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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成11ワ3635損害賠償請求事件 判例 特許権
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平成4ワ2130損害賠償請求事件 判例 特許権
平成14ワ1989著作権侵害差止等請求事件 平成14ワ6312著作権侵害差止等請求事件 判例 特許権
平成26ネ10130損害賠償請求控訴事件 判例 特許権
関連ワード 著作物性 /  創作性 /  著作者 /  建築の著作物 /  同一性 /  類似性 /  差止 / 
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事件 平成 2年 (ヨ) 105号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 福島地方裁判所
判決言渡日 1991/04/09
権利種別 著作権
訴訟類型 民事仮処分
主文 本件仮処分申請を却下する。
申請費用は申請人の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 債権者 債務者らは別紙第一目録(一)記載の土地(以下「本件土地」という。)上に建築中の別紙第一目録(二)記載の建物(以下「本件建物」という。)について建築工事を中止し、これを続行してはならない。
二 債務者ら 主文と同旨の裁判
事案の概要
一 当事者間に争いのない事実1 債権者は、一級建築士の資格を有し、「シノブ設計」なる名称にて、建築物の設計、工事管理等の業務を行なっている者である。
2 債権者は、昭和六二年一月頃債務者有限会社野間建築事務所(以下「債務者会社」という。)の代表取締役Aの紹介にて、債務者B(以下「債務者B」という。)から、鉄筋コンクリート造の住宅建築について設計を依頼された。
3 債権者は、昭和六二年三月以降、基本計画の立案、基本設計の作業を行ない、
現地調査、関係者との何回もの打合せ等を経て、実施設計をし、設計図書(設計図及び仕様書、疎甲第四号証、乙第二号証、第四号証の一、二ー以下「本件設計図」という。)を完成した。
その結果、昭和六三年四月一九日関係者同意のもとに確認申請書を所轄官庁に提出した。
4 その後、設計の変更等があったが、債務者Bは、平成元年三月一九日債権者に対し、建築は取り止める旨の通知をなした。
5 債務者Bは債権者の幾度かの催促にかかわらず設計料を支払わなかったが、平成二年八月、従来からの経緯を熟知している債務者会社に住宅建築を依頼し、債務者会社に設計図(乙第三号証、同第五号証の一、二、以下「債務者会社の設計図」という。)を作成してもらい、それに沿って本件建物を建築中である。
二 債権者の主張 別紙第二のとおり三 債務者らの主張 別紙第三のとおり
当裁判所の判断
一 建築設計図は、一般に、学術的性質を有する図面にあたり、そして建築家がその知識と技術を駆使して作成したものでそこに創作性が認められる限り、
著作権法10条1項6号著作物性を肯定し得ると解され、かかる観点から本件設計図も前記六号の著作物に該当するものと考えられる。
二 ところで著作権法10条1項6号の著作物の複製は、同項五号の「建築の著作物」の場合となり2条1項15号の本文の有形的な再製に限られ、したがって建築設計図に従って建物を建築した場合でも、その建築行為は建築設計図の「複製」とはならない。
それで本件建物が本件設計図に従って建築された場合であっても、右六号の関係では複製とはいえない。
三 しかして、設計図に従って建物を建築することが「複製」となるのは、「建築の著作物」(同法10条1項5号)についてである。
すなわち「建築の著作物」とは(現に存在する建築物又は)設計図に表現されている観念的な建物自体をいうのであり、そしてそれは単に建築物であるばかりでなく、いわゆる建築芸術と見られるものでなければならない。
四 債権者は、本件設計図が図面の著作物(六号)に該当することから、直ちに本件建物の建築行為が、「複製」権の侵害となるとするものであるが、上述来説示のように、本件設計図に表現されている観念的な建物が「建築の著作物」に該当しないかぎり本件建物の建築行為は「複製」権の侵害とはならない。
そこで、本件設計図に表現されている観念的な建物は「建築の著作物」に該当するか否か検討するにここで「建築芸術」と言えるか否かを判断するにあたっては、
使い勝手のよさ等の実用性、機能性などではなく、もっぱら、その文化的精神性の表現としての建物の外観を中心に検討すべきところ、前顕疎乙第二号証、同第四号証の一、二、甲第四号証によれば、右観念的な建物は一般人をして、設計者の文化的精神性を感得せしめるような芸術性を備えたものとは認められず、いまだ一般住宅の域を出ず、建築芸術に高められているものとは評価できない。
そうすると、本件設計図に表現されている観念的な建物が「建築の著作物」に該当しないので、本件債務者らの建築行為は「複製」権の侵害とはならない。
五 のみならず、疎乙第二号証、同第四号証の一、二、同第三号証、同第五号証の一、二によれば、本件設計図と債務者会社の設計図との間には、その外観、内部の間取り等において、債務者ら主張(別紙第三の第三)のような相違点が見られるので、両設計図間には類似性をも認めることができない。
六 以上によれば、債権者の本件仮処分申請は、理由がないので却下することとし、申請費用についてはこれを債権者の負担とすることとし、主文のとおり決定する。
