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事件 昭和 49年 (ワ) 2939号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 1977/03/30
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 被告は、別紙目録記載(一)の図書の出版をしてはならない。
被告は、別紙目録記載(二)の物件を廃棄せよ。
訴訟費用は、被告の負担とする。
この判決は、仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の申立
一 原告1 主文第一ないし第三項同旨2 仮執行宣言二 被告1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
原告の請求原因
一 「日本人の海外活動に関する歴史的調査」と題する調査報告書(以下「本件著作物」という。)は、近代における日本及び日本人の在外財産、特にその歴史的生成過程に関する調査報告に関する著作物であつて、別紙比較対照表中、本件著作物の欄記載のとおり、合計一一篇、三七冊から構成されている。しかして、大蔵省管理局は、昭和二四年一月頃から昭和二五年七月までの間、政府部内の関係機関に配布するため、同管理局名義をもつて、約二〇〇部に限り、全三五巻に分けて印刷して、本件著作物の複製刊行(この刊行分を以下「本件旧版」という。)をした。
二 本件著作物についての原告の著作活動の概要は、次のとおりである。
1 日本国政府は、昭和二一年頃、わが国が遠からず連合国に対する賠償問題及び日本人の在外資産の補償問題などに当面することを考慮し、これに備えて、右諸問題に関する内部執務資料を整備することを企画し、昭和二一年勅令第二九二号「大蔵省特殊財務部臨時設置制」の施行により、大蔵省特殊財務部を設置し、同財務部をして、「連合国最高司令官の要求に基く在外財産の調査に関する事項」(同設置制第1条第3号)などを所掌させることとした。
2 次いで、政府は、昭和二一年八月、右在外財産の調査を担当する機関として、
大蔵省及び外務省の申合せに基づく在外財産調査会規程(昭和二一年九月二八日実施)により、大蔵省の附属機関として、在外財産調査会(以下「調査会」という。)を設置した。
なお、右当時施行されていた旧憲法下において、行政各部の官制は、原則として、勅令をもつて、定められるところ、国民の権利義務と直接に関連しない国家機関については、必ずしも勅令の公布を必要とするものではなく、また、その後昭和二二年五月三日施行の現行憲法下においても、国民の権利義務と直接に関連する権限を有する行政機関については、法律をもつて定められるところ、右のような権限を有しない行政機関については、法律をもつて、定めることを要せず、任意の形式をもつて、定め、又は特に定めをしないで設置、廃止することも妨げないのである。しかして、調査会は、右のとおり、勅令により、設置されなかつたが、国民の権利義務と直接に関連しない機関であるので、その必要はなかつたのである。したがつて、調査会は、旧憲法下及び現行憲法下においても、国家機関であるということができる。
3 調査会は、その事務として、日本及び日本人の在外財産の調査を実施したが、
その際、まず、海外からの引揚者からアンケートをとつて、外国にある日本企業の終戦時におけるいわば貸借対照表的、静態的な資産状態を示し得る資料を収集した。次いで、調査会は、右在外財産の歴史的生成過程に関する調査を行い、経済史的見地から分析整理をして、その調査結果を報告書の形式に編さんすることを企画し、延べ合計約三〇〇名の臨時職員を任命して、右調査を行わせた。その具体的方法として、調査会は、その各部会(満洲、朝鮮、台湾、北支、中南支、樺太、欧米、南方T、南方U、南洋群島の各部会)の調査地域について、統一的な構想の下に調査項目を章単位で分類し、右職員らに対し、原則として、章を単位として、客観的に在外財産の生成過程などについて、報告書草案を執筆して提出することを命じた。右職員らは、右指示により、主として既存の公表された資料又は自己の所持する資料を分析して調査を行い、右報告書草案を作成し、昭和二二年一二月頃、その作成を完了した。かくて、調査会は、その頃、各部会毎に右報告書草案の提出を受け、総務部会において、「総論」「朝鮮篇」「台湾篇」「樺太篇」「南洋群島篇」「満洲篇」「北支篇」「中南支篇」「海南島篇」「南方篇」「欧米其の他諸地域篇」の一一篇三七冊からなる報告書として、これを編さんし、本件著作物を編さんしたのである。
4 調査会の臨時職員らは、当初、嘱託として任命されたが、その後、嘱託制度の廃止に関する政令(昭和二三年政令第五六号)により、常勤の調査員、事務補助員又は翻訳員に任命換された。右政令は、嘱託制度を廃止し、臨時職員制度の合理化、明確化を図ろうとしたもので、常勤又は非常勤の臨時職員を置き得るとし、その任命は、職名、相当級別、給与、職務内容などを明記した辞令書を交付して行い(第4条第1項)、右臨時職員は一ないし三級官と同格の政府職員とされ、その給与は官吏に準じ(同条第二項)、常勤の臨時職員には官吏服務規律及び官吏懲戒令が適用される(第六、第8条)と定めている。しかして、調査会の臨時職員らは、
いずれも常勤であり、嘱託から右のように任命換され、職名が変更されたが、その前後を通じ、実質的には勤務形態や給与などの勤務条件には何らの変更がなく、月給は官吏に準じて支給され、官吏服務規律及び官吏懲戒令の適用を受ける地位、身分にあつたから、実質的意義における官吏であつた。
5 しかして、調査会は、昭和二四年一月、廃止され、その際、大蔵省管理局(現在の理財局)は、調査会の事務を承継した。
三 以上の次第であるから、調査会は、在外財産の調査に関する事項を所掌事務とする国家機関であるところ、本件著作物の著作を発意し、その所属の職員に対し、
その職務として、報告書の執筆、提出を命じ、本件著作物を編さんした。
本件著作物は、右のとおり、官公庁の著作物ではあるが、近代における日本の海外経済活動を国内経済の発展と関連づけながら、経済史的見地から叙述したものであつて、海外諸地域における政治、経済、統治、教育関係などの事項を含み、史料的、学術的価値の高いものであり、また、一般国民に対し、周知徹底させることを目的としたものではなく、前述のとおり、政府部内の執務資料とする目的に出たものであり、さらに、本件著作物には調査会の印章、著名もないから、旧著作権法(以下「旧法」という。)第2条第1号所定の官公文書には該当しない。したがつて、本件著作物の著作者は、調査会の事務の帰属主体たる原告であり、また、その著作権は、原始的に原告に帰属するものである。
四 被告は、図書の出版、販売などを目的とする株式会社であるが、本件旧版の復刻版と称して、原告に無断で昭和四八年五月末発行の予定で、別紙目録記載(一)の図書の発行(この発行予定分を以下「本件新版」という。)を企図し、別紙目録記載(二)のネガフイルム(以下「本件ネガフイルム」という。)に基づいて、その印刷に着手している。ところで、本件旧版と本件新版の内容を比較すると、別紙比較対照表記載のとおり、本件新版においては、本件旧版の一部の章を省略し、その余の大部分の記述をそのまま収録して、適宜合冊したものである。したがつて、
