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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成6行ウ4 判例 特許権
平成10ワ15575著作権侵害差止等請求事件 判例 特許権
平成11ワ8471著作権損害賠償請求事件 判例 特許権
平成11ワ20712著作権損害賠償請求事件 判例 特許権
平成5ワ8372 判例 特許権
関連ワード 創作性 /  著作者 /  模様 /  二次的著作物 /  翻案 /  複製物 /  複製権 /  引用 /  著作権侵害 / 
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事件 平成 8年 (行コ) 8号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 1997/05/28
権利種別 著作権
訴訟類型 行政訴訟
主文 一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
申立て
一 控訴の趣旨1 原判決を取り消す。
2 被控訴人(当時は大阪税関伊丹空港税関支署長)が平成五年八月二三日付けで控訴人に対してした控訴人の輸入申告に係る別紙物件目録記載一ないし三の物件に対する積戻し命令を取り消す。
3 訴訟費用は、第一、二審を通じて被控訴人の負担とする。
二 控訴の趣旨に対する答弁 主文同旨
事案の概要
事案の概要は、次のとおり、付加、訂正するほかは、原判決事実及び理由欄「第二 事案の概要」(原判決二枚目表四行目から四枚目表九行目まで)記載のとおりであるから、ここに引用する。
一 文中「原告」とあるを「控訴人」と、「被告」とあるを「被控訴人」と各訂正する。
二 三枚目表二行目「依拠して」から五行目「すぎない。」までを「依拠して製作したものであることは、本件各絵画に本件各原画の著作者の署名も存在していることから明らかであり、本件各絵画は、その構図及び筆致が本件各原画に酷似していて、相当注意深く丹念に観察しない限り、両者の細部にある若干の相違や色調の差異を発見することは困難であって、本件各絵画から本件各原画の内容及び形式を容易に覚知することが可能であるから、本件各絵画が本件各原画の複製物であるということができる。」と訂正する。
三 三枚目裏二行目「引用して利用する側の著作物」の次に「(【A】による加筆修正部分)」を、同二行目から三行目にかけて「引用されて利用される側の著作物」の次に「(本件各原画)」を各付加する。
四 三枚目裏八行目から四枚目表一行目までを次のとおり訂正する。
「(一)(1)複製物という以上は、主観的にも客観的にも原著作物に似るように製作されていることが当然の前提とされるところ、本件各絵画と本件各原画との間には一見して明らかな相違点があり、これらの相違点は、【A】が作為的に盛り込んだものであり、【A】は、原画に似せることを主眼としておらず、
同人自身の作品として流通させる目的で本件各絵画を描いたものである。
具体的には、本件原画@は、肝心の色彩が不明であり、モノクロの原画にカラーの複製物が作られるはずがないので、少なくとも本件絵画@が本件原画@の複製物であるとはいえない。次に、本件絵画Aには本件原画Aにない人物が描き込まれ、
作品のイメージを大きく変えており、本件絵画Aが本件原画Aの複製物であるとはいえない。次に、本件絵画Bと本件原画Bとでは、モチーフが女性の顔であるという共通点はみられるものの、色、構図は大きく異なり、一見して明らかに別の作品となっており、本件絵画Bが本件原画Bの複製物とはいえない。
本件各絵画には、本件各原画の著作者の署名も存在するが、絵画の場合は、絵画の中身が問題となるのであり、署名によってその価値が左右されることはない。特に、本件各原画のような名画の場合、署名によって購入者や鑑賞者が絵画を判断する傾向はない。本件各絵画は、【A】の作品として流通されるのであり、画面の裏側にはその旨の記載もあり、本件各原画の著作者の署名が存在することによって本件各原画との混同を生じるおそれなど全くなく、このような署名の存在は、本件各絵画が本件各原画の複製物であるか否かを判断する上で決定的な意味を持たないというべきである。
