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関連ワード 複製物 /  私的使用 /  利用の許諾 /  損害賠償 / 
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事件 昭和 48年 (ワ) 2198号
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裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 1977/07/22
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 被告らは、各自、原告に対し、金五〇〇万円及びこれに対する昭和四八年四月一四日から完済まで年五分の金員の支払をせよ。
訴訟費用は、被告らの負担とする。
この判決は、仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 原告1 主文第一、二項同旨2 仮執行の宣言二 被告ら1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
原告の請求の原因
一 原告は、輸送機、舞台装置、遊戯機械等の製造、販売を目的とする株式会社であるところ、昭和四二年八月から、昭和四三年五月までの間に、原告の業務に従事する従業員は、その職務上、一三葉の図面からなる舞台装置一式の設計図(甲第一号証、以下「本件著作物」という。)を作成し、原告は、その著作権(以下「本件著作権」という。)を取得した。
二 大韓民国政府(以下「韓国政府」という。)は、かねてから、その所有する国立劇場に舞台装置(以下「本件舞台装置」という。)を設置するため、わが国の舞台装置製造業者に対し、その意向を打診していたところ、昭和四四年一二月初旬に至り、原告に対し、ソウル市所在の訴外季喜泰設計事務所及び訴外丸之内商工株式会社を介して、本件舞台装置一式の製作についての意向を打診し、製作の意思があれば、設計図及び仕様書を提出することを求めて来た。そこで、原告は、これに応ずるため、その頃、韓国政府に対し、本件著作物を複製した一三葉の図面からなる設計図(以下「第一設計図」という。)及び必要書類を提出し、なお、同年一二月一六日に行われた製作者を定めるための競争入札に三八万ドルで応札した。
三 被告東宝舞台株式会社(以下「被告東宝舞台」という。)は、昭和四四年一二月一六日に行われた右競争入札に際し、二八万ドルで応札して落札し、被告富士工業株式会社(以下「被告富士工業」という。)に対し、右落札にかかる舞台装置一式の製作を請け負わせた。ところで、被告らは、右競争入札に先立ち、共謀のうえ、先に原告が韓国政府に提出していた第一設計図を密かに入手し、原告に無断で、これを複製し、第一設計図と内容が同一で作成者名義だけを原告から被告富士工業に変更した設計図(甲第二号証、以下「第二設計図」という。)を作成し、被告東宝舞台は、韓国政府に対し、これを提出した。四 仮に右主張が認められないとしても、被告らは、昭和四五年二月頃、共謀のうえ、これより先昭和四四年一二月初旬頃原告が韓国政府に提出していた第一設計図を密かに入手し、原告に無断で、これを複製し、第一設計図と内容が同一で作成名義を原告から被告富士工業に変更し、かつ、チエツク者名と作成日付を変更した第二設計図を作成し、昭和四七年頃、どん帳業者である訴外株式会社丸昌(以下「丸昌」という。)及び同川島織物株式会社に対し、第二設計図を交付した。
五 被告らの第一設計図の無断複製は、原告の本件著作権を侵害したものである。
しかして、原告の本件著作権の存在は、当時、被告らにおいて、これを知り、又は少くとも取引上必要な注意を怠らなければ、知り得べきものであつたから、被告らは、原告が本件著作権の侵害により受けた損害を賠償すべき義務がある。
六 原告は、次の損害を受けた。
原告は、本件著作物の利用により、通常、設計料として、金五〇〇万円の支払を受けることができるので、これと同額の損害を受けた。
七 よつて、原告は、被告らに対し、各自、右損害金五〇〇万円及びこれに対する本件不法行為の後であつて、本件訴状送達の日の翌日である昭和四八年四月一四日から完済まで民事法定利率である年五分の遅延損害金の支払を求める。
原告の請求の原因に対する被告らの答弁及び主張
一 請求の原因一のうち、本件著作物の作成時期が原告主張のとおりであることは不知、その余の点は認める。
