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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成13ネ3226損害賠償等請求控訴事件 判例 特許権
平成12ネ5964文書発行差止等,著作権侵害排除等請求控訴事件 平成13ネ686同附帯控訴事件 判例 特許権
平成2ネ2615 判例 特許権
関連ワード 著作物性 /  創作性 /  著作者 /  アイデア /  模様 /  翻案 /  類似性 /  著作者人格権 /  公表権 /  氏名表示権 /  複製権 /  引用 /  著作権侵害 /  損害賠償 / 
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事件 平成 11年 (ネ) 2937号 各損害賠償等請求控訴事件
平成 11年 (ネ) 4828号 同附帯控訴事件
控訴人(附帯被控訴人、第一事件被告・第二事件原告) 【A】
控訴人(附帯被控訴人、第一事件被告) 【B】こ と【C】
控訴人(附帯被控訴人、第一事件被告) 【D】 右三名訴訟代理人弁護士 小笠原 耕司
同 仁平勝之
同 富永豊子右訴訟復代理人弁護士 福本悦朗
被控訴人(附帯控訴人、第一事件原告・第二事件被告) 有限会社 スコット 右代表者代表取締役 【E】
被控訴人(附帯控訴人、第一事件原告・第二事件被告) 【F】こ と【G】
被控訴人(附帯控訴人、第二事件被告) 【H】 右三名訴訟代理人弁護士 松田政行
同 齋藤浩貴
同 山崎卓也
同 早稲田 祐美子
同 谷田哲哉
同 松葉栄治
同 早川篤志(以下、各当事者を右の順にそれぞれ「控訴人【A】」、「控訴人 【C】」、「控訴人【D】」、「被控訴人スコット」、「被控訴人【G】」、「被
控訴人【H】」という。)
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2000/09/19
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 原判決を次のとおりに変更する。
一 控訴人らは、被控訴人スコットに対し、連帯して金一四〇万円及びこれに対する平成七年一一月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 控訴人らは、被控訴人【G】に対し、連帯して金一四〇万円及びこれに対する平成七年一一月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 控訴人らは、被控訴人スコット及び同【G】のために、別紙謝罪広告目録一記載の謝罪広告を、見出し及び記名宛名は各一四ポイント活字をもって、本文その他の部分は八ポイント活字をもって、朝日新聞社発行の朝日新聞、産業経済新聞社発行の産経新聞、及び讀賣新聞社発行の讀賣新聞の各全国版朝刊社会面、中日新聞社発行の東京新聞の朝刊社会面、並びに統一日報社発行の統一日報のそれぞれに一回掲載せよ。
四 被控訴人スコット及び同【G】のその余の請求をいずれも棄却する。
五 控訴人【A】の請求(同控訴人の当審における新請求も含む)をいずれも棄却する。
六 訴訟費用は、第一審、第二審を通じて、控訴人【A】と被控訴人【H】との間においては控訴人【A】の負担とし、控訴人【A】、同【C】及び同【D】と被控訴人スコット及び同【G】との間においては、これを一〇分し、その九を控訴人【A】、同【C】及び同【D】の、その一を被控訴人スコット及び同【G】のそれぞれ負担とする。
七 この判決は、第一項、第二項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 控訴人ら 1 控訴の趣旨 原判決中、控訴人ら敗訴部分を取り消す。
第一事件の控訴人ら敗訴部分に係る被控訴人スコット及び同【G】の控訴人らに対する請求をいずれも棄却する。
被控訴人らは、別紙第二物件目録記載の各物件を組み込んだ別紙第一物件目録記載の舞台装置を制作してはならない。
被控訴人スコットは、別紙第二物件目録記載の各物件を廃棄せよ。
被控訴人らは、控訴人【A】に対し、連帯して金五〇〇万円及びこれに対する平成八年一月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
被控訴人らは、朝日新聞社(東京本社)発行の朝日新聞、讀賣新聞社(東京本社)発行の讀賣新聞、及び産業経済新聞社(東京本社)発行の産経新聞の各全国版社会面に、二段抜き左右二〇センチメートルのスペースをもって、見出しに二〇級ゴシック、本文に一六級明朝体、被控訴人ら氏名及び宛名に一六級明朝体の写真植字を使用して、別紙謝罪広告目録二記載の広告を各一回掲載せよ。
訴訟費用は、第一審、第二審とも被控訴人らの負担とする。
2 当審における新請求の趣旨 被控訴人【G】は、別紙第三物件目録記載の各作品を制作してはならない。
被控訴人【G】は、別紙第四物件目録記載の本を回収し、廃棄せよ。
被控訴人【G】は、控訴人【A】に対し、金五〇〇万円及びこれに対する平成一一年一一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
被控訴人【G】は、朝日新聞社(東京本社)発行の朝日新聞、讀賣新聞社(東京本社)発行の讀賣新聞、及び産業経済新聞社(東京本社)発行の各全国版社会面に、二段抜き左右二〇センチメートルのスペースをもって、見出し二〇級ゴシック、本文一六級明朝体を使用して、別紙謝罪広告目録三記載の広告を各一回掲載せよ。
訴訟費用は被控訴人【G】の負担とする。
3 附帯控訴の趣旨に対する答弁 本件附帯控訴を棄却する。
訴訟費用は、第一審、第二審とも被控訴人らの負担とする。
二 被控訴人ら 1 控訴の趣旨に対する答弁 本件控訴を棄却する。