本件新版の発行は、本件著作物の複製発行に該当することが明らかである。
五 よつて、原告は、著作権法第112条に基づき、被告に対し、本件新版の発行の差止を求めるとともに、本件ネガフイルムの廃業を求める。
原告の請求原因に対する被告の答弁
一 請求原因一の第一段は争う、第二段のうち、本件旧版が大蔵省管理局名義で約二〇〇部刊行されたことは認めるが、その余の点は不知。
二 同二の1のうち、大蔵省特殊財務部が原告主張の勅令により設置されたことは認めるが、その余の点は争う。
三 同二の2、3は争う。
四 同二の4、5は不知。
五 同三のうち、本件著作物が原告主張のような価値を有していること、本件著作物には調査会の印章、署名がないことは認めるが、その余の点は争う。
六 同四は認める。
被告の主張
一 調査会は、国家機関ではないのであつて、その事情は、次のとおりである。
1 調査会は、原告主張のとおり、旧憲法下に勅令に基づかないで設置されたものであるから、国家機関ではあり得ない。ちなみに、調査会と同種の事務を管掌する大蔵省特殊財務部は、昭和二一年勅令第二九二号をもつて、設置されていることからみても、調査会は、勅令に基づいて設置される必要があつたことは明らかである。
また、右主張が認められないとしても、調査会は、原告主張のように在外財産の調査を管掌するものであれば、その職務の遂行に際し、国民の権利義務に直接関連する可能性がないとはいえないから、勅令に基づかないで、設置されることは許されないものである。
さらに、仮に国家機関が勅令に基づかないで設置される場合があるとしても、外部に表われる行為としては、職員の任官行為がある筈であるが、調査会には、かかる職員の任官行為があつたとはいえない。
もつとも、調査会は、その職員に対し、調査会名義で、その事務を嘱託するとの辞令用紙を準備していたとしても(甲第一一号証参照)、具体的に右辞令交付の対象となつた者を特定できるような大蔵次官及び外務次官の決裁があつたことが明らかでなく、かつ、本件著作物の執筆者で、右辞令交付の対象となつた者も明らかでない。
また、調査会は、昭和二三年三月三一日、嘱託制度の廃止に関する政令(昭和二三年政令第五六号)の施行に準じて、調査会名義で、その職員に対し、調査員、事務補助員、翻訳員に任命するとの辞令(甲第一二号証)を交付したが、同令第5条によれば、右の任命行為は当該官庁の長が内閣総理大臣の承認を得て行うものと規定されているところ、調査会長が右の規定に従つて、右任命行為を行つたことは明らかでない。さらに、右辞令が本件著作物の執筆者に交付されたものともいえない。けだし、原告は、右執筆者の数が合計約三〇〇名であると主張するが、右辞令の交付を受けた者の数は、これと一致せず、これを下廻ることが明らかだからである(甲第一二号証参照)。
したがつて、調査会が国家機関であることを前提とする原告の主張は、理由がない。
2 仮に右1の主張が理由がないとしても、調査会は、原告主張のとおり、現行憲法下に法律又は政令に基づかないで、存続するものであるから、国家機関ではあり得ない。すなわち、現行憲法施行の日である昭和二二年五月三日から施行された行政官庁法(昭和二二年法律第六九号)第12条によれば、各省等の部局、機関の設置は法律又は政令の定めるところによるとされ、右法律に代る現行国家行政組織法第7条第8条によれば、内部部局、付属機関、その他の機関の設置は法律の定めるところによるとされている。
このように、行政官庁法は、現行憲法下において、国会の意思尊重、内閣の行政責任の明確化という理念に基づいて、行政組織については、従来の官制に代つて、法律又は政令の根拠を要することとしたものと解されるから、従来勅令によらずに設置された国家機関があつても、現行憲法、行政官庁法の施行と同時に存立の法的根拠を失い、国家機関ではあり得なくなつたものというべきである。
ところで、調査会は、原告主張のとおり、大蔵省、外務省の申合せにより、設置されたものにすぎず、右申合せは、政令などの形式的効力を有しないから、調査会は、右昭和二二年五月三日からは国家機関としての法的根拠を欠き、私的な権利能力のない社団にすぎなくなつた。しかも、調査会が原告主張のとおり、国家機関であつて、昭和二四年一月、廃止されたとすれば、行政官庁法第12条により、法律又は政令により、廃止されるべき筈であるのに、かかる事実も存在しなかつた。しかして、原告において、本件著作物が完成したと主張する時期は昭和二二年五月三日以後であつたから、右当時、調査会が国家機関であつたことを前提とする原告の主張は、理由がない。
二 仮に調査会が原告主張のように昭和二四年一月、廃止されたとすれば、本件著作物についての著作権は、旧法第10条により、すでに同日限り消滅している。
三 仮に調査会が国家機関であつたとしても、原告は、本件著作物についての著作権を取得していない。すなわち、旧法第11条第1号によれば、官公文書は著作権の目的物となり得ない旨が規定されているところ、その理由は、官公文書が一般に周知されるべき性質を有するから、一般国民は、これを知る権利があり、国家、地方公共団体などにおいて、これを一般国民の知り得る状態に置く義務があることに由来する。なお、旧法における右官公文書の範囲は、現行著作権法第13条各号所定のいわゆる有権文書に限定されず、これよりも広く解すべきものであり、その解釈については、同法第32条第2項が斟酌されるべきである。
しかして、本件著作物は、原告主張のように国家機関である調査会が在外財産調査という担当事務遂行のため、その職員が職務として執筆し、政府部内の執務資料とするものであり、また、本件著作物は、その序ないし例言からすれば、その内容を広く一般国民に周知させる意図のもとに作成されたことが明らかであり、さらに、学術的、資料的価値も高いので、国民全体の財産ともいうべきものである。したがつて、本件著作物は、旧法第11条第1号所定の官公文書に該当するから、原告がその著作権を取得することはない。
四1 仮に右主張が理由がないとしても、旧法下においては、法人若しくは団体は著作物の著作者とはなり得ないものであつたから、調査会の事務の帰属主体であると主張する原告は、本件著作物の著作者ではあり得ないのである。また、旧法下においては、いわゆる職務著作の場合には、実際に著作行為を行つた者が著作者であり、その著作権もその者に原始的に帰属し、その者の使用者に当然に帰属することはあり得ない。ただ、使用者に著作権を帰属させるという趣旨の特約が存在する場合にのみ使用者に著作権が帰属することはあるが、単に実際に著作行為を行つた者に著作権が留保されない了解があつたということでは足りないと解される。したがつて、本件著作物について、原告がその著作者であり、著作権者であるということはできない。
2 仮に職務著作について、法人若しくは団体が著作者となり、その著作権者となり得るものであるとしても、その範囲は限定的に解釈されなければならない。けだし、実際に著作行為を行つた者以外の者が著作者となり、あるいは著作権者となることは、一般原則の例外だからである。ところで、旧法においては、この点について、明文の規定はなかつたから、その解釈については、現行著作権法第15条の規定が斟酌され、その範囲を越えないものであることを要する。