二 同二のうち、韓国政府がその所有する国立劇場に舞台装置を設置するに際し、
昭和四四年一二月一六日に製作者を定めるための競争入札が行われたことは認めるが、その余の点は不知。
三 同三のうち、被告富士工業が被告東宝舞台の注文により、本件舞台装置一式の製作を請け負つたことは認めるが、その余の点は否認する。
本件舞台装置の製作については、訴外山本産業株式会社(以下「山本産業」という。)が金三六万四、一五七ドルで応札して、落札したものであり、被告東宝舞台は、山本産業から、その製作を請け負い、さらに、これを被告富士工業に下請け負わせたものである。また、山本産業は、競争入札に際し、韓国政府に対し、被告富士工業作成の設計図(乙第一号証の図面と同様の図面)を提出したが、右図面は、
原告において、第一設計図を複製して作成されたものであると主張する第二設計図とは異なるものである。
四 同四のうち、被告富士工業において、原告が昭和四四年一二月頃韓国政府に提出していた第一設計図と内容が同一の図面を作成し、その際、作成名義、チエツク者名、作成日付を原告主張のように変更したことは認めるが、その余の点は否認する。
五 同五、六は否認する。
原告の請求の原因四の事実に対する被告らの抗弁
被告東宝舞台は、山本産業から本件舞台装置の製作を請け負つたものであるところ、その後昭和四五年二月頃、舞台据付個所調査のため、韓国政府文化広報部担当者から、同所の施工状態を示す図面として、第一設計図と内容が同一で、すでにオスロツクの検印のある図面を借り受けたが、その際、右舞台据付個所に関する自社の参考資料として使用することを目的として、右図面を複製した。次いで、被告富士工業もまた、その頃、自社の保存用資料として使用することを目的として、右図面を複製して、保存するに至つたが、その際、その作成名義を被告富士工業とした。なお、被告富士工業は、その後昭和四七年頃、韓国政府から本件舞台装置のどん帳製作工事等を請け負つた丸昌に対し、右複製図面を貸与したことがあるが、これは、著作物の利用にはあたらない。
以上の次第であるから、被告らが第一設計図を複製したものであるとしても、被告らは、私的使用のための複製をしたのであるから、その複製について、原告の許諾を得る必要はない。
被告らの抗弁に対する原告の答弁
抗弁事実は争う。
被告らは、保存用資料と主張する図面を、どん帳業者に提示しており、右図面が著作権法第30条所定の私的使用のために作成されたものといえないことは明らかである。
証拠関係(省略)
理 由一 本件著作権の発生と帰属 請求の原因一の事実のうち、本件著作物の作成時期の点を除くその余の事実は、
当事者間に争いがない。
また、成立に争いのない甲第一号証、証人Aの証言を総合すれば、原告の業務に従事する従業員は、原告の命令に従い、昭和四二年八月頃から昭和四三年中にわたり、本件著作物を作成したことが認められ、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。
以上の事実によれば、原告は、本件著作物についての著作権を取得したものというべきである。
二 本件著作権の侵害の成否1 まず、原告は、被告らが本件舞台装置の競争入札に際し、原告に無断で原告作成の第一設計図を複製した旨主張するので、検討するのに、請求の原因二の事実のうち、韓国政府がその所有する国立劇場に本件舞台装置を設置するに際し、昭和四四年一二月一六日、製作者を定めるための競争入札が行われたことは、当事者間に争いがない。
右事実と前示甲第一号証、証人A、同B、同Cの各証言を総合すれば、次の事実が認められる。
(一) 原告は、右競争入札前の昭和四二年夏頃、韓国政府から、コンサルタントとして、本件舞台装置の基本図面及び仕様書を作成することを依頼されたので、これを承諾し、前示認定のとおり、原告の業務に従事する従業員をして、昭和四二年八月頃から昭和四三年中にわたり作成させた、作成名義を原告とする本件著作物のほか、仕様書を作成したうえ、昭和四三年中、韓国政府に対し、本件著作物の複製物及び右仕様書を提出した。
(二) 次いで、韓国政府は、昭和四三年頃から、わが国の舞台装置製造業者に対し、本件舞台装置製作についての意向を打診していたところ、昭和四四年一一月頃、原告に対しても、本件舞台装置製作の競争入札に参加する意思があれば、設計図及び仕様書を提出することを求めて来たので、原告は、これに応じ、同年一二月頃、韓国政府に対し、本件著作物の複製物である第一設計図及び必要書類を提出した。
