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事件 昭和 41年 (ワ) 507号
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裁判所 大分地方裁判所
判決言渡日 1970/03/03
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一、被告は原告に対し、別紙謝罪広告文案のとおりの謝罪広告を熊本日々新聞および大分合同新聞の各朝刊社会面に二段抜きで本文は一倍明朝活字を、その他の部分は二倍ゴチツク活字をそれぞれ使用し、連合通信芸能速報(発行所東京都港区<以下略>株式会社連合通信社)に一頁にわたつて一、五倍明朝活字を使用してそれぞれ各一回掲載せよ。
二、被告は流行歌「阿蘇の恋唄」の原版(録音物)を使用しかつこれより複製製作したレコードを販売してはならない。
三、原告のその余の請求を棄却する。
四、訴訟費用はこれを三分し、その二を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
事実及び理由
全容
第一、当事者の求めた裁判一、原告(一) 被告は原告に対し、別紙謝罪広告文案のとおりの謝罪広告を朝日新聞、毎日新聞に各一回、熊本日々新聞、大分合同新聞および連合通信芸能速報(但し一頁にわたつて)にそれぞれ連続三回、謝罪広告の四字を五倍ゴチツク活字、本文、年月日を二倍明朝活字、原告名を四倍ゴチツク活字、被告名を三倍ゴチツク活字をそれぞれ使用して掲載せよ。
(二) 主文第二項と同旨(三) 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求めた。
二、被告(一) 原告の請求をいずれも棄却する。
(二) 訴訟費用は原告の負担とする。
との判決を求めた。
第二、主張一、請求原因(一) 原告は昭和二三年、訴外【A】が作詩し、同【B】が作曲し、同【C】が編曲して成立した流行歌「阿蘇の恋唄」を右訴外人らの承諾を得て訴外【D】の歌唱、同太洋オーケストラの演奏により録音物に写調した。
(二) 原告はその頃、右録音物を複製して七八回転盤レコードを二、〇〇〇枚製作し、その音盤中心部に原告が流行歌「阿蘇の恋唄」の著作者であることを表示する、太洋TAIYOの文字その他を印刷したレツテルを貼付した上、阿蘇地方を中心に発売した。
(三) しかるに被告は昭和三六年ごろ、右曲を原告に無断で原告が発売したレコードより再生録音しこれを複製して四五回盤レコードを一、五〇〇枚製作した。
その音盤中心部には大分民謡「阿蘇の恋唄」と表示し、被告が著作者であることを示すTEICHIKUの文字その他を印刷したレツテルを貼付して別府市内の被告の販売特約店である訴外アベ楽器店へ一、〇〇〇枚同エトウ南海堂へ五〇〇枚販売した。
(四) よつて被告は原告が右のように著作権を取得した「阿蘇の恋唄」の偽作を製作し著作権者である原告名をことさら隠匿して自己が著作権者であるような表示をした右曲のレコードを発売したことにより原告の録音物著作権を侵害した。
(五) そこで原告は被告に対し、原告が右曲の録音物著作権者たることを確保するために別紙謝罪広告文案のとおりの謝罪広告を朝日新聞、毎日新聞に各一回、熊本日々新聞、大分合同新聞および連合通信芸能速報(但し一頁にわたつて)それぞれ連続三回、謝罪広告の四字は五倍ゴチツク活字、本文、年月日は二倍明朝活字、
原告名を四倍ゴチツク活字、被告名を三倍ゴチツク活字をそれぞれ使用して掲載すること並びに被告が複製の用に供した流行歌「阿蘇の恋唄」の原版(録音物)を使用しかつこれより複製製作したレコードを販売してはならないことを求める。
二、請求原因に対する答弁(一) 請求原因第(一)(二)項は不知。
(二) 同第(三)項は認める。
(三) 同第(四)項は否認する。原告は「阿蘇の恋唄」の著作権を登録していないから右曲の著作権者ではない。