しかして、これを本件についてみるのに、調査会は、昭和二一年九月二八日、設置されたが、その頃から大蔵省及び外務省の職員をして、アンケート調査などの方法により、日本企業などの終戦時における在外財産の静態的な調査を進めて来たところ、この本来の調査に関連して、副次的な調査として、右在外財産の歴史的生成過程に関し、経済史的見地からの調査を行う必要があると考え、この歴史的調査を訴外Aら約三〇〇名の者に嘱託して行わせ、本件著作物を執筆させた。ところで、
右約三〇〇名の者は、いずれも海外からの引揚者であり、その身分については、右一の1にも述べたとおり、任官行為があつたわけではなく、公務員ではなく、嘱託として、取り扱われたものであり、なお、その後、国の機関たる各庁(調査会を含まない。)に適用される嘱託制度の廃止に関する政令(昭和二三年政令第五六号)の施行に準じて(甲第一二号証参照)、調査会の職員で調査員、事務補助員、翻訳員となつたものがあるとしても、右の者らがこれに当るかどうかは明らかではない。しかして、右の者らは、右Aら四名の編集委員が構成した篇別、章別に従つて、各章毎程度の調査、執筆を分担し、調査会側からは、報告書は客観的に記述することの指示を受けたが、執筆内容などについての指示を受けず、また、資料の提供を受けたわけでもなく、主として、自己の所持する資料の分析、整理によつて、
右調査、執筆をしたのである。なお、右Aら四名の編集委員は、各執筆者の原稿を取りまとめたにすぎず、加筆訂正をしたことがなく、昭和二二年一二月頃、調査会に対し、これを報告書として、提出し、また、その際、調査会と執筆者らとの間には著作権の帰属などについての特約もされなかつた。
右事実によれば、本件著作物の執筆者らは、調査会から指揮監督を受ける関係にはなく、その職務上の義務として、本件著作物の執筆をしたものではなく、その執筆を嘱託ないし委嘱されたにすぎず、また、本件著作物は、調査会の統一的な構想の下に執筆者らが分担執筆したものではなく、各自の寄与ないし関与が著作物の中に融合しているものでもないというべきである。したがつて、本件著作物は、いわゆる嘱託著作物にあたり、現実にその著作行為を行つた者が著作者であり、その著作権もその者に原始的に帰属するのであり、原告がその著作者であり、著作権者であるということはできない。
3 以上のとおり、本件著作物については、原告がその著作者及び著作権者でないことは明らかである。
ちなみに、右の事実は、次の諸事情に徴しても首肯できるところである。すなわち、本件著作物の複製発行にあたる本件旧版は、原告の著者名義で刊行されたものではない(旧法第6条参照)うえ、その著作権は、国有財産に関する台帳にも記載がない(国有財産法第32条、第五ないし第7条参照)。また、訴外株式会社原書房(以下「原書房」という。)は、本件著作物の一部である「台湾統治概要」と全く同一内容の図書を複製発行し、さらに、本件著作物の内容が他のいくつかの文書に節録引用されているが、原告は、これらについて、警告をするなどの措置を講ずることなく、放置して来た。
被告の主張に対する原告の反論
一 被告の主張事実は争う。
二 行政官庁法の立法趣旨は、天皇の官制大権が否定されるのに伴い、従来、勅令により制定されていた各省官制等がその法的根拠を失うため、これを法律による形式に改め、もつて、旧憲法から現行憲法への移行を可能にすることにあつた。そして同法第1条によれば、「内閣総理大臣及び各省大臣の分担管理する行政事務の範囲は、法律又は政令に別段の規定あるものを除く外、従来の例による。」と規定され、また、同法第12条によれば、「総理庁、各省、内閣官房及び法制局には、法律又は政令の定めるところにより、所要の部局及び機関を置く。」と規定されている。ところで、右「法律又は政令」は、日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律(昭和二二年法律第七二号)及び日本国憲法施行の際現に効力を有する勅令の規定の効力等に関する政令(昭和二二年政令第一四号)により、従来の勅令で法律により規定すべき事項に関するものは法律と同一の効力を有し、それ以外のものは政令と読み替えるものとされたので、従来、勅令により設置されていた部局及び機関は、現行憲法施行後も従前どおり存続することとなつた。
ところで、各省庁に置かれる部局及び機関が必ずしも法律により、その設置を規定すべきものでないことは、請求原因二の2に述べたとおりであるところ、調査会は、外部に関係することがなく、単に内部において、補助又は答申をする機関であるから、その設置、廃止、変更は、法律により規定する必要はない。したがつて、
行政官庁法施行当時、すでに勅令によることなく設置されていた調査会は、同法第12条の規定にかかわりなく、有効に存続するものと解すべきである。
なお、行政官庁法は、昭和二四年五月三一日まで施行期間が延長され、これに代わる国家行政組織法は、同年六月一日、施行されたが、調査会は、前述のとおり、
これより先同年一月、廃止されたから、同法第3条第8条は、調査会には適用され得ない。
被告の抗弁
仮に本件著作物についての著作権が原告に帰属するものであるとしても、原告の本件請求は、左記の事情からすれば、権利の濫用として、許されないものである。
一 出版の自由は、表現の自由の一環として、憲法第21条により、国民の基本的権利の一つとして、保障されるところ、その自由を制約できる範囲、程度は、合理的な基準のもとに決定されるべきものである。
二 一方、著作権法により保護される権利は、狭義の著作権と著作者人格権とがあるところ、著作者人格権の侵害は、著作者に多大の苦痛を与え、その創作の意欲をそぐことなどを考慮すれば、これを保護し、その侵害行為を制約することには合理性が認められる。これに反し、著作権は、著作物を複製し利用する権利であつて、
その利用により、使用料などの収益を挙げるもので財産権であるから、憲法第29条第2項により、公共の福祉の観点から一定の制約を受けるべきものである。
ところで、著作権の対象たる著作物は、精神的産物であつて、先人の文化的遺産に負うところが大きく、その自由な相互的利用は、人類社会の進歩発展の根源となるから、著作権については、その著作権者の私的利益は尊重され、保護されなければならないが、他面、社会的公共的利益を配慮して、種々の制約がされ、その保護の限界が画されるのである(著作権法第1条第51条第57条、旧法第30条等参照)。しかして、著作権は、その公共的性格からみて著作権法所定の制約事項に止まらず、その権利の行使が権利の濫用となる場合にも許されないが、その基準としては、一般的には著作権の利用行為の差止により、著作権者が受ける利益(財産的利益)に比し、侵害者の受ける不利益が甚大である場合には、右権利の濫用にあたると評価されるべきである。これを分説すれば、次の諸点が問題とされる。
1 著作物の社会的、文化的価値が高度であり、一般国民特に研究者らによる右著作物の自由な利用の必要性が大であり、その成果として、学問的進歩のあり得ることが客観的に予測されること2 著作権者が合理的な理由がないのに、右のような著作物を研究者らに利用できない状況に置くこと3 著作物の無断利用行為があつても、著作権者が全く損害を受けず、又は軽微な損害を受けるにすぎない場合あるいは著作権者が多少の損害を受けても社会公共のために受忍することが妥当であると認められること4 なお、右のいずれの場合にも、右著作物の無断利用行為は、専ら営利を目的とするものではないこと三 しかして、以上の諸点を本件についてみるのに、原告の本訴請求は、本件著作物の著作権(財産権)に基づき、本件新版の発行という本件著作物の利用行為についての差止請求をするものであるところ、原告は、本件新版の発行の差止により、
