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事件 平成 11年 (ワ) 14658号 著作権侵害差止等請求事件
原告 デマート・プロ・アルトベー・ ヴイ 右代表者 【A】
同 【B】
原告訴訟代理人弁護士 佐藤雅巳
同 古木睦美
被告山梨県右代表者知事 【C】 右訴訟代理人弁護士 田邊護右指定代理人 【D】
同 【E】
同 【F】
同 【G】
同 【H】
同 【I】
同 【J】
被告 財団法人ミモカ美術振興財団右代表理事 【K】
被告 株式会社松坂屋右代表者代表取締役 【L】
被告 株式会社近鉄百貨店右代表者代表取締役 【M】
被告 株式会社伊勢丹右代表者代表取締役 【N】
被告 ガラ・サルバドール・ダリ財団右代表者 【O】
同 【P】 右被告五名(以下「被告ダリ財団ら」という。)訴訟代理人弁護士 高階雅芳
同 西脇威夫
被告広島県右代表者知事 【Q】 右訴訟代理人弁護士 樋口文男右指定代理人 【R】
同 【S】
同 【T】
同 【U】
同 【V】
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2000/08/29
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一1 被告ガラ・サルバドール・ダリ財団は、別紙書籍目録(二)記載の書籍に別紙絵画目録(二)記載の絵画を複製してはならない。
2 被告ガラ・サルバドール・ダリ財団は、別紙絵画目録(二)記載の絵画を複製掲載した別紙書籍目録(二)の書籍を頒布してはならない。
3 被告ガラ・サルバドール・ダリ財団は、別紙書籍目録(二)記載の書籍を廃棄せよ。
4 被告ガラ・サルバドール・ダリ財団は、原告に対し、金三三八万五八〇〇円及びうち金一三九万五四六〇円に対する平成一一年一〇月二日から、うち金一五五万三四〇円に対する平成一一年一一月一日から、金四四万円に対する平成一一年一二月二三日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告山梨県は、原告に対し、金一七万六〇〇〇円及びこれに対する平成一一年七月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 被告ミモカ美術振興財団は、原告に対し、金二一万六二六〇円及びこれに対する平成一一年七月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 被告株式会社松坂屋は、原告に対し、金四一万八八八〇円及びこれに対する平成一一年八月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
五 被告株式会社近鉄百貨店は、原告に対し、金五八万四三二〇円及びこれに対する平成一一年九月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
六 被告株式会社伊勢丹は、原告に対し、金一五五万三四〇円及びこれに対する平成一一年一一月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
七 被告広島県は、原告に対し、金四四万円及びこれに対する平成一一年一二月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
八 原告の被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。
九 訴訟費用については、これを五分し、その一を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。
一〇 この判決の第一項4、第二項ないし第七項は、仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
一 被告らは、別紙書籍目録(二)記載の書籍に別紙絵画目録(二)記載の絵画を複製してはならない。
二 被告らは、別紙絵画目録(二)記載の絵画を複製掲載した別紙書籍目録(二)の書籍を頒布してはならない。
三 被告らは、別紙書籍目録(二)記載の書籍を廃棄せよ。
四 被告ガラ・サルバドール・ダリ財団は、原告に対し、金四六三万八九三〇円及びこれに対する平成一一年一〇月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
五 被告山梨県は、原告に対し、金四四万円及びこれに対する平成一一年七月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
六 被告ミモカ美術振興財団は、原告に対し、金二一万六二六〇円及びこれに対する平成一一年七月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
七 被告株式会社松坂屋は、原告に対し、金四一万八八八〇円及びこれに対する平成一一年七月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
八 被告株式会社近鉄百貨店は、原告に対し、金五八万四三二〇円及びこれに対する平成一一年七月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
九 被告株式会社伊勢丹は、原告に対し、金一五五万三四〇円及びこれに対する平成一一年七月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
一〇 被告広島県は、原告に対し、金四四万円及びこれに対する平成一一年七月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
事案の概要
一 争いのない事実等 1 スペイン人の画家である【W】(以下「【W】」という。一九八九年(平成元年)一月二三日死亡)は、別紙絵画目録(一)記載の絵画(以下「対象絵画」という。)及び同目録(二)記載の絵画(以下「本件絵画(二)」という。)を著作した。
2 設立準備中であった原告の代表者【A】は、一九八六年(昭和六一年)六月一三日、【W】との間で、【W】の作品について契約を締結した(甲一、この契約を「本件契約」という。)。
3 「シュルレアリスムの巨匠展」の開催 (一) 北九州市は、平成一〇年一〇月二三日から同年一一月二九日までの間、北九州市にある北九州市立美術館において、「シュルレアリスムの巨匠展」と題する展覧会の北九州展(以下「本件巨匠展」という。)を開催した。
(二) 北九州市は、本件巨匠展において、別紙書籍目録(一)記載の書籍(以下「本件書籍(一)」という。)を販売した。
(三) 本件書籍(一)には、対象絵画中の一及び四の絵画(以下「本件絵画(一)」という。)が複製掲載されている。
(四) 株式会社印象社(以下「印象社」という。)は、本件書籍(一)を印刷製本した。
4 「【W】展」の開催 (一) 被告山梨県、被告ミモカ美術振興財団(以下「被告ミモカ」という。)、被告株式会社松坂屋(以下「被告松坂屋」という。)、被告株式会社近鉄百貨店(以下「被告近鉄百貨店」という。)及び被告広島県は、「【W】の世界」と題する展覧会を、被告株式会社伊勢丹(以下「被告伊勢丹」という。)は、
