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事件 平成 11年 (ワ) 7626号 著作権侵害行為差止等請求事件
原告 社団法人日本音楽著作権協会右代表者理事 A右訴訟代理人弁護士 北本修二
被告 カネタカ興産有限会社右代表者代表取締役 B
被告B
被告 裕・開発株式会社右代表者代表取締役 C
被告C右被告ら訴訟代理人弁護士 谷口達吉
同 向井理佳
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2000/03/23
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 被告裕・開発株式会社は、大阪府阪南市<以下略>所在の「カラオケレストラン ドルフィン」において、別添カラオケ楽曲リスト記載の音楽著作物を、次の方法により使用してはならない。
1 カラオケ装置を操作し又は客に操作させて、伴奏音楽を再生(演奏)すること2 カラオケ装置を操作し又は客に操作させて、レーザーディスクに収録されている伴奏音楽及び歌詞の文字表示を再生(上映)すること3 カラオケ装置を操作し又は客に操作させて、伴奏音楽に合わせて客に歌唱させること二 被告裕・開発株式会社は、別紙物件目録記載二のカラオケ関連機器を前項記載の「カラオケレストラン ドルフィン」から撤去せよ。
三 被告Bは、原告に対し、
1 金八〇六万九一六〇円及び別紙遅延損害金目録1記載の金員を支払え。
2 被告カネタカ興産有限会社と連帯して、金二五六万八〇〇〇円及び内金二三六万八〇〇〇円に対する平成一一年一一月一六日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
四 被告カネタカ興産有限会社は、原告に対し、金二五六万八〇〇〇円及び別紙遅延損害金目録2記載の金員を支払え。
五 被告裕・開発株式会社は、原告に対し、金一四〇二万七五〇〇円及び別紙遅延損害金目録3記載の金員を支払え。
六 被告Cは、原告に対し、被告裕・開発株式会社と連帯して、金一四〇二万七五〇〇円及び内金一二五五万〇七〇〇円に対する平成一一年一一月一六日から、内金二二万六八〇〇円に対する平成一一年一二月一日から、それぞれ支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
七 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
八 訴訟費用は、これを二〇分し、その三を被告裕・開発株式会社の負担とし、その五を被告Bの負担とし、その九を被告裕・開発株式会社と被告Cの連帯負担とし、その二を被告カネタカ興産有限会社と被告Bの連帯負担とし、その余を原告の負担とする。
九 この判決の主文第一項ないし第六項は、仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
一 主文第一項、第二項と同旨 二 被告Bは、原告に対し、金八四九万二〇六〇円及び別紙遅延損害金目録4記載の金員を支払え。
三 被告裕・開発株式会社、被告C及び被告Bは、原告に対し、連帯して金一四七九万六〇一〇円及び別紙遅延損害金目録5記載の金員を支払え。
四 被告カネタカ興産有限会社及び被告Bは、原告に対し、連帯して金二七二万八〇〇〇円及び別紙遅延損害金目録6記載の金員を支払え。
事案の概要等
一 事案の概要 本件は、音楽著作権の仲介団体である原告が、カラオケ歌唱室(カラオケボックス)の経営者等に対し、原告の許諾を得ずに原告が著作権を管理する音楽著作物(以下「管理著作物」という。)を使用してカラオケボックスを経営したことは、原告の著作権を侵害するとして、音楽著作物の使用差止め及びカラオケ関連機器の撤去を求めるほか、民法709条719条、有限会社法30条ノ三第一項、
商法266条ノ三第一項に基づいて、損害賠償を請求している事案である。
二 前提的事実(指摘部分以外は、当事者間に争いがないか、証拠により容易に認められる。) 1 当事者 (一) 原告は、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」(昭和一四年法律第六七号)に基づく許可を受けた我国唯一の音楽著作権仲介団体であり、内外の音楽著作物の著作権者からその著作権ないし支分権(演奏権、録音権、上映権等)の移転を受けるなどしてこれを管理し、国内の放送事業者をはじめレコード、映画、
出版、興行、社交場、有線放送等各種の分野における音楽の利用者に対して音楽著作物の利用を許諾し、利用者から著作物使用料を徴収するとともに、これを著作権者に分配することを主たる目的とする社団法人である。
