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事件 平成 6年 (ネ) 841号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 1997/02/27
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 原判決を取り消す。
被控訴人の請求を棄却する。
訴訟費用は、第一、二審とも、控訴人らの負担とする。
事実及び理由
当事者の申立て
1 控訴人ら(一) 原判決を取り消す。
(二) 被控訴人の請求を棄却する。
(三) 訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。
2 被控訴人(一) 本件控訴を棄却する。
(二) 控訴費用は、第一、二審とも、控訴人らの負担とする。
事案の概要
次のとおり原判決を訂正等し、当審における新たな争点を付加するほかは、原判決の事実及び理由中の「第二 事案の概要」欄に記載されているとおりであるから、これを引用する。
【原判決の訂正等】1 原判決六頁一一行目の「閉店し、」から一二行目の「開店した。」までを「閉店した。」と改める。
2 原判決七頁一行目の「九四の1・2、九五」を削除する。
3 原判決九頁五行目の「また、」から同八行目末尾までを「さらに、控訴人会社は、昭和六三年五月一一日、控訴人Aとの間で、本件リース契約を更改し、リース料の支払方法につき従前の売上折半方式を月極め定額方式(月額六万円)に改め、
モニターテレビを一台増設した。(甲一六、二九、四二、九七、一一三、丙二、
三、一三、控訴人A本人、控訴人会社代表者、弁論の全趣旨)」と改める。
4 原判決一一頁一一行目の「二九、」の次に「九三の1」を挿入する。
【当審における新たな争点】1 免除の意思表示の有無2 過失相殺の可否3 弁済の効力
争点に関する当事者の主張
次のとおり原判決を訂正等し、当審における新たな争点に関する当事者の主張の要旨を付加するほかは、原判決の事実及び理由中の「第三 争点に関する当事者の主張」欄に記載されているとおりであるから、これを引用する。
【原判決の訂正等】1 原判決二六頁三行目の「著作権法」から同四行目の「及び、」までを「著作権法の規律(演奏権)の対象は音楽著作物の利用主体である店の経営者であり、」と改める。
2 原判決二七頁四行目の「著作権法」から同五行目の「とする、」までを「著作権法はカラオケスナック店における客の歌唱までその対象とするものではないとする、」と改める。
【当審における新たな争点に関する当事者の主張要旨】1 争点1(免除の意思表示の有無)【控訴人らの主張】 新規程の施行(昭和六二年四月一日施行)前、カラオケ伴奏による歌唱に関する著作物使用料規程は存在しなかった。したがって、小規模スナック店が右歌唱について被控訴人から著作物使用料を徴収されたこともない(仮に小規模スナック店が著作物使用料の支払をしようとしても、被控訴人の内部にはこれを受け入れるための体制すら整っていなかったのである。)このように新規程によって初めてカラオケ伴奏による歌唱についても演奏権が及ぶ旨規定上明らかにされたということは、
言い換えれば、新規程施行前のカラオケ伴奏による歌唱については、被控訴人において著作物使用料の支払を免除する旨の意思表示をしているものと解すべきである。
2 争点2(過失相殺の可否)【控訴人らの主張】 仮に控訴人B及び同Aがカラオケ伴奏による歌唱に関し著作権使用料を支払うべき義務を負っているとするならば、被控訴人はスナック店からその徴収をすることを全く怠っていたということになる。本来、著作物使用料を徴収すべき責任は、著作者から著作権等の信託を受けている被控訴人にある。しかるに、被控訴人は長年カラオケ伴奏による歌唱につき著作物使用料の徴収、支払義務の周知・徹底を怠ってきた。控訴人B及び同Aによる不払いもそのことによる結果にすぎない。したがって、被控訴人のこのような著しい落ち度は損害賠償額の算定に当たって斟酌されるべきであり、ことに、新規程施行前においてはその落ち度が著しいというべきである。そして、カラオケリース業者は、被控訴人から、リース先店舗が被控訴人に対して著作物使用料を支払っていないという事実を具体的に指摘されなければ、そのような事態が生じているということ自体知り得ない立場にある。よって、被控訴人の過失を八〇パーセントとして、控訴人らの負うべき損害賠償責任額を減ずべきである。