(2)また、本件各絵画は、本件各原画の持つイメージ、雰囲気を全く別に作り変えており、本件各原画の二次的著作物にも当たらないというべきである。
具体的には、本件原画@は、色彩が不明であり、イメージも構図も不明瞭であるのに対し、本件絵画@は、鮮やかな色彩と人物の表情が明らかであり、本件絵画Aは、本件原画Aの二次的著作物にも当たらないというべきである。本件絵画Aは、
本件原画Aにない人物を描き込むことによって原著作物のパロディー効果をねらった意図が窺われる以上、本件絵画Aは、本件原画Aの二次的著作物にも当たらないというべきである。本件絵画Bは、本件原画Bとは色彩やイメージが違っているところ、人の顔を題材とした以上ある程度似ることは不可避であり、
この両絵画程度の相似を問題とするならば、画家は今後一切女性の顔を描けなくなるというほかないのであって、本件絵画Bは、本件原画Bの二次的著作物にも当たらないというべきである。」五 四枚目表九行目と一〇行目の間に次のとおり付加する。
「(三)本件各絵画が出回ることで本件各原画の評判が高まり、その価値が上がることはあっても下がることはないし、本件各絵画のように本件各原画と似ていないものを本件各原画の複製物として購入することも考えられず、本件各絵画が本件各原画の著作者の権利を侵害するものということはできない。
このような絵画を取締りの対象とすることは、著作権法の目的に反するものであり、鑑賞者の判断、市場の評価によって淘汰、選別されるべきものである。」
証拠(省略)
争点に対する判断
一 当裁判所も控訴人の請求は理由がないからこれを棄却すべきであると判断する。その理由は、次のとおり、付加、訂正するほかは、原判決事実及び理由欄「第三 争点に対する判断」(原判決四枚目表末行から九枚目表六行目まで)記載のとおりであるから、ここに引用する。
1 文中「原告」とあるを「控訴人」と、「被告」とあるを「被控訴人」と各訂正する。
2 六枚目表四行目「窓の数」の次に「、中央の道の角度、左下の草原の描き方、
家や空の色の厚み」を、同末行「本件原画Bは、」の次に「リトグラフであり、」を、同裏二行目「本件絵画Bは、」の次に「油彩であり、」を各付加する。
3 六枚目裏一〇行目から七枚目表八行目までを次のとおり訂正する。
「5 本件各原画の著作権の管理者は、ベルヌ条約加盟国であるフランスの法令に基づいて設立された法人であるADAGP協会(本件原画@及びA)又はSPADEM協会(本件原画@及びB)であり、フランスにおいても、著作権の存続期間は、日本の著作権法と同じく著作者の死後五〇年とされている。連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律4条1項の規定により、日本国との平和条約(昭和二七年四月二八日条約第五号)25条所定の連合国及び連合国民(連合国の法令に基づいて設立された法人を含む。
)が昭和一六年一二月七日に有していた著作権の存続期間については、原則的存続期間に昭和一六年一二月八日から右平和条約の発効の日(昭和二七年四月二八日)の前日までの期間(具体的には三七九四日)が加算されることになっており、フランスは、右条約25条所定の連合国である。本件原画@の著作者である【B】は一九四七年一月二三日に、本件原画Aの著作者である【C】は一九五八年一〇月一一日に、本件原画Bの著作者である【D】は一九七三年四月八日にそれぞれ死亡しており、本件原画@は、昭和一六年一二月七日までに著作されているので、その著作権の存続期間は【B】の死後五〇年に三七九四日が加算される。」4 七枚目裏一行目「色調」の次に「(ただし、被控訴人の徹底的な調査にもかかわらず、本件原画@の色調は不明であるが、この点は、本件絵画@が本件原画@の複製物ないし二次的著作物であるとの判断を左右するものではないというべきである。)」を、同三行目「本件各絵画が」の次に「単に本件各原画の画風を模倣したものではなく、」を各付加する。
5 七枚目裏七行目「相当注意深く」から八枚目表一〇行目末尾までを次のとおり訂正する。「本件各絵画から本件各原画における表現形式上の本質的な特徴自体を直接感得することは十分に可能というべきであり、本件各絵画は、本件各原画の複製物ないし二次的著作物に該当すると解するのが相当である。なお、本件原画Bはリトグラフ、本件絵画Bは油彩という相違点も認められるものの、これは、技法の相違に過ぎず、本件絵画Bが本件原画Bの複製物ないし二次的著作物であるとの判断を左右するものではないというべきである。
