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事件 昭和 57年 (ネ) 3258号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1983/06/30
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 本件控訴を棄却する。
控訴費用は、控訴人の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
(控訴人)1 原判決を取消す。
2 被控訴人らは、不法出版物を用いた不法商行為をしてはならない。
3 被控訴人らは、控訴人に対し、金五〇〇万円及びこれに対する昭和五七年九月八日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
5 仮執行宣言(被控訴人ら) 主文同旨
当事者の主張及び証拠
当事者双方の主張及び証拠の関係は、次に付加するもののほか、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。
(控訴人)一 著作権法第32条に明示してあるように、先行して公表出版された著作物の内容は、その著作物の著作者名及び巻号を引用して利用することができる。そして科学技術者は常にこの方法により先行文献の内容を引用している。
しかるに、被控訴会社が印刷、頒布した前記パンフレツト及び被控訴人【A】が雑誌に掲載した前記文書には、先行文献たる控訴人の著作物が全く引用されていない。このような被控訴人らの行為が右条項に違反することは明らかである。
二 著作権法第113条第1項第1号に明示してあるように、「国内において頒布する目的をもつて、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作者人格権……の侵害となるべき行為によつて作成された物を輸入する行為」は、著作者人格権を侵害する行為である。
被控訴会社は、米国GCA社で作成された出版物であるテクニカル・レポート類を輸入したが、右出版物は控訴人の著作者人格権の侵害となるべき行為によつて作成されたものであるから、右出版物を輸入した被控訴会社の行為は、右規定に違反する。
著作者人格権については、著作権法第19条第3項に、「著作者名の表示は、
著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる。」と明示してある。
被控訴人らの前記の各種出版物は、先行文献たる控訴人の著作物を引用していないのであるから、著作者(控訴人)が創作者であることを主張する利益を害するものであり、かつ、公正な慣行にも反していること甚だしく、被控訴人らの行為が右条項に違反していることは明らかである。
さらに、著作権法第19条第2項には、「著作物を利用する者は、その著作者の別段の意思表示がない限り、その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従つて著作者名を表示することができる。」と明示してある。
控訴人は、昭和五六年一二月以来、被控訴人らの出版物には控訴人の先行文献を引用する必要がある旨文書で通知している。このように著作者の別段の意思表示があるにもかかわらず、被控訴人らは前記出版物に原著作者名を表示しない。このような被控訴人らの行為は、右規定に違反するものである。
四 著作権法第113条第1項第2号は、「著作者人格権を侵害する行為によつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を情を知つて頒布する行為」を著作者人格権を侵害する行為として明示している。被控訴人らの行為は、この規定にも違反する行為である。
五 著作権法第113条第2項には、「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす。」と明示されている。
創作者であり、原著作者である控訴人の著作物の技術的内容が、その後、これにもとづき、そのまま製品化され、光学的縮少投影露光装置となり、広く国内外の半導体工業で利用され、至難の先端技術とされたLSIや超LSIが開発製品化されたのであるから、原著作者の名誉及び声望に対する評価は無視することも過少評価することもできないにもかかわらず、被控訴人らは、この原著作者の名誉及び声望を害する方法により前記出版物において本件著作物を利用したものである。被控訴人らの行為が同法第113条第2項に違反することは明らかである。
(被控訴人ら) 控訴人の主張する米国GCA社で作成された出版物であるテクニカルレポート類は、住友商事株式会社が輸入したものである。
