分担した

金額が直接固定費といえる。

したがって,著作権法114条2項所定の「利益」が限界利益と解した場合,売

上金額1億5357万9233円から上記経費6431万9641円を控除した8

925万9592円が第1事件原告・第2事件被告コンセプトの利益額となる。

23
(エ) Vellum3.0 コードにおける寄与率について

a 主位的主張

第2事件原告アシュラとファモティクが,互いに相手方に支払うロイヤリティは,

料率が等しいことを意味しても,金額が等しいことを意味するものではないから,

これをもって Vellum2.7 基本コード及び Extensions コードの寄与率と Additions

の寄与率が等しいということはできない。修正契約書(甲2)によれば,第2事件

原告アシュラは,Vellum3.0 について日本を除く全世界で販売できるのに対し,フ

ァモティクは日本市場においてしか販売できないから,第2事件原告アシュラがフ

ァモティクに支払うロイヤリティの金額の方が,ファモティクが第2事件原告アシ

ュラに支払うロイヤリティの金額よりも多くなることが予定されていたといえる。

また,第2事件原告アシュラ代表者Jとファモティクの代表者であったKの200

1年(平成13年)11月29日付けの電子メール(甲26)によれば,第2事件

原告アシュラとファモティクの間で,ファモティクが使用する,第2事件原告アシ

ュラ所有の Vellum2.7 基本コード及び Extensions コードのロイヤリティが月25

00ドルであり,他方,第2事件原告アシュラが使用する,ファモティク所有の

Additions のロイヤリティが月4000ドルであったことは明らかである。

b 予備的主張

仮に前記 a の主位的主張が認められないとしても,少なくとも Vellum3.0 コード

において,Vellum2.7 基本コード及び Extensions コードの寄与率と Additions の寄

与率がほぼ等しいと考えるのが相当である。

イ 商標権侵害による損害額について

アシュラ商標は,日本国内において,第2事件原告アシュラによってもそのライ

センシーによっても一切使用されていなかったから,顧客吸引力が全く認められな

い。したがって,仮に第1事件原告・第2事件被告コンセプトがアシュラ商標に類

似する標章を使用していたとしても,別紙「原告コンセプト商品目録」記載1〜6

のソフトウェアの売上げに全く寄与していないことが明らかであるから,第2事件

24
原告アシュラには,得べかりし利益としての使用料相当額の損害も損失も生じてい

ない。

第3 当裁判所の判断

当裁判所は,本件各控訴はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,次

のとおり,付加訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所

の判断」(原判決75頁7行目ないし115頁25行目)記載のとおりであるから,

これを引用する。

1 原判決87頁1行目の後に,行を改めて,次のとおり付加する。

「(4) 第1事件原告・第2事件被告コンセプトの主張について

ア 第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,丙15は,2002年(平成1

4年)以降,Aによって,新たな書き込みがされていること,32ビットを示す記

載が存在すること,不完全ながらも日本語その他の2byte 言語に対応していること

から,16ビット Vellum2.7 オリジナル英語版ソースコードではなく,これと

Vellum3.0 コードを比較して,Vellum3.0 コードは,Vellum2.7 コードに依拠して

作成されたものとすることはできないと主張する。

しかし,第1事件原告・第2事件被告コンセプトの上記主張は,採用することが

できない。すなわち,第1事件原告・第2事件被告コンセプトが,2002年(平

成14年)以降の新たな書き込みと主張する部分は,「Old-Vellum」との名称が付

された一部ヘッダーのコメント記載等であるが(丙15),このような部分は,そ

の内容及び形式からみて,ソースコードを履歴管理するためのシステムにより自動

的に挿入されたものであり,ソースコードの改変と解することはできない。

また,第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,丙15に存在する32ビット