別添カラオケ楽曲リスト記載の音楽著作物は、原告が信託的譲渡を受けて著作権を管理する管理著作物である。
(二) 被告Bは、平成二年一一月から平成九年三月ないし四月まで、大阪府岸和田市<以下略>において、カラオケ歌唱室(カラオケボックス)「カラオケ ケントス」(以下「本件第一店舗」という。)を経営していた。(乙2) 被告裕・開発株式会社(以下「被告裕・開発」という。)は、そのころ、被告Bから、本件第一店舗の営業を譲り受け、同時期から平成一一年一〇月三一日まで、本件第一店舗を経営していた(なお、被告Bの本件第一店舗の終了時期については争いがある。)。
(三) 被告カネタカ興産有限会社(以下「被告カネタカ興産」という。)は、平成七年四月二六日から平成九年四月二三日までの間、大阪府阪南市<以下略>において、カラオケ歌唱室「カラオケレストラン ドルフィン」(以下「本件第二店舗」という。)を経営していた。
被告裕・開発は、被告カネタカ興産から本件第二店舗の営業を譲り受け、平成九年四月二四日以降、同店舗を経営している。
(四) 被告Bは、被告カネタカ興産が本件第一店舗を経営していた時期を通じて同社の代表取締役であり、被告Cは被告裕・開発が本件各店舗を経営していた期間を通じて同社の代表取締役であった。
2 本件各店舗におけるカラオケの使用状況等 (一) 本件第一店舗には、通信カラオケ装置によるカラオケ歌唱に使用される歌唱室が二二室設置されており、別紙物件目録記載一のカラオケ関連機器一式が置かれていた。
(二) 本件第二店舗には、通信カラオケ装置及びレーザーディスクカラオケ装置によるカラオケ歌唱に使用される歌唱室が二二室設置されており、別紙物件目録記載二のカラオケ関連機器一式が置かれている。
(三) 本件各店舗では、従業員らが来店した客をカラオケ関連機器を設置した各歌唱室に案内し、飲食を提供するとともに前記カラオケ関連機器を操作させ、
管理著作物を再生し、また、伴奏音楽に合わせて客に歌唱させていた。
なお、本件各店舗においては、本件第一店舗については、平成一一年一〇月三一日に営業を廃止したため(乙1)、本件第二店舗については、平成一一年一一月二五日に、本件第二店舗における別添カラオケ楽曲リスト記載の音楽著作物の使用差止め及び別紙物件目録記載二のカラオケ装置の執行官保管を求める仮処分申立てを認容する決定がされ(当裁判所に顕著な事実)、これが同年一二月三日に執行されたため(被告B本人尋問の結果)、いずれも現在は音楽著作物は使用されていない。
二 争点 1 著作権侵害について (一) カラオケボックスにおける歌唱の主体は、店舗の経営者ということができるか。
(二) カラオケボックスにおける歌唱は、「公に」演奏しているものということができるか。
2 損害について (一) 被告Bが本件第一店舗を被告裕・開発に対して営業譲渡した時期はいつか。
(二) 被告Bは被告カネタカ興産及び被告裕・開発と共同して、また、被告Cは被告裕・開発と共同して、それぞれ本件各店舗を経営していたものとして、共同不法行為責任を負うか。
(三) 被告B及び被告Cは、被告裕・開発及び被告カネタカ興産が本件各店舗における管理著作物の使用により原告が被った損害について、取締役として任務を懈怠したものとして、有限会社法30条ノ三第一項、又は商法266条ノ三第一項により損害賠償責任を負うか。
(四) 原告の損害額 三 当事者の主張 1 争点1について (一) 争点1(一)について 【原告の主張】 被告らは、本件各店舗の各歌唱室ごとにマイク及び歌詞付き楽曲を掲載した索引リストを備え付け、客の利用に供しており、客は被告らが指定した特定の歌唱室において、被告らが許容した時間内でのみ歌唱することが認められ、また、
客が歌唱する曲目は被告らが用意した曲目の範囲内に限定されるのであるから、客は被告らの管理の下に歌唱しているものである。
そして、被告らは、客に歌唱させること自体により、直接的に営業上の利益を得ている。
したがって、本件各店舗において、客は被告らの管理の下に歌唱し、被告らは客に歌唱させることにより営業上の利益を得ているのであって、客による歌唱については被告らがその主体である。
【被告らの主張】 カラオケボックスにおいては、客が自分の好みに従って伴奏音楽を選曲し、伴奏音楽を再生するためのリモコン操作についても客自らがなし、歌唱についてももっぱら客のみがなしている。各カラオケボックスは防音構造となっていることから、客の独立性は高度に確保されており、歌唱のイニシアチブは客にあるというべきである。さらに、料金の徴収方法についても、本件各店舗においては、入室後のタイムチャージによって請求しているのであって、右料金徴収方法によると、