問うに値しない程度の利益を受けるにすぎないのに反し、右差止により、被告を含め一般国民は、極めて甚大な損害を受けることになるのであつて、その理由は、次のとおりである。
1 本件著作物の価値 本件著作物は、戦前、戦中の日本及び日本人の海外(植民地、占領地全域にわたる。)における事業の最終段階における状態又はその評価などに関する基礎的調査を体系的に集大成した報告書であり、その在外財産獲得の方法などを明らかにしている。
右事実によれば、本件著作物は、日本及び日本国民の歴史的教訓とすることを重大な目的とし、内容としているから、戦前、戦中の日本及び日本人の海外における経済的活動の総合的研究について役立つのみならず、アジア全域にわたり、外国資本の輸入などが顕著となつている近時においても、過去の歴史を教訓として示す意義がある。したがつて、本件著作物は、史料的、学術的にみて、
他に類をみない高度の価値を有し、近代日本史学、アジア史学、日本植民地史ないし日本帝国主義史研究などの発展に大きく寄与することが予測され、ひいては日本国民が正しく社会を発展向上させて行くための教訓、参考書となるものというべきである。
2 原告の本件著作物を利用させるべき義務 国家は、元来、国民のために存在するものであるところ、原告は、次のような理由からして、本件著作物を進んで一般国民に利用させ、流布すべき義務がある。
すなわち、第一に、国家機関がその職員をして、本件著作物を著作させた以上、
右著作物は、国民の福祉、文化を向上させ、国家社会の発展に寄与することを目的としたものであるうえ、その必要経費も国民の税金をもつて、まかなわれたものであり、国民のために、その著作活動がされたものというべきである。第二に、わが国においては、明治維新以来、時の政治活動、経済活動など国家の活動領域全般にわたる知識、情報は、官公庁により独占的に把握されて来た状態にあり、かかる点についての調査は、国家の経済力と調査能力がなければできない事項である。したがつて、原告が著作権を有する著作物の利用は、歴史学のみならず、人文、社会、
自然諸科学全般にわたり、必須であり、学問と文化の進歩、発展のために不可欠のものである。第三に、憲法の基本理念である国民主権主義からしても、国が著作した著作物については、原則として、一般国民の自由利用が認められるべきである。
また、国民は、憲法第21条により、表現の自由の一環として、知る権利を保障されるところ、国の著作物の内容は、国民の知る権利の対象となるのである。
しかるに、原告は、本件著作物の完成後二〇年以上を経過した今日に至るまで、
これを一般国民が利用できない状態に置き、これを一般国民に利用させ、流布すべき義務を怠つている。なお、大蔵省管理局が刊行した本件旧版は、極く僅かの図書館などに備え付けられているにすぎず、しかも、全巻が備え付けられているわけではないので、特定の官吏や研究者のみがこれを利用できるにすぎない。このように、原告が本件著作物を一部の官吏又は原告と特別の関係を有する研究者らのみに利用させ、その一部の引用をさせるなどしていることは不合理であり、法の下の平等に反し、許されないところである。
3 原告の財産的損害の不存在 原告は、被告が本件新版の発行をしても、何ら財産的損害を受けることはない。
しかも、被告は、単に営利を目的として、本件新版の発行をするものではなく、本件著作物を公共の利用に供することにより、学問、文化の向上発展を図ろうとするものであり、また、本件著作物の利用行為により、独占的、排他的な権利を得ようとしているものではないから、原告が被告の右利用行為を黙過したとしても、一部の国民の営利目的に奉仕したとはいえない。
4 官公庁の著作物の複製発行に関する商慣習 被告が本件新版の発行をしようとした昭和四八年五月当時、官公庁が著作権を有する調査報告資料などの複製発行については、官公庁の許諾を要しない商慣習が存在したといえる。
5 著作権法に定める紛争処理手続の無視 原告としては、本件新版の発行の差止については、前述のような重大な問題点があつたから、直ちに本件訴訟を提起すべきではなく、むしろ、著作権法第105条以下に規定する紛争処理手続の利用を考えるべきであるのに、そのような措置をとらなかつた。
6 被告の財産的損害の発生 被告は、本件新版の発行の準備のため、すでに本件旧版八、四〇〇頁の大部分のフイルム撮影を終了しており、現在、その準備の続行を中止させられることになれば、甚大な損害を受けることになる。
四 以上のとおり、原告は、本件著作物の完成後二〇年余にわたり、これを一般国民に利用させる義務を怠り、これを放置して来たものであり、被告による本件新版の発行により、何らの損害を受けるものではなく、その発行の差止を求める利益も必要もない。これに反し、被告が本件新版の発行を差し止められるならば、その出版の自由を不当に制約されるうえ、一般国民の知る権利は侵害され、学問研究の前進、ひいては社会の文化、学問の向上も侵害され、官公庁の著作物の複製発行に関する商慣習も無視され、被告のみならず、一般国民も甚大な損害を受けることになるので、原告の本件請求は、権利の濫用として、許されないものである。
被告の抗弁に対する原告の答弁及び反論
一 原告の答弁 抗弁事実中、本件著作物が史料的、学術的にみて、高度の価値を有する著作物であること、原告が本件について、著作権法に定める紛争処理手続をとらなかつたことは認めるが、その余の点は争う。
二 原告の反論1 著作権の公共性による制約について 被告は、著作権の公共性を強調して、著作権に基づく権利の行使が権利の濫用と評価されるべき基準を挙げるが、右基準は、承認できるものではない。けだし、現行著作権法は、それ自体で著作物の私権性とその公共的性質との調和の問題を解決しようとして、同法中に著作権の内容が公共的性質による制約を受けるように規定しているからである。すなわち、同法は、著作権を私権として定める(第17条第1項後段)が、その公共的性質を考慮して、保護期間を定め(第51条以下)、範囲を限定して自由利用を認め(第30条以下)、強制許諾の制度を設ける(第67条以下)などして、その内容を規制するところ、右規制を除けば、著作権者による著作権の排他的、独占的行使を認め(第二一ないし第28条第61条、第六三、
第79条など)、侵害行為に対する差止請求権を認め(第112条)、さらに、侵害行為者に対する罰則を定め(第119条以下)、私権としての著作権を保護している。したがつて、著作権者が侵害行為の差止請求権の行使について、再度、著作権の公共的性質に基づいて、権利の濫用として、制約を受けることはあり得ないものというべきである。
2 本件著作物の価値について 本件著作物は、被告主張のように高度の史料的、学術的価値を有するものであるが、このために第三者がその著作物を無断で出版することが是認されるべきものではない。また、出版の自由は、著作権を有する著作物について、これを出版する自由を意味するが、第三者の著作物を無断で出版する自由を意味しない。
3 国家の本件著作物を利用させる義務について 原告は、著作権法により、