「【W】美術館展」と題する展覧会(以下、これらをまとめて「本件【W】展」という。)を、それぞれ別紙展覧会開催一覧表のとおり開催した。
(二) 右展覧会会場では、それぞれ別紙書籍目録(二)記載の書籍(以下「本件書籍(二)」という。)が販売された。
(三) 本件書籍(二)には、本件絵画(二)が複製掲載されている。
二 事案の概要 原告は、本件契約により【W】の作品の著作権をすべて譲り受けたと主張して、被告ガラ・サルバドール・ダリ財団(以下「被告ダリ財団」という。)に対して、(1)本件書籍(一)における本件絵画(一)の複製及び本件書籍(一)の頒布並びに(2)本件書籍(一)における対象絵画の著作権表示に関する損害賠償を求めるとともに、被告らに対して、著作権に基づいて、@本件書籍(二)における本件絵画(二)の複製及びA本件書籍(二)の頒布の差止め並びに本件書籍(二)の廃棄を求め、さらに、右@及びAの行為に関する損害賠償を求める事案である。
三 本件の争点 1 対象絵画(本件絵画(一))及び本件絵画(二)の著作権者は誰か、原告は、
被告らに対して、対象絵画(本件絵画(一))及び本件絵画(二)の著作権を行使することができるか 2 被告らの著作権侵害行為の成否 3 損害の額等
本件の争点に関する当事者の主張
一 争点一について (原告の主張) 1 本件契約の法的性質 (一) 設立準備中であった原告の代表者【A】は、一九八六年(昭和六一年)六月一三日、【W】との間において、【W】の作品の著作権をすべて譲り受ける旨の本件契約を締結し、原告は、設立後、本件契約により、対象絵画及び本件絵画(二)についての著作権を取得した。
(二) 本件契約は、以下に述べるとおり、著作権の期間を定めた譲渡契約である。
(1) 本件契約3条は、「上に定義、記載された権利は二〇〇四年五月一一日に終了する期間まで取り消されることなく(解除されることなく)譲渡される。
書面による別段の合意がない限り、本契約期間満了時に、かかる権利は【W】又は同人の相続人若しくは他の承継人に帰するものとする。」と規定されており、その文言自体から、譲渡契約であることは明らかである。
(2) 一九八七年(昭和六二年)二月二七日、スペイン国経済財務大臣は、
本件契約を承認したが、本件契約が譲渡契約であったから、この承認が必要であった。スペイン国は、その後、【W】の死亡前も死亡後も、本件契約が譲渡契約であることを認めている。
(3) 一九九六年(平成八年)二月二二日、スペイン国の裁判所(国家高等裁判所行政訴訟審)は、本件契約が譲渡である旨認定判断した判決をした(なお、
右判決は、その後取り消されたが、本件契約が譲渡契約である旨の認定判断を否定したものではない。)。
(4) 【W】の死後、被告ダリ財団自体、本件契約が譲渡契約であり、原告が【W】の著作物に対する著作権者であることを認めている。
2 本件契約の終了について 右のとおり、本件契約は、譲渡契約であって、信託契約ではないから、
【W】の死亡によって終了することはない。
3 権利濫用について この点に関する被告らの主張は、すべて争う。
(被告らの主張) 1 本件契約の法的性質 (一) 本件契約の準拠法は、スペイン法であるから、その法的性質もスペイン法により解釈されるべきところ、スペイン法によれば、本件契約の法的性質については、通常の譲渡契約ではなく、著作権の管理及び運用を目的とした信託契約と解すべきである。
(二) 被告らは、本件契約の唯一の受益者である被告ダリ財団及び被告ダリ財団から許諾を受けた者であるから、本件契約の受託者である原告は、被告らに対し、本件契約に基づく信託財産である【W】の著作権を自己の著作権であると主張することはできないというべきである。
2 本件契約の終了 信託契約の内部関係は委任契約であるところ、スペイン国民法1732条によると、委任契約は、委任者の死亡により終了する。したがって、本件契約は、
【W】の死亡(一九八九年一月二三日)により終了したというべきである。
なお、本件契約終了後も原告は【W】の著作権の管理を継続していたが、
これは、契約終了後における事務処理の暫定的継続と理解すべきである。
3 権利濫用 仮に本件契約が終了していないとしても、原告は、被告ダリ財団に対し、
収益分配義務、費用負担義務、営業報告義務、会計報告義務、監査報告書送付義務及び協力義務をそれぞれ負っているところ、これらの各義務をいずれも履行していないから、原告が本件契約に基づく自己の権利を主張するのは権利の濫用に当たる。
二 争点二について (原告の主張) 1 被告ダリ財団らについて (一) 本件巨匠展に関する主張(被告ダリ財団のみに対する主張) (1) 被告ダリ財団は、原告が本件絵画(一)の著作権者であることを知りながら、被告ダリ財団が本件絵画(一)の著作権者である旨述べて原告の許諾を得ないように教唆し、北九州市をして、原告の許諾を得ずに、本件書籍(一)に本件絵画(一)を複製掲載させ、本件書籍(一)を本件巨匠展の会場で販売させた。
(2) 被告ダリ財団は、原告が対象絵画の著作権者であることを知りながら、被告ダリ財団が原告と並んで対象絵画に著作権を有する旨の虚偽の表示をするように教唆し、北九州市をして、本件書籍(一)に、被告ダリ財団が原告と並んで対象絵画に著作権を有する旨の虚偽の表示をさせた。
(二) 本件【W】展に関する主張 (1) 被告ダリ財団は、原告が本件絵画(二)の著作権者であることを知りながら、原告の許諾を得ないで、本件書籍(二)に本件絵画(二)を複製して本件書籍(二)を作成し、本件絵画(二)に対する原告の著作権を侵害した。
(2) 被告ミモカ、被告松坂屋、被告近鉄百貨店及び被告伊勢丹は、それぞれ、本件書籍(二)が原告の本件絵画(二)に対する著作権を侵害して作成されたものであることを知りながら、被告ダリ財団に対して本件書籍(二)を本件【W】展の各会場で販売することを約し、本件書籍(二)を被告ダリ財団より仕入れ、販売した。
被告ミモカ、被告松坂屋、被告近鉄百貨店及び被告伊勢丹の右各行為は、それぞれ著作権侵害行為に当たる。
仮に、著作権侵害行為に当たらないとしても、被告ミモカ、被告松坂屋、被告近鉄百貨店及び被告伊勢丹の右各行為は、それぞれ、ダリ財団の著作権侵害行為の幇助となる。
2 被告山梨県について (一) 被告山梨県は、本件書籍(二)が原告の本件絵画(二)に対する原告の著作権を侵害して作成されたものであることを知りながら、被告ダリ財団に対して本件書籍(二)を山梨県立美術館における本件【W】展の会場で販売することを約し、
本件書籍(二)を被告ダリ財団より仕入れ、販売した。
(二) 被告山梨県の行為は、著作権侵害行為に当たる。
仮に、著作権侵害行為に当たらないとしても、被告山梨県の行為は、ダリ財団の著作権侵害行為の幇助となる。
(三) なお、山梨県美術館協力会なる者は、被告山梨県と一体であり、同視すべきである。