客はその時間内にカラオケ装置を操作のうえ歌唱してもしなくても料金を請求されるのであって、被告らは歌唱の場所及びそのための装置を提供しているにすぎない。
よって、管理著作物の利用主体は、カラオケボックスの経営者ではなく、客である。
(二) 争点1(二)について 【原告の主張】 本件各店舗における管理著作物の再生(演奏・上映)及び客の歌唱については被告らがその主体であり、本件各店舗に来店する個々の客は被告らにとって不特定の者であるから、被告らは公衆に直接聞かせることを目的として、管理著作物を利用している。
被告らは、本件各店舗において、別紙物件目録記載一、二のカラオケ関連機器を使って、公に、管理著作物を再生(演奏・上映)し、また、客に歌唱させている。
【被告らの主張】 各カラオケボックスは、防音壁構造となっており、そのためカラオケボックス内での歌唱音は、他のカラオケボックスには聞こえないし、ある特定のグループが利用中の歌唱室内に別のグループの客を案内して利用させることはなく、別々のグループの者がいわゆる相席という形で同一の歌唱室を利用することは予定されていない。
したがって、カラオケボックスにおける管理著作物の再生は、「公の」演奏・上演に該当しない。
2 争点2について (一) 争点2(一)について 【原告の主張】 被告Bは、平成九年三月二四日、被告裕・開発に同店舗の営業を譲渡した。
【被告の主張】 被告Bは、平成九年四月二三日ころ、被告裕・開発に同店舗の営業を譲渡した。
(二) 争点2(二)について 【原告の主張】 (1) 被告Bは、被告カネタカ興産の代表取締役であり、被告Cは、被告裕・開発の代表取締役である。また、被告Bは被告Cの父であって住所は同一であり、被告カネタカ興産、被告裕・開発の本店所在地もこれと同一である。被告カネタカ興産及び被告裕・開発の役員も、同B、同Cの親族で占められ、いずれも法人としての独立性は極めて希薄である。
したがって、被告らは、相互に密接に関連しており、本件各店舗の経営主体は、外部からは判別し難いもので、被告らの共同経営と見るべきものである。
(2) 被告Bは、被告カネタカ興産の代表取締役であって、本件第二店舗の営業方針を決定する立場にあったところ、原告による著作物利用許諾契約締結の督促を無視して、許諾契約を締結しないまま、故意又は過失により本件第二店舗における管理著作物の無断利用を継続させた。また、被告Bは、被告裕・開発の役員として登記されてはいないが、その業務に事実上関与しており、本件各店舗の営業方針を決定する立場にあるところ、原告による著作物利用許諾契約締結の督促を無視して、許諾契約を締結しないまま故意又は過失により本件各店舗における管理著作物の無断利用を継続させた。
したがって、被告Bは、被告カネタカ興産及び被告裕・開発による本件各店舗の経営時期における損害についても、民法709条719条により賠償責任がある。
(3) 被告Cは、被告裕・開発の代表取締役であって、本件各店舗の営業方針を決定する立場にあるところ、原告による著作物利用許諾契約締結の督促を無視して、許諾契約を締結しないまま、故意又は過失により、右両店舗における管理著作物の無断利用を継続させた。
したがって、被告Cは、被告裕・開発による本件各店舗の経営時期における損害についても、民法709条719条により賠償責任がある。
【被告らの主張】 本件第一店舗については、平成五年八月に被告Bが経営を開始し、その後、平成九年四月二三日ころ、被告裕・開発に営業を譲渡した。
本件第二店舗については、平成七年四月二六日から、被告カネタカ興産が営業を開始し、その後、平成九年四月二三日ころ、被告裕・開発に営業を譲渡した。
被告Cは、本件各店舗の営業及び経営とは何ら関わり合いをもっていない。
(三) 争点2(三)について 【原告の主張】 (1) 被告Bは、被告カネタカ興産の取締役として、法令を遵守して無断利用期間の使用料相当損害金を支払った上、利用許諾契約を締結しなければならないことを知りながら、これを放置していたものであって、少なくとも重過失があり、
被告カネタカ興産の本件第二店舗経営時期にかかる原告の損害について、有限会社法30条ノ三第一項に基づく損害賠償義務を負う。
(2) また、被告Cは、被告裕・開発の取締役として、法令を遵守して無断利用期間の使用料相当額を支払った上利用許諾契約を締結しなければならないことを知りながらこれを放置していたものであって、少なくとも重過失があり、被告裕・開発の本件各店舗の経営時期にかかる原告の損害について、商法266条ノ三第一項に基づく損害賠償義務を負う。