もっとも、控訴人は、本件各絵画と本件各原画との間には一見して明らかな相違点があり、これらの相違点は、【A】が作為的に盛り込んだのであり、【A】は、
原画に似せることを主眼としておらず、同人自身の作品として流通させる目的で本件各絵画を描いたとか、
本件各原画の著作者の署名の存在は本件各絵画が本件各原画の複製物であるか否かを判断する上で決定的な意味を持たないというべきであるとか、本件各絵画は、本件各原画の持つイメージ、雰囲気を全く別に作り変えており、本件各原画の二次的著作物にも当たらないというべきであるとか主張する。
しかし、前記認定説示のとおり、【A】の主観的意図はいずれにあるにせよ(【A】が本件各絵画自体に自己の署名をせず、本件各原画の著作者の署名を記載し、自己の署名は本件各絵画の裏側にしかも鉛筆という容易に消去することができる方法で記載したことに照らしても、同人の本件各絵画の著作の意図が控訴人主張のとおりであったと認めるのは困難であるが、この点をさておくとしても)、あるいは、仮に、本件各絵画に【A】独自の創作性が加えられているとみるとしても、
本件各絵画が本件各原画とは別個独立の著作物となったということはできず、本件各絵画は本件各原画の複製物ないし二次的著作物にとどまるものというべきである。また、本件各原画の著作者の署名の存在は、本件各絵画が本件各原画に依拠していることを端的に示しているというべきである。
したがって、控訴人の右主張は理由がない。」6 八枚目裏一〇行目から九枚目表四行目までを次のとおり訂正する。
「そこで、これを本件についてみるに、前記二で認定説示したとおり、本件各絵画が引用に係る本件各原画を明瞭に区別し、これを従たるものとして引用しているということは到底できない。
四 控訴人は、本件各絵画が出回ることで本件各原画の評判が高まり、その価値が上がることはあっても下がることはないとか、本件各絵画を本件各原画の複製物として購入することも考えられず、本件各絵画が本件各原画の著作者の権利を侵害するものということはできないとか、このような絵画を取締りの対象とすることは、
著作権法の目的に反するものであり、鑑賞者の判断、市場の評価によって淘汰、選別されるべきものであるとか主張する。
しかし、前記二、三で説示したとおり、
本件各絵画が著作権のうちの複製権ないし翻案権を侵害するのであり、本件各絵画が出回ることで本件各原画の評判が高まるか否か及び本件各絵画を本件各原画の複製物として購入することが考えられるか否かはその著作権侵害の有無の判断を左右するものではなく、また、著作権法は、著作者等の権利の保護を図ることを目的としているのであるから、本件各絵画のような著作権侵害物件を輸入しないように積戻しを命ずることは、まさに著作権法の目的に適うものというべきである。
したがって、控訴人の右主張は理由がない。」7 九枚目表五行目「四」とあるを「五」と訂正する。
二 よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民訴法95条89条を適用して、主文のとおり判決する。
追加
物件目録一積類油絵著作者【A】署名【B】題名Boysittinginchaireating但し、別紙図面一1記載の絵画二種類油絵著作者【A】署名【C】題名Avillageroadanddarksky但し、別紙図面一2記載の絵画三種類油絵著作者【A】署名【D】題名Theclown‐likewoman但し、別紙図面一3記載の絵画原画目録一【B】筆「FEMMEAUPEIGNOIRROUGE」但し、別紙図面二1記載の絵画二【C】筆「風景」但し、別紙図面二2記載の絵画三【D】筆「女の顔」但し、別紙図面二3の絵画別紙図面一1<33522-001>別紙図面一2<33522-002>別紙図面一3<33522-003>別紙図面二1<33522-004>別紙図面二2<33522-005>別紙図面二3<33522-006>参考原審判決引用部分を組み込んだ本控訴審判決の事実及び理由(注)原審判決が、
本控訴審判決により付加訂正されている部分はサイドラインを付した。なお、当事者の表記は、本控訴審判決において訂正している部分を除き、原審判決の表記のままとした。