(三) 右競争入札には原告のほか、山本産業及び訴外森平舞台機構株式会社が参加したところ、これに先立ち韓国政府は、昭和四四年一一月頃、山本産業らに対し、入札の際に提出すべき設計図及び仕様書作成上の参考資料としての設計図及び仕様書を交付した。
(四) 被告東宝舞台は、昭和四四年一一月頃、山本産業から右競争入札のための設計図及び仕様書の作成を依頼され、韓国政府からの右参考資料の交付を受けたが、その頃、さらに下請関係にあつた被告富士工業に対し、右設計図及び仕様書の作成を依頼するとともに右参考資料をも交付したところ、被告富士工業は、その頃、右参考資料を参考として、後記設計図及び仕様書を作成し、被告東宝舞台に対し、これらを交付し、次いで、被告東宝舞台は、その頃、山本産業に対し、これらを交付した。
(五) 次いで、山本産業は、昭和四四年一二月一六日に行われた右競争入札に際し、韓国政府に対し、被告富士工業作成にかかる右設計図及び仕様書を提出し、応札して落札したうえ、その頃、被告東宝舞台に対し、本件舞台装置の製作を請け負わせ、次いで、被告東宝舞台は、その頃、被告富士工業に対し、右製作を下請け負わせた(被告富士工業が被告東宝舞台から右製作を請け負つたことは、当事者間に争いがない。)。
右のような事実が認められ、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。
原告は、被告らが右競争入札に際し、原告作成の第一設計図を複製して、右(四)の設計図を作成した旨主張するが、これにそう証人Aの証言は、後記各証拠に対比して、たやすく信用できず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
かえつて、前示甲第一号証、証人B、同Cの各証言により、真正に成立したと認められる乙第一号証、被告ら主張のような原図であると認められる検乙第一ないし第四号証、証人B、同Cの各証言を総合すれば、山本産業が韓国政府から交付を受けた右入札のための参考資料中の設計図は約四葉であつて、ソウル市所在の李喜泰設計事務所作成の本件舞台装置についての設計図であつたこと、被告富士工業は、
昭和四四年一一月頃、右設計図を参考として、右装置についての設計図一九葉(検乙第一ないし第四号証は、順次、その第一、第二、第一八、第一九葉である。)を作成したうえ、これを複製した設計図(乙第一号証と同様の図面)を被告東宝舞台を介して、山本産業に交付し、同会社は、韓国政府にこれを提出したこと、ところで、李喜泰設計事務所作成の右設計図は、原告作成の第一設計図とは内容が同一ではなく、被告富士工業は、右設計図一九葉の作成に際し、原告作成の第一設計図を複製した事実のないことが認められる。
もつとも、前示乙第一号証、検乙第一ないし第四号証には、その作成日付として、一九七〇年二月一三日の記載があるけれども、証人B、同Cの各証言によれば、右作成日付としては、当初、昭和四四年一一月中の日が記載されていたところ、その後、被告富士工業において、これを韓国政府に提出すべき本件舞台装置についての承認図の一部として、再度、利用するため、その作成日付を一九七〇年二月一三日と改変したことが明らかであるから、右作成日付の記載部分は、右設計図が作成された日と認めるべき的確な証拠とはいうことができず、前段認定を左右するに足りない。
したがつて、原告の右主張は、理由がない。
2 次に、原告は、被告らが右競争入札後の昭和四五年二月頃、原告に無断で原告作成の第一設計図を複製した旨主張するので、検討するのに、請求の原因四の事実のうち、被告富士工業において、原告が昭和四四年一二月頃韓国政府に提出していた第一設計図と内容が同一の図面を作成し、その際、作成名義、チエツク者名、作成日付を原告主張のように変更したことは、当事者間に争いがない。
右事実と証人Dの証言により、原本が存在し、真正に成立したと認められる甲第二号証、乙第三号証、証人B、同C、同Dの各証言を総合すれば被告東宝舞台は、
前示認定のとおり、山本産業から本件舞台装置の製作を請け負つたところ、その後昭和四五年二月頃、右装置の据付個所の基礎調査のため、韓国政府文化広報部担当者から同所の施工状態を示す図面として、原告がこれより先昭和四四年一二月頃韓国政府に提出していた第一設計図と同一で、オスロツク(韓国政府調達局の略称)の検印があり、作成名義は原告とする図面を借り受けたが、その頃、被告東宝舞台の従業員であるCは、本件舞台装置の製作の下請負をした被告富士工業の代表取締役Dに依頼して、これを複製した図面を作成させて、被告東宝舞台の参考資料としたこと、その際、右Dは、右図面の作成名義を原告から被告富士工業に改変し、かつ、チエツク者名及び作成日付を改変した図面二部(甲第二号証、乙第三号証)を作成し、その一部を被告富士工業の自社用資料としても保存するようになつたが、
