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事件 平成 29年 (ワ) 29065号 損害賠償請求事件
5原告株式会社WILL
同訴訟代理人弁護士 酒井康生
被告A
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2018/03/16
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,原告に対し,85万0085円及びこれに対する平成2910 年10月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
15 主文同旨
事案の概要
1 本件は,原告が,被告に対し,被告は,株式会社CA(以下「CA」という。) の著作物である別紙著作物目録記載の映画の著作物(以下「本件著作物」とい う。)のデータをインターネット上のサーバーにアップロードしてその公衆送20 信権を侵害したところ,原告は,CAの被告に対する同侵害行為による損害賠 償請求権を吸収合併によりCAから承継したと主張して,民法709条及び著 作権法114条3項により,損害賠償金85万0085円及びこれに対する不 法行為の後の日である平成29年10月3日(訴状送達の日の翌日)から支払 済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
25 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によ り認められる事実) 1 (1) 原告は,映画,ビデオの映像製作,編集業務,販売等を営む株式会社であ る。
(2) 本件著作物は映画の著作物である。CAは,本件著作物について,映画製 作者(著作権法2条1項10号)として著作権を有していた。(甲1の1) 5 (3) 原告は,平成28年12月1日,CAを吸収合併し,本件著作物の著作権 及びCAが有していた本件著作物に係る損害賠償請求権(以下「本件損害賠 償請求権」という。)を承継した。(甲13)
当事者の主張
1 原告10 (1) 被告は,平成26年3月31日,インターネット上の動画共有サイトであ る「FC2アダルト」(以下「本件動画サイト」という。)のサーバーに, 本件著作物のデータをアップロードした。(甲2の1) 被告の上記行為は,本件著作物に係るCAの著作権(公衆送信権。著作権 法23条1項)を侵害する。
15 (2) 被告の不法行為によりCAに生じた損害額は,次のとおり,著作権法11 4条3項により,85万0085円である。そして,原告は,吸収合併によ りCAから同額の本件損害賠償請求権を承継した。
ア 本件著作物の再生1回当たりの売上額(税抜き)278円 イ 被告がアップロードした本件著作物の再生回数 8047回20 (平成26年6月5日時点での再生回数) ウ 使用料率 売上総額(税抜き)の38% (原告が,第三者に対し,原告の著作物の配信を許諾する際の使用料率) エ 損害額の計算 8047回×278円×38%=85万0085円25 (3) 被告の主張に対する認否・反論 被告は,本件損害賠償請求権は時効により消滅したと主張するが,CAが 2 本件著作物を本件動画サイトにアップロードしたのが被告であると知ったの は,米国法人であるFC2,Incからその旨の開示を受けた平成26年8 月28日である。
したがって,本訴提起時において,本件損害賠償請求権の時効期間は経過 5 しておらず,同請求権は時効により消滅していない。
2 被告 (1) 原告の主張に対する認否 上記1(1)の事実は知らない。上記1(2)の請求額は不当である。
(2) 被告の主張10 本件損害賠償請求権について,民法724条の消滅時効を援用する。
当裁判所の判断
1 著作権侵害の行為者及び侵害の有無について 証拠(甲2の1,甲6の1・2,甲8の1・2,甲10,14)によれば, 本件著作物のデータを本件動画サイトにアップロードして,公衆に送信し得る15 状態に置いたのは被告であると認めるのが相当である。そして,被告が本件著 作物のデータを本件動画サイトにアップロードした行為は,CAの公衆送信権 を侵害するものというべきであり,前記第2,2(3)のとおり,原告は,CAを 吸収合併したことにより本件損害賠償請求権を承継したものと認められる。
したがって,原告は,被告に対して,被告の上記侵害行為による損害賠償を20 求めることができる。
2 消滅時効の成否について 被告は,本件損害賠償請求権は時効により消滅したと主張するが,証拠(甲 10,14)及び弁論の全趣旨によれば,本件著作物のデータを本件動画サイ トにアップロードしたのが被告であることをCAが知ったのは平成26年8月25 28日であると認められる。そして,本件損害賠償請求権をCAから承継した 原告が本訴を提起したのは平成29年8月26日であるから(当裁判所に顕著), 3 本訴提起時において民法724条所定の3年の時効期間は経過していない。
したがって,本件損害賠償請求権が時効により消滅した旨の被告の主張には 理由がない。
3 損害額 5 (1) 証拠(甲1の1,甲2の1,甲3の1・2,甲11の1・2,甲12,13) 及び弁論の全趣旨によれば,本件著作物は,原告のグループ会社が運営する ウェブサイトにおいて有料でインターネット配信されていること,同サイト においてストリーミングで本件著作物を視聴する際の価格が300円(消費 税込。税抜き価格は278円)であること,原告が第三者に著作物の配信(ス10 トリーミング及びダウンロード)を許諾する場合の対価は,当該第三者の売 上総額(消費税抜き)の38%であること,被告が本件動画サイトにアップ ロードした本件著作物が平成26年6月5日時点で8047回再生されたと 表示されていることの各事実が認められる。
(2) 被告は,陳述したものとみなされた答弁書において原告の請求額が不当で15 あると主張するのみで,その具体的理由について主張せず,何らの証拠も提 出しない。
(3) 上記(1)によれば,被告の本件著作物の著作権侵害に係る使用料相当額は, 85万0085円(278円×8047回×0.38)であると認めるのが 相当である。
20 4 結論 よって,原告の請求は理由があるのでこれを認容することとして,主文のと おり判決する。