3 争点3(弁済の効力)【控訴人らの主張】 控訴人ら訴訟代理人弁護士好川照一は、平成七年一一月二七日、控訴人B及び同Aを代理して、控訴人らが被控訴人に対して連帯して支払うべき本訴請求債権(元金及び遅延損害金合計一七二万九〇八一円。別紙計算書記載のとおり)につき、被控訴人の銀行口座に振り込み全額これを弁済した。
【被控訴人の主張】 弁護士好川照一は、控訴人B・同Aから、右弁済につき代理権を授与されていない。
仮に代理権の授与があったとしても、控訴人会社の訴訟代理人でもある同弁護士が控訴人会社の同意を得ることなく控訴人B及び同Aを代理して右弁済をすることは、控訴人会社との関係で利益相反行為になるので、弁済としての効果が何ら生じない。
争点に対する判断
次のとおり原判決を訂正等し、当審における新たな争点に対する当裁判所の判断を付加するほかは、原判決の「第四 争点に対する判断」に示されているとおりであるから、これを引用する。
【原判決の訂正等】1 原判決二四八頁一行目の「後記二5認定のとおり」を削除する。
2 原判決二四九頁二行目から二七六頁五行目までを次のとおり改める。
「二 争点2(控訴人会社の損害賠償責任の有無)(事実関係) カラオケ伴奏による歌唱に対する著作権保護のための広報活動の状況等及びそれに対する控訴人会社を含むカラオケリース業者の対応並びに両者の交渉経過は、次のとおりである。
1 被控訴人は、昭和五四年八月、大阪市内の「キャバレー・ユニバース」の経営者を被告として提起していた音楽著作権侵害訴訟において、右経営者との間に、相手方が楽団演奏のほかにカラオケ伴奏による歌唱についても使用料の支払義務があることを認める内容の和解条項を含む裁判上の和解を成立させたのを契機に、カラオケ伴奏による歌唱についても使用料の徴収体制を整備するため、昭和五五年以降、被控訴人の業務案内用リーフレット(甲五、六、一〇五の1・2)に、あらたに「カラオケやカラオケビデオの伴奏による歌唱の場合も正規に許諾を受けて音楽をご使用ください。」という記載を付加し、右リーフレットを主として社交飲食店業者及び旅館業者に配布して、カラオケ伴奏による歌唱についても音楽著作物の演奏権が及ぶということを周知・徹底させるため広報活動を行った。
しかしながら、@昭和四五年の著作権法の改正により、適法録音物の再生にも演奏権が及ぶことになったものの(2条7項)、政策的配慮により、当分の間の暫定措置として、著作権法附則14条(昭和六一年法律第64条による改正前のもの)は、適法に録音された音楽の著作物の演奏の再生については、放送又は有線放送に該当する物及び営利を目的として音楽の著作物を使用する事業で政令で定めるものにおいて行われるものを除き、旧著作権法30条1項8号及び二項並びに同項にかかる旧39条の規定はなおその効力を有すると規定して、旧法下の制度を維持することとされていたこと、A昭和五五年当時の被控訴人の著作物使用料規程(旧規程)は生演奏を想定して作られた規定であり、カラオケ伴奏による歌唱については固有の規定がなく、また、使用料の計算方法が複雑で使用者にとって理解しにくいものとなっていたことなども影響して、生演奏の場合に比べ、関係業者からは前記広報活動に対する十分な理解や納得が必ずしも得られず、被控訴人の内部においても未だカラオケ伴奏による歌唱に対する著作権の管理体制が整備されたとはいえない状況にあった。
2 被控訴人は、昭和五八年六月、カラオケ伴奏による客の歌唱を行っている社交飲食店についても、「カラオケ装置を利用して歌唱する場合の著作権管理業務の実施基準(社交場)」(甲三二の2)を定め、これを社交飲食業者及び旅館業者等の各種音楽著作物の使用団体に配布し、加盟店舗への指導等に当たるように協力を要請した。それとともに、被控訴人は、バー、キャバレー、スナックなどの社交場における演奏使用料を全面改訂することを主たる目的とし、その一環としてカラオケ伴奏による歌唱についても演奏権が及ぶことを明示し、その歌唱使用料について固有の規定を設けるための著作物使用料規程の改正作業に着手し、その頃から業界団体との協議に入った。