理 由一 控訴人の主張の趣旨は必らずしも明らかではないが、その要旨は、次のようなものであると考えられる。すなわち控訴人は半導体工業用の光学的縮少投影露光装置に関する研究をし、一九六九年九月三〇日に日刊工業新聞社が主催した講習会においてこれについての控訴人独自の見解を講義し、その内容を講義録「ICへのホトエツチング技術の応用」に発表し、更に雑誌「高分子」第一九巻第二一五号に「感光性樹脂の電子工業への応用」と題して、世界で最初に、基本原理として、右装置が備えるべき五つの条件を発表した(以下右講義録及び雑誌論文を、「本件著作物」という。)ところ、被控訴会社は、右条件を完全に満した米国GCA社の縮少投影露光装置DSW四八〇〇を輸入販売するに当つて、同社が作成したテクニカル・レポート類を輸入し、更に被控訴会社自身でTECHNICAL NOTEと称するパンフレツトを印刷、頒布し、被控訴人【A】は雑誌「電子材料」一九八二年三月号に「10対1縮少投影露光装置『4800DSW』」と題する文章を掲載したが、その際、被控訴会社及び被控訴人【A】は、各作成の右文書に、先行文献たる控訴人創作に係る本件著作物を引用しないで利用したところ、被控訴会社のGCA社のテクニカルレポート類の輸入行為は著作権法第113条第1項第1号により控訴人の著作者人格権を侵害するものとみなされ、被控訴会社及び被控訴人【A】の本件著作物利用行為は同法第32条第1項に違反するものであつて、控訴人の著作者人格権を侵害する行為であり、被控訴人【B】は、被控訴会社及び被控訴人【A】と右侵害について共謀したものである。
著作権法第32条第1項は、「公表された著作物は、引用して利用することができる。」と規定し、同法第48条は、他人の著作物を引用して利用した場合には、
その著作物の出所を明示しなければならない旨を規定する。しかして、同法第2条第1項第1号によれば、「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であるから、それが自然科学の分野における論文等であつても自然科学的思想あるいは技術的思想を創作的に表現したものであるかぎり、それは著作物であり、著作権法上の保護を受け得るものであることはいうまでもない。しかし、自然科学的分野あるいは技術的分野における「思想の創作」であつても、その創作が表現される文章、図画等の「形式」に関係のない「思想」そのもの、例えば特許法でいう「発明」そのもの、実用新案法でいう「考案」そのものは、著作権法で保護される著作物に当らない。「発明」又は「考案」は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」(特許法第2条第1項、実用新案法第2条第1項)であり、産業上利用することができる発明又は考案をした者は、その発明又は考案が特許要件、実用新案登録要件を備えているかぎり、特許権又は実用新案権として登録され、特許法、実用新案法上の保護を受け得るが、技術的思想の創作である発明、考案も、それが「言語」あるいは、「図画」、「図表」、「図形」、「写真」等の「形式」(著作権法第10条第1号、第六号、第八号参照)で表現されていないかぎり、その発明又は考案に含まれている抽象的な技術思想、自然科学的、技術的原理・原則は、著作権法でいう「著作物」ではなく、したがつてそれは同法上の保護を受け得ないのである。
ところで、控訴人は、半導体工業用の光学的縮少投影露光装置につき、この装置が備えるべき五つの条件を基本原理として発見し、右装置に関する技術的思想の創作をし、これを本件著作物に発表したものであるとするところ、仮に本件著作物に記載された文章、図面、写真等から、本件著作物中にその基本原理ないし五つの条件なるものが記載されていることが読み取れるとしても、その原理ないし条件そのものに著作権が成立するいわれはなく||ニユートンが万有引力の法則を発見しても、万有引力の説そのものには著作権は成立し得ない||したがつて、仮に被控訴会社が輸入したと控訴人が主張するGCA社作成のテクニカル・レポート類あるいは被控訴会社及び被控訴人【A】が作成した文書に、控訴人が主張する五つの条件ないし基本原理と同じ思想が記載されているとしても、被控訴人らの右行為は控訴人の「著作物」を「引用して利用」したことにならないから、著作権法第32条第1項の規定に該当するとして、控訴人の著作権、著作者人格権等を侵害することになるかどうかを問題とし得るかぎりではない。しかして、被控訴人らが控訴人の本件著作物の表現したところそのままを文書に作成して控訴人の本件著作物を利用し、又はそのままを表現したGCA社の文書を輸入したものであることは、控訴人の主張しないところであるし、またその事実を認めるに足りる証拠もないから、結局被控訴人らの行為は著作権法第32条に違反し、控訴人の著作者人格権を侵害するものであることを基本とする控訴人の請求は、控訴人主張のその余の点について判断するまでもなく、すべて失当として排斥せざるを得ない。
二 右のとおりであつて、控訴人の請求を棄却した原判決は結局において正当であり、控訴人の控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用は、敗訴の当事者である控訴人に負担させることとして、主文のとおり判決する。
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別紙(一)請求の原因原告は、半導体工業のホトレジスト(光彫刻)工程で利用する十対一および五対一の縮少率を含む光学的縮少投影露光装置等に関する研究開発を一九六六年頃より実施し、これにもとづき、独自の見解を一九六九年九月三十日、午後三時より、日刊工業新聞社主催のホトレジスト技術講座において講義し、その内容は、講義録に明示した。(甲第一号証)更に、この内容の重要性について、一九七〇年(昭和45年)、日本国の雑誌、