事実及び理由第一申立て(省略)第二事案の概要本件は、被控訴人が、控訴人の輸入しようとする別紙物件目録記載一ないし三の物件(以下個別的に「本件絵画@ないしB」といい、一括して「本件各絵画」という。)が関税定率法(平成六年法律第二五号による改正前。以下「関税定率法」という。)21条1項4号所定の著作権侵害物品に該当するとして、同条二項、関税法(平成六年法律第二五号による改正前)107条、同法試行令92条(平成六年政令第四一四号による改正前)に基づき本件各絵画の積戻しを命じたため(以下「本件処分」という。)、これを不服とする控訴人が、本件各絵画は著作権侵害物品に当たらないとして、被控訴人に対し、本件処分の取消しを求めた事実である。
一争いのない事実1控訴人は、絵画の輸入、販売を業とする者であるところ、本件各絵画を日本国内において展示、販売するため、平成四年七月一六日、被控訴人に対し、本件各絵画の輸入申告をすた。
2被控訴人は、控訴人に対し、平成五年八月二三日付けで本件処分をした。
3控訴人は、被控訴人に対し、異議申立てをしたが、平成五年一二月二一日、右異議申立ては棄却された。
二争点についての当事者の主張1被控訴人の主張(一)本件各絵画は、画家【A】がそれぞれ別紙原画目録記載一ないし三の絵画(以下個別的に「本件原画@ないしB」といい、一括して「本件各絵画」という。)に依拠して製作したものであることは、本件各絵画に本件各原画の著作者の署名も存在していることが明らかであり、本件各絵画は、その構図及び筆致が本件各原画に酷似していて、相当注意深く丹念に観察しない限り、両者の細部にある若干の相違や色調の差異を発見することは困難であって、本件各絵画から本件各原画の内容及び形式を容易に覚知することが可能であるから、
本件各絵画が本件各原画の複製物であるということができる。また、仮に、本件各絵画が本件各原画の複製物に当たらないものとしても、本件各原画における表現形式上の本質的な特徴は、本件各絵画自体によって容易にこれを感得することができるから、本件各絵画は、本件各原画の二次的著作物にすぎず、これと別個独立の著作物であるということもできない。したがって、本件各絵画は、いずれにしても、
本件各原画に係る著作権のうちの複製権(著作権法21条)ないし改作利用権(同法27条)を侵害するから、本件処分は適法である。
(二)本件各絵画においては、引用して利用する側の著作物(【A】による加筆修正部分)と引用されて利用される側の著作物(本件各原画)とを明瞭に区別して認識することができ、両著作物間に前者が主、後者が従の関係があるとは到底いい難いから、本件各絵画における本件各原画の利用は、著作権32条1項所定の「正当な引用」には該当しない。
2控訴人の主張(一)(1)複製物という以上は、主観的にも客観的にも原著作物に似るように製作されていることが当然の前提とされるところ、本件各絵画と本件各原画との間には一見して明らかな相違点があり、これらの相違点は、【A】が作為的に盛り込んだものであり、【A】は、原画に似せることを主眼としておらず、同人自身の作品とし流通させる目的で本件各絵画を描いたものである。
具体的には、本件原画@は、肝心の色彩が不明であり、モノクロの原画にカラーの複製物が作られるはずがないので、少なくとも本件絵画@が本件原画@の複製物であるとはいえない。次に、本件絵画Aには本件原画Aにない人物が描き込まれ、
作品のイメージを大きく変えており、本件絵画Aが本件原画Aの複製物であるとはいえない。次に、本件絵画Bと本件原画Bとでは、モチーフが女性の顔であるという共通点は見られるものの、色、構図は大きく異なり、一見して明らかに別の作品となっており、本件絵画Bが本件原画Bの複製物とはいえない。
本件各絵画には、本件各原画の著作物の署名も存在するが、
絵画の場合は、絵画の中身が問題となるのであり、署名によってその価値が左右されることはない。特に、本件各原画のような名画の場合、署名によって購入者や鑑賞者が絵画を判断する傾向はない。本件各絵画は、【A】の作品として流通されるのであり、画面の裏側にはその旨の記載もあり、本件各原画の著作者の署名が存在することによって本件各原画との混同を生じるおそれなど全くなく、このような署名の存在は、本件各絵画が本件各原画の複製物であるか否かを判断する上で決定的な意味を持たないというべきである。