コードを整理したものとして,甲55を提出している。この点,確かに,甲55に

よれば,丙15に,「WIN32」,「WIN_32」とのコメント行ないし履歴管理用ヘッ

ダー,「gosub32」との32ビット対応コードが存在することが認められる(なお,

「Build32」及び「DLL_32」との記載は,いずれも32ビット対応であることを示

25
すコードとはいえない。)。しかし,上記「WIN_32」等とのコメント行ないし履

歴管理用ヘッダーには,「10Jan94」(「1994年1月10日」を示すものと解

される)等と記載されているのに対し,第2事件原告アシュラとファモティクとの

間の「ソースコードおよび開発ライセンス」契約(乙5の1,2)は,1995年

(平成7年)7月14日に締結されたこと,それ以前において,ファモティクは,

販売代理店契約(甲1)により,「英語版を日本語に翻訳するためにのみ,この製

品(判決注・Vellum 製品のことを示す。)を修正する権利を有する。」とされて

いたことなどに照らすと,上記32ビットコードへの対応は,ファモティクが行っ

たものとは認め難く,むしろ,第2事件原告アシュラによって32ビットコードへ

の対応が試された痕跡と解するのが相当である。そうすると,丙15は,一部32

ビット対応コードが存在したからといって,16ビット Vellum2.7 オリジナル英語

版ソースコードではないと断定することはできない(なお,第2事件原告アシュラ

は,第1事件原告・第2事件被告コンセプト提出の甲118について,民訴法15

7条1項に基づき却下すべきであると主張するが,甲118の提出により,訴訟の

完結を遅延させることとなるとは認められないから,上記申立てに理由はない。も

っとも,甲118は,Cが,1993年(平成5年)に第2事件原告アシュラを退

社するまでに経験したことを述べたものにすぎず,これにより上記認定を左右する

ことはない。)。

さらに,証拠(甲122の1,2,甲123の1,2)によれば,丙15,38

(甲124)において,「DISP.CLD」中のコメント行に「KANJI chars」との記

述 が な さ れ た り , 「 DELETE.C_V 」 中 に 「 IsKanjiByte(unsigned char

*string,unsigned int offset)」との関数が定義されたりしていることは認められる。

しかし,これらの記述が実際の処理において使用されていると認めるに足りる証拠

は存在せず,これをもって,丙15が漢字に対応しているとか,16ビット Vellum2.7

オリジナル英語版でないということはできない(なお,第1事件原告・第2事件被

告コンセプトの平成20年2月6日付け準備書面(13)添付の別紙4,5は,同

26
別紙を印刷する際に使用したパソコンが日本語対応 WINDOWS 及び日本語入力の

ための仮名漢字変換ソフトをインストールしたものであることを示すにすぎず,こ

れをもって,丙15が漢字対応であると解することもできない。)。

以上に加えて,上記のとおり,丙15に記録されているコードは,@16ビット

Vellum2.7 オリジナル英語版のソースコードが記録された Ontrack と題するCD−R

OM(丙38,甲124)のコードと,一部ヘッダーのコメント記載等を除き同一

であること,Aバージョンアップ前の Vellum2.14 コード(丙17)ともよく一致し

ていること,Bファイルの更新日付は,ファイルを媒体にコピーした日を示してい

るにすぎないことに照らすと,丙15は,16ビット Vellum2.7 オリジナル英語版

ソースコードであるものと認められる。そうすると,丙15に記録されているコー

ドと Vellum3.0 コードを対比して,Vellum3.0 コードは,Vellum2.7 コードに依拠

して作成されたと認定することができる。

イ 第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,Vellum3.0 コードが40万以上

の行を持ち,16ビット Vellum2.7 オリジナル英語版ソースコードには含まれてい

ない新規な機能(甲43に記載の各種機能)を備えるなど,16ビット Vellum2.7

オリジナル英語版ソースコードの創作的な表現の特徴を感得し得ないほど独創性を

備えたソースコードであり,同ソースコードに依拠するものではないと主張する。

