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事件 平成 30年 (ワ) 21931号 発信者情報開示請求事件
5原告X
同訴訟代理人弁護士 上岡弘明
被告 GMOペパボ株式会社
同訴訟代理人弁護士 佐藤明夫 尾西祥平 10 塩川理恵 松本雄真
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2018/10/26
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,原告に対し,別紙侵害行為目録記載の行為に係る別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
15 2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
請求
主文同旨
事案の概要
20 1 本件は,原告が,被告が運用するレンタルサーバ上のウェブサイト上に掲載さ れた写真は原告が撮影した著作物であるから,これを無断で掲載することが原告 の著作権(複製権及び送信可能可権)を侵害することは明らかであるなどと主張 して,被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情 報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基25 づき,上記著作権侵害行為に係る別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件 発信者情報」という。)の開示を求める事案である。
1 2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠(枝番のあるもの は,特記なき限り,その全てを含む。以下も同じ。)及び弁論の全趣旨により認 定することができる事実) (1) 被告は,第三者がウェブページ等を運営するためのサーバを提供するホステ 5 ィング(レンタルサーバ)事業等を営む株式会社である。
(2) 平成29年11月8日頃,別紙侵害行為目録記載@のウェブページ(以下「本 件ウェブページ」という。)に,別紙侵害行為目録記載Aの写真(以下「本件 写真1」という。)及び同記載Bの写真(以下「本件写真2」といい,本件写 真1と併せて「本件各写真」という。)の画像ファイルが掲載された。本件ウ10 ェブページは,被告が管理する特定電気通信設備により提供されたものであり, 上記掲載を行った者(以下「本件発信者」という。)は,上記掲載により,本 件各写真の画像ファイルを送信可能化したものである。
(3) ウェブ上のアルバム提供サービスである「Flickr」の「A」名義のア カウント(以下「本件アカウント」という。)上のアルバムのページ(以下「本15 件ウェブアルバム」という。)に,本件各写真の画像ファイルが掲載された。
本件写真1の撮影日は平成26年8月16日,本件写真2の撮影日は平成28 年3月20日である。(甲1,2) 3 争点 (1) 本件各写真の著作物性20 (2) 本件各写真の著作者
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(本件各写真の著作物性)について (原告の主張) 本件各写真は,カメラマンである原告が,絞り,露光時間及び光の感度などを25 調整し,構図等にも工夫を凝らして撮影したものであるから,創作性があり,著 作物性が認められる。
2 (被告の主張) 著名なコスプレイヤーを撮影した本件各写真の独自性の大部分は,被写体の姿 にこそ認められるもので,撮影者が撮影時刻,カメラの露光や陰影の付け方等に 独自の工夫を凝らしたものではないから,創作性がなく,本件各写真には著作物 5 性が認められない。
2 争点(2)(本件各写真の著作者)について (原告の主張) 本件各写真を撮影したのは原告であるから,原告が本件各写真の著作者である。
なお,本件アカウントは,原告のアカウントである。
10 (被告の主張) 原告が本件各写真の撮影者であることは否認する。本件アカウントが原告のア カウントであると認め得る証拠はないし,仮にそうであったとしても,原告が「F lickr」上に本件各写真のデータを投稿したとの事実以上に原告が本件各写 真を撮影したとの事実まで認められるわけではなく,これを認め得る証拠は提出15 されていない。
当裁判所の判断
1 争点(1)(本件各写真の著作物性)について 証拠(甲1の2・3,甲2)によれば,本件各写真は,いずれも有名な女性コ スプレイヤーを被写体とするものであるが,本件写真1は,日中の屋外において20 身体を横向きにして視線をカメラに向けた被写体のバストアップの写真であり, 被写体の後方をぼやけさせ,フラッシュを発光させるなどして撮影されたもので あること,本件写真2は,屋内において身体を正面に向け視線をカメラに向けた 被写体の上半身の写真であり,被写体の後方をぼやけさせ,フラッシュを発光さ せるなどして撮影されたものであることが認められる。このように,本件各写真25 は,絞りや陰影,構図やアングルなどを工夫して撮影されたものであるから,写 真の著作物であると認められる。