右業界団体の中には、主なカラオケソフトメーカーが加盟する社団法人日本レコード協会や社団法人日本ビデオ協会が含まれていた。(甲三二の2、六三、一一〇の1、証人C、弁論の全趣旨)3 さらに、カラオケ伴奏による客の歌唱につきカラオケ装置を設置したスナック等の経営者が演奏権侵害による不法行為責任を負うとした福岡高裁昭和五九年七月五日判決を契機に、それまで捗々しい進展をみせなかった被控訴人と関係使用者団体との協議も急遽進捗し、環衛中央会及びその関係業種団体との間で折衝を重ねた結果、カラオケ伴奏による歌唱の使用料について明文規定を設けることにつき合意が成立した(甲六三添付の「著作物使用料規程一部変更理由書」10頁〜11頁「(10)関係使用者団体との協議」)。そこで、被控訴人は、昭和六一年六月二日、文化庁長官に対し、カラオケ伴奏による歌唱の使用料に関する明文規定の制定等を主眼とする、旧規程の一部変更の認可申請(甲六三)をし、その変更要領に関する仲介業務法3条2項の規定による公告が同年七月一日発行の官報(甲六四)に掲載され、同年八月一三日新規程が文化庁長官によって認可され、昭和六二年四月一日から施行されることになった。(甲六三〜六五、証人C、弁論の全趣旨)4 一方、被控訴人は、新規程認可の前後に跨る昭和六一年六月一〇日、同年七月九日、同年八月三一日の合計三回にわたり、カラオケリース業界最大手の第一興商に対し、リース先店舗に対する著作権使用許諾契約締結手続に関する説明指導等の協力を要請するとともに、カラオケ使用料の納入方法について協議を重ねたが、意見の一致を見なかった。
そこで、被控訴人は、第一興商との交渉を打ち切り、全国規模の業者団体である全国飲食業環境衛生同業組合連合会及びその傘下にある各都道府県の環境衛生同業組合との間で業務協定を結び、加盟店舗に対する著作権使用許諾契約締結手続に関する説明指導等の協力を取り付けた。(乙二七の2、証人C、弁論の全趣旨)5 被控訴人は、新規程認可後の昭和六一年一〇月、全国の社交飲食店等約二六万店に対し、カラオケ伴奏による歌唱について被控訴人との間で使用許諾契約の締結を求める趣旨の、「飲食店経営者の皆さまへ」と題する文書(甲二六の1)を一斉に送付した。また、被控訴人は、同年一一月から同六二年二月にかけて近畿地方の各地(三五箇所、全国では約七〇〇箇所)において新規程の趣旨を周知・徹底するための「カラオケ管理説明会」(甲四九)と銘打った説明会を開催した。(甲二六の1、四九、証人C、弁論の全趣旨)(控訴人B及び同Aに対する、使用許諾契約締結の督促ないし催告の状況については、前記第四の一に認定したとおりである。)6 Dら被控訴人の大阪支部の担当職員は、社交飲食店に対して前記案内文書を送付した時期と同じ頃(昭和六一年一〇月頃)、カラオケスナック店に対する前記案内文書及び「カラオケ管理説明会」の開催予定表等の書類を持参して同支部の管轄区域内にある大手カラオケリース業者十数社を訪問し、被控訴人とカラオケスナック店との間の著作物使用許諾契約の締結についての協力を要請した。その結果、同支部管轄区域内のカラオケリース業者のうち、株式会社ミニジューク大阪や株式会社日光堂など相当数の業者は、被控訴人の職員の説明に理解を示し協力を約束した。しかしながら、控訴人会社については、Dが昭和六一年一〇月一〇日控訴人会社の事務所に赴き代表者Eと面談し同旨の説明をしたのであるが、同人の理解を得ることができなかった。(甲九三の1〜3、一〇〇の1、一一九の1・2、証人D)7 昭和六三年一月一八日、広島地方裁判所福山支部において、被控訴人と第一興商の得意先のカラオケリース業者である有限会社トキワエンタープライゼスとの間における仮処分申請事件について、同社が原告の管理著作物の無断使用による損害金の賠償義務を認めるという趣旨の裁判上の和解が成立したが(甲一五の一項)、
右和解条項中には、
「債務者有限会社トキワエンタープライゼスは、今後飲食店等との間にカラオケ装置についてリース契約を締結したときは、リース契約条項として債権者との間に著作権使用許諾契約を締結する義務ある旨明記し、且つ、その手続きをとるよう指導監督する。」との条項が設けられた(同七項)。そして、この和解条項七項に定める説明指導義務は、右和解成立後第一興商本社がそのリース業務に使用する標準リース契約書中にも謳われることになった(甲七二の21条(特約))。すなわち、
