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関連ワード 著作者 /  同一性 /  著作者人格権 /  氏名表示権 /  同一性保持権 /  複製権 /  図書館 /  著作権侵害 /  差止 /  損害賠償 / 
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事件 平成 11年 (ワ) 29127号 各著作権侵害差止等請求事件
平成 12年 (ワ) 5331号 各著作権侵害差止等請求事件
原告 【A】
同 【B】
同 【C】
原告ら訴訟代理人弁護士 内藤頼博
同 古沢博
同 西内聖
被告 株式会社新建築社右代表者代表取締役 【D】 右訴訟代理人弁護士 合田勝義
同 吉村節也
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2000/08/30
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 被告は、別紙書籍目録記載の書籍を発行、販売又は頒布してはならない。
二 被告は、その占有する別紙書籍目録記載の書籍の在庫品を裁断その他の方法により廃棄せよ。
三 被告は、別紙雑誌目録記載の各雑誌を発行、販売又は頒布してはならない。
四 被告は、その占有する別紙雑誌目録記載の各雑誌の在庫品を裁断その他の方法により廃棄せよ。
五 被告は、その占有する別紙著作物目録記載の各エスキースを撮影したネガフィルム及び写真原版を廃棄せよ。
六 被告は、別紙広告目録記載の写真原版を廃棄せよ。
七 被告は、原告らそれぞれに対し、各金五一万円及び内金一〇万円に対する平成一二年一月八日から、内金四一万円に対する平成一二年三月二四日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
八 原告のその余の請求を棄却する。
九 訴訟費用は、これを五分し、その四を被告の負担とし、その余を原告らの負担とする。
一〇 この判決は、原告勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
一 主文第一項ないし第六項記載のとおり 二 被告は、原告ら各自に対し、各金一八一万円及び内金五〇万円に対する平成一二年一月八日から、内金一三一万円に対する平成一二年三月二四日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
事案の概要
原告らは、エスキース五点に関する著作者の遺族であり、かつ、著作権を承継した者であるところ、右エスキースを掲載した書籍、雑誌を被告が発行したことが、@著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為、
及びA複製権を侵害する行為に当たる旨主張して、被告に対し、右書籍、雑誌の発行の差止め、廃棄、損害賠償等を求めた。
一 争いのない事実 1 本件エスキース 別紙著作物目録記載のエスキース五点(以下、まとめて「本件エスキース」といい、個々のものを「本件エスキース一ないし五」という。)は、建築家であった亡【E】(以下「【E】」という。)が著作した著作物である。なお、エスキースとは、建築家が建築物を設計するに当たり、その構想をフリーハンドで描いたスケッチである。
2 【E】の死亡 【E】は、昭和六二年五月二〇日死亡した。原告【A】は、【E】の長男であり、その余の原告らは、【E】の養子である。なお、【E】の配偶者は現存しない。
3 被告の書籍の発行 被告は、平成一一年四月二七日、別紙書籍目録記載の書籍(以下「本件書籍」という。)を発行した。本件書籍の二六頁には本件エスキース一が、同二七頁には本件エスキース二が、同二八頁には本件エスキース三が、同二九頁には本件エスキース四が、同二八及び二九頁には本件エスキース五が、それぞれ複製、掲載されている。
4 被告の雑誌の発行 被告は、別紙雑誌目録記載の各雑誌(以下、まとめて「本件雑誌」といい、個々のものを「本件雑誌一1ないし5、二1ないし5」という。)を同目録記載の各発行日に発行した。
本件雑誌には、別紙広告目録記載のとおりの、本件エスキース一を使用した本件書籍についての広告(以下「本件広告」という。)が掲載された。すなわち、本件雑誌一1の六〇頁、同一2の四六頁、同一3の五九頁、同一4の二五三頁、同一5の二五九頁、同二1の三頁、同二2の一四頁、同二3の一七三頁、同二4の一六九頁、同二5の一六九頁に、本件広告が掲載された。