訴訟費用は、第一審、第二審とも控訴人らの負担とする。
2 当審における新請求の趣旨に対する答弁 当審における新請求を棄却する。
訴訟費用は控訴人【A】の負担とする。
3 附帯控訴の趣旨 原判決中、被控訴人ら敗訴部分を取り消す。
控訴人らは、被控訴人スコットに対し、連帯して金六五八万円及びこれに対する平成七年一一月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
控訴人らは、被控訴人【G】に対し、連帯して金六五八万円及びこれに対する平成七年一一月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
控訴人らは、被控訴人スコット及び同【G】のために、別紙謝罪広告目録一記載の謝罪広告を、見出し及び記名宛名は各一四ポイント活字をもって、本文その他の部分は八ポイント活字をもって、朝日新聞社発行の朝日新聞、産業経済新聞社発行の産経新聞、及び讀賣新聞社発行の讀賣新聞の各全国版朝刊社会面、中日新聞社発行の東京新聞の朝刊社会面、並びに統一日報社発行の統一日報のそれぞれに連続して三回掲載せよ。
訴訟費用は、第一審、第二審とも被控訴人らの負担とする。
仮執行宣言
事案の概要
当事者双方の主張は、次のとおり付加するほか、原判決の「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。
一 当審における控訴人らの主張の要点 1 著作権(著作者人格権を含む。以下同じ)侵害について 原判決は、別紙第一物件目録記載の舞台装置(以下「本件舞台装置」という。)に組み込まれた別紙第二物件目録記載の各作品(以下「【G】作品」と総称し、右目録の番号で個別に特定する。)と別紙第一著作物目録記載の衝立状造形美術作品二五点(以下「本件第一著作物」と総称し、右目録の番号で個別に特定する。)の類似性を認めつつ、【G】作品が本件第一著作物に依拠して制作されたことを否定し、控訴人の依拠性についての主張に対し、「同年に開催された「アジアアートロード展」については、開催期間が約一か月であり、必ずしも短期間であるとはいえないが、開催場所である韓国文化院ギャラリーは、【G】の経歴、活動内容からしてあまり接点があるとはいえないこと等の事実に照らすならば、【G】が右個展等を知らず、また赴いたこともなかったとする前記供述に、不合理ないし不自然な点はないので、右供述は採用でき、他にこれを覆すに足りる証拠はない。」(原判決五五頁四行〜一〇行)と判示した。
しかし、原判決は、三次元的立体造形物において、被控訴人【G】が【G】作品の制作前に作った甲第二〇号証の写真の右端の物件をも加えると特徴を異にする特徴別に七点もの多数の著作物について、しかも、それぞれ複数の特徴点において、それぞれの特徴が一致するものが、余り時をおかずに偶然にできたという、経験則上、依拠して制作したとしか考えようのない事実があるにもかかわらず、控訴人が主張、立証した、被控訴人【G】が本件第一著作物に容易に接することのできる機会が多数存在したとの事実の評価を誤り、これを不当に軽視した結果、依拠性の判断を誤ったものであり、取消しを免れない。
2 名誉毀損について (一) 被控訴人らが本件第一著作物を盗作したことに対して、被控訴人スコット(具体的には、その代表者である【E】)及び同【H】において、責任逃れに終始し、何らの誠意ある対応をしなかったため、控訴人らは、このままでは被控訴人らの責任がうやむやになってしまうことを憂慮し、このような事態について学術的問題を提起することによって、控訴人【A】の芸術家としての名誉を擁護するとともに被控訴人らに対し文化活動に携わるものとしての自覚を喚起すべく、新聞人に広報し記者会見を開くとともに、一方で、法的手続について弁護士に依頼し裁判所の判断を仰ぐべく本訴提起に至ったのであり、控訴人らのこれらの行為は、何ら責められるべきものではない。しかも、【G】作品は、本件第一著作物と同一と評してよいほどに類似しており、かつ、誰であっても、複数の作品が偶然に同じ物になるなどとは想像すらしないのが当然であるから、控訴人らに過失がないことは明らというべきである。
(二) 控訴人らは、一人の作家が盗作を行った事実について記者会見を行い、その際、問題となっている双方の作品の写真を記者に提供して、記者らの検証を可能ならしめたのであり、記者らは、これらの写真により、盗作の疑いを確認して記事とすることが可能であり、事実、確認のうえ記事としているのであるから、
右記者会見と記事の内容との間には、参加記者の判断が介在しており、直接的な因果関係はないというべきである。
(三) 原判決は、「他人の創作活動が著作権侵害行為に当たる旨を記者会見等において公表するに際しては、当該作品を制作した者などから事実を確認するなどして、真実著作権を侵害する行為があったか否かを十分に調査し、他人の名誉を損なわないようにすべき注意義務があるというべきである」(原判決六六頁二行〜五行)としている。確かに、一般論としてはそのとおりかもしれない。しかし、このことは、本件のような作家の著作権侵害の事案においては、そのままには当てはまらないというべきである。なぜなら、客観的に認定可能な事実と異なり、作家がどのようにその作品を生みだしたかという過程は、ごく私的な世界だからである。
言い換えれば、「当該作品を制作した者などから事実を確認するなどして、真実著作権を侵害する行為があったか否かを十分に調査」することは事実上不可能なのである。著作権を侵害して作品を作成した作家が、著作権者に侵害行為を指摘された場合に、その侵害行為を認めて謝罪することはまず考えられず、かえって、自分がその作品を作成することの必然的な経緯を創作し、オリジナルな作品であることを主張する可能性が高いことは明らかであり、また、この場合、そのような主張をされたからといって、「真実著作権を侵害する行為」