しかし,第1事件原告・第2事件被告コンセプトの上記主張は,以下のとおり,

採用することができない。すなわち,Vellum3.0 コード(甲41)のディレクトリ

中,ソースコードが含まれる「Granite」という名称のディレクトリについてみると,

その下層ディレクトリ55個のうち40個(約72.7%)が丙15のディレクトリ

と名称が同一であり,この同一ディレクトリ内の多数のファイルは名称も同一にし

ていること(甲31,丙16,29,30),Vellum2.7 コードのファイルと名称

を同一にする Vellum3.0 コードのファイル内のソースコードの総行数は27万69

87行であるが,そのうち25万5623行(約92.3%)が Vellum2.7 コードの

ファイル内のソースコードと一致していること(乙21の1〜7,丙29,30),

27
ディレクトリ構成やファイル名は,プログラムを作成する際にプログラムを機能ご

とにモジュール分割する作業を反映するものであるから,偶然に一致するというこ

とは通常は考え難いこと,既存のソースコードに依拠せずに開発されたソースコー

ドの記述が,既存のソースコードの記述と偶然に一致するということは,通常考え

難いことなどに照らすと,第1事件原告・第2事件被告コンセプトの上記主張は採

用することができず,Vellum3.0 は,16ビット Vellum2.7 オリジナル英語版ソー

スコードの創作的な表現の特徴を感得し得ないほど独創性を備えたソースコードと

はいえず,Additons に該当する部分を除き,上記ソースコードに依拠するものと認

められる。

(5) 第1事件被告コムネットの主張について

第1事件被告コムネットは,Vellum3.0 全体の開発を行ったのは,アルモニコス

であり,アルモニコスがファモティクに対し Additons の著作権を譲渡したことを

裏付ける証拠も存在しないから,ファモティクが Additons の著作権又はその持分

を取得することはないと主張する。

しかし,第1事件被告コムネットの上記主張は,採用することができない。

すなわち,アルモニコスは,Vellum3.0 コードの開発に当たり,Autoface(3次元

図形表現ソフトウェア)のプログラムを提供し,ファモティクはこれを Vellum3.0

コード用に改変して使用したが,他方,Vellum ソフトウェアに関して第2事件原告

アシュラとの間で「ソースコードおよび開発ライセンス」契約(乙5の1,2)を

締結したのはファモティクであること,本件修正契約(甲2,18)においても,

ファモティクは,第2事件原告アシュラとの間で,@ファモティクが,Vellum2.7

の 1 6 ビ ッ ト の 基 本 コ ー ド を 1 6 ビ ッ ト WindowsOS 環 境 か ら 3 2 ビ ッ ト の

Windows95,WindowsNT,PowerMac 上の環境に搭載する作業を行っていること(2.

1条),Aファモティクは,独自に,Surfaces 及び Interface のプログラムコードを

開発済みであり,また Lightworks との互換性のある Rendering 及び Hidden Line

Removal のモジュールを独自に開発中であること(2.2条),Bファモティクは,

28
Additions を独占的に所有すること(3.2条)などが確認されている。そうすると,

アルモニコスが,Vellum3.0 コードの開発に当たり,Autoface のプログラムを提供し

た事実があったとしても,Vellum3.0 コードの開発を行ったのは,ファモティクで

あったと認定するのが相当であり,第1事件被告コムネットの上記主張は採用する

ことができない。

(6) 小括

以上によれば,第1事件原告・第2事件被告コンセプト及び第1事件被告コムネ

ットの上記各主張は,いずれも採用することはできない。したがって,Vellum3.0

コードは,本件修正契約に基づき,ファモティクが Vellum2.7 コードに依拠して開

発したものであるが,本件修正契約(甲2,18)及び「ソースコードおよび開発

ライセンス」契約(乙5の1,2)の規程により,Vellum3.0 コードのうち,Additions

のプログラム著作権は,ファモティク(ひいては第1事件原告・第2事件被告コン

セプト)が取得し,その余のプログラム(Vellum2.7 コード及び Extensions コード)