3 被告広島県について 被告広島県は、本件書籍(二)が原告の本件絵画(二)に対する著作権を侵害して作成されたものであることを知りながら、被告ダリ財団をして、広島県立美術館における本件【W】展において本件書籍(二)を販売させて、被告ダリ財団の著作権侵害行為を幇助した。
(被告ダリ財団らの主張) 原告の主張はすべて争う。 (被告山梨県の主張) 被告山梨県は、山梨県立美術館における本件【W】展において本件書籍(二)の販売を行っていない。本件書籍(二)の販売は、被告ダリ財団が山梨県立美術館協力会に委託して行ったものである。
(被告広島県の主張) 広島県立美術館における本件【W】展において本件書籍(二)を販売したのは、被告ダリ財団であって、被告広島県は、本件書籍(二)の販売には無関係である。
三 争点三について (原告の主張) 1 本件巨匠展に関して被告ダリ財団に対する請求 (一) 印象社の本件書籍(一)の製作原価は、一冊五〇〇円であり、北九州市は、本件書籍(一)を印象社から仕入れ、一冊二〇〇〇円で一万部販売したから、北九州市が得た利益の額は一五〇〇万円である。この金額を本件書籍(一)の絵画掲載頁数九二で割り、本件絵画(一)頁数の三を乗じた金額である四八万九一三〇円が原告の被った損害である。
(二) 本件書籍(一)に、被告ダリ財団が原告と並んで対象絵画に著作権を有する旨の虚偽の表示がされたことにより、原告が対象絵画を含む【W】の著作物に対する唯一の著作権者であり、【W】の著作物の利用の唯一の許諾権者であることが無視され、原告が【W】の著作物の唯一の著作権者であり、【W】の著作物の唯一の利用許諾者であることに対する疑念を生じさせられ、原告の信用が毀損された。この損害を金銭に評価すれば、五〇万円を下らない。
2 本件【W】展に関して被告山梨県及び被告ダリ財団らに対する請求 (一) 被告ダリ財団は、被告山梨県、被告ミモカ、被告松坂屋、被告近鉄百貨店及び被告伊勢丹に対し、本件書籍(二)を、単価一八〇〇円で、少なくとも、それぞれ、二〇〇〇冊、九八三冊、一九〇四冊、二六五六冊、七〇四七冊販売した。
(二) 被告山梨県、被告ミモカ、被告松坂屋、被告近鉄百貨店及び被告伊勢丹は、それぞれ、本件書籍(二)を被告ダリ財団より仕入れ、単価二二〇〇円で、少なくとも、それぞれ、二〇〇〇冊、九八三冊、一九〇四冊、二六五六冊、七〇四七冊販売した。
(三) これにより、原告は、少なくとも、以下のとおり、使用料相当額の損害を被った。
(1) 被告ダリ財団及び被告山梨県 二二〇〇円×二〇〇〇冊×一〇パーセント=四四〇万円×〇・一=四四万円 (2) 被告ダリ財団及び被告ミモカ 二二〇〇円×九八三冊×一〇パーセント=二一六万二六〇〇円×〇・一=二一万六二六〇円 (3) 被告ダリ財団及び被告松坂屋 二二〇〇円×一九〇四冊×一〇パーセント=四一八万八八〇〇円×〇・一=四一万八八八〇円 (4) 被告ダリ財団及び被告近鉄百貨店 二二〇〇円×二六五六冊×一〇パーセント=五八四万三二〇〇円×〇・一=五八万四三二〇円 (5) 被告ダリ財団及び被告伊勢丹 二二〇〇円×七〇四七冊×一〇パーセント=一五五〇万三四〇〇円×〇・一=一五五万三四〇円 2 本件【W】展に関して被告広島県に対する請求 被告ダリ財団は、広島県立美術館における本件【W】展において、本件書籍(二)を、単価二二〇〇円で、少なくとも二〇〇〇冊販売し、被告広島県は、被告ダリ財団の右行為を幇助したことにより、原告は、次のとおり、使用料相当額の損害を被った。
二〇〇〇円×二〇〇〇×一〇パーセント=四四万円 (被告ダリ財団らの主張) 1 本件契約を補足した合意書の1条によると、本件契約4条は、いかなる場合においても当該権利の管理及び営業から生じる経費控除後の収入及び利益のすべては、唯一の受益者である【W】氏又は被告ダリ財団に帰属するという意味に解さなければならないと規定している。したがって、原告が主張した事実に基づいても、原告に損害が発生することはない。
2 本件巨匠展における本件書籍(一)の販売価格が二〇〇〇円であること並びに本件【W】展における本件書籍(二)の仕入価格、販売価格及び販売数量に関する原告の主張については、いずれも認める。
(被告山梨県の主張) 原告の損害に関する主張は争う。
なお、山梨県立美術館協力会が、本件書籍(二)を被告ダリ財団から一冊一八〇〇円で八〇〇冊購入し、一冊二二〇〇円で全冊販売したことは認める。
(被告広島県の主張) 原告の損害に関する主張は争う。
当裁判所の判断
一 【W】の著作物に関する我が国著作権法上の保護について 日本及びスペイン国は、いずれも文学的および美術的著作物の保護に関するベルヌ条約パリ改正条約の締結国であるから、同条約3条(1)項a及び我が国の著作権法6条3号により、スペイン国民であった【W】の著作物である本件絵画は、我が国の著作権法による保護を受ける。
二 争点一について 1 証拠(甲一、二、四、甲六の一、二、乙二ないし四の各一ないし三)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められる。
(一) 本件契約の締結 一九八六年(昭和六一年)六月一三日、スペイン国フィゲラス(ヘローナ)トレ・ガラテアにおいて、【W】は、当時設立準備中であった原告の代表者【A】との間で、概要次のとおりの内容の本件契約を締結した。
第1条(著作者の権利の期間を定めた譲渡) 【W】は、ここに、全世界を対象として、原告に対し、現時点で知られているといないとに拘わらず、また、その種類(文学、美術、戯曲、音楽、映画その他)を問わず、同人の全作品につき現に存し当該作品より由来する一切の知的財産権の完全かつ円満な行使を譲渡し、同社はかかる譲渡を受諾する。
1 (省略) 2 一切の態様、根拠、方法又はメディアによる作品の複製及び出版を許可又は禁止する権利 3 債権回収の権利 4、5 (省略) 第2条(著作者の権利の譲渡の性質) 前条に定義、記載された権利は純粋且つ円満な権利で原告のみに譲渡される。原告は、かかる権利を原告の独自的な計算及びリスクのもとに行使するものとする。
(以下省略) 第3条(譲渡期間) 上に定義、記載された権利は二〇〇四年五月一一日に終了する期間まで取り消されることなく(解除されることなく)譲渡される。書面による別段の合意がない限り、本契約期間満了時に、かかる権利は【W】又は同人の相続人若しくは他の承継人に帰するものとする。
本書により原告に期間を定めて譲渡された権利には何らの負担がないものと了解されている。
第4条(譲渡の対価) 1 原告は、原告のとりうる一切の手段を講じて、世界的スケールで、
然るべき同意を得ずして又は権利を侵害して遂行された出版、複製及び放送に対して阻止、追及又は罰則の適用を求め、同時に一般に芸術家の人格及び財産権に損害を与える、いかなる形態での悪用を追及して、【W】の作品を防御する義務を受諾することに同意する。
2 原告は、原告に譲渡された権利を行使することにより得た純利益を、原告の選択により、全世界にわたり、現在知られ又は将来知られるあらゆる方法で、【W】の作品の研究及び紹介に関連した、原告自身により又は【W】氏若しくはガラ・サルバドール・ダリ財団と共同で遂行される活動の資金として使用することに同意する。
上記活動には、特に、カタログの出版、教育的又は科学的作品の準備、文化的又は専門的サービスの供給及び展覧会の主催が含まれる。