(2)また、本件各絵画は、本件各原画の持つイメージ、雰囲気を全く別に作り変えており、本件各原画の二次的著作物にも当たらないというべきである。
具体的には、本件原画@は、色彩が不明であり、イメージも構図も不明瞭であるのに対し、本件絵画@は、鮮やかな色彩と人物の表情が明らかであり、本件絵画@は、本件原画@の二次的著作物にも当たらないというべきである。本件絵画Aは、
本件原画Aの二次的著作物にも当たらないというべきである。本件絵画Aは、本件原画Aにない人物を描き込むことによって原著作物のパロディー効果をねらった意図が窺われる以上、本件絵画Aは、本件原画Aの二次的著作物にも当たらないというべきである。本件絵画Bは、本件原画Bとは色彩やイメージが違っているところ、人の顔を題材とした以上ある程度似ることは不可避であり、この両絵画程度の相似を問題とするならば、画家は今後一切女性の顔を描けなくなるというほかないのであって、本件画家Bは、本件原画Bの二次的著作物にも当たらないというべきである。
(二)仮に、本件各絵画が本件原画の複製物ないし二次的著作物に当たるとしても、本件各絵画の場合には、本件各原画を改変して利用することにより本件各原画に対する批判、揶揄等を表現したいわゆるパロディーで、しかも、引用して利用する側の著作物と引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができるのであって、両著作物間に前者が主、後者が従の関係が認められるから、
本件各絵画は、
著作権法32条1項所定の「正当な引用」として本件各原画を利用したものにすぎず、本件各原画の著作権を侵害しない。
(三)本件各絵画が出回ることで本件各原画の評判が高まり、その価値が上がることはあっても下がることはないし、本件各絵画のように本件各原画と似ていないものを本件各原画の複製物として購入することも考えられず、本件各絵画が本件各原画の著作者の権利を侵害するものということはできない。
このような絵画を取締まりの対象とすることは、著作権法の目的に反するものであり、鑑賞者の判断、市場の評価によって淘汰、選別されるべきものである。
第三証拠(省略)第四争点に対する判断一著作権法6条3号によると、条約により我が国が保護の義務を負う著作物は、
同法による保護を受ける著作物とされているところ、この条約として、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(以下「ベルヌ条約」という。)がある。
二当事者間に争いのない事実に、証拠(甲一、二の一ないし三、三、六の二、
七、一六、乙一の一ないし二〇、二ないし六、七の一ないし九、八の一ないし四、
九の一、二)及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。
1控訴人は、絵画の輸入、販売業者であるところ、ハンガリー生まれの画家【A】が制作した本件各絵画を含む絵画一三点を日本国内において展示、販売するため、平成四年七月一六日、被控訴人に対し、右絵画の輸入申告をした。右絵画の輸入申告書には、仕入書とともに英字新聞記事のコピーが添付されており、仕入書には、「【B】、【C】、【D】(以下「【B】」、「【C】」、「【D】」という。)」等の著名画家の名が記され、英字新聞記事には、「【A】-themasterofimitation」との記載があった。そこで被控訴人部下職員が現品検査を実施したところ、本件各絵画には、右著名画家の署名がそれぞれ記載されており、裏面には、鉛筆による「【A】」の署名と四桁の数字が記されていた。【A】は、
米国人作家【E】の「贋作」という伝記小説のモデルとなったことで知られ、右小説によると、同人は、著名画家の絵画を模倣し、これを本物として売却していたとされている上、我が国においても、昭和四一年に国立西洋美術館が【A】の作品を誤って【F】等著名画家の作品として高値で購入した疑いがあることが指摘され、
国会で審議されたことがあったことから、被控訴人は、前記絵画一三点が関税定率法21条1項4号所定の著作権侵害物品に該当する疑いがあるとして、調査を開始した。その結果、被控訴人は、本件各絵画が本件各原画の著作権を侵害するものと判断し、平成五年八月二三日付けで本件処分に及んだ。
2本件絵画@は、ガウンを纏った短髪の少年ないし少女が暖炉の前の椅子に腰掛け、手に持ったスープ皿からスープを飲もうとしている場面を描いた絵画であり、