の著作権は,第2事件原告アシュラにおいて取得すると解するのが相当である。」

2 原判決90頁7行目の後に,行を改めて,次のとおり付加する。

「これに対し,第1事件被告コムネットは,ファモティクとの取引終了後も,甲

6(乙34)のマニュアルの使用許諾を受けていたのであり,第1事件原告・第2

事件被告コンセプトの著作権を侵害しないと主張するが,本件全証拠によるも,こ

れを認めるに足りる事実は存在しない。

したがって,第1事件被告コムネットの上記主張は,採用することができず,第

1事件被告コムネットが,平成16年5月18日(第1事件原告・第2事件被告コ

ンセプトがフューテックから Vellum3.0 コードのプログラム著作権及びそのマニュ

アルの著作権の譲渡を受けた日)以降,マニュアル(甲6,乙34)を複製,頒布

した行為は,第1事件原告・第2事件被告コンセプトが有する著作権を侵害する。」

3 原判決94頁4行目ないし8行目を以下のとおり改める。

「これに対し,第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,Vellum2.7 コードに

29
存在せず,Vellum3.0 コードで新たに追加されたファイルが Additions に当たるとし

て,その範囲は,甲64において特定されていると主張する。他方,第1事件被告

コムネットは,甲64により Additions の範囲を特定することはできず,Additions

の範囲は不特定であると主張する。しかし,上記第1事件原告・第2事件被告コン

セプト及び第1事件被告コムネットの主張は,いずれも採用することができない。

すなわち,甲2,30によれば,Vellum3.0 においては,「Autosurface」と記載さ

れた機能により,ワイヤフレームモデルで記述された対象に,「表面」の情報を追

加するが,これを行うための表面の情報であるサーフェスデータを自動作成する機

能を有するモジュールを総称して,Surface と表現しているものと理解することがで

きる。また,甲30には明示されていないものの,一般的に,Rendering モジュール

は, (陰影処理)
Shading 等を行って画像を描画する機能を指し,Hidden Line Removal

モジュールは,見えないはずの表面や輪郭の線を消去する機能を示すものと理解す

ることができる。さらに,Interface モジュールは,サーフェスデータを各種ファイ

ルと入出力する機能を示すものであり,甲30によれば,Vellum3.0 では,様々な

ファイル形式に対応した入出力を可能にすることが仕様として求められていたもの

と理解することできる。

したがって,Vellum2.7 コードに存在せず,Vellum3.0 コードで新たに追加された

ファイルが Additions に当たるとの第1事件原告・第2事件被告コンセプトの主張,

及び Additions の範囲が不特定であるとの第1事件被告コムネットの主張は,いずれ

も採用することができない。」

4 原判決94頁11行目の後に,行を改めて,次のとおり付加する。

「なお,第1事件被告コムネットは,複製又は翻案の判断に当たり,創作性のあ

る部分を特定する必要があると主張する。しかし,Vellum3.0 コードには,FE 言語

という特殊な専用言語を用いて表現されている部分がある上,その他の部分につい

ても,Vellum2.7 コードの一部が FE 言語で作成されていることを前提として,こ

れと協働するように,創作的な表現がされている部分が含まれていると推認するこ

30
とができるから,複製又は翻案の判断に当たり,モジュール単位の特定を超えて,

個別に特定する必要はないというべきである。」

5 原判決96頁8行目の後に,行を改めて,次のとおり付加する。

「この点,第1事件被告コムネットは,仮に,別紙「被告コムネット商品目録」

記載1,2のソフトウェアに,Additions の記述が残存しているとしても,プログラ

ムとして求められる機能を果たさなければ,プログラムの複製又は翻案に当たらな

いと主張する。しかし,上記のとおり,別紙「被告コムネット商品目録」記載1,

2のソフトウェアには,Additions が含まれているのであって,これに対し,外部か

ら見えるメニューにのみマスクを掛ける masking を行なっただけでは,Additions を