私人と同様に本件著作物に対する著作権の保護を受けるものであり、被告主張のように、これを一般国民に広く利用させる義務を負うものではない。なお、研究者らは、所定の図書館において、本件著作物を利用する方法などがあり(甲第一四号証の一、二)、本件著作物を学術上利用する道が閉ざされているわけではない。
4 原告の財産的損害の不存在について 原告は、国有財産としての著作物を特定の私人に対して使用収益させるときは、
適正な対価としての使用料を徴収すべきものとされている(財政法第9条第1項参照)から、被告が無断で本件著作物の複製発行をすることにより、右使用料相当額の損害を受けるのである(著作権法第114条)。
5 官公庁の著作物の複製発行に関する商慣習についる 官公庁が著作権を有する調査報告資料についても、通常は、その複製発行が官公庁の許諾を得てされているのであつて(甲第七号証の一、二、甲第九号証)、仮にたまたま無断で複製発行がされた事例が数例あつたとしても、原告としては、右のような事例を知つた場合には、侵害者に対し、抗議をして来たのであり(甲第八号証の一、二、甲第一〇号証)、これを容認したことがなく、結局、被告主張のような商慣習が存在するとはいえない。
なお、他の著作物の著作者がその著作物中に本件著作物の一部を引用しても、これは、その全部の複製発行とは同列に論ずることができず、一部引用は、旧法第30条第1項第2号、著作権法第32条の規定により、適法とされることがある。
6 著作権法に定める紛争処理手段について 元来、原告が本件について、訴訟手続と右紛争処理手続のいずれを選択するかは原告の任意である。
また、原告が本件訴訟を提起するに至つた経過は、次のとおりであつて、右措置は、正当なものである。すなわち、大蔵省においては、昭和四六年頃、原書房から本件著作物について、出版権の設定を受けたい旨の申入を受けたので、検討したが、本件著作物が資料的に十分なものとはいえず、政府の調査結果として外部に刊行するのには、なお相当確認をして、誤りがないようにする必要があること、本件著作物の執筆者らは、政府の内部資料となるものとして執筆しているので、これを外部に発行することについては、執筆者らの個人的立場を配慮する必要があることなどの理由から、右時点においては、出版権の設定に消極の判断をするに至つた。
ところで、原告は、昭和四八年三月初旬頃、被告が本件著作物の複製発行を予定していることを知り、大蔵事務官訴外Bを介して、被告に対し、同年三月八日、電話をもつて、次いで、同年三月一三日、書面をもつて、それぞれ右発行の中止を申し入れたが、被告が何ら誠意ある態度を示さなかつたため、本件訴訟を提起するに至つたのである。
証拠(省略)
理 由一 本件著作物と本件旧版成立に争いのない甲第五号証、乙第二三、第二九号証の各一、二、第三〇号証の一ないし三、第三一ないし第三四号証の各一、二、第三五号証の一ないし三、証人A、同Bの各証言、弁論の全趣旨を総合すれば、本件著作物は、近代における日本及び日本人の在外財産特にその歴史的生成過程に関する調査報告に関する著作物であつて、別紙比較対照表中、本件著作物の欄記載のとおり、合計一一篇、三七冊からなることが認められ、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。
また、本件旧版が大蔵省管理局名義で約二〇〇部刊行されたことは、当事者間に争いがなく、右事実と証人A、同Bの各証言、弁論の全趣旨を総合すれば、大蔵省管理局は、昭和二四年頃から昭和二五年頃までの間、政府部内の関係機関に配布するため、同管理局名義をもつて、約二〇〇部に限り、全三五巻に分けて、印刷して、本件著作物の複製物たる本件旧版を刊行したことが認められ、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。
二 調査会と本件著作物の著作1 前示甲第五号証、乙第二三、第二九号証の各一、二、第三〇号証の一ないし三、第三一ないし第三四号証の各一、二、第三五号証の一ないし三、成立に争いのない甲第一、第二号証の各二、第六、第一三号証、乙第四五号証、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるので真正な公文書と推定すべき甲第一、第二号証の各一、第一一、第一二号証、証人A、同Bの各証言、弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。
(一) 日本国政府は、終戦直後の昭和二〇年頃、わが国が近い将来、連合国に対する賠償問題、日本人の在外資産の補償問題などに当面することを予想し、これに備えて、右問題に関する内部執務資料を整備することを企図し、昭和二一年勅令第二九二号「大蔵省特殊財務部臨時設置制」の施行により、大蔵省特殊財務部を設置し、(右財務部が右勅令により設置されたことは、当事者間に争いがない。)、同財務部をして、「連合国最高司令官の要求に基く在外財産の調査に関する事項」(同設置制第1条第3号)などを所掌させることとした。
(二) 次いで、政府は、昭和二一年八月に至り、右在外財産の調査を担当する機関として、大蔵省及び外務省の申合せに基づき、在外財産調査会規程(昭和二一年九月二八日実施)を制定し、これによつて、大蔵省の附属機関として、調査会を設置した。右規程によれば、調査会は、大蔵大臣及び外務大臣の管理の下に在外財産の調査をする機関とされ(第1条)、会務の統括者として会長、その下に副会長、
委員、幹事を置くが、会長には外務大臣、副会長には大蔵次官をもつてあて(第二ないし第6条)、総務部会においては、在外財産の調査の方針及びその最終的決定並びに各部会の連絡調整を行い(第8条)、会長が組織構成を定める地域別部会においては、各地域毎に在外財産を編さん集計して、その結果を総務部会に報告し(第七ないし第9条)、会の庶務は大蔵、外務両省が行う(第11条)旨が定められ、なお、会長の指定による地域別部会としては、満州、朝鮮、台湾、北支、中南支、樺太、欧米、南方T、南方U、南洋群島の各部会が置かれた。
(三) 調査会は、その事務である在外財産の調査を実施するため、まず、引揚者からアンケートの方法により、外国にある日本企業の終戦当時における静態的な資産状態を示し得る資料を収集した。次いで、調査会は、右在外財産の歴史的生成過程などに関する調査を行い、経済史的見地から分析整理して、その調査結果を報告書の形式に編さんすることとし、昭和二一年九月頃、調査会名義の辞令を交付して、延べ合計約三〇〇名の臨時職員を任命したうえ、調査会の右各地域別部会の調査地域について、統一的な構想の下に調査項目を章単位で分類し(その分類は、別紙比較対照表中、本件著作物の欄記載のとおり)、右職員らに対し、原則として、
章を単位として調査し、客観的に在外財産の生成過程について、報告書草案を執筆して、提出することを命じた。
右職員らは、右指示に基づき、主として、既存の公表された資料や自己の所持する資料を分析して調査を行い、右報告書草案を作成し、昭和二二年一二月頃、その作成を完了した。かくて、調査会は、その頃、各部会毎に右報告書草案の提出を受けたうえ、総務部会において、Aら四名を編集委員として、「総論」「朝鮮篇」「台湾篇」「樺太篇」「南洋群島篇」「満洲篇」「北支篇」「中南支篇」「海南島篇」「南方篇」「欧米其の他諸地域篇」の一一篇三七冊からなる報告書として編さんして、本件著作物を編さんした。