3 【W】の著作者の権利の行使の原告への譲渡は、【W】又は同人の代理人によって本契約締結以前に締結された現在有効な契約を同人の利益のために監督し、引続き実行する義務並びに引続き相応する金員の受領及び回収をする義務を伴う。
第5条ないし第8条 (省略) 第9条(停止条件) 1 本契約は、管轄スペイン行政庁より明示的な認可を得ることを条件に効力を発する。
2 加えて、本契約は、原告が、本契約の日から六か月以内の期間に然るべく完全に設立され、【A】氏が、かかる期間内に、【W】及び管轄諸庁に前述の会社の最終的な設立及び正式な資格並びに【A】氏が原告の代表者として本契約を調印するに十分な権限を有していることを証明し、本契約の一部をなすものとして添付されるべき相応する公的書類を発行することを条件に効力を発する。
第10条以下 (省略) (二) 本件追加契約の締結 一九八七年(昭和六二年)二月九日、原告と【W】との間において、本件契約中の合意のいくつかの内容及び解釈を明確にするために、追加契約が締結された(以下「本件追加契約」という。)。その概要は、次のとおりである。
第1条 本件契約第4条は、いかなる場合にも、当該権利の管理及び利用から生じる純収入全部の唯一の受益者が、【W】氏又は被告ダリ財団であると解釈されるものとする。
(以下省略) 第2条 (省略) 第3条 本契約により、スペイン国は、現在所有し又は将来所有することのある【W】氏の作品に関し、文化的目的のために、自由に展示権を行使し、当該作品の展示に関するカタログ、文書を編集し発行する権利を行使することを妨げられない。
(三) 本件契約に係る条件成就等 (1) 一九八六年(昭和六一年)九月三日、原告は設立され、【A】が原告の代表者に就任した。
(2) 同年一〇月七日、本件契約9条2項の各条件が成就し、原告は本件契約を含む【A】のすべての行為を追認した。
(3) 一九八七年(昭和六二年)二月一九日、スペイン国政府は、本件契約及び本件追加契約を認可し、本件契約9条1項に規定されている条件が成就した。
2 本件契約の法的性質、本件契約の終了の有無及び原告による著作権の行使について (一) 右1認定の事実によると、原告と【W】との間に、本件契約及び本件追加契約が成立し、その効力を生じたものと認められる。
証拠(甲一、乙二の一ないし三)によると、本件契約当事者は、本件契約の準拠法をスペイン法とすることに合意した(本件契約10条)ものと認められ、本件追加契約においても、この点は異なるところはないというべきである。
(二) そこで、本件契約の法的性質について検討する。
(1) 証拠(甲一、甲六の一、二、乙二、三の各一ないし三)及び弁論の全趣旨によると、本件契約では、「著作者の権利の期間を定めた譲渡」(契約書表題)、「著作者の権利の期間を定めた譲渡」(1条見出し)、「著作者の権利の譲渡の性質」(2条見出し)、「前条に定義、記載された権利は・・・譲渡される。」(2条1項)、「譲渡期間」(3条見出し)、「暫定的に譲渡された権利」(3条)、「譲渡の対価」(4条見出し)、「譲渡された権利にかかわる活動、契約、交渉及び事柄」(5条1項)、「当該会社に譲渡された権利」(11条2項)等、特に限定を付さない「譲渡」(スペイン語で「CESION」)という用語が用いられていること、本件追加契約においても、本件契約に関して、「著作権の期間を限定した譲渡」であると表現されていること、これに対して、本件契約及び本件追加契約には、「信託」という用語は、全く用いられていないこと、以上の事実が認められる。
(2) 右1(一)認定の本件契約3条の規定によると、本件契約の当事者は、
本件契約は、当事者が任意に解除することができないものであって、二〇〇四年五月一一日まで存続し、【W】の作品の著作権は、契約期間満了時に、【W】、
【W】の相続人又は他の承継人に帰属する旨を約定していたものと認められる。しかるところ、証拠(乙一の一ないし三)及び弁論の全趣旨によると、右約定は、委託者による解除が認められないという点において、スペイン法における信託契約に関する理解と異なるものと認められる。そうすると、本件契約の右約定は、本件契約が信託契約ではないことを示しているというべきである。
(3) 証拠(甲五、甲六の一、二、甲七、乙六ないし一一の各一ないし三、
乙一六、一七)及び弁論の全趣旨によると、スペイン国政府は、一九九一年(平成三年)ころまでは、原告が【W】の作品の著作権の譲受人であり、【W】の作品の著作権の利用については、原告の事前の承認が必要である旨認めており、被告ダリ財団も同様の立場を採っていて、本件契約が信託契約であるというような主張を全くしていなかったこと、ところが、スペイン国政府は、一九九四年(平成六年)ころから、本件契約は【W】の死亡によって終了し、【W】の作品の著作権はスペイン国に帰属するとの立場を採るようになり、被告ダリ財団も、同様の主張をするようになったこと、以上の事実が認められる。以上の事実によると、スペイン国政府や被告ダリ財団は、もともと、原告が【W】の作品の著作権の譲受人であることを認めており、本件契約が信託契約であるというような主張を全くしていなかったところ、ある時期から、本件契約は【W】の死亡によって終了したとの主張をするようになったことが認められる。そのように主張が変化した理由については、本件全証拠によるも明らかではない。
(4) 右1(一)認定のとおり、本件契約4条は、譲渡の対価について定めているところ、右1(二)認定のとおり、本件追加契約1条は、「本件契約第4条は、
いかなる場合にも、当該権利の管理及び利用から生じる純収入全部の唯一の受益者が、【W】氏又は被告ダリ財団であると解釈されるものとする。」と規定している。
そして、右1(一)認定のとおり、本件契約4条2項は、譲渡の対価として、原告は、【W】の作品について著作権を行使することによって得た純利益を、【W】の作品の研究紹介に関連した活動に使用することに同意すると規定していること、右1(二)認定のとおり、本件追加契約は、本件契約中の合意のいくつかの内容及び解釈を明確にするために締結されたものであることからすると、本件追加契約1条は、本件契約4条の右規定の趣旨を確認したものと解される。そうすると、本件追加契約1条は、本件契約における譲渡の対価の内容を確認したものと解されるから、同条から本件契約が信託契約であると認めることはできない。
(5) 以上の(1)ないし(4)で述べたところを総合すると、本件契約は、信託契約ではなく、【W】の作品に関する著作権を原告に対して時間的に一部譲渡する契約であると解するのが相当である。
なお、被告らは、各種法律意見書(甲六の一、二、甲八、乙一、九、
一〇の各一ないし三)を根拠として、本件契約の性質は信託契約である旨主張するが、右各法律意見書をもっても、右認定事実を覆すに足りるものということはできない。
(三) そうすると、原告は、時間的な制限があることを除けば、他に制限のない、【W】の作品に関する著作権者であるから、被告らに対し、対象絵画及び本件絵画(二)を含む【W】の作品に関する著作権を行使することを妨げられることはないというべきである。また、本件契約が【W】の死亡により終了する理由はないから、本件契約が【W】の死亡により終了したということもできない。