その左下部分には【B】の署名が記されている。一方、本件原画@は、本件絵画@と同一の構図であり、両者を比較すると、画中の人物の頭部、暖炉の描き方等に若干の相違があるものの、暖炉やテーブル上の静物の配置、壁に掛けられた二枚の絵の形状、絨毯の柄等、細部に至るまで酷似しており、その筆致もよく似通っている。
3本件絵画Aは、画面中央の道を挟んでその両側に建ち並ぶ民家とその上方に広がる曇空を描いた絵画であり、画面左下部分には【C】の署名が記されている。他方、本件原画Aは、本件絵画Aと同一の構図であり、両者を比較すると、道端の人物や民家の窓の数、中央の道の角度、左下の草原の描き方、家や空の色の厚み等に若干の相違があるものの、建ち並ぶ民家や電柱、木々の配置等、細部に至るまで酷似しており、寒色系の色彩を多用した画面上半分と暖色系中心の画面下半分との強いコントラスト、遠近感を強調するため、上下方向に長く伸ばした大胆な筆遣い等、その色調や筆致もよく似通っている。
4本件絵画Bは、画面ほぼ一杯に描かれた女の肖像画であり、その右下部分には【D】の署名が記されている。一方、本件原画Bは、本件絵画Bとはほぼ同一の構図の女の肖像画であり、
両者を比較すると、本件原画Bは、リトグラフであり、画中人物の髪が緑、顔が水色、白、橙、赤、服が白、背景が水色で描かれているのに対し、本件絵画Bは、油彩であり、髪が赤及び緑、顔が白、緑、赤、服が白及び黒、背景が赤及び緑で描かれていて、色調に違いがみられるほか、本件絵画Bの画中人物の胸元には、本件原画Bにはない首飾りのようなループ模様が描かれている等の相違点がある。もっとも、両者は、ともに黒で輪郭を描いた上、その枠取りされた内側を他の色彩で塗っていく浮世絵のような立体感に欠ける手法によって描かれており、画中人物の顔面を取り囲む巻き毛の表現と思われる楕円形の図柄の配置、黒線で描かれたアーモンド型の目や長方形の鼻の形状等、その構図、筆致はよく似通っている。
5本件各原画の著作権の管理者は、ベルヌ条約加盟国であるフランスの法令に基づいて設立された法人であるADAGP協会(本件原画@及びA)又はSPADEM協会(本件原画@及びB)であり、フランスにおいても、著作権の存続期間は、
日本の著作権法と同じく著作者の死後五〇年とされている。連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律4条1項の規定により、日本国との平和条約(昭和二七年四月二八日条約第五号)25条所定の連合国及び連合国民(連合国の法令に基づいて設立された法人を含む。)が昭和一六年一二月七日に有していた著作物権の存続期間については、原則的存続期間に昭和一六年一二月八日から右平和条約の発効の日(昭和二七年四月二八日)の前日までの期間(具体的には三七九四日)が加算されることになっており、フランスは、右条約25条所定の連合国である。本件原画@の著作者である【B】は一九四七年一月二三日に、本件原画Aの著作者である【C】は一九五八年一〇月一一日に、本件原画Bの著作者でる【D】は一九七三年四月八日にそれぞれ死亡しており、本件原画@は、昭和一六年一二月七日までに著作されているので、その著作権の存続期間は【B】の死後五〇年に三七九四日が加算される。
以上の事実が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
二そこで、まず、
本件各絵画の複製物ないし二次的著作物に該当するか否かについて判断する。
前記認定事実、殊に本件各絵画が、本件各原画と構図、筆致、色調(ただし、被控訴人の徹底的な調査にもかかわらず、本件原画@の色調は不明であるが、この点は本件絵画@が本件原画@が本件原画@の複製物ないし二次的著作物であるとの判断を左右するものではないというべきである。)においてよく似通っており、その画面下方に本件各原画の著作物の署名が記されているところ等からすれば、本件各絵画が単に各原画の画風を模倣したものではなく、本件各原画に依拠して制作されたことは明らかというべきであり、前記認定のとおり、本件各絵画と本件各原画との間には、画中人物等の数や描写、首飾り等の有無等、その細部において若干の相違が見られ、本件絵画Bについては色調にも差異が認められるというものの、いずれの場合もその構図及び筆致は酷似していて、本件各絵画から本件各原画における表現形式上の本質的な特徴自体を直接感得することは十分に可能というべきであり、本件各絵画は、本件各原画の複製物ないし二次的著作物に該当すると解するのが相当である。なお、本件原画Bはリトグラフ、本件絵画Bは油彩という相違点も認められるものの、これは、技法の相違に過ぎず、本件絵画Bが本件原画Bの複製物ないし二次的著作物であるとの判断を左右するものではないというべきである。