【被告らの主張】 争う。
(四) 争点2(四)について 【原告の主張】 (1) 原告は、被告らが本件各店舗において原告の許諾を得ることなく別紙物件目録記載一、二のカラオケ関連機器を使って管理著作物を演奏、上映し、原告の著作権を侵害したことにより、本件第一店舗については平成二年一一月一日から平成一一年一〇月三一日まで、本件第二店舗については平成七年四月二六日から平成一一年一一月三〇日までに少なくとも使用料相当額の損害を被った。
(2) 右損害額の算定の基礎となる著作物の使用料率は、平成九年八月一一日の著作物使用料規定の一部変更認可により、変更されている。
@ 平成九年八月一〇日までは、昭和五九年六月一日認可の著作物使用料規程第二章第二節演奏等3の「演奏会以外の催物における演奏(7)その他の演奏」の規定に基づき定められた「カラオケ歌唱室の使用料率表」により、ビデオカラオケによる使用の場合のカラオケ歌唱室の使用料は、以下の割合により算出した金額に消費税相当分(平成九年三月まで三パーセント、平成九年四月以降五パーセント)を加算した額である。
一部屋の定員が一〇名までの場合 一部屋月額 四〇〇〇円 一部屋の定員が一〇名を超え三〇名までの場合 一部屋月額 八〇〇〇円 A 平成九年八月一一日、文化庁長官は、著作物使用料規程の一部変更を認可し、同日、施行された。同規程第二章第二節演奏等4「カラオケ施設における演奏等(1)」により、カラオケ歌唱室における同日以降の著作物使用料は、以下の割合により算出した金額に消費税相当額を加算した額である。
一部屋の定員が一〇名までの場合 一部屋月額 九〇〇〇円 一部屋の定員が一〇名を超え三〇名までの場合 一部屋月額一万八〇〇〇円 (3) 本件各店舗の使用料相当額 @ 本件第一店舗には、一部屋の定員が一〇名までの歌唱室が二一室あり、一部屋の定員が一〇名を超え三〇名までの歌唱室が一室あって、いずれもビデオカラオケが使用できる。
したがって、本件第一店舗の各時期における月額使用料は、別紙1記載のとおりである。
A 本件第二店舗には、一部屋の定員が一〇名までの歌唱室が二〇室あり、一部屋の定員が一〇名を超え三〇名までの歌唱室が二室あって、いずれもビデオカラオケが使用できる。
したがって、本件第二店舗の各時期における月額使用料は、別紙2記載のとおりである。
B 以上により、平成二年一一月から平成一一年一一月三〇日までに原告が被った使用料相当損害金及びこれらに対応する弁護士費用相当損害金の額は次のとおりとなる。
(a) 本件第一店舗について (ア) 平成二年一一月一日から平成九年三月二三日まで(被告Bの経営にかかる期間) 使用料相当損害金 七二七万二〇六〇円 右侵害に対応する弁護士費用相当損害金 一二二万〇〇〇〇円 (別紙1(1)記載のとおり) (イ) 平成九年三月二四日から平成一一年一〇月三一日まで(被告裕・開発の経営にかかる期間、被告B、被告Cとの共同経営、被告Cの取締役としての責任) 使用料相当損害金 六二四万〇三四〇円 右侵害に対応する弁護士費用相当損害金 九〇万〇〇〇〇円 (別紙1(2)記載のとおり) (b) 本件第二店舗について (ア) 平成七年四月二六日から平成九年四月二三日まで(被告カネタカ興産の経営にかかる期間、被告Bとの共同経営、被告Bの取締役としての責任) 使用料相当損害金 二三六万八〇〇〇円 右侵害に対応する弁護士費用相当額 三六万〇〇〇〇円 (別紙2(1)記載のとおり) (イ) 平成九年四月二四日から平成一一年一一月三〇日まで(被告裕・開発の経営にかかる期間、被告B、被告Cとの共同経営、被告Cの取締役としての責任) 使用料相当損害金 六六三万五六七〇円 右侵害に対応する弁護士費用相当損害金 一〇二万〇〇〇〇円 (別紙2(2)記載のとおり) 【被告らの主張】 被告らの主張する著作物使用料規程の料金は、現在のカラオケボックス経営の実状からかけ離れたものである。原告が主張する料金を正規に支払うとすれば、被告らのみならず、経営が成り立ち行かなくなるカラオケボックスが多数現出することは明らかである。
よって、著作物使用料規程は、カラオケボックス経営の現状にそぐわないことは明白であり、原告主張の損害額の計算は不当である。
当裁判所の判断
一 争点1について 1 争点1(一)について (一) 当事者間に争いのない前記第二の二2記載の事実及び弁論の全趣旨によれば、本件各店舗におけるカラオケの使用状況は、以下のとおりであると認められる。
(1) 本件各店舗のカラオケ歌唱室には、通信カラオケシステム又はレーザーディスクカラオケシステムが設置されており、アンプ、オートチェンジャー、コマンダー(カラオケ予約機)、モニターテレビ、マイク、スピーカー等が置かれ、