削除したとはいえず,これを複製,頒布すれば,プログラムに係る著作権侵害を構

成する。」

6 原判決98頁7行目ないし23行目を次のとおり改める。

「この点,第1事件被告コムネットは,Vellum3.0 コードのプログラム著作権が

第1事件原告・第2事件被告コンセプトに譲渡されたことが,プログラム登録原簿

登録され,公示されているとしても,ファモティク破産後,Vellum2.7 及び

Extensions の著作権を有する第2事件原告アシュラから,Ashlar-Vellum Graphite

(英語版)のソースコードの提供を受ける際,Additions 部分は削除済みであると

の説明を受けていたこと,現に Additions の機能を利用できなかったことからすれ

ば,第1事件被告コムネットに過失があったということはできないと主張する。

しかし,第1事件被告コムネットの上記主張は,採用することができない。すな

わち,第1事件被告コムネットは,コンピュータソフトウェアの研究開発,制作販

売等を業とする会社であり,自己の開発,制作するソフトウェアが他者のプログラ

ム著作権を侵害することがないように注意すべき義務を負うものと解される。また,

ファモティクが平成16年4月9日に破産宣告を受けたことは,破産手続上公告さ

れており,Vellum3.0 コードのプログラム著作権が第1事件原告・第2事件被告コ

ンセプトに譲渡されたことは,プログラム登録原簿に登録され,公示されていた(甲

31
4)。そうすると,第1事件被告コムネットは,第2事件原告アシュラから,

Ashlar-Vellum Graphite から Additions 部分は削除済みであるとの説明を受けてい

たとしても,自らこれを確認するなどの措置を採ることなく,また,権利関係の変

動について確認することなく,第1事件原告・第2事件被告コンセプトが著作権を

有するプログラムを利用した以上,その著作権侵害について過失があるというべき

である。」

7 原判決111頁6行目ないし13行目を次のとおり改める。

「また,第1事件原告・第2事件被告コンセプトが有するのは Vellum3.0 コード

のうち Additions に係るプログラム著作権であるところ,第2事件原告アシュラと

ファモティクとの間で締結された修正契約(甲2,18)において,第2事件原告

アシュラがファモティクに対して支払うべきロイヤリティと,ファモティクが第2

事件原告アシュラに対して支払うべきロイヤリティとがほぼ同率と定められている

こと(5.1条,5.2条)を考慮すると,Vellum3.0 コードにおいて,Vellum2.7

基本コード及び Extensions の寄与率と Additions の寄与率はほぼ等しいと考える

のが相当である。

これに対し,第1事件被告コムネットは,@「Additions の機能を有するディレ

クトリないしファイルすべてを含み,かつ,当該機能を利用できるソフトウェア(V

ellum3.0)における Vellum2.7 基本コード及び Extensions の寄与率」と「Additi

ons の寄与率」とがほぼ等しいとの前提に立って,Additions の機能を有するディ

レクトリないしファイルすべてを含むものではなく,かつ,当該機能を利用できな

いソフトウェア(Ashlar-Vellum Graphite,BOX-Vellum Graphite5)に係る損

害額を認定することは不合理である,A仮に Additions の寄与率が認められるとし

ても,当該寄与率は極めて低く,第1事件原告・第2事件被告コンセプトに賠償す

べき損害もほとんどない,B第1事件原告・第2事件被告コンセプトが二次的著作

物である Additions に関する著作権を有するとしても,二次的著作物の著作権は,

二次的著作物において新たに付与された創作的部分についてのみ生じ,原著作物と

32
共通し,その実質を同じくする部分には生じないから,第1事件原告・第2事件被

告コンセプトによる Additions に関する著作権に基づく損害賠償請求についても,

上記創作的部分の寄与率を考慮すべきである,C第1事件原告・第2事件被告コン

セプトの第1事件原告・第2事件被告コンセプト商品目録記載1〜6のソフトウェ