(四) 被告らは、原告が被告ダリ財団に対して負っている各種義務に違反していることを理由として、原告が本件契約に基づく自己の権利を主張するのは権利の濫用である旨主張するが、右義務違反については、これを認めるに足りる的確な証拠はない(監査法人の臨時報告書(乙二〇の一ないし三)が存するが、これのみでは、いまだ右義務違反を認めるに足りる的確な証拠ということはできない。)。
したがって、被告らの右主張は採用することができない。
三 争点二について 1 本件巨匠展に関する被告ダリ財団の行為について (一) 前記第二の一3の事実に弁論の全趣旨を総合すると、北九州市は、平成一〇年一〇月二三日から同年一一月二九日までの間、北九州市にある北九州市立美術館において、本件巨匠展を開催したこと、北九州市は、本件絵画(一)を本件書籍(一)に複製掲載して、右展覧会場で販売したこと、本件書籍(一)には、対象絵画について、原告及び被告ダリ財団が著作権者である旨の記載がされていること、以上の事実が認められる。
(二) 原告は、被告ダリ財団は、原告が本件絵画(一)の著作権者であることを知りながら、被告ダリ財団が本件絵画(一)の著作権者である旨述べて原告の許諾を得ないように教唆し、北九州市をして、原告の許諾を得ずに、本件書籍(一)に本件絵画(一)を複製掲載させ、本件書籍(一)を本件巨匠展の会場で販売させたと主張する。
確かに、被告ダリ財団が、北九州市に対して、本件絵画(一)の著作権者について、自己の見解を述べるといったことがあったかもしれないが、さらに進んで、被告ダリ財団が、北九州市に対して、本件絵画(一)について原告の許諾を得ることなく本件書籍(一)に複製掲載するよう求め、北九州市をして、原告の許諾を得ることなく本件絵画(一)を本件書籍(一)に複製掲載させたとまで認めるに足りる証拠はない。したがって、原告主張に係る教唆の事実は、認めることができない。
(三) 原告は、被告ダリ財団は、原告が対象絵画の著作権者であることを知りながら、被告ダリ財団が原告と並んで対象絵画に著作権を有する旨の虚偽の表示をするように教唆し、北九州市をして、本件書籍(一)に、被告ダリ財団が原告と並んで対象絵画に著作権を有する旨の虚偽の表示をさせたと主張する。
右(一)認定のとおり、本件書籍(一)には、対象絵画について原告と被告ダリ財団が著作権を有する旨の記載があることが認められるところ、前記二で述べたところからすると、右記載のうち被告ダリ財団に関する部分は真実に反する記載であると認められるが、このような記載をしたからといって、そのことが原告の著作権を侵害するということはできない。また、右記載は、被告ダリ財団のみならず原告も著作権者として記載されていること、右記載によって原告が何らかの具体的な被害を被ったことを認めるに足りる証拠がないことからすると、右の記載をしたことが直ちに不法行為に当たるということはできず、その他、右記載について不法行為の成立を認めるべき事情は認められない。さらに、被告ダリ財団が原告と並んで対象絵画に著作権を有する旨の虚偽の表示をするように教唆した事実を認めるに足りる証拠もない。
(四) したがって、本件巨匠展に関する被告ダリ財団に対する原告の請求は理由がない。
2 本件【W】展における被告らの行為について (一) 前記第二の一4の事実に証拠(甲二、一三ないし三三、三七ないし三九、甲四〇、四一の各一、二、甲四二の一ないし三、甲四三、丙二ないし四、丁一ないし三)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。
(1) 本件書籍(二)は、被告ダリ財団が編集、製作、発行したものであって、本件書籍(二)には、本件絵画(二)が複製掲載されている。
(2) 被告ミモカ、被告松坂屋、被告近鉄百貨店、被告伊勢丹は、本件【W】展の各会場において、本件書籍(二)を、定価二二〇〇円で、被告ミモカは九八三冊、被告松坂屋は一九〇四冊、被告近鉄百貨店は二六五六冊、被告伊勢丹は一万二五九〇冊それぞれ販売した。
山梨県立美術館協力会は、山梨県立美術館における本件【W】展開催中、同会場において、本件書籍(二)を、定価二二〇〇円で、八〇〇冊販売した。 被告ダリ財団は、広島県立美術館における本件【W】展開催中、同会場において、
本件書籍(二)を、定価二二〇〇円で、少なくとも二〇〇〇冊販売した。
(3) 平成九年九月五日、東京地方裁判所は、原告が、【W】の作品の著作権を有すると主張して、朝日新聞社等に対し、損害賠償等を請求した事件(平成三年(ワ)第三六八二号事件。以下「朝日新聞社事件」という。)において、本件契約は、著作権の時間的一部譲渡契約であるとして、【W】の著作物について、原告に著作権が帰属する旨判示し、同判決は、一審で確定した。
(4)@ 原告の代理人は、山梨県立美術館に対し、平成一一年三月一八日、
原告が【W】の作品の著作権者であるので、【W】の作品を複製掲載した図録等を作成販売する場合には、原告に対して許可申請をする必要があることを述べて、許可申請することを求めた通告書を送付した。原告の代理人は、その中で、朝日新聞社事件の判決について言及している。
また、原告の代理人は、被告山梨県に対して、平成一一年四月八日、右通告書と同内容の通告書を送付した。原告の代理人は、その中でも、朝日新聞社事件の判決について言及している。
A 原告の代理人は、被告ミモカ、被告松坂屋、被告近鉄百貨店、被告伊勢丹、被告広島県に対して、平成一一年五月六日、右@と同内容の通告書を送付した。原告の代理人は、その中で、朝日新聞社事件の判決について言及している。
B 原告の代理人からの右通告に対し、被告ミモカ、被告松坂屋、被告近鉄百貨店、被告伊勢丹、山梨県立美術館館長及び広島県立美術館館長は、【W】の作品の著作権に関する問題については、原告と被告ダリ財団との問題であること、右の点に関しては、被告ダリ財団又は被告ダリ財団の代理人に問い合わせ、協議されたい旨の回答書を送付した。
(5)@ 広島県立美術館は、平成七年一二月二〇日、原告の我が国における代理人である古木弁護士に対して、【W】が一九三七年に著作した「ヴィーナスの夢」を同美術館開館準備ニュースへ掲載するための許可手続を依頼した。
古木弁護士は、同年一二月二七日、原告から掲載の許諾があった旨の書面を広島県立美術館宛に送付した。
A 広島県立美術館は、平成八年八月二二日及び平成九年一月二三日にも、右著作物に関し、古木弁護士に対して、原告の許可手続を依頼し、平成九年三月一四日には、古木弁護士に対して、右著作物及び【W】が一九三四年に著作した「マルドロールの歌」について、同様の手続を依頼した。
原告は、右の各手続において、古木弁護士を通じて許諾をした。
(二) 被告ダリ財団らの行為について (1) 右(一)認定の事実によると、被告ダリ財団は、本件書籍(二)に本件絵画(二)を複製掲載したこと、被告ミモカ、被告松坂屋、被告近鉄百貨店及び被告伊勢丹は、本件書籍(二)を本件【W】展の各会場で頒布したこと、以上の事実が認められる。