各歌唱室は防音構造が施されている。
(2) カラオケ歌唱室に案内された客は、備え付けの楽曲集などから曲目を選択してリモコン装置等により機械に入力すると、設置されたモニターテレビに背景の映像と共に歌詞が映し出され、同時に伴奏音楽が再生され、それに合わせて歌唱することができる。
(3) 本件各店舗では、従業員らが来店した客を特定の歌唱室に案内し、客は、指定された歌唱室内において、伴奏音楽に合わせて歌唱を行う。
本件各店舗の料金は、時間単位制である。
(二) 右によれば、本件各店舗では、客は、指定された歌唱室内で、経営者が用意した特別のカラオケ用機器を使って、同じく経営者が用意した楽曲ソフトの範囲内で伴奏音楽を再生させるとともに歌唱を行うものであり、しかも右再生・歌唱は利用料金を支払う範囲で行うことができるにすぎない。
これらからすれば、客による右再生・歌唱は、本件各店舗の経営者の管理の下で行われているというべきであり、しかもカラオケ歌唱室としての営業の性質上、店舗経営者はそれによって直接的に営業上の利益を収めていることは明らかであるから、著作権法の規律の観点からは本件各店舗における伴奏音楽の再生及び歌唱の主体は、経営者であるというべきである。
被告らは、歌唱室内においては、伴奏音楽の選曲、歌唱はもっぱら客のみがなし、また、各歌唱室は防音構造となっていることから、客の独立性は高度に確保されており、歌唱のイニシアチブは客にあるというべきであって、店舗経営者は歌唱の場所及びそのための装置を提供しているにすぎないと主張するが、本件各店舗は、客にカラオケを利用させることを主たる目的として営業するものであり、
そのための設備、ソフト、操作手順及び利用料金の支払の点で経営者の管理下に置かれているのであるから、本件各店舗における客の歌唱行為が経営者から独立しているということはできない。
2 争点1(二)について 右のとおり、本件各店舗における伴奏音楽の再生及び歌唱の主体は経営者であると解すべきところ、経営者にとって、本件各店舗に来店する客が不特定多数であることは明らかであるから、経営者による伴奏音楽の再生及び歌唱は、著作権法22条の「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的」とするものであるということができる。
この点についての被告らの主張は、いずれも伴奏音楽の再生及び歌唱の主体が客であることを前提とするものであり、失当である。
3 以上によれば、本件各店舗の経営者は、本件各店舗において、カラオケ機器を使って、管理著作物を公に再生及び歌唱することによって、原告の演奏権を侵害したものと認められる(前記第二の二1(三)、(四)のとおり、少なくとも被告B、被告裕・開発が本件第一店舗を、被告カネタカ興産及び被告裕・開発が本件第二店舗を経営していたこと、現在被告裕・開発が本件第二店舗を経営していることは争いがない。右以外の被告らの本件各店舗の経営主体性については、後記二で認定判断する。)。
また、レーザーディスクカラオケにより、録画した映画の上映とともに歌詞をモニターテレビに映し伴奏音楽を再生することは、平成九年法律第八九号による改正前の著作権法2条1項19号、平成一一年法律第七七号による改正前の著作権法2条1項18号(現行著作権法2条1項17号)にいう「上映」に当たるから、本件第二店舗の経営者は、映画の著作物において複製されているその著作物を公に上映したものであり、原告の上映権を侵害する(平成一一年法律第七七号による改正前の著作権法26条2項。現行著作権法22条の2参照)。
ところで、被告裕・開発は、本件口頭弁論終結において、本件第二店舗で別添カラオケ楽曲リスト記載の音楽著作物を使用していない。しかし、被告B本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、被告裕・開発は、本件訴訟提起後も本件第二店舗における右音楽著作物の使用を継続していたこと、現在同店舗において右音楽著作物が使用されていないのは、専ら仮処分決定の効果によるものであることが認められるから、なお、被告裕・開発が、本件第二店舗において、別添カラオケ楽曲リスト記載の音楽著作物を使用するおそれはあるものということができる。
よって、原告の請求のうち、被告裕・開発に対する本件第二店舗における別添カラオケ楽曲リスト記載の音楽著作物の使用差止め、及び、別紙物件目録記載二のカラオケ関連機器について同店舗からの撤去を求める請求は、理由がある。