(四) 調査会の右臨時職員は、当初、嘱託として任命されたが、その後昭和二三年三月三一日、当時在職した約一三一名は、国の機関たる各庁(特別調達庁及び公団を含む)に適用される昭和二三年政令第五六号「嘱託制度の廃止に関する政令」の施行に準じ、同日付の調査会名義の辞令を交付され、常動の調査員、事務補助員又は翻訳員に任命換された。右政令によれば、各庁は、常勤または非常勤の臨時職員を置くことができるが、その条件として、その服務の態様及び在任期間を具体的に定め、任命は、職名、相当級別、給与、監督官吏、職務上の責任又は権限の範囲、職務内容を明記した辞令書を交付して行うことが必要とされ(第4条第1項)、また、右臨時職員は一ないし三級官と同格の政府職員とされ、その給与は官吏に準じ(同条第二項)、常勤の臨時職員には官吏服務規律及び官吏懲戒令を適用する旨が定められた(第六、第8条)。
しかして、調査会の臨時職員は、いずれも常勤であり、大蔵省管理局管理課長の監督下にあつて、月給の支給を受け、嘱託制度廃止の前後を通じて、実質的には勤務形態や給与などの勤務条件には何らの変更がなかつた。
また、調査会と右臨時職員との間には、右職員をもつて、本件著作物の著作者とする旨の約定がされたことはなかつた。
(五) 調査会は、その後昭和二四年一月、廃止され、その際、大蔵省管理局(現在の理財局)は、調査会の事務を承認した。
ところで、調査会は、本来、調査会名義で公表すべきものとして、本件著作物を作成したものであり、前述のとおり、本件旧版は、大蔵省管理局名義をもつて、刊行されたのであり、個々の職員名義をもつて、公表することは全く予定していなかつた。
右のような事実が認められ、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。
2 ところで、旧憲法下においては、行政各部の官制は、天皇の権限に属し、原則として、勅令をもつて定められていたところ、これは、官制大権が国家機関を設置し、その名称、組織、権限を定めるからであり、したがつて、設置される機関が国民に対し、統治権を行使し、国民の権利義務と直接関連するものであれば、その設置について、必ず勅令をもつて、一般にこれを公布することが必要であるが、そうでない限り、必ずしも勅令の公布を必要とするものではなく、勅令を制定せずに国家機関を設置しても、官制大権の本質に反するものではないと解するのが相当である。
そして、昭和二二年五月三日施行の現行憲法下においては、同日から昭和二四年五月三一日までの間、施行された行政官庁法(昭和二二年法律第六九号)第12条によれば、総理庁、各省、内閣官房及び法制局には法律又は政令の定めるところにより、所要の部局及び機関を置く旨が規定されていることが明らかである。右行政官庁法の立法趣旨は、現行憲法の施行により、従来の天皇の官制大権が否定される結果、勅令たる各省官制、各省官制通則により、設置されていた各省等が現行憲法の施行により、存続の根拠を失うことに対処するため、各省等の設置、組織、権限などを法律によつて定め、もつて旧憲法から現行憲法への移行を可能にしたものと解するのが相当である。
しかして、現行憲法下においても、各省庁に置かれる部局及び機関は、そのすべてが法律によつて定められるのではなく、行政機関の種別により、差異が存すると解される。すなわち、国の行政機関は、その権限の点からみて、次の四種に分類することができる。
(イ) 意思又は判断を決定して、これを外部に表示する権限をもつた機関(ロ) 右(イ)の機関の権限の行使を補助することを権限とする機関(ハ) 右(イ)の機関の諮問に応じて意見を述べることを権限とする機関(ニ) 外部に対し、実力を行使することを権限とする機関 右各機関のうち、右(イ)、(ニ)の種類の機関は、直接、外部と関係するものであるから、これについて定めることは、同時に外部の者に対し、その行為を国の行為と認めて、これに服従することを命ずる意味を含むので、法治主義の原則上、
それは、必ず法規の形をもつてしなければならない。これに反し、右(ロ)、
(ハ)の種類の機関は、単に内部において行為するのみで、直接、外部と関係することはないから、法治主義の適用はなく、その設置、廃止、変更については、法律をもつて、定めることを要せず、任意の形式をもつて、定め、又は特に定めをせず、現実に設置、廃止することができるものと解される。そして、旧憲法下においても、右(イ)、(ニ)の種類の機関については、必ず勅令をもつて、定められるが、右(ロ)、(ハ)の種類の機関については、必ずしも勅令をもつて、定められる必要はなかつたのである。
以上のとおりであるから、右(ロ)、(ハ)の種類の機関については、行政官庁法第12条の適用はないものと解するのが相当である。
3 しかして、本件についてみるのに、調査会は、前示認定のとおり、昭和二一年八月、在外財産の調査を担当する国家機関として大蔵省及び外務省の申合せに基づく在外財産審査会規程により、設置されたもので、右当時施行の旧憲法下における勅令をもつて、設置されたものではないが、すでに判示したところからすれば、調査会は、直接、外部と関係するものではなく、国民の権利義務と直接に関連するものでもないから、旧憲法下において、国家機関として、有効に存続し、また、現行憲法下においても、行政官庁法第12条の適用を受けず、国家機関として、有効に存続したものと解するのが相当である。
三 著作権の発生と帰属1 旧法第11条第1号によれば、官公文書は、著作権の目的から除外されているところ、これは、官公文書が一般に公示され、周知徹底されるべき性質を有するものであり、何人にも自由に利用できる状態に置かれなければならないものであることに基づくのであるが、これに反し、官公庁の発行する文書でも高度に学術的意義を有し、必ずしも一般的に周知させることのみを意図しないものは、学術に関する著作物として、著作権の保護を受けるべきものと解するのが相当である。
しかして、右二の1に認定した各事実と前示乙第二三、第二九号証の各一、二、
第30号証の一ないし三、第三一ないし第三四号証の各一、二、第三五号証の一ないし三、第四五号証、証人A、同B、同Cの各証言、被告代表者尋問の結果を総合すれば、本件著作物は、前示認定のとおり、官公庁の編さんした著作物であるが、
近代における日本及び日本人の海外経済活動に関する調査を経済史的見地から分析整理して叙述したものであつて、海外諸地域における政治、経済、統治関係などの事項を含み、史料的、学術的価値の高いものであること(本件著作物が右のような価値を有することは、当事者間に争いがない。)、また、本件著作物は、必ずしも一般国民に対し、周知徹底させることを目的としたものではなく、むしろ政府部内の執務資料とすることを意図したものであつたこと、なお、本件著作物には調査会の印章、署名がないこと(右事実は、当事者間に争いがない。)が認められ、前示乙第四号証の記載部分をもつて、これを左右するに足りず、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。
右認定の事実によれば、本件著作物は、官公庁としての調査会の印章、署名がないので、旧法第11条第1号にいう官公文書とはいえないうえ、本件著作物は、学術に関する著作物として、著作権により、保護されるべきものと解するのが相当である。