その後昭和四七年一二月頃韓国政府から本件舞台装置のどん帳工事などを請け負つた丸昌に対し、右図面(甲第二号証)を交付したことが認められ、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。
以上の事実によれば、被告東宝舞台の被用者であるC及び被告富士工業の代表取締役であるDは、昭和四五年二月頃、共同して、原告に無断で第一設計図と同一の図面を複製した図面を作成したものであるから、第一設計図を複製したものというべきである。
そこで、被告らの抗弁について、検討するのに、被告らは、第一設計図の複製図面は被告らにおいて、自社用資料として、使用する目的のものであつたから、その複製については、原告の許諾を得る必要がない旨主張する。ところで、著作権法第30条によれば、著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする場合には、その使用する者が複製することができる旨が規定されているが、企業その他の団体において、内部的に業務上利用するために著作物を複製する行為は、その目的が個人的な使用にあるとはいえず、かつ家庭内に準ずる限られた範囲内における使用にあるとはいえないから、同条所定の私的使用には該当しないと解するのが相当である。
しかして、本件においては、すでに判示したところからすれば、被告らは、会社における内部的利用のために第一設計図の複製をしたことが明らかであつて、その複製行為は、同法第30条所定の私的使用には該当しないから、原告の許諾を得る必要がないということはできない。したがつて、被告らの抗弁は、理由がない。
三 被告らの損害賠償責任 以上の事実によれば、被告東宝舞台の被用者であるC及び被告富士工業の代表取締役であるDの第一設計図の複製は、原告の本件著作権を侵害したものというべきである。また、すでに判示したところからすれば、右当時、同人らは、原告の本件著作権の存在を知り、又は少くとも取引上必要とされる注意を怠らなければ、知ることができたものであり、さらに、同人らは、その職務を行うについて、右複製行為に及んだものと認めるのが相当である。したがつて、被告らは、原告が本件著作権の侵害により受けた損害を連帯して賠償すべき義務があるものといわなければならない。
四 原告の受けた損害 次に、被告らの前記行為により原告の受けた損害について検討するのに、成立に争いのない甲第七号証、証人Eの証言を総合すれば、原告は、被告が著作権を有する設計図について、複製などの利用を許諾をする場合には、それに相当する設計料を徴して来たものであること、しかして、その設計料の額は、具体的には利用の許諾を受ける者との交渉により、設計する物件の規模などを勘案して決定されていたが、その基準は、製作物全体の価格の約五パーセント相当額であること、ところで、本件舞台装置全体の価格は、約金一億二、〇〇〇万円であつたことが認められ、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。
右認定の事実によれば、原告の本件著作物についての設計料相当額は、右金一億二、〇〇〇万円の五パーセントである金六〇〇万円であるから、原告は、これと同額の損害を受けたものというべきである。
五 結論 してみれば、被告らに対し、各自、右損害金六〇〇万円の範囲内である金五〇〇万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日であることが本件記録上明らかな昭和四八年四月一四日から完済まで民事法定利率である年五分の遅延損害金の支払を求める原告の本訴請求は、正当として、認容されるべきである。
よつて、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第89条第93条第1項本文の規定を、仮執行の宣言について、同法第196条の規定を適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 秋吉稔弘
裁判官 佐藤栄一
裁判官 塚田渥
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