二 争点2について 1 争点2(一)について 証拠(甲27、乙2、被告B本人尋問の結果)によれば、被告Bから被告裕・開発へ本件第一店舗の営業が移転されたのは、平成九年四月二四日以降であると認められる。
この点、原告は、右営業譲渡は平成九年三月二四日にされたと主張し、甲28(不動産登記簿記載事項証明書)を提出する。確かに、同証拠によれば、本件第一店舗が所在する建物の所有権は、平成九年三月二四日売買を原因として、被告カネタカ興産から被告裕・開発へ移転されていることが認められるが、被告カネタカ興産は、右当時、本件第一店舗を経営していたものではなく(被告カネタカ興産が経営していたのは本件第二店舗である。)、建物の所有権の移転をもって直ちに同時期に被告Bから被告裕・開発に対して営業譲渡があったということはできない。
かえって、被告B本人尋問の結果によれば、被告裕・開発は本件各店舗を譲り受けるまでは一切事業を行っていなかったことが認められ、本件第二店舗の営業が被告カネタカ興産から被告裕・産業に移転されたのが平成九年四月二四日以降であることは当事者間に争いがないのであるから、被告Bから被告裕・産業に対し、本件第一店舗の営業が移転されたのも、同時期である平成九年四月二四日以降であるとみるのが自然であり、これと異なる原告の主張を採用することはできない。
2 争点2(二)について 前記1のとおり、本件第一店舗の経営主体は、平成二年一一月から平成九年四月二三日までは被告Bであり、平成九年四月二四日から平成一一年一〇月三一日までは被告裕・開発であったことが認められ、また、本件第二店舗の経営主体は、平成七年四月二六日から平成九年四月二三日までの間は被告カネタカ興産であり、平成九年四月二四日以降現在までは被告裕・開発であることは当事者間に争いがない。
ところで、原告は、被告B、被告Cの住所地と被告カネタカ興産、被告裕・開発の本店所在地が同一であること、あるいは、被告カネタカ興産及び被告裕・開発の役員が被告B、被告Cの親族で占められていることをもって、被告らは相互に密接に関連しており、本件第一店舗は被告らの共同経営である、あるいは被告B又は被告Cは本件各店舗の営業方針を決定する立場にあるなどと主張する。
しかし、原告主張の事実のみをもって、本件各店舗が被告らの共同経営にかかるものであると直ちにいえないことはいうまでもない。そして、証拠(甲27)によれば、原告との間の本訴提起前における本件各店舗での管理著作物の使用に関する交渉過程では、被告Bあるいは被告Cが交渉に当たっていたことが認められるが、前記のとおり、被告Bは平成二年一一月から平成九年四月二三日まで本件第一店舗を経営し、また、被告Bが代表取締役である被告カネタカ興産は平成七年四月二六日から平成九年四月二三日まで本件第二店舗を経営していたのであって、この時期において、被告Bが原告との交渉に当たっていたとしても何ら不自然ではないし、また、前記のとおり、被告裕・開発は、平成九年四月二四日以降、本件各店舗を経営していたのであるから、同社の代表取締役である被告Cがこの時期に原告との交渉に当たっていたことも、いわば当然というべきであるから、これらの事実から本件各店舗が被告らの共同経営にかかるものであるということもできない。さらに、証拠(甲27、乙2、被告B本人尋問の結果)によれば、被告Cは、本件第一店舗が被告Bの、本件第二店舗が被告カネタカ興産の経営にかかる時期においても、
両店舗の従業員(マネージャー)として、両店舗の実務上の運営を行っていたこと、被告裕・開発は被告Cが出資して設立した会社であることがそれぞれ認められ、これらの事実を総合すれば、本件各店舗の経営主体は前記のとおりであるというべきであって、被告Bと被告カネタカ興産あるいは被告裕・開発の、また、被告Cと被告裕・開発の共同経営にかかるものであると認めることはできない。
その他、本件各店舗が、被告カネタカ興産あるいは被告裕・開発の経営にかかる時期において、被告B、被告Cとの共同経営であったと認めるに足りる証拠はない。
したがって、原告の主張はいずれも採用できない。
3 争点2(三)について (一) 