また、本件雑誌一1の四九頁には、本件エスキース一が、別紙切除エスキース目録記載のとおりの態様で、その上下左右の一部分を切除されて掲載されている。
二 争点 1 本件書籍、本件雑誌についての著作権侵害の成否 (被告の主張) 昭和四二年四月ころ、早稲田大学理工学部が新設の大久保キャンパスに移転するため、同大学名誉教授であった【E】が本部キャンパス内の理工学部研究室を明け渡す際、本件エスキースを含む、教育研究用に大学に残す資料については、
【E】は、建築学科助教授であった【F】(以下「【F】」という。)に対し、教育研究の資料として使うように指示して同人に引き渡し、その後、同人の研究室で使用保管されてきた。平成七年一〇月、【F】は、早稲田大学に、右資料を早稲田大学(図書館)に寄贈した。
右事実に照らすと、本件エスキースの著作権は、昭和四二年四月ころ、
【E】から【F】に贈与され、その後、平成七年一〇月、【F】から早稲田大学に贈与されたものと解すべきである。
被告は、本件書籍及び本件雑誌の出版に当たり、同大学の承諾を受けた。
被告には、著作権侵害について過失がなかった。
(原告らの反論) 否認する。被告には、著作権侵害について過失があった。
2 本件雑誌についての著作者人格権侵害の成否 (原告らの主張) (一) 被告は、本件広告に際し、本件エスキース一を写真製版するに当たり、写真濃度を薄くして改変した上、A4版の頁全面にわたる背景図とし、さらに、これに重ねて、本件広告の広告文を印刷することにより、本件エスキース一の表現を改変して利用している。これは、【E】が生存していればその同一性保持権侵害になるべき行為である。
また、被告は、本件広告に際し、著作者【E】の名を何ら表示していない。これは、【E】が生存していればその氏名表示権侵害になるべき行為である。
被告には、著作人格権侵害について過失があった((二)も同様である。)。
(二) 被告は、本件雑誌一1の四九頁に本件エスキース一を掲載するに当たり、右著作物の上下左右の部分を切除して、その表現を改変している。特に、右著作物の上側部分に描かれた二本の尖塔の先端及び屋根上の十字架が大幅に切除されているが、これらは同人の作品の特徴の一つとして重要な部分であり、また、切除の結果表現がバランスを欠くことになった。これは、【E】が生存していればその同一性保持権侵害になるべき行為である。
(被告の反論) (一) 本件広告については、本件エスキース一の写真濃度を薄くし、広告文を重ねているが、本件エスキースそのものは改変していないから、同一性保持権侵害にはならない。また、このような広告方法は、社会的に確立したものであり、仮に改変としてもやむを得ないと認められるものである(著作権法20条2項4号)。
また、ことさら氏名を表示しなくても、本件広告の書籍を見れば、著作者名が直ちに判明するから、著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれもなく、公正な慣行にも反しないから、著作者名の表示を省略できる(著作権法19条3項)。さらに、本件エスキース一はそもそも無記名だから、氏名を表示する必要はない(同条二項)。
(二) 本件雑誌一1の四九頁は、稲門建築展についての報道記事であり、本件エスキース一を代表的な展示作品として紹介するものであるところ、紹介の重点に合わせて、エスキースのごくわずかな部分を切除したにすぎないから、仮に改変としてもやむを得ないと認められるものである(著作権法20条2項4号) 3 損害 (原告らの主張) (一) 本件書籍について 被告による本件書籍の発行は、原告らの複製権侵害に当たる。訴訟提起に先立ち、被告は、右複製権侵害を争ったため、原告らはやむなく本件訴訟を提起し、弁護士報酬として各金五〇万円を支払い、右同額の損害を被った。
右の遅延損害金の起算日として平成一二年一月八日を主張する。
(二) 本件雑誌について (1) 精神的損害 原告らは、【E】が生存していればその著作者人格権侵害になるべき行為を被告が行ったことにより、次のとおり、原告ら固有の精神的損害を被った。
侵害行為の態様、性質に照らすと、その慰謝料としては原告らそれぞれにつき一〇〇万円が相当である。