(2) 右(一)(3)認定のとおり、【W】の作品に関して本件契約に基づく原告の著作権の有無が争われた朝日新聞社事件において、原告が著作権者である旨の判決がされたことが認められる。同事件と本件を比較すると、本件では、被告らは、本件契約が信託契約であること、原告に義務違反があることを主張しているところ、証拠(甲二)によると、朝日新聞社事件において、同事件の被告であった朝日新聞社らは、本件契約が委任契約であるとの主張をしており、原告に義務違反があるとの主張はしていなかったことが認められる。しかし、本件契約を信託契約である主張するか、委任契約であると主張するかは、法的な評価に関する主張であって、特に事実の点で異なる主張をしているものではなく、スペイン民法の規定によって委託者の死亡により終了する旨の主張など、主張として重なる部分も多い。また、被告らは、本件において、原告に義務違反があるとの主張をしているが、既に述べたとおり、それを認めるに足りる証拠はほとんど提出されていない。そうすると、朝日新聞社事件の判決を検討することによって、本件における被告らの主張が認められないことを認識することができたというべきである。
そして、以上の事実に、右(一)(4)認定のとおり、被告山梨県、被告ミモカ、被告松坂屋、被告近鉄百貨店、被告伊勢丹及び被告広島県は、それぞれ、本件【W】展開催に先立って、原告から、本件絵画(二)の著作権者は原告であり、本件絵画(二)の掲載については原告に対する許諾手続が必要である旨の通告を受けており、その中では、朝日新聞社事件の判決が言及されていたこと、右通告に対して、右被告らは、いずれも被告ダリ財団と協議されたい旨回答していたことの各事実と弁論の全趣旨を総合すると、被告ダリ財団は、原告が本件絵画(二)の著作権者であることを知りながら、本件書籍(二)に本件絵画(二)を複製して本件書籍(二)を作成し、本件絵画(二)に対する原告の著作権を侵害したものと認められ、また、被告ミモカ、被告松坂屋、被告近鉄百貨店及び被告伊勢丹は、それぞれ、本件書籍(二)が原告の本件絵画(二)に対する著作権を侵害して作成されたものであることを知りながら、本件書籍(二)を本件【W】展の各会場において頒布したものと認められ、この行為は原告の著作権を侵害するものとみなされる。
(三) 被告山梨県及び被告広島県の行為について (1) 右(一)認定の事実によると、山梨県立美術館協力会は、山梨県立美術館における本件【W】展の会場において、本件書籍(二)を頒布したこと、被告ダリ財団は、広島県立美術館における本件【W】展の会場において、本件書籍(二)を頒布したこと、以上の事実が認められる。
(2) 被告山梨県は、右(二)(2)で述べたところからすると、本件書籍(二)が原告の本件絵画(二)に対する著作権を侵害して作成されたものであることを知っていたと認められる。また、右(二)(2)で述べたところに、右(一)(5)認定のとおり、広島県立美術館は、本件【W】展より前に、原告に対して、【W】の作品に関する許諾手続を行っていたことを総合すると、被告広島県は、本件書籍(二)が原告の本件絵画(二)に対する著作権を侵害して作成されたものであることを知っていたものと認められる。
証拠(丁一)によると、山梨県立美術館協力会は、その事務所を同美術館内に置き、同美術館と協力して活動している団体であるから、右のとおり、被告山梨県について、本件書籍(二)が原告の本件絵画(二)に対する著作権を侵害して作成されたものであることを知っていたものと認められる以上、山梨県立美術館協力会についても、本件書籍(二)が原告の本件絵画(二)に対する著作権を侵害して作成されたものであることを知っていたものと推認することができる。
(3) 被告山梨県及び被告広島県は、右(1)のとおり、自ら本件書籍(二)を頒布したものではないが、証拠(甲一六、三八、四三)及び弁論の全趣旨によると、被告山梨県及び被告広島県は、それぞれ本件【W】展の主催者の一人であり、
会場である山梨県立美術館は被告山梨県が、広島県立美術館は被告広島県がそれぞれ管理する施設であると認められるから、被告山梨県や被告広島県の許可なしには、本件【W】展において本件書籍(二)を販売することはできないものと考えられる。しかるところ、右のとおり、現実に本件書籍(二)が販売されているのであって、この事実に右(2)で述べたところを総合すると、被告山梨県及び被告広島県は、
本件書籍(二)が原告の本件絵画(二)に対する著作権を侵害して作成されたものであることを知りながら、本件【W】展における本件書籍(二)の頒布を許し、頒布の機会及び場所を提供したものと認められる。そうすると、被告山梨県及び被告広島県は、本件【W】展の会場における本件書籍(二)の頒布による著作権侵害行為を幇助したものということができる。
四 争点三について 1 本件【W】展に関する損害賠償請求について (一) 前記二2(一)(2)認定のとおり、被告ミモカ、被告松坂屋、被告近鉄百貨店、被告伊勢丹は、本件【W】展の各会場において、本件書籍(二)を、定価二二〇〇円で、被告ミモカは九八三冊、被告松坂屋は一九〇四冊、被告近鉄百貨店は二六五六冊、被告伊勢丹は七〇七四冊それぞれ販売したこと、山梨県立美術館協力会は、山梨県立美術館における本件【W】展の会場において、本件書籍(二)を、定価二二〇〇円で、八〇〇冊販売したこと、被告ダリ財団は、広島県立美術館における本件【W】展の会場において、本件書籍(二)を、定価二二〇〇円で、少なくとも二〇〇〇冊販売したこと、以上の事実が認められる。
弁論の全趣旨によると、本件書籍(二)における本件絵画(二)の著作権使用料は、定価の一〇パーセントが相当であると認められる。
(二) 以上によると、原告が被告らの著作権侵害行為により被った損害は、
以下のとおりであると認められ、被告らは、原告に対し、右金額の範囲で損害賠償責任を負う。
(1) 被告山梨県関係の各賠償額(被告山梨県及び被告ダリ財団) 二二〇〇円×八〇〇冊×一〇パーセント=一七万六〇〇〇円 (2) 被告ミモカ関係の各賠償額(被告ミモカ及び被告ダリ財団) 二二〇〇円×九八三冊×一〇パーセント=二一万六二六〇円 (3) 被告松坂屋関係の各賠償額(被告松坂屋及び被告ダリ財団) 二二〇〇円×一九〇四冊×一〇パーセント=四一万八八八〇円 (4) 被告近鉄百貨店関係の各賠償額(被告近鉄百貨店及び被告ダリ財団) 二二〇〇円×二六五六冊×一〇パーセント=五八万四三二〇円 (5) 被告伊勢丹関係の各賠償額(被告伊勢丹及び被告ダリ財団) 二二〇〇円×七〇四七冊×一〇パーセント=一五五万三四〇円 (6) 被告広島県関係の各賠償額(被告広島県及び被告ダリ財団) 二二〇〇円×二〇〇〇冊×一〇パーセント=四四万円 なお、右(1)ないし(6)については、右各被告らが、右各金額を不真正連帯債務として負担するというべきである。
(三) 被告らは、本件追加契約書1条の規定を根拠として、原告に損害が発生することはないと主張するが、前記二認定のとおり、本件契約は、【W】の作品に関する著作権を原告に対して時間的に一部譲渡する契約であって、本件追加契約書1条の規定は、その譲渡の対価の内容を確認したものと解されるから、著作権者である原告に損害が発生しないということはできない。