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別紙第一目録(一)(1)所在福島県伊達郡<以下略>地番八八番三地目雑種地地積九一三平方メートル(2)所在同所地番九〇番五地目雑種地地積一一七二平方メートル以上目録(二)福島県伊達郡<以下略>八八番三、九〇番五所在木造鉄板葺居宅一棟床面積一階二〇二・〇一平方メートル、二階一三六・〇八平方メートル(ただし債務者有限会社野間建築事務所の設計図により建築中のもの。)以上別紙第二債権者の主張一著作権法10条1項6号の「図面」の著作物は、思想または感情が学術的性質を有する図面によって表現されている著作物をいい、建築設計図はこれに該当し得る。債権者の完成した本件設計図は、一般住宅のものではあるが、一般通念上審美的創作性が認められ、図面の著作物として保護されるべきものである。
二而して同法2条1項15号ロに規定するように、「建築に関する図面に従って建築物を完成すること」は建築著作物の複製にあたり、著作者である債権者の専有に属する権利であるにかかわらず(同法17条21条)、債務者らはこの権利を侵害し、無断で利用して建築工事に着手したため、債権者は侵害の停止を求めるものである(同法112条1項)。
三著作権法2条1項15号ロの規定によれば、「建築に関する図面に従って建築物を完成すること」は建築著作物の複製にあたる。而して、債務者らの建築しようとする建築物の設計図(疎乙第三号証、疎乙第五号証の一、二など)は、債権者の設計図(疎甲第四号証、疎乙第二号証)と実質的に同一性を有し、部分再製であっても、債務者らの設計図(それは債権者の設計図に依拠したものである)作成過程を経た本件建築物の完成が、建築著作物の複製に該当することが明らかである(平成三年一月二五日付準備書面にて述べたとおりである。)。
四債権者は、建築設計を依頼された後、敷地調査、建主の希望を満たすための建物の構造的検討、材料学面からの耐久性や生活諸機能を充足させるための諸設備を検討し、経済性についても比較検討を加え(疎甲第二号証の一ないし第三号証の二は、その過程の一つの例である)それを結集して具体化したものが債権者の設計図である。それは、物的環境的な面と視覚対象的な面を複合したもので、主として、
前者では実用性、後者では芸術性を追求して作出、創造されたものである。
当然、その過程においては、右基本概念に添い、意匠、構造、電気、設備等、各分野の専門家と協議しつつ設計作業をすすめ、その総括が本件設計図書である。
債権者の本件設計図は、一般通念上明らかな審美的創造性が認められ、著作物にあたると思料する。
五債務者らが、その設計図と称するものによって建築しようとしている建物は、
基本的に、債権者が債務者らに交付した設計図の設計要部を模倣したものである。
ブロックプランは、車庫を除いた点、一階寝室が二階機械室に移り、和室が配置されたことが異なっているが、このことに関連した事項が多少異なる程度で、本質的部分は、動線計画から外観仕上げまで同じであると言える。
かえって、債務者らは、原設計図の内容を理解せぬまま模倣することに急だったため、(1)吹抜の空間的取扱いの無意味、(2)二ヵ所の階段の細部の検討不十分、(3)二階シャワー室の位置の不自然、(4)平面、立面、パースのくい違い、(5)磁器タイル貼りの無理、(6)一階部屋上のベランダ設置の不自然、
(7)屋根葺、磁器タイルの内容不明等の図面を作っている。
以上別紙第三債務者らの主張第一債権者の債務者B(以下「債務者B」という)に対する仮処分申請の適法性について一債権者は、債権者の本件設計図書が債務者有限会社野間建築事務所(以下「債務者会社」という)の設計図書と酷似しており、これにもとづく債務者Bの本件建築は著作権法に違反するものと主張している。
二右主張からすれば、債権者の設計図書と債務者Bの建物新築は間接的な関係しかなく、中間に第三者の債務者会社が介在する以上、債務者Bに対する建築差止めの本件仮処分申請は、それ自体、法の保護する範囲を超えたもので失当と考える。
第二美的外観の類似性の不存在一また債権者は、債権者の本件設計図書と債務者会社の設計図書との間には美的外観が酷似していると主張している。債権者の本件設計図書が著作権法の保護対象とする学術的性質を有するものとは到底認めがたく、せいぜい建築雑誌に既掲載の建物(疎乙第一号証)の模倣もしくはこれと類似性をもつものであることは一目瞭然である。
二仮に債権者の本件設計図書と右疎乙第一号証の建物に美的外観において類似性がないとするなら、債権者の本件設計図書と債務者会社の設計図書との類似性は同様にないこととなり、この点からも債権者の本件仮処分申請は被保全利益を欠くこととなる。
第三債権者の本件設計図書と債務者会社の設計図書の具体的相違点一外観(債権者の疎乙第二号証、同乙第四号証の一と債務者会社の同第三号証、
同第五号証の一との比較)(一)二階の東西二つの屋根の間の中間の屋根の部分が、債権者のものは別構造のタイル張りであるのに、債務者会社のものは同じ構造の屋根でつながれている。
(二)二階の南側の窓が債権者と債務者会社では、その数も形も異なっている。
(三)一階右側(東側)玄関部分が入口の位置、入口の柱の形等異なっている。
(四)一階左側(西側)の部分のガラス戸の位置や大きさが全く異なっている。
二内部の間取り等(債権者の疎乙第四号証の二と債務者会社の同第五号証の二との比較)(一)一階部分では東側の玄関付近と応接室、食堂、台所の配置が似ているが、
その余は全く異なっている。
(二)二階部分も東側の寝室2、吹抜の配置が似ている位で、あとは階段をも含め全く異なっている。
以上
裁判官 本田恭一
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