第三、証拠(省略) 理 由一、検証および原告代表者本人尋問の各結果によると、原告が昭和二三年、訴外【A】が作詩し、同【B】が作曲し、同【C】が編曲して成立した流行歌「阿蘇の恋唄」を右訴外人らの承諾を得て訴外【D】の歌唱、同太洋オーケストラの演奏により録音物に写調したこと、そのころ原告は右録音物を複製して七八回転盤レコードを二、〇〇〇枚製作し、その音盤中心部に原告が流行歌「阿蘇の恋唄」の著作者であることを示す太洋、TAIYOなる文字を印刷したレツテルを貼付したこと、
原告は右レコードを阿蘇地方を中心に発売したことが認められ、これを左右するに足りる証拠はない。
そうすると、原告は流行歌「阿蘇の恋唄」を録音物に適法に写調したものであるから右曲の録音物著作権を原始的に取得したことになる。右著作権は著作財産権のみならず著作人格権をも包含するものであることは権利の性質上明らかであり又原告が右権利を原始的に取得したものなる以上、登録をもつて第三者対抗要件とする承継取得の場合と異り登録なくして第三者に対抗しうるものと解すべきである。
二、被告が昭和三六年ころ流行歌「阿蘇の恋唄」を原告に無断で原告が発売した右曲のレコードより再生録音し、これを複製して四五回転盤レコードを一、五〇〇枚製作したこと、被告はその音盤中心部に大分民謡「阿蘇の恋唄」と表示し被告が右曲の著作権者であることを示すTEICHIKUの文字を印刷したレツテルを貼付したこと、被告はそのレコードを別府市内の被告の販売特約店である訴外アベ楽器店へ一、〇〇〇枚、同エトウ南海堂へ五〇〇枚販売したこと、以上の事実は当事者間に争いがない。
そうすると被告が原告の同意を得ずに大分民謡「阿蘇の恋唄」と題するレコードを製作し、これに自らが著作者であるかの如くTEICHIKUと表示し原告名をことさら隠匿したことは原告の著作人格権を侵害したものと云わざるを得ない。
三、およそ著作権者が自己の著作人格権を無視された場合に、これを訂正し著作権者たることを確保するためには地域的社会的にその無視された分野範囲において新聞紙にその真実を公表するのが最も適切かつ効果的である。
前記認定の如く、原告が「阿蘇の恋唄」のレコードを発売した地域が阿蘇を中心とした地域であり被告の偽作レコードを発売した地域が大分県内であつたことから、大分、熊本両県下並びにレコード業界において原告が右レコードの著作権者たることを無視されたものと云うべく従つてその範囲においてこれが回復のための措置を講ずるをもつて十分とする。従つて原告の著作人格権回復のためには熊本県下で発行される熊本日々新聞、大分県下で発行される大分合同新聞の各朝刊社会面およびレコード業界の業界紙である連合通信芸能速報に原告申立どおりの謝罪広告を各一回掲載するをもつて必要かつ十分の措置と考えられる。よつて原告の謝罪広告を求める請求は右の限度で理由がありその余は理由がない。
四、被告が複製の用に供した「阿蘇の恋唄」の原版(録音物)を使用しかつこれより複製して製作したレコードを販売することは前記認定のとおり原告の著作権を侵害するものである以上、原告の右権利が更に侵害されることを未然に防止するため原告は被告に対し、著作権法36条36条の2によつてこれが使用若くは販売の禁止を求めうべきである。
従つて原告のこの点に関する請求は理由がある。
五、よつて原告の請求のうち、熊本日々新聞、大分合同新聞および連合通信芸能速報に別紙謝罪広告文案のとおりの謝罪広告を各一回掲載することを求める部分および「阿蘇の恋唄」の原版(録音物)の使用並びにこれより複製製作したレコードの販売の禁止を求める部分は正当としてこれを認容し、その余の請求は失当として棄却することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法89条92条本文を適用して主文のとおり判決する。
裁判官 三好徳郎
裁判官 島信幸
裁判官 来間卓
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