(四) なお、遅延損害金の起算点は、不法行為の終わった日である各展覧会終了日とするのが相当であるので、原告主張の起算点が展覧会の終了日より後の場合は、原告主張の日とし、展覧会の終了日より前の場合は、展覧会の終了日とする。
2 本件書籍(二)の複製頒布禁止及び廃棄請求について (一) 既に述べたとおり、被告ダリ財団は、原告が本件絵画(二)の著作権者であることを知りながら、本件書籍(二)に本件絵画(二)を複製掲載したのであるから、同被告に対する本件書籍(二)の複製頒布禁止及び廃棄請求は理由がある。
(二) 被告ミモカ、被告松坂屋、被告近鉄百貨店及び被告伊勢丹は、いずれも本件【W】展の各会場において、本件書籍(二)を頒布し、被告山梨県及び被告広島県は、本件【W】展の会場における本件書籍(二)の頒布を幇助したのであるが、
これらの者が本件書籍(二)に本件絵画(二)を複製掲載したとは認めらないし、また、右の頒布も、本件【W】展開催期間中に限られるものと解されるから、本件【W】展が終了した現時点において、右被告らが、本件書籍(二)を頒布するおそれがあるとは認められない。そうすると、右被告らに対する本件書籍(二)の複製頒布禁止及び廃棄請求は理由がない。
五 結論 以上の次第で、原告の本件各請求は、主文掲記の範囲で理由がある。
追加
(別紙)展覧会開催一覧表(なお、会期については、いずれも平成一一年である。)│被告名│会期│会場││被告山梨県│四月一七日から五月三〇日│山梨県立美術館(甲府市)││被告ミモカ│六月五日から七月一一日│丸亀市猪熊弦一郎現代美術館││││(丸亀市)││被告松坂屋│七月一五日から八月一七日│松坂屋美術館(名古屋市)││被告近鉄百貨店│八月二一日から九月一五日│近鉄美術館(大阪市)││被告伊勢丹│九月二三日から一一月一日│伊勢丹美術館(東京都)││被告広島県│一一月六日から一二月二三日│広島県立美術館(広島市)│(別紙)書籍目録(一)題号「シュルレアリスムの巨匠展」大きさ縦二八センチメートル×横二二、六センチメートル頁数全一七一頁(表紙、奥付を除く。)書籍目録(二)題号「【W】の世界」大きさ縦二八.八センチメートル×横二五センチメートル頁数全一四二頁(表紙、奥付を除く。)(別紙)絵画目録(一)【W】の著作に係る左の絵画(それぞれ絵画名、著作年、種類、大きさの順に記載したもの)一部分幻影、ピアノに現れたレーニンの六つの肖像一九三一年油彩・カンヴァス一一四センチメートル×一四六センチメートル二ガラの顔の偏執狂的変貌一九三二年鉛筆、インク・紙二九センチメートル×二一センチメートル三幽霊と幻影一九三一年頃油彩・カンヴァス一〇〇センチメートル×七三センチメートル四犀の形態によるフェイディアスのイリッソス像一九五四年油彩・カンヴァス一〇〇センチメートル×一二九センチメートル五海の皮膚を引き上げるヘラクレスが恋をめざめさせようとするヴィーナスにもう少し待って欲しいと頼む一九六三年油彩・カンヴァス四一、九センチメートル×五五、九センチメートル絵画目録(二)【W】の著作に係る左の絵画(それぞれ本件書籍(二)中における番号、絵画名、
著作年、種類、大きさを示す。本件書籍(二)一四〇頁「作品リスト」参照)一ジプシーの肖像一九一九年頃グワッシュ・板紙三三センチメートル×二四センチメートル二エス・ピアンク一九一九年頃油彩・カンヴァス三七センチメートル×二六センチメートル三《父の肖像》のための習作一九二〇年鉛筆・紙三二.七センチメートル×二六.三センチメートル四《父の肖像》のための二つの習作一九二〇年鉛筆・紙二三.三センチメートル×三二.八センチメートル五自画像と《父の肖像》のための習作一九二〇年鉛筆・紙一二.八センチメートル×三〇.七センチメートル六父の肖像一九二〇年油彩・カンヴァス九一センチメートル×六六センチメートル七自画像のための習作一九二〇年鉛筆・紙一六.六センチメートル×二二.一センチメートル八カダケス(ポルト・アルグエル)一九二〇年頃油彩・カンヴァス三六センチメートル×三八センチメートル九静物一九二二年鉛筆・カード二三.一センチメートル×三二.二センチメートル一〇グラスのある静物一九二二年鉛筆、インク、淡彩・紙一五.五センチメートル×一三センチメートル一一ラファエルロ風の首をした自画像一九二二年頃油彩・カンヴァス四一.五センチメートル×五三センチメートル一二腕に頭をうずめた女性像一九二二年頃鉛筆・紙二二センチメートル×一六センチメートル一三クレウス岬の塔から眺めたカダケス一九二三年油彩・カンヴァス一〇〇センチメートル×九八センチメートル一四サイフォンとラムの小瓶一九二四年油彩・カンヴァス八〇.五センチメートル×五〇センチメートル一五アナ・マリアの肖像(カダケス)一九二五年頃油彩・カンヴァス九二センチメートル×六五センチメートル一六《縫い物をする少女》のための習作一九二六年鉛筆・紙五三センチメートル×三二.四センチメートル一七肘掛椅子に座る裸婦一九二七年頃ミクストメディア・板紙六八.八センチメートル×五二.五センチメートル一八シュルレアリスム的コンポジション-発生的鳥肌一九二八年油彩・板紙七五.五センチメートル×六二.五センチメートル一九擬人化されたパン一九三二年油彩・カンヴァス二三.五センチメートル×一六.五センチメートル二〇死の騎士一九三四年油彩・カンヴァス七〇センチメートル×五九.五センチメートル二一シュルレアリスム的家具-《奇異なものたち》のためのデッサン一九三四-三五年頃鉛筆・紙二五.三センチメートル×三七.三センチメートル二二奇異なものたち一九三五-三六年油彩・木板四〇.六センチメートル×五一.五センチメートル二三頭が雲で一杯の男一九三六年油彩・板紙一八.一センチメートル×一四センチメートル二四《イメージが消える》のための習作一九三八年インク・紙六五.七センチメートル×五一.四センチメートル二五イメージが消える一九三八年油彩・カンヴァス五六.二センチメートル×五〇.二センチメートル二六フロイトの多形的倒錯一九三九年ミクストメディア・紙四九センチメートル×三六.三センチメートル二七群像一九三九年インク・紙三二.四センチメートル×四九センチメートル二八《ガラの肖像》のための習作一九三九年鉛筆・紙五二センチメートル×三二.四センチメートル二九男の胸像のフェルメール風情景への変貌一九三九年淡彩・紙六三.五センチメートル×四八.五センチメートル三〇男の胸像のフェルメール風情景への変貌一九三九年淡彩・紙六三.五センチメートル×四八.五センチメートル三一《アブラハム・リンカーンの顔に浮かぶフェルメール風人物の亡霊》のための習作一九三九年頃水彩・紙三二.二センチメートル×四八.七センチメートル三二バレエ舞台背景のための習作一九三九年頃鉛筆、インク、淡彩・紙三五.五センチメートル×四三センチメートル三三階段上の人々一九四〇年頃インク・紙二一.三センチメートル×二九センチメートル三四果物鉢とアーチ-《ヴォルテールの見えない胸像がある奴隷市場》のための習作一九四〇年頃鉛筆・紙二五センチメートル×三二.六センチメートル三五果物鉢と穴のあいた家-《ヴォルテールの見えない胸像がある奴隷市場》のための習作一九四〇年頃鉛筆・紙二五.