右標準リース契約書21条(特約)@には、「乙は、この本物件を営業目的の為使用する場合、社団法人日本音楽著作権協会との間で著作権使用許諾契約を結ぶよう留意することとします。」(ここにいう「乙」とは借主のことである。)と記載されていた。その後、この説明指導条項は、全国各地の第一興商の子会社、関連会社、ディーラーの使用するリース契約書(甲一〇二の1〜47)はもとよりのこと、それ以外の大手リース業者であるミニジュークジャパン、タイカン、クラリオン等のリース契約書にも採用され現在に至っている。(甲一五、七二、一〇〇の1、一〇二の1〜47、一二〇の1・2、証人C、弁論の全趣旨)8 被控訴人は、昭和六三年三月二九日、大阪地方裁判所に、控訴人らを被申請人として、112条1項(差止請求権)に基づき、本件店舗内においてカラオケ装置を操作、使用して行う管理著作物の上映、伴奏音楽の再生及び歌唱の禁止を求める趣旨の仮処分申請をした。右仮処分事件審理中の昭和六三年五月一一日、控訴人会社と控訴人Aは、本件リース契約を更改した(前記第二の二1参照)。(甲七〇の3、丙三、証人C)(判断) 右認定したところに基づき、控訴人会社の損害賠償責任の有無について以下検討する。
1 前記2ないし6の認定事実によれば、福岡高裁判決言渡後、カラオケリース業界においては、スナック等の経営者が、カラオケ装置と音楽著作物である楽曲の録音されたカラオケテープとを備え置き、客に歌唱を勧め、客の選択した曲目のカラオケテープの再生による伴奏により他の客の面前で歌唱させるなどしたときには、
経営者は、事前に音楽著作物の著作権者の許諾を得ていない限り、客による歌唱につき、その歌唱の主体として演奏権侵害による不法行為責任を免れないとの認識が急速に広まり、遅くとも新規程の施行日である昭和六二年四月一日の時点においては、スナック等におけるカラオケ伴奏による客の歌唱についても著作物使用料の支払義務があるという見解が正当なものとして受け入れられていたものと認められる。
2 控訴人会社は、控訴人B及び同Aとの間で本件リース契約(更改後のものを含む。)を締結して、本件装置を同控訴人らに引渡し、同控訴人らをして本件店舗内において本件リース契約上の運営規則ないし用法遵守義務に従って本件装置を稼働させ、また、随時本件装置を保守、点検、修理し、あるいは本件装置に使用する新曲や新譜の入ったカラオケソフト(レーザーディスク)を追加して同控訴人らに順次供給していたものであるところ、本件装置は収録されている音楽著作物の大部分が被控訴人の管理著作物である(レーザーディスクを再生すると、モニターテレビの画面上に連続する映像とともに右管理著作物である歌詞が映し出され、メロディーが再生されるというものである)から、同控訴人らが本件装置をカラオケ伴奏による客の歌唱に使用すれば、即、被控訴人が管理する音楽著作物の上映権を侵害するとともに演奏権をも侵害することになることは明らかであるというべきである(レーザーディスクの製作に当たり被控訴人に対して使用料が支払われているとしても、それは、被控訴人の管理者著作物をレーザーディスクに収録することの許諾に対する使用料の支払であり、右使用料を支払っているからといって、レーザーディスクに収録された管理著作物を営利を目的として公に再生することについてまで、著作者の許諾なく自由になし得るものと解することはできない。)。
3 そして、控訴人会社は、自ら本件装置を操作するものではないが、被控訴人が管理する音楽著作物の上映権及び演奏権を侵害するおそれの極めて高い、業務用カラオケ装置をユーザーに提供することを内容とする、リース業務を日常的に反復継続する者として、被控訴人が控訴人会社に対する損害賠償請求の起算日とする昭和六二年四月一日当時には既に本件装置のユーザーが被控訴人の許諾を得ないまま本件装置をカラオケ伴奏による客の歌唱に使用すれば、被控訴人が管理する音楽著作物の上映権及び演奏権を侵害することになることを知っていたか、仮に知らなかったとしても容易に知り得たのであるから、これを知るべきであったというべきである。
しかるところ、控訴人会社は、控訴人B及び同Aが被控訴人の許諾を得ないまま本件店舗において本件装置を使用して客に歌唱させていることを認識しながら、右著作権侵害の結果を認容しつつ、本件リース契約を継続、更改して本件装置を提供し、控訴人B及び同Aによる前示本件著作権侵害行為に加担したというべきである。