ア販売による1本当たりの利益は,第1事件原告・第2事件被告コンセプトの第2

事件原告アシュラに対する主張を前提にすると5315円であるから,これに第1

事件被告コムネットの販売本数と Addition の寄与率を乗じた額を超える損害賠償

請求は認められない,と主張する。

しかし,上記第1事件被告コムネットの主張は,採用することができない。すな

わち,上記のとおり,別紙「被告コムネット商品目録」記載1〜3,5,6のソフ

トウェアには,Additions が含まれるのであって,これに外部から見えるメニューに

マスクを掛ける masking を行なっただけでは,Additions を削除したとはいえず,こ

れを複製,頒布することにより,損害が発生しないとはいえない。また,上記のと

おり,第2事件原告アシュラがファモティクに対して支払うべきロイヤリティと,

ファモティクが第2事件原告アシュラに対して支払うべきロイヤリティとがほぼ同

率と定められていること(5.1条,5.2条)に照らすと,Vellum3.0 コードに

おいて,Additions の寄与率が極めて低いとか,第1事件被告コムネットが第1事

件原告・第2事件被告コンセプトに賠償すべき損害がほとんどないとはいえない。

さらに,Additions のうち Autoface の部分が二次的著作物であるとしても,アルモニ

コスの開発担当取締役であったBの確認書(甲22)によれば,第1事件原告・第

2事件被告コンセプトは,原著作物の著作者であるアルモニコスから,原著作者

権利の譲渡を受けたものと認められ,これに反する証拠は存在しないから,第1事

件原告 第2事件被告コンセプトの創作的部分の寄与率を考慮すべきとはいえない。


なお,第2事件における第1事件原告・第2事件被告コンセプトの第2事件原告ア

シュラに対する主張を前提として,第1事件の損害額を算定しなければならない理

由はない。」

33
8 原判決112頁3行目から115頁25行目を次のとおり改める。

「10 争点(10)(第2事件原告アシュラの損害又は損失)について

(1) 著作権侵害による損害額(著作権法114条2項

ア 上記のとおり,第1事件原告・第2事件被告コンセプトが販売する別紙「原

告コンセプト商品目録」記載1〜6のソフトウェアは,第2事件原告アシュラが代

理店である第1事件被告コムネットを通じて販売する別紙「被告コムネット商品目

録」記載のソフトウェアと市場において競合し得るものであるから,必要な事項を

考慮した上で,著作権法114条2項所定の規定により,第2事件原告アシュラの

損害額を算定することが許される。

イ 別紙「原告コンセプト商品目録」記載1〜3のソフトウェアの売上額

(ア) 別紙「原告コンセプト商品目録」記載1〜3のソフトウェアの売上額は,別

紙「月別売上一覧」記載のとおり,@平成16年9月1日から平成18年10月3

1日までの間が7459万3016円,A同年11月1日から平成21年7月15

日までの間が6071万8448円,合計1億3531万1464円であったと認

められる(甲66の5〜8,甲67の1〜12,甲68の1〜12,甲69の1〜

12,甲70の1〜3,甲125)。

(イ) また,別紙「原告コンセプト商品目録」記載4〜6のソフトウェアの売上

額は,別紙「月別売上一覧」記載のとおり,B平成16年5月18日から平成17

年6月30日までの間,合計1829万2769円(平成17年3月及び6月の返

品額合計13万7180円を控除した金額)であったと認められる(甲66の1〜

8,甲67の1〜3,6)。

(ウ) 上記(ア),(イ)によれば,第1事件原告・第2事件被告コンセプトが別紙「原

告コンセプト商品目録」記載1〜6のソフトウェアの販売により得た売上額は,合

計1億5360万4233円となる。

ウ 第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,甲110〜115に基づき,別

紙「原告コンセプト商品目録」記載1〜6のソフトウェアの経費として,部材費が

34
2423万7435円,開発費が2329万6915円であり,更に,販売支援費

5776万5275円,販促経費が1206万4152円であると主張する。しか

し,上記部材費,開発費,販売支援費及び販促経費について,これを裏付ける資料

が存在せず,別紙「原告コンセプト商品目録」記載1〜6のソフトウェアの開発な