2 ところで、右二の1に認定した各事実によれば、調査会は、在外財産の調査に関する事項を所掌事務とする国家機関であるが、本件著作物の著作を発意し、調査会が任命し、実質的意義における官吏であつたというべき臨時職員に対し、その職務上作成すべきものとしての調査報告書の執筆、提出を命じて、本件著作物を編さんしたものであり、しかも、調査会の著作名義で公表すべきものとして、本件著作物を作成し、右職員を著作者とする旨の約定をしたこともないことが認められる。
右認定の事実によれば、本件著作物の著作者は、調査会の事務の帰属主体たる原告であり、その著作権は、原告が原始的に取得したものと解するのが相当である(旧法第6条、著作権法第15条参照)。
3 被告は、調査会が昭和二四年一月、廃止されたとすれば、本件著作物についての著作権は旧法第10条により、消滅した旨主張するが、すでに判示したとおり、
本件著作物についての著作権は原告に帰属するものであるので、調査会の廃止により、右著作権に何らの消長を来たすべきものではないから、被告の右主張は、理由がない。
また、被告は、本件旧版が原告の著作名義で刊行されなかつた事実をもつて、本件著作物についての著作権が原告に属しない事情となる旨主張し、すでに判示したとおり、本件著作物の複製物たる本件旧版は、大蔵省管理局名義で刊行され、原告の著作名義で刊行されたものではないけれども、同管理局の事務の帰属主体が原告であることは明らかであるので、右事実をもつて、右2に判示したところを左右するに足りるものとは思料されないから、被告の右主張は、理由がない。
さらに、被告は、本件著作物についての著作権は国有財産に関する台帳に記載されていないので、これは右著作権が原告に属しない事情となる旨主張するが、仮に右著作権が国有財産に関する台帳に記載されていないとしても、右事実をもつて、
右2に判示したところを左右するに足りるものとは思料されないから、被告の右主張は、理由がない。
加えるに、被告は、本件著作物の内容が他の文書に節録引用されているが、原告はこれを放置しているので、これは本件著作物についての著作権が原告に属しない事情となる旨主張するが、仮に原告が右のような節録引用を放置した事実があつたとしても、他人がその著作物に本件著作物の一部を引用することは、出所を明示し、正当の範囲内のものであれば、許容されるのであり(旧法第30条第1項第二、著作権法第48条参照)、本件著作物についての著作権を侵害することにはならない。したがつて、原告が右引用を放置していたとしても、右事実をもつて、直ちに被告の右主張事実を肯認することはできず、被告の右主張は、理由がない。
四 著作権の侵害 次に、請求原因四の事実は、当事者間に争いがない。
以上の事実によれば、被告が本件新版を複製発行することは、原告が本件著作物について有する著作権を侵害するものであり、原告は、著作権法第112条により、被告に対し、本件新版の複製発行の差止及び本件ネガフイルムの廃棄を請求できるものといわなければならない。
五 権利濫用の成否 そこで、被告の抗弁について、判断するのに、被告は、憲法第21条所定の出版の自由を制約できる範囲、程度は合理的でなければならず、また、著作権の行使は憲法第29条第2項により、公共の福祉の観点から一定の制約を受けるという見地からして、本件においては、原告の本件著作物についての著作権の行使は権利の濫用となる旨主張する。
ところで、財産権は、憲法第29条第1項により、保障されるが、その保障は絶対無制約のものではなく、同条第二項により、公共の福祉の要請による制約が許容されるところ、著作権法は、財産権たる著作権の性質に鑑み、著作物を広く利用させるという公益上の理由から著作権の内容を制約する規定を設けている(第三〇ないし第50条)が、なお、被告主張のような事由により、著作権の行使が権利の濫用となるかどうかは問題となるので、以下順次、被告の具体的主張について、検討する。
1 まず、被告は、本件著作物が史料的、学術的にみて、高度の価値を有し、史学の発展に寄与するものであることなどを理由として、本件新版の発行が許容されるべきである旨主張し、本件著作物が右のような価値を有することは、当事者間に争いがないところであるが、右事実をもつて、直ちに被告が原告に無断で本件新版を発行することが許容されるものと解することはできない。
2 次に、被告は、本件著作物は国民のために著作されたものであり、また、学問、文化の発展に不可欠のものであるうえ、国民は憲法の基本理念である国民主権主義、憲法第21条により、知る権利を保障されていることからみても、原告は本件著作物を一般国民に利用させる義務を負う旨主張するが、右三の1に判示したとおり、本件著作物は、必ずしも一般国民に対して周知徹底させることを目的としたものではなく、政府部内の執務資料とすることを意図したものであるうえ、国家機関が編さんした著作物であることを理由として、直ちに被告主張のように、原告が本件著作物を一般国民に利用させる義務を負うものと解することはできない。
また、その結果、本件著作物が一部の者のみに利用されるにすぎないとしても、
本件著作物の右のような性格、利用目的からすれば、右事実をもつて、直ちに法の下の平等に反するものと解することはできない。なお、成立に争いのない甲第一四号証の一、二、証人Bの証言を総合すれば、一般国民としても、所定の手続を経れば、大学の図書館などにおいて、本件旧版を利用できることがあることが認められる。
3 次に、被告は、原告が本件新版の発行により、何ら財産的損害を受けることがない旨主張するが、財政法第9条第1項によれば、原告は、国有財産としての本件著作物の複製発行を特定の私人に許諾するときは、適正な使用料を徴収すべきものであるから、被告の本件新版の無断発行により、右使用料相当額の損害を受けるものであり(著作権法第114条参照)、何ら財産的損害を受けることがないということはできない。
4 次に、被告は、昭和四八年五月当時、官公庁発行の著作物の複製発行については、官公庁の許諾を要しない旨の商慣習が存在した旨主張し、成立に争いのない甲第四号証、乙第一、第二、第一〇号証、原本の存在及び成立に争いのない乙第四四号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第七、第八号証の各一、
二、第九号証、第一〇号証(但し、官署作成部分の成立に争いがない。)、証人B、同D、同Cの各証言、被告代表者尋問の結果を総合すれば、従前、出版業界においては、官公庁発行の著作物の複製発行について、一般的には官公庁の許諾を受けてしていたが、場合によつては、その許諾を受けないでしたこともあつたこと、
しかし、官公庁としては、その許諾を受けないでした右複製発行を容認していたものではなかつたことが認められ、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。
右認定の事実によれば、右当時、官公庁発行の著作物の複製発行について、被告主張のような商慣習が存在していたものとは認められない。
5 次に、被告は、原告が本件新版の発行の差止について、著作権法第105条以下に規定する紛争処理手続をとることなく、直ちに本件訴訟を提起したことは不当である旨主張し、原告が右紛争処理手続をとらなかつたことは、当時者間に争いがないところであるが、元来、原告が本件について、訴訟手続と右紛争処理手続のいずれを選択すべきかは、原告の任意に委ねられているところであつて、原告が右紛争処理手続をとることなく、本件訴訟を提起したことをもつて、不当な措置と解することもできない。