仮に右のように認識してあえてこれを行ったものではないとしても、前記のようなおそれの極めて高い本件装置をリースする控訴人会社としては、@本件装置につきユーザーとリース契約を締結(契約の更改を含む。)する際、ユーザーが本件装置を被控訴人の許諾を得ないままカラオケ伴奏による客の歌唱に使用する事態をも予測した上、右のような態様で使用すれば被控訴人が管理する音楽著作物の上映権及び演奏権を侵害することになるので、本件装置を右目的のために使用するには被控訴人との間に著作物使用許諾契約を締結することが必要であることを伝え、これを周知徹底させて契約を締結したり、A契約締結後も随時右使用許諾契約締結の有無を調査確認した上、未だ許諾契約締結に至っていない場合には、速やかに被控訴人との間の許諾契約の締結に努めるよう促すべき注意義務があり、Bさらに、ユーザーがどうしてもこれに応じない場合には、リース契約の解消をも検討し本件装置の引き揚げに努めるべき注意義務があるというべきである。ところが、控訴人会社は、これらの注意義務をいずれも怠り、何ら適切な著作権侵害防止措置を講じないまま前記著作権侵害行為に及んだ控訴人B及び同Aとの間で本件リース契約を継続、更改して本件装置を提供したのであるから、その点において控訴人会社に過失があるといわざるを得ず、控訴人会社は、少くとも控訴人B及び同Aの前記著作権侵害行為を幇助した者として、民法719条2項に基づき共同不法行為責任を免れないというべきである。」【当審における新たな争点に関する当裁判所の判断】1 新たな争点1(免除の意思表示の有無) 証拠(甲一一、一二、一四、一五、四六、四七、六九、八五、八六、)によれば、被控訴人は新規程施行(昭和六二年四月一日)前にも裁判上の手続によりカラオケ伴奏による歌唱について著作物使用料ないし使用料相当損害金を徴収したことがあることが認められるから、このような事実に徴すると、控訴人らの右争点に関する主張は失当というべきである。
2 新たな争点2(過失相殺の可否) 被控訴人は長年カラオケ伴奏による歌唱につき著作物使用料の徴収、支払義務の周知・徹底を懈怠していた旨の控訴人らの主張は、前記認定事実(カラオケ伴奏による歌唱に対する著作権保護のための広報活動の状況等)に照らし、容易に首肯し難く、また、被控訴人はリース業者に対してリース先店舗が被控訴人に対して著作物使用料を支払っていないという事実を告知すべき義務がある旨の、控訴人らの主張も、そのように解すべき根拠を見出し難いので、採用できない。
3 新たな争点3(弁済の効力) 証拠(丙一九、二〇の1、2)によれば、控訴人ら主張の事実が認められる。
被控訴人は右弁済についての弁護士好川照一の代理権限の存在を争うが、右代理権授与の事実は弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。
また、共同不法行為が成立する場合の法的効果として共同不法行為者は各自連帯して被害者の被った損害の全部を賠償すべき責任を課されるところ、弁護士好川照一は控訴人B及び同Aの代理人として同控訴人らが負っている単純不法行為者ないし共同不法行為者としての損害賠償義務を履行したにすぎないのであって、それに付随する効果として、控訴人会社が負っている共同不法行為者としての損害賠償義務も消滅することになるとしても、それは法律上の効果によるものであって、右弁済が控訴人会社と控訴人B及び同Aとの間で利益相反行為になるとは直ちには言えないというべきである。したがって、被控訴人のその余の主張(利益相反行為)も失当というべきである。
以上の次第であって、結局、被控訴人の請求は理由がないことなるから、原
判決を取り消し、被控訴人の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担については本件事案の内容及び当事者双方の提出した攻撃防御方法の内容に鑑み民訴法96条93条1項本文、90条を適用し、主文のとおり判決する。
裁判官 上野茂
裁判官 高山浩平
裁判官 長井浩一
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