「高分子」第19巻、第215号、第143頁に再度、明記した。
これは原告の提起した内容が、この技術分野の将来装置として極めて重要であることを認識したためである。(甲第二号証)この中において、原告が、この種装置が、具備すべき厳密な条件として、再度、明示したのは、次の事項等である。
(1)縮少率は、10分の1乃至5分の1の高解像力レンズを用いる。
これは10分の1と5分の1の縮少率のレンズを用いることを包含している。
(2)この装置は縦型の光学系として装備する。
他には、水平型や倒立型もある。
(3)くりかえし殖版露光法を採用する。
これは、ステツプアンドレピート法と呼称している。
(4)無粒子性の有機感光材料を薄く塗布したシリコン板上の酸化膜表面に、画像を投影露光する。
銀粒子を有する高解像力乾板等は利用しない。
(5)エレクトロニクス利用により自動化する。
これらの諸条件は、将来装置がもつべき、基本原理として、原告が、世界で最初に、創作し、前記の著作物の中に世界で最初に著作し、講演したのである。以後、
この光学的縮少投影露光装置を作るための原理は広く知られ公知となつた。(甲第三号証)これらの高度技術に関する諸条件は、原告の真剣なる写真光学と半導体工学の両分野にわたる研究、開発の中から、創造された、最重要の条件であつた。(甲第四号証)しかるに、被告、【C】等が、この重要条件を完全に満した装置、DSW四八〇〇等を国内において販売するに当つて、印刷、頒布し、利用しているGCA社発行の和訳発行物等は、この発行物記載内容に先行した原告の重要文献を、全く、引用することなく、あたかも、自分で独自に製品化したかのごとく記述した発行物を用いている。(甲第五号証)これらの事実は、明らかに、著作権法、第59条記載の著作者の人格権の一身専属性に対する侵犯行為である。
実際、原告は、GCA社及び、住商電子システム社にこの人格権を譲渡していない。
一九七五年以後、製作された、これら新装置は、前記、条件を完全に満しているが、このような場合、前記、原告の先行文献を引用すれば、利用することができる。
しかしながら、被告等の利用する、発行印刷物は、全く、前記、先行文献を引用していない。
この明白なる事実は、明らかに著作権法、第32条および第113条一、二および2項に抵触した違法行為である。
また、本装置に用いる10分の1と5分の1の縮少高解像力レンズは、前記、原告の著作物記載内容が、起因となり、西独、
カールツアイス社が、その後、開発、製品化したのである。
これは証人がいる。
原告は、被告等の、この不法行為の発見後、ただちにその不当の改訂を求め、法治国にふさわしい、合法的出版物を用いる必要性を求めたのであるが、この正当なる、科学技術者の礼儀とその慣行にもとづく発言を、受け入れる態度と解答を示さない。(甲第六号証)被告、【A】は、本装置に関することような経緯を知りながら(原告の前記文献は一九八一年中に【C】に郵送した。)電子材料、三月号57頁以下に、前記文献を引用することなく、前記5条件を満した製品の記載をなした。これは、同じく、
著作権法第32条第113条に抵触した違法行為である。そして、その責任回避のため、被告【B】なる者を代理人として、「これは、著作権侵犯事件では全くありません。」等と、全く、違法の発言をさせた。(甲第七号証)被告、【B】は、被告【C】および、被告【A】の依頼を受け、前述の違法行為を行つた両人の弁護のため、情をもつて、著作権法に明示された重要かつ正当なる精神(第1条等に明記してある。)を全く無視した発言を、二度、原告に対してなした。(甲第六、第七号証)これらの発言の内容を冷静に考えて見るに、被告【B】は、法治国である日本国において、弁護士等の職業にとどまるにふさわしい人物では全く無く、被告、
【B】をして弁護士の資格を剥奪せしめるに値するものである。これらは、いづれも重犯、共謀行為である。
別紙(二)差止め請求の訴額甲第六、第七号証に提示したごとく、住商電子システム株式会社が、半導体工業用の光学的縮少投影露光装置を作るための「佐藤の原理」を盗用した商品(DSW四八〇〇等)、縮少率は、10分の1と5分の1を販売するために頒布し、用いている著作出版物は、いずれも著作権法、第32条第113条に抵触した不法出版物である。被告【A】は、甲第七号証に昭和五六年末まで、国内で、本装置(単価一億三千万円)を八〇台以上、販売したと、記述しているが、これは明らかに不法出版物を用いた不法商行為である。前記の不法出版物は、五〇〇部以上、印刷し、
国内で不法に利用した事実は明らかである。
ここで訴額を「起訴時の年間売り上げ額×被告の得た利率」の公式により算定すると、前記の事実等により「二〇億円×二〇%」以上であり、少くとも四億円以上となる。前述の不法出版物は、商品では無いので、それ自体の売り上げ額は無い。
しかしながら著作権法、第115条には、「著作者は、その著作者の人格権を侵害した者に対して、損害の賠償を求める適当な措置を請求することができる。」と明示してあるので、この条項にもとづき、差止め請求の訴額として、金五〇〇万円を請求する。
裁判官 高林克巳
裁判官 杉山伸顕
裁判官 八田秀夫
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