6 次に、被告は、本件新版の発行の準備を中止することになれば、甚大な損害を受ける旨主張するが、被告が右発行の中止により、損害を受けるとしても、これは、被告自身が原告に無断で、あえて右発行をしようとしたためにほかならないのであつて、これを不問に付して、右発行の中止による結果の重大性のみを強調し、
その責を原告に帰することはできない。
7 以上のとおりであるから、被告の右各主張は、いずれも理由がなく、原告において、被告の本件新版の発行の差止及び本件ネガフイルムの廃棄を求めることは、
正当な権利行使であつて、憲法第21条所定の出版の自由を侵害するものでもないといわなければならず、これを目して、権利の濫用ということはできない。したがつて、被告の抗弁は、理由がないものである。
六 結論 してみれば、被告に対し、著作権法第112条に基づき、本件新版の発行の差止及び本件ネガフイルムの廃棄を求める原告の本訴請求は、正当として、認容されるべきである。
よつて、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第89条を、仮執行の宣言について、同法第196条を適用して、主文のとおり、判決する。
追加
別紙物件目録(一)日本人の海外活動に関する歴史的調査完全復刻版大蔵省管理局編昭和二二年第一巻総論(総目録、総論―近代に於ける日本経済の発達、極盛時に於ける日本、日本及その植民地域に於ける人口の発達)第二巻朝鮮編T(朝鮮開国より日韓併合への道、朝鮮統治の最高方針、警察行政と其の実績)第三巻朝鮮編U(産業及経済政策、農業、林業、水産業、工業、貿易商業金融財政、交通通信)第四巻朝鮮編V(在外朝鮮人の保護、戦争と朝鮮統治の性格と実績)第五巻台湾編T(台湾経済半世史の概観、地理的に見た台湾、台湾の文化社会、
台湾の産業)第六巻台湾編U(台湾の経済、台湾に関する統計)第七巻台湾編V(白日下の台湾、日僑の追憶、終戦前後の台湾に関する資料、台湾統治概要)第八巻樺太・南洋群島編(樺太の産業及経済、文化、主要統計、南洋群島の経済及産業)第九巻満洲編(総論、人口労働力、政治行政、農業開拓政策、畜産・水産・林・鉱工業、交通通信)第一〇巻関東洲・北支・中南支編(樺北日系事業概観、列国の対華経済進出と其の法的条件、我が対華経済活動と在華投資、対華借款と文化事業)第一一巻海南島・南方T編(総論、各論―仏印、暹羅(タイ)編、緬甸(ビルマ)、英領馬来(マライ)編)第一二巻南方U・欧米編(蘭印編、比島編、欧米編)(二)債権者原告、債務者被告間の東京地方裁判所昭和四八年(ヨ)第二五一五号仮処分命令に基づく執行により同裁判所執行官Eが保管する左記物件記一無伸縮ネガフイルム大判茶封筒入三二包一無伸縮ネガフイルム小判茶封筒入二包以上別紙比較対照表本件著作物(本件旧版)日本人の海外活動に関する歴史的調査大蔵省管理局総目録通巻第一冊総論の一第一章近代に於ける日本経済の発達第二章極盛時に於ける日本第三章日本及その植民地域に於ける人口の発達通巻第二冊朝鮮篇第一分冊序章朝鮮の概貌第一章旧来の朝鮮の政治、経済、社会、文化の性格第二章朝鮮開国より日韓併合への途通巻第三冊朝鮮篇第二分冊第三章朝鮮統治の最高方針第四章朝鮮政治機構の近代化第五章警察行政と其の実績第六章司法及行刑と其の実績通巻第四冊朝鮮篇第三分冊第七章教育文化政策と其の実績第八章衛生行政と其の実績通巻第五冊朝鮮篇第四分冊第九章産業及経済政策第十章農業の発達通巻第六冊朝鮮篇第五分冊第十一章林業の発達第十二章水産業の発達第十三章鉱業の発達通巻第七冊朝鮮篇第六分冊第十四章工業の発達第十五章貿易及び商業の発達通巻第八冊朝鮮篇第七分冊第十六章金融の発達第十七章財政の発達通巻第九冊朝鮮篇第八分冊第十八章交通通信の発達第十九章土木及治水通巻第十冊朝鮮篇第九分冊第二十章在外朝鮮人の保護第二十一章戦争と朝鮮統治通巻第十一冊朝鮮篇第十分冊朝鮮統治の性格と実績「独立」朝鮮経済の将来通巻第十二冊台湾篇第一分冊第一部台湾経済半世史外観第二部地理的に見た台湾第三部台湾の文化社会通巻第十三冊台湾篇第二分冊第四部台湾の産業通巻第十四冊台湾篇第三分冊第五部台湾の経済(其の一)通巻第十五冊台湾篇第四分冊第六部台湾の経済(其の二)通巻第十六冊台湾篇第五分冊台湾に関する統計通巻第十七冊台湾篇第六分冊の一白日下の台湾通巻第十七冊台湾篇第六分冊の二日橋の追憶(終戦後引揚迄の日本人の生活と其の後の台湾)通巻第十七冊台湾篇第六分冊の三終戦前後の台湾に関する資料統治篇経済篇通巻第十八、
十九冊樺太篇第一部総論第二部産業及経済第三部交通及通信第四部文化通巻第二十冊南洋群島篇第一分冊第一章序説(略)第八章財政(略)第十一章衛生通巻第二十一冊南洋群島篇第二分冊第十二章交通通信第十三章産業概論第十四章農業第十五章林業第十六章糖業第十七章商工業第十八章水産業第十九章鉱業第二十章貿易第二十一章金融通巻第二十二冊満州篇第一分冊第一章総論第二章自然条件第三章人口及労働力第四章政治、行政第五章文化、厚生通巻第二十三冊満州篇第二分冊第二部満州の産業第一章農業第二章開拓政策第三章畜産業第四章水産業第五章林業第六章鉱工業第七章交通第八章通信通巻第二十四冊満州篇第三分冊第三部満州の経済第一章財成(略)第四章商業、配給、物価通巻第二十五冊満州篇第四分冊関東洲篇通巻第二十六冊北支篇華北日系事業概観通巻第二十七冊中南支篇第一分冊最近五十年日華経済関係の史的考察第一部列国の対華経済進出とその法的諸条件第二部我が対華経済活動と在華投資通巻第二十八冊中南支篇第二分冊第三部対華借款と対華文化事業第四部補遺通巻第二十九冊海南島篇海南島に於ける日本経済発展概観通巻第三十冊南方篇第一分冊第一部総論通巻第三十一冊南方篇第二分冊第二部各論第一章仏領印度支那第二章暹羅通巻第三十二冊南方篇第三分冊第二部各論第三章ビルマ第四章英領マライ(英領北ボルネオ、サラクワを含む)通巻第三十三冊南方篇第四分冊第二部各論第五章ビルマ通巻第三十四冊南方篇第五分冊第二部各論第六章フイリツピン通巻第三十五冊欧米其の他諸地域篇第一章総論(略)第五章西方諸地域別紙目録(一)の図書(本件新版)日本人の海外活動に関する歴史的調査大蔵省管理局編第一巻総論総目録総論近代に於ける日本経済の発達極盛時に於ける日本日本及その植民地域に於ける人口の発達第二巻朝鮮編T朝鮮開国より日韓併合にへの道朝鮮統治の最高方針警察行成と其の実績第三巻朝鮮編U産業及経済政策農業林業水産業工業貿易・商業金融財政交通通信第四巻朝鮮編U在外朝鮮人の保護戦争と朝鮮統治朝鮮統治の性格と実績第五巻台湾編T台湾経済半世史の概観地理的に見た台湾台湾の文化社会台湾の産業第六巻台湾編U台湾の経済台湾に関する統計第七巻台湾編V白日下の台湾日橋の追憶終戦前後の台湾に関する資料台湾統治概観第八巻樺太南洋群島編樺太の産業及経済文化主要統計南洋群島の経済及産業第九巻満州編総論人口、労働力政治、行政農業開拓政策畜産、水産、林、鉱工業交通、通信第一〇巻関東洲・北支・中南支編華北日系事業概観列国の対華経済進出と其の法的条件我が対華経済活動と対華投資対華借款と新化事業第一一巻海南島・南方T編総論各論仏印。暹羅(タイ)編緬旬(ビルマ)英領馬来(マライ)編第一二巻南方U・欧米編蘭印編北島編欧米編
裁判官 佐藤栄一
裁判官 木原幹郎
裁判官 塚田渥