もっとも、控訴人は、本件各絵画と本件各原画との間には一見して明らかな相違点があり、これらの相違点は、【A】が作為的に盛り込んだものであり、【A】は、原画に似せることを主眼としておらず、同人自身の作品として流通させる目的で本件各絵画を描いたとか、本件各原画の著作者の署名の存在は本件各絵画が本件各原画の複製物であるか否かを判断する上で決定的な意味を持たないというべきであるとか、本件各絵画は、本件各原画の持つイメージ、雰囲気を全く別に作り変えており、本件各原画の二次的著作物にも当たらないというべきであるとか主張する。
しかし、前記認定説示のとおり、
【A】の主観的意図はいずれにあるにせよ(【A】が本件各絵画自体に自己の署名をせず、本件各原画の著作者の署名を記載し、自己の署名は本件各絵画の裏側にしかも鉛筆という容易に消去することができる方法で記載したことに照らしても、同人の本件各絵画の著作の意図が控訴人主張のとおりであったと認めるのは困難であるが、この点をさておくとしても)、あるいは、仮に、本件各絵画に【A】独自の創作性が加えられて居るとみるとしても、本件各絵画が本件各原画とは別個独立の著作物になったということはできず、本件各絵画は本件各原画の複製物ないし二次的著作物にとどまるものというべきである。また、本件各原画の著作者の署名の存在は、本件各絵画が本件各原画に依拠していることを端的に示しているというべきである。
したがって、控訴人の右主張は理由がない。
三そこで、次に、本件各絵画における本件各原画の利用が著作権法32条1項所定の「正当な引用」に該当するか否かについて判断する。
著作権法32条1項は、「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行わなければならない。」と規定しているところ、右規定の趣旨に照らせば、同項にいう「正当な引用」に該当するためには、少なくとも、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、右両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められることを要するものというべきである。
そこで、これを本件についてみるに、前記二で認定説示したとおり、本件各絵画が引用に係る本件各原画を明瞭に区別し、これを従たるものとして引用しているということは到底できない。
四控訴人は、本件各原画が出回ることで本件各原画の評判が高まり、その価値が上がることはあっても下がることはないとか、本件各絵画を本件各原画の複製物として購入することも考えられず、
本件各絵画が本件各原画の著作者の権利を侵害するものということはできないとか、このような絵画を取締まりの対象とすることは、著作権法の目的に反するものであり、鑑賞者の判断、市場の評価によって淘汰、選別されるべきものであるとか主張する。
しかし、前記二、三で説示したとおり、本件各絵画が著作権のうちの複製権ないし翻案権を侵害するのであり、本件各絵画が出回ることで本件各原画の評判が高まるか否か及び本件各絵画を本件各原画の複製物として購入することが考えられるか否かはその著作権侵害の有無の判断を左右するものではなく、また、著作権法は、
著作者等の権利の保護を図ることを目的としているのであるから、本件各絵画のような著作権侵害物件を輸入しないように積戻しを命ずることは、まさに著作権法の目的に適うものというべきである。
したがって、控訴人の右主張は理由がない。」五以上によれば、本件各絵画が関税定率法21条1項4号所定の著作権侵害物品に該当するとしてされた本件処分は適法であり、原告の請求は理由がない。
裁判官 中田耕三
裁判官 小田八重子
裁判官 中村也寸志
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