証拠(甲7〜27)によれば、原告は、平成三年一月九日に本件第一店舗を訪れ、翌一〇日付で著作権法及び著作権管理団体としての原告の説明並びに著作物使用許諾契約についての説明を記載した「音楽をご使用になる場合の使用許諾契約と手続のご案内」と題する書面を本件第一店舗に送付したのを始めとして、その後も継続的かつ多数回にわたって本件各店舗、被告B宅(被告C宅、被告カネタカ興産本店所在地、被告裕・開発本店所在地も同一)を訪問し、あるいは電話、文書等で、著作権法の趣旨の説明、過去の管理著作物の使用にかかる使用料相当額の精算処理及び著作物使用許諾契約の締結の催告等を行っていたこと、その間、被告Bあるいは被告Cは、原告の右説明、催告等に対応していたことが認められる(例えば、原告による本件各店舗に関する文書の送付についてみても、前記のほか、本件第一店舗につき平成三年七月一一日付、同年八月三〇日付、平成四年五月二五日付、同年六月二五日付、平成五年六月三〇日付、同年九月二二日付、平成六年七月二一日付、平成七年四月一四日付、同月二八日付、同年一〇月一一日付、平成八年一月二六日付、同年三月二五日付、同年七月二日付で各送付し、また、本件各店舗について同年一二月一〇日付、平成九年三月一八日付、平成一一年四月八日付、同月一六日付、同年五月一九日付(警告書)、同年六月一七日付(警告書・内容証明郵便)で各送付し、原告の被告らへの訪問についても、少なくとも九回は本件各店舗又は本店を訪れており、長期間かつ多数回にわたる。)。
(二) 右各事実によれば、被告Bは被告カネタカ興産の代表取締役として本件第一店舗の、また、被告Cは被告裕・開発の代表取締役として本件各店舗の、カラオケ歌唱室における管理著作物の使用が著作物の無断使用による著作権の侵害行為に当たること、及び、無断使用期間の使用料相当損害金及び遅延損害金を支払った上、利用許諾契約を締結しなければならないことを知りながらこれを放置し、右支払及び契約締結をせずに管理著作物の使用を継続していたものと認められ、右取締役としての職務の懈怠について、少なくとも重過失があるものと認められる。
(三) したがって、被告Bは、被告カネタカ興産が本件第一店舗を経営していた期間についての管理著作物の使用について有限会社法30条ノ三第一項により、また、被告Cは被告裕・開発が本件各店舗を経営していた期間についての管理著作物の使用について商法266条ノ三第一項により、それぞれ会社と連帯して原告が被った損害を賠償する責任があるというべきである。
4 争点2(四)について (一) 上記各事実によれば、原告は、被告B及び被告裕・開発が本件第一店舗を経営した平成二年一一月一日から平成一一年一〇月三一日まで、及び、被告カネタカ興産及び被告裕・開発が本件第二店舗をそれぞれ経営した平成七年四月二六日から平成一一年一一月三〇日までの、本件各店舗における管理著作物の無断使用により、使用料相当額の損害を被ったものと認められる。
(二) ところで、証拠(甲3〜5)及び弁論の全趣旨によれば、平成九年八月一一日に一部変更が認可される前の著作物使用料規程(昭和五九年六月一日一部変更認可以降のもの)においては、カラオケ歌唱室における著作物の使用料率を直接定めた規定は存在せず、原告は、カラオケ歌唱室における音楽著作物の使用料徴収について、「カラオケ歌唱室の使用料率表(年間の包括的利用許諾契約を結ぶ場合)」と題する使用料率表を策定し、これに基づいて徴収していたことが認められる。右使用料率表(甲4)には、「著作物使用料規程第2章第2節演奏等の3『演奏会以外の催物における演奏』の(7)『その他の演奏』の規定」に基づいて定めたものである旨記載されているが、右の点はひとまずおくとしても、前記著作物使用料規程の全体の趣旨に照らし、右使用料率表の内容は、なお、著作物使用料規程に依るものということができるから、これを平成九年八月一一日一部変更認可にかかる著作物使用料率規程施行前の使用料相当損害額の算定の基礎となし得るものと解するのが相当である。
また、証拠(甲5)によれば、平成九年八月一一日一部変更認可にかかる著作物使用料規程には、その第二章第二節演奏等4「カラオケ施設における演奏等(1)」において、カラオケ歌唱室における著作物使用料が定められており、右規程は同日施行されたことが認められるから、同日以降は、右規程が使用料相当損害額の算定の基礎となるものということができる。
そこで、これらに基づいて、原告が通常徴収するビデオカラオケ使用によるカラオケ歌唱室における著作物の使用料についてみると、前掲各証拠によれば、平成九年八月一〇日までは、一部屋当たり定員一〇名までの場合は月額四〇〇〇円、定員が一〇名を超え三〇名までの場合は月額八〇〇〇円に消費税相当額を加算した額であったこと、また、平成九年八月一一日以降は、一部屋当たりの定員が一〇名までの場合は月額九〇〇〇円、定員が一〇名を超え三〇名までの場合は月額一万八〇〇〇円に消費税相当額を加算した額であることが認められる。
(三) 証拠(甲27)及び弁論の全趣旨によれば、本件第一店舗におけるカラオケ歌唱室は、開店当初から二二室であり、一部屋の定員一〇名までの部屋が二一室、一部屋の定員一〇名を超え三〇名までの部屋が一室であり、また、本件第二店舗は、開店当初から二二室であり、一部屋の定員一〇名までの部屋が二〇室、一部屋の定員が一〇名を超え三〇名までの部屋が二室であり、いずれの部屋でもビデオカラオケが使用できることが認められる。