すなわち、【E】は著名な建築家であり、原告らは、【E】の建築家、教育者としての経歴、その人格、作品を誇りに思い、敬愛している。原告【A】は、自らも建築家の道に進んだ。原告らは、【E】と長い間密接な家族関係にあった。被告は、前記のとおり、多数回にわたり侵害行為を繰り返し、その内容も前記のとおり悪質なものである。
(2) 財産的損害 本件エスキース一を商業出版物である雑誌に掲載することを許諾する場合の通常使用料相当額は、一使用について三万円である。したがって、一一使用についての総額は三三万円であり、原告各自については、その三分の一である一一万円である。
(3) 弁護士費用 原告らは、本訴の提起のため弁護士費用六〇万円をやむなく支払い、
同額の損害を被った。そのうち、著作者が存すれば著作者人格権侵害となるべき行為と因果関係のある損害は四五万円であり、複製権侵害行為と因果関係のある損害は一五万円であり、その合計は六〇万円である。原告各自については、その三分の一である二〇万円となる。
(二)についての遅延損害金の起算日として平成一二年三月二四日を主張する。
(被告の反論) 争う。
仮に被告の出版行為が著作権侵害に当たるとしても、被告の過失は軽過失にすぎないから、損害賠償の額を定めるについて参酌されるべきである。すなわち、被告は、企画者である稲門建築会に著作権について確認して問題がない旨の回答を得ており、稲門建築会も出版について早稲田大学の承諾を得ているから、このような事情によれば、被告の過失は軽過失にすぎない。
本件広告についての使用料は、本件書籍の使用料と別個には払われないものであるところ、本件エスキース一の本件書籍への掲載についての使用料相当額は七万五〇〇〇円にすぎない。
争点に対する判断
一 争点1(本件エスキースについての著作権侵害の成否)について 被告は、本件エスキースの著作権が、昭和四二年四月ころ、【E】から【F】に、平成七年一〇月、【F】から早稲田大学に、それぞれ贈与され、本件書籍及び本件雑誌の出版については同大学の承諾を受けた旨主張するので、検討する。
証拠(乙一)によれば、昭和四二年四月ころ、早稲田大学理工学部が新設の大久保キャンパスに移転するため、同大学名誉教授であった【E】が本部キャンパス内の理工学部研究室を明け渡す際、本件エスキースについては、教育研究の資料として使ってほしい、いずれ資料館ができたらそこに収めて一般に公開してほしい旨指示して建築学科助教授であった【F】に引き渡し、その後、同人の研究室で使用保管されてきたことが認められる。
しかし、右事実からは、【E】が【F】に対し、本件エスキースについての著作権を譲渡したことまでは認められず、他にこれを認めるに足りる証拠はなく、 この点に対する被告の主張は理由がない。
そして、【E】が、昭和六二年五月二〇日死亡したこと、原告【A】が【E】の長男であり、その余の原告らが【E】の養子であることは、当事者間に争いがないから、結局、原告らは、相続により、それぞれ本件エスキースについての著作権を各三分の一ずつの割合で取得した。したがって、本件エスキースを複製し、本件書籍を発行した行為は、原告らの有する複製権侵害に当たることになる。
なお、被告は、本件エスキースを複製し、本件書籍を発行するに際し、著作権者である原告らの承諾を受けなかったのであり、右行為について少なくとも過失があることは明らかである。
二 争点2(本件雑誌についての著作者人格権侵害の成否)について 1 本件広告について判断する。
(一) 証拠(甲一〇ないし一九、枝番号の記載は省略)及び弁論の全趣旨によれば、被告が本件雑誌に掲載した本件広告は、本件エスキース一が、その色調の濃度を大幅に薄くした上で、A4版の頁全面にわたって下絵として使用され、その上に、本件書籍に関する広告(書籍の題号、紹介文、構成、内容の要約、企画者、
監修者の表示、定価、注文方法等)が頁全面にわたって重ねて印刷されていることが認められる。
被告の右行為は、本件エスキース一の表現を大幅に改変したものというべきであるから、著作者が存しているとするならばその同一性保持権の侵害となるべき行為に当たる。
この点につき、被告は、このような広告方法は社会的に許容されており、やむを得ないと認められる改変に当たる旨主張する。しかし、本件エスキース一の上に広告文を重ねることについて、合理的な理由を見出すことはできず、結局、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないものということはできない。また、著作者ないしその遺族の了解を得ないまま右のような改変を行うことが社会的に広く行われていることを認めるに足りる証拠はない。