一センチメートル×三二.六センチメートル三六《ヴォルテールの見えない胸像がある奴隷市場》のための習作一九四一年グワッシュ、コンテ、インク・カード五〇.九センチメートル×六六センチメートル三七ドレスを着た自動車一九四一年ミクストメディア・板紙四九.九センチメートル×三九.四センチメートル三八『狂えるトリスタン』(第二幕)舞台背景のための習作一九四四年油彩・カンヴァス六〇センチメートル×九六センチメートル三九岩の上にあらわれたガラの三つの顔一九四五年油彩・木板二〇センチメートル×二五.六センチメートル四〇バレエのためのポスター一九四五年ミクストメディア・紙五八.五センチメートル×三六.五センチメートル四一ミシンと傘のあるショーウィンドウ一九四五年鉛筆、インク・紙八.九センチメートル×一二.八センチメートル四二四つのイラスト:キャンドルを持つ女性像一九四五年頃鉛筆、インク・紙三六.八センチメートル×五八.八センチメートル四三「砂漠」(香水の広告)のための習作一九四六年鉛筆、インク・紙三八.七センチメートル×五八.七センチメートル四四ピカソの肖像一九四七年油彩・カンヴァス六五.五センチメートル×五六センチメートル四五白鳥の羽根の原子内均衡一九四七年油彩・カンヴァス七七.五センチメートル×九六.五センチメートル四六《ネロの鼻の非物質化》のための習作一九四七年インク・紙五三.五センチメートル×三七センチメートル四七ネロの鼻の非物質化一九四七年油彩・カンヴァス七六センチメートル×四五.八センチメートル四八《レダ・アトミカ》のための習作一九四七年クレヨン、インク・紙五四.二センチメートル×四七.七センチメートル四九舞台背景のための習作一九五〇年頃ミクストメディア・板で裏打ちした紙五〇.五センチメートル×六三.五センチメートル五〇遠近法で描かれたガラ一九五二年インク・紙四三.四センチメートル×三五.七センチメートル五一超立方体的人体を見つめるガラ一九五四年油彩・カンヴァス三一.三センチメートル×二七.七センチメートル五二聖女セシリアの昇天一九五五年油彩・カンヴァス八一センチメートル×六六センチメートル五三《最後の晩餐》のための習作一九五五年赤チョーク・紙五二センチメートル×六六.五センチメートル五四カナヴェラル岬の聖母被昇天一九五六年グワッシュ・板紙一五一センチメートル×一〇二センチメートル五五見えない鏡を見つめる後ろ向きの裸のガラ一九六〇年油彩・カンヴァス四一センチメートル×三一.三センチメートル五六聖母マリアの冠を奪い合う聖サルバドールとアントニ・ガウディ一九六〇年淡彩・板紙一八.二センチメートル×二四.三センチメートル五七六人の人物像一九六〇年頃水彩・紙三六.五センチメートル×五八センチメートル五八無題一九六〇年頃油彩・カンヴァス四〇センチメートル×三〇.五センチメートル五九メデューサの頭部一九六三年ミクストメディア・紙六五.四センチメートル×五〇.三センチメートル六〇《デオキシリボ核酸のアラブ人たち》のための習作一九六三年頃ミクストメディア・木板三〇.四センチメートル×四〇.六センチメートル六一《デオキシリボ核酸のアラブ人たち》のための習作一九六三年油彩・カンヴァス四三センチメートル×五七センチメートル六二蝶をピンで止める演技をする役者一九六五年油彩・木板一二.二センチメートル×九.一センチメートル六三ポルト・リガトのプール一九六九-七〇年油彩・カンヴァス一二.二センチメートル×一〇.一センチメートル六四「風の宮殿」(ダリ劇場美術館)の天井画のための習作一九七〇年ミクストメディア・板紙七五センチメートル×一〇四.五センチメートル六五プボル城の天井装飾のための習作一九七〇年頃グワッシュ・紙五七.七センチメートル×三八センチメートル六六プボル城のプールのための下絵一九七〇年頃ミクストメディア・板紙一八センチメートル×二三.二センチメートル六七記念すべきアリス・クーパーのための最初の円筒形ホログラムのための習作一九七三年パステル、赤チョーク・紙三〇センチメートル×四一.五センチメートル六八「風の宮殿」(ダリ劇場美術館)の天井画一九七三年頃グワッシュ・印画紙二二.八センチメートル×一一センチメートル六九ガラの足(左パネル)一九七四年油彩・カンヴァス六〇センチメートル×六〇センチメートル七〇ガラの足(右パネル)一九七四年油彩・カンヴァス六〇センチメートル×六〇センチメートル七一ガラの足一九七四年鉛筆・紙六〇センチメートル×六一センチメートル七二ガラの肖像一九七六-七七年油彩・銅版三五センチメートル×二七センチメートル七三ヴィーナスの誕生をガラに見せるために地中海の皮膚をめくるダリ(左パネル)一九七七年油彩・カンヴァス一〇一センチメートル×一〇一センチメートル七四ヴィーナスの誕生をガラに見せるために地中海の皮膚をめくるダリ(右パネル)一九七七年油彩・カンヴァス一〇一センチメートル×一〇一センチメートル七五《球体群の調和》のための習作一九七八年頃インク・紙三八.三センチメートル×二八.四センチメートル七六球体群の調和一九七八-七九年油彩・カンヴァス一〇〇センチメートル×一〇〇センチメートル七七メルクリウスとアルゴス一九八一年油彩・カンヴァス一四〇.三センチメートル×九五.五センチメートル七八《甲冑》または《戦士》(ミケランジェロによる《ロレンツォ・デ・メディチ》より)一九八二年油彩・カンヴァス九九.八センチメートル×一〇〇センチメートル七九無題(ミケランジェロによる《昼》より)一九八二年油彩・カンヴァス六七センチメートル×九四.五センチメートル八〇無題(ミケランジェロによる《夜》より)一九八二年油彩・カンヴァス六七センチメートル×九四.五センチメートル八一ガウディの二重の勝利一九八二年油彩・カンヴァス七五センチメートル×六〇センチメートル八二エル・エスコリアル修道院の建築的歪み一九八二年油彩・カンヴァス六〇センチメートル×七三センチメートル八三エル・エスコリアル修道院と破壊的形態のカリグラフィー一九八二年油彩・カンヴァス一三〇センチメートル×一四〇センチメートル八四《荒々しくチェロに襲いかかるベッドと二つのナイトテーブル》のための習作一九八三年鉛筆、インク・紙三〇センチメートル×三九.一センチメートル八五荒々しくチェロに襲いかかるベッドと二つのナイトテーブル」一九八三年油彩・カンヴァス六〇センチメートル×七三センチメートル八六荒々しくチェロに襲いかかるベッドと二つのナイトテーブル一九八三年油彩・カンヴァス六〇センチメートル×七三センチメートル八七《荒々しくチェロに襲いかかる椅子とナイトテーブル》のための習作一九八三年鉛筆、インク・紙三〇.一センチメートル×三九.一センチメートル八八荒々しくチェロに襲いかかる車とナイトテーブルとベッド一九八三年鉛筆、インク・紙三〇.一センチメートル×三九.二センチメートル八九チェロ=キリストのピエタ一九八三年鉛筆、インク・紙三九.二センチメートル×三〇.一センチメートル九〇チェロ=キリストの十字架降下一九八三年鉛筆、インク・紙三九.一センチメートル×三〇.一センチメートル九一エウロペの位相幾何学的誘拐(ルネ・トムへのオマージュ)一九八三年油彩・カンヴァス六〇センチメートル×七三センチメートル
裁判長裁判官 森義之
裁判官 内藤裕之
裁判官 杜下弘記