いし販売の実態も判然としないから,第1事件原告・第2事件被告コンセプト主張

の上記経費を売上げからすべて控除することは妥当を欠く。そうすると,第1事件

原告・第2事件被告コンセプトが甲65において平均粗利益率であるとし,第2事

件原告アシュラも第1事件原告・第2事件被告コンセプトの利益率として争わない

68.30%をもって,第1事件原告・第2事件被告コンセプトの利益を算定する

のが相当である。上記認定に反する,第1事件原告・第2事件被告コンセプトの主

張は,これを認めるに足りる証拠が存在せず,採用することはできない。

また,第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,第2事件原告アシュラが有し

ているプログラムに係る著作権の対象は,Vellum2.7 基本コード及び Extensions コー

ドに係るものであるところ,「Vellum3.0 コードにおける Vellum2.7 基本コード及

び Extensions コードの寄与率」と「Additions の寄与率」の比率は,2500:4

000であると主張する。しかし,第1事件原告・第2事件被告コンセプトの上記

主張を認めるに足りる証拠は存在しないから,上記のとおり,Vellum3.0 コードに

おいて,Vellum2.7 基本コード及び Extensions コードの寄与率と Additions の寄与率

は,等しいと解するのが相当である。

エ 以上を前提として,Vellum2.7 基本コード及び Extensions コードのプログラム

著作権侵害により,第1事件原告・第2事件被告コンセプトが得た利益額を計算す

ると,次のとおり,合計5245万5843円となる。

(ア) 上記@の売上げによる利益 2547万3514円

(計算式)74,593,016×0.683×0.5

(イ) 上記Aの売上げによる利益 2073万5349円

(計算式)60,718,448×0.683×0.5

35
(ウ) 上記Bの売上げによる利益 624万6980円

(計算式)18,292,769×0.683×0.5

オ なお,第2事件原告アシュラは,別紙「原告コンセプト商品目録」記載1〜

6のソフトウェアについて,Vellum2.7 コード及び Extensions コードの使用料相当額

が1本当たり2万5000円であることを前提として,著作権法114条3項に基

づく損害又は損失額についても主張している。

しかし,本件修正契約(甲2,18)において,ファモティクが Vellum3.0 の販

売により第2事件原告アシュラに支払うべきロイヤリティの額は純収益の12%と

されているのであるから,Vellum2.7 コード及び Extensions コードに係る「著作権

の・・行使につき受けるべき金銭の額」(著作権法114条3項)については,こ

の定めを一応の基準とするのが相当であり,第2事件原告アシュラの主張する使用

料の額(ソフトウェア1本当たり2万5000円)は過大というべきである。

そして,上記使用料率によって算定した損害額が上記エの損害額を下回ることは

明らかであるから,著作権法114条3項に基づく損害又は損失額については判断

の限りでない。

カ 第2事件原告アシュラは,弁護士を選任して,第2事件において,著作権侵

害(不法行為)による損害賠償請求をしているところ,当該事案の難易,上記認容

額等諸般の事情を考慮すれば,上記弁護士費用のうち,少なくとも524万834

3円が上記不法行為と相当因果関係のある第2事件原告アシュラの損害であると認

められる(なお,第2事件原告アシュラが,第1事件原告・第2事件被告コンセプ

トに対し,著作権侵害による損害賠償として請求する弁護士費用は,著作権法11

4条3項に基づく請求のみにかかるものではなく,およそ第1事件原告・第2事件

被告コンセプトの著作権侵害により認められる損害全体に関するものであり,同条

2項に基づき損害を認定したからといって,判断が不要となるものと解することは

できない。)。

キ 小括

36
以上によれば,第2事件原告アシュラの著作権侵害による損害額は,5770万

4186円と認められ,本件全証拠によるも,他にこの認定を左右するに足りる証

拠は存在しない。

(2) 商標権侵害による損害額(商標法38条3項,4項)