3 被告は,本件各写真の独自性の大部分は被写体の姿にこそ認められるなどと主 張して,本件各写真の著作物性を否定するが,本件各写真の撮影において上記の ような創作性が認められるのであるから,採用することができない。
2 争点(2)(本件各写真の著作者)について 5 (1) 前記前提事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めるこ とができる。
ア 原告は,平成30年1月頃以降,自ら又は代理人を通じ,被告に対し,原 告が撮影した本件各写真の画像ファイルが本件ウェブページに無断で掲載 されて原告の著作権が侵害されているとして,プロバイダ責任制限法4条110 項に基づき本件発信者情報を開示するよう書面や電子メールにより複数回 請求したが,被告は,本件発信者が開示に同意しないことや,原告の権利が 侵害されたことが明らかであると判断することは困難であることから,本件 発信者情報を開示することはできない旨の回答をしていた。
(甲3の1〜5) イ 東京地方裁判所は,平成30年6月22日,原告の申立てに基づき,被告15 に対し,本件発信者情報の消去を禁ずる旨の仮処分決定をした。
ウ 「Flickr」の本件アカウントに係るページには,本件ウェブアルバ ムでの本件アカウント保有者の表示名が「A」であることが表示されている ほか,支払方法として登録されたクレジットカード上の住所として原告の住 所が表示されている。(甲1の1)20 エ 本件ウェブアルバムには,本件各写真を撮影したのがデジタルカメラ「N ikon D610」であること,本件各写真の撮影日,絞りやシャッター スピードなどの本件各写真の撮影条件が掲載されているほか,「A」が平成 30年1月に被告に対し発信者情報開示請求をしたことが記載されている。
(甲1の2・3)25 (2) 前記(1)認定によれば,原告が,平成30年1月頃以降,自らが本件各写真 を撮影した著作者であるとして被告に本件発信者情報の開示を求め,その消去 4 禁止の仮処分決定を得るなど,原告が本件各写真の著作者として行動している こと,また,「Flickr」の本件アカウントに係るページには原告の住所 が表示されている上,本件ウェブアルバムには,被告に発信者情報の開示を求 めた旨の上記原告の行動と合致する内容の記載もあることが認められる。これ 5 らの事実に加え,原告が,本件アカウントが原告のものであることに間違いな い旨述べていること(甲1の1),本件各写真の撮影者(著作者)が原告以外の 者であることをうかがわせる証拠は何もないことを総合考慮すれば,原告が本 件各写真を撮影した著作者であると認めることができる。
(3) 被告は,仮に,本件ウェブアルバムに本件各写真を掲載したのが原告であっ10 たとしても,当然に原告がその撮影者であるとはいえないとの趣旨の主張をす るが,本件各写真の撮影者が原告以外の者であることをうかがわせる証拠がな いことは前記のとおりである。
3 以上のとおり,本件各写真の著作者は原告であると認められるところ,本件発 信者による本件各写真の画像データの入手先が本件アルバム以外に考え難いこ15 とからすれば,本件発信者は,本件ウェブアルバムから本件各写真の画像ファイ ルを複製した上,本件ウェブページに掲載(アップロード)して,上記画像ファ イルを送信可能化したものと認められる。また,本件ウェブページ上の記載から は誰が本件各写真の画像ファイルを掲載したのかが判然とせず(甲2),原告が いまだ被告から本件発信者情報の開示を受けていないことからすれば,原告にお20 いて,本件各写真に係る著作権侵害に基づく損害賠償請求権の行使をするために は,本件発信者情報の開示が必要であると認められる。そして,本件ウェブペー ジが被告の管理する特定電気通信設備により提供されていることからすれば,被 告は,本件発信者による原告の著作権侵害行為に係る開示関係役務提供者である と認められる。
25 したがって,原告は,被告に対し,プロバイダ責任制限法4条1項に基づき, 本件発信者情報の開示を求めることができる。
5 4 よって,原告の請求は理由があるから,これを認容することとして,主文のと おり判決する。
追加
5裁判長裁判官佐藤達文10裁判官三井大有15裁判官今野智紀206 別紙侵害行為目録平成29年11月8日頃,以下の@のウェブページを作成し,同ウェブページにA5及びBの画像ファイルを掲載した。
@http://以下省略Ahttp://以下省略10Bhttp://以下省略7 別紙発信者情報目録発信者に係る次の各項の情報51氏名又は名称2住所3電子メールアドレス8