そこで、原告が被った著作物使用料相当損害金を算定すると、次のとおりである。
(1) 本件第一店舗 @ 平成二年一一月一日から平成九年四月二三日まで(被告Bの経営にかかる時期) 別紙3の2記載のとおり、合計七三六万九一六〇円 A 平成九年四月二四日から平成一一年一〇月三一日まで(被告裕・開発の経営にかかる時期) 別紙3の3記載のとおり、合計六一四万一八三〇円 (2) 本件第二店舗 @ 平成七年四月二六日から平成九年四月二三日まで(被告カネタカ興産の経営にかかる時期) 別紙4の2記載のとおり、合計二三六万八〇〇〇円 A 平成九年四月二四日から平成一一年一一月三〇日まで(被告裕・開発の経営にかかる時期) 別紙4の3記載のとおり、合計六六三万五六七〇円 (四) また、本件各店舗における管理著作物の使用による原告の損害は、本件各店舗における個々の歌唱により生じているものということができるが、右のように月額使用料相当損害金として算定する場合、これらの損害は遅くとも当月末日の経過により発生するものと解されるから、(三)に対する遅延損害金は、それぞれ(1)@については別紙遅延損害金目録1記載のとおり、(2)@については別紙遅延損害金目録2記載のとおり、(1)A及び(2)Aについては別紙遅延損害金目録3記載のとおりである。
また、商法266条ノ三第一項及び有限会社法30条ノ三第一項の損害賠償債務は、法が取締役の責任を加重するために特に認めたものであって、不法行為に基づく損害賠償請求の性質を有するものではないから(最高裁昭和三九年(オ)第一一七五号同四四年一一月二六日大法廷判決・民集二八巻一〇号二〇九五頁参照)、履行の請求を受けたときに遅滞に陥るものと解するのが相当である(最高裁昭和五九年(オ)第一五号平成元年九月二一日第一小法廷判決参照)。しかるところ、本訴において、原告が、被告B及び被告Cに対し、前記3で述べた取締役としての損害賠償義務の履行請求をしたのは、原告の平成一一年一一月一六日付準備書面においてであって、それ以前に履行の請求をしたことの主張・立証はないから、
被告Bの被告カネタカ興産の取締役としての損害賠償債務及び被告Cの被告裕・開発の取締役としての損害賠償債務のうち平成一一年一〇月末日までに発生した部分は、いずれも、右準備書面が送付された日の翌日である平成一一年一一月一六日に、また、被告Cの被告裕・開発の取締役としての損害賠償債務のうち平成一一年一一月末日までに発生した部分は平成一一年一二月一日に、それぞれ遅滞に陥るものと解するのが相当である。
(五) 本件訴訟の提起・追行のために原告は弁護士を依頼したところ、本件に現れた一切の事情を考慮するならば、弁護士費用相当損害金としては、損害賠償請求につき、本件第一店舗のうち被告Bの経営にかかる期間の部分については七〇万円、被告裕・開発の経営にかかる期間の部分については六〇万円、本件第二店舗のうち被告カネタカ興産の経営にかかる期間の部分については二〇万円、被告裕・開発の経営にかかる期間の部分については六五万円がそれぞれ相当である。
(六) そして、前記3で認定判断したとおり、被告Bは被告カネタカ興産の本件第一店舗の経営期間にかかる損害につき、また、被告Cは被告裕・開発の本件各店舗の経営期間にかかる損害につき、それぞれ連帯して賠償する責任がある。
(七) したがって、
(1) 被告カネタカ興産は、二五六万八〇〇〇円及び別紙遅延損害金目録2記載の金員 (2) 被告裕・開発は、一四〇二万七五〇〇円及び別紙遅延損害金目録3記載の金員 (3) 被告Bは、
@ 八〇六万九一六〇円及び別紙遅延損害金目録1記載の金員 A 被告カネタカ興産と連帯して、二五六万八〇〇〇円及び内金二三六万八〇〇〇円対する平成一一年一一月一六日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員 (4) 被告Cは、被告裕・産業と連帯して、一四〇二万七五〇〇円及び内金一二五五万〇七〇〇円に対する平成一一年一一月一六日から、内金二二万六八〇〇円に対する平成一一年一二月一日から、それぞれ支払済みに至るまで年五分の割合による金員 を、それぞれ原告に対して支払う義務がある。
三 よって、原告の請求は、主文の限度で理由がある。
(口頭弁論終結日 平成一二年二月一〇日)
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 高松宏之
裁判官 水上周
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