ア 上記のとおり,別紙「原告コンセプト商品目録」記載4〜6の名称でCAD

ソフトウェア(電子応用機械器具)を販売することは,アシュラ商標権を侵害する。

イ 前記8(1)ア(オ)のとおり,第2事件原告アシュラがアシュラ商標権を取得し

たのは平成16年9月10日であるところ(丙10),同日から平成17年6月3

0日までの別紙「原告コンセプト商品目録」記載4〜6のソフトウェアの売上げは,

別紙「月別売上一覧」記載のとおり,合計1018万8719円(平成17年3月

及び6月の返品額合計13万7180円を控除した。)であったものと認められる

(甲66の5〜8,甲67の1〜6,甲110)。

商標法38条3項の「登録商標の使用に対し受けるべき金銭の額」は,当該商標

の価値(自他識別力,顧客吸引力の強弱)やその侵害の態様,侵害者の得た利益,

当事者間の競合関係その他の具体的事情を考慮して定められるべきである。この点,

第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,アシュラ商標は,日本国内において,

第2事件原告アシュラないしそのライセンシーによって使用されておらず,顧客吸

引力は認められず,別紙「原告コンセプト商品目録」記載1〜6のソフトウェアの

売上げに全く寄与していないから,第2事件原告アシュラに得べかりし利益として

の使用料相当額の損害は生じないと主張する。しかし,アシュラ商標は,第2事件

原告アシュラの販売代理店であったアシュラジャパンなどを介して,一定の知名度

を有しており,自他識別力,顧客吸引力を有していることが認められ(丙1,33

〜35,37,59,60),上記第1事件原告・第2事件被告コンセプトの主張

は採用することができない。そして,第2事件原告アシュラと第1事件原告・第2

事件被告コンセプトは競合関係にあること,第1事件原告・第2事件被告コンセプ

トによるアシュラ商標権の侵害期間が1年間にも満たないこと,その他本件に現れ

37
た一切の事情を総合考慮すれば,第1事件原告・第2事件被告コンセプトが別紙「原

告コンセプト商品目録」記載4〜6の名称でCADソフトウェア(電子応用機械器

具)を販売したことによって第2事件原告アシュラに支払うべきアシュラ商標の使

用料相当額は,上記売上額(1018万8719円)に5%を乗じた金額のうち,

少なくとも50万6098円と認めるのが相当である。

また,第2事件原告アシュラは,弁護士を選任して,第2事件において,商標権

侵害(不法行為)による損害賠償請求をしているところ,当該事案の難易,上記認

容額等諸般の事情を考慮すれば,上記弁護士費用のうち5万円が上記不法行為と相

当因果関係のある第2事件原告アシュラの損害であると認められる。

ウ 以上によれば,第2事件原告アシュラの商標権侵害による損害額は,55万

6098円と認められ,本件全証拠によるも,他にこの認定を左右するに足りる証

拠は存在しない。

(3) 小括

上記(1),(2)の合計は,5826万0284円であり,これが第2事件原告アシ

ュラの受けた損害額であると認められる。

なお,第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,第2事件原告アシュラに対し

て有する損害賠償請求権(Additions の不正使用による損害賠償請求権)を自働債権

とし,第2事件原告アシュラが第1事件原告・第2事件被告コンセプトに対して有

する不当利得返還請求権(Vellum2.7 コード,Extensions コードの不正使用及びアシ

ュラ商標の不正使用による不当利得返還請求権)を受働債権として,両者を対当額

で相殺する旨の意思表示をしているが(争点(10)イ),前記第2の1(2)のとおり,

原告アシュラは,第1事件原告・第2事件被告コンセプトに対し,不法行為による

損害賠償請求権と不当利得返還請求権を選択的に主張しているところ,上記(1),(2)

において認容されたのはいずれも不法行為(著作権侵害,商標権侵害)による損害

賠償請求権であるから,上記相殺の抗弁については判断の限りでない。」

9 原判決115頁25行目の後に行を改め,
「その他,第1事件原告・第2事件

38
被告コンセプト及び第1事件被告コムネットは,縷々主張するが,いずれも,理由

がない。」を付加する。

10 結論

以上のとおり,原判決は結論において相当であり,本件各控訴はいずれも理由が

ないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第3部




裁判長裁判官
飯 村 敏 明




裁判官
知 野 明


裁判官中平健は,転補につき,署名押印することができない。




裁判長裁判官
飯 村 敏 明




39
(別紙)

被告コムネット商品目録



次の名称を有するCADソフトウェア(ただし,マニュアルを含まない)



1 BOX-Vellum Graphite 5



2 Ashlar-Vellum Graphite



3 BOX-Vellum 3.5



4 BOX-Vellum 4.0



5 BOX-Vellum 4.01



6 BOX-Vellum 4.03




40
(別紙)

原告コンセプト商品目録



次の名称を有するCADソフトウェア(ただし,マニュアルを含まない)



1 DraftBoard Unlimited V1.0 for Mac OS X



2 DraftBoard Unlimited V1.0 for Windows



3 DraftBoard Ver.2.0 Hybrid 2D/3D CAD



4 VellumCAD Professional edition



5 VellumCAD standard 6.0J



6 Mac Vellum V1.0




41
(別紙)

標章目録



1 ASHLAR−VELLUM




2ドラフティング・アシスタント




42
(別紙)

商標目録



登録番号 第4904754号

出願年月日 平成16年11月2日

登録年月日 平成17年10月28日

商品及び役務の区分 第9類

指定商品 写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,測定

機械器具,電線及びケーブル,電気通信機械器具,

電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲ

ームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用

のプログラムを記憶させた電子回路及びCD−R

OM,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動

演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD−

ROM,映写フィルム,スライドフィルム,スラ

イドフィルム用マウント,録画済みビデオディス

ク及びビデオテープ,電子出版物

登録商標




43
登録番号 第4904753号

出願年月日 平成16年11月2日

登録年月日 平成17年10月28日

商品及び役務の区分 第9類

指定商品 写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,測定

機械器具,電線及びケーブル,電気通信機械器具,

電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲー

ムおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプ

ログラムを記憶させた電子回路及びCD−ROM,

レコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プロ

グラムを記憶させた電子回路及びCD−ROM,映

写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム

用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオ

ープ,電子出版物

登録商標




44
登録番号 第3174407号

出願年月日 平成5年9月16日

登録年月日 平成8年7月31日

商品及び役務の区分 第9類

指定商品 電子応用機械器具及びその部品

更新登録年月日 平成18年5月2日

登録商標




45