なお、右行為が過失に基づくことも明らかである。
(二) 本件広告において本件エスキース一を使用するに際し、著作者である【E】の名を表示していないから、被告の右行為は、著作者が存しているとするならばその氏名表示権の侵害となるべき行為に当たる。なお、右行為が過失に基づくことも明らかである。
この点につき、被告は、本件広告の対象である本件書籍を見れば、著作者名が直ちに判明するから、著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれもなく、公正な慣行にも反しない旨主張する。しかし、本件広告を見た者が必ず本件書籍を見るとは限らないから、右行為が右利益を害するおそれがないとはいうことができない。また、被告は、本件エスキース一は無記名である旨主張するが、弁論の全趣旨によれば、本件エスキース一の公衆への提示の際に【E】の氏名が表示されていたことは明らかである。したがって、被告の主張は採用できない。
2 本件エスキース一の切除掲載(本件雑誌一1の四九頁)について判断する。
証拠(甲一〇)及び弁論の全趣旨によれば、右掲載においては、本件エスキース一の上下左右の一部分がそれぞれ帯状に切除されているが、その切除幅は左右下部においては本件エスキース一全体の縦、横の長さの五〇分の一以下であり、
上部の切除幅も全体の縦の長さの二〇分の一以下であり、上部では建築物屋根上の三本の柱状構築物の先端が一部切除されているが、建築物全体に比べると、極くわずかな部分であることが認められる。
右事実によれば、本件エスキース一の一部切除は、著作者が存しているとするならば、社会通念に照らし、その名誉感情が害されるほどの表現上の変更ということはできず、同一性保持権の侵害となるべき行為には当たらない。
三 争点3(損害)について 1 本件書籍の発行によって生じた原告らの損害(弁護士費用)について判断する。
前記のとおり、被告による本件書籍の発行は、原告らの複製権の侵害に当たる。一切の事情を総合すると、右不法行為と相当因果関係のある弁護士費用に係る損害は、三〇万円が相当と認められる。原告らはそれぞれ本件エスキースについての著作権を各三分の一ずつの割合により相続したものであるから、原告らの損害は、それぞれ一〇万円になる。
2 本件雑誌の発行による損害について判断する。
(一) 財産的損害 本件雑誌における本件広告の掲載は、原告らの複製権の侵害に当たる。
証拠(甲二一)及び弁論の全趣旨によれば、本件エスキース一の雑誌への一回の掲載についての使用料相当額は三万円と認められるので、一一回分の合計額は三三万円となる(原告らそれぞれにつき各一一万円)。
(二) 精神的損害 前記のとおり、右掲載は、著作者が存しているとするならばその同一性保持権及び氏名表示権の侵害となるべき行為に当たる。そして、証拠(甲二一ないし二三)によれば、原告らは、【E】の子であるという立場を超えて、同人の作品の整理、研究を続けているなど同人の作品に対し深い愛着を有していると認められることを考慮すると、原告らは、右行為により、固有の精神的損害を被ったものと認められ、右損害の慰謝料としては原告らそれぞれについて各二〇万円が相当である。
(三) 弁護士費用 被告の前記(一)、(二)記載の行為と相当因果関係が右不法行為と相当因果関係のある弁護士費用に係る損害は、原告らそれぞれについて各一〇万円が相当である。
四 結論 以上の次第で、本件請求のうち、著作権法112条116条に基づく差止め、廃棄を求める部分は理由がある。また、損害賠償を求める部分は、原告ら各自に対し、各五一万円及び内金一〇万円に対する平成一二年一月八日から、内金四一万円に対する平成一二年三月二四日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による金員の支払を求める限度で理由がある。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 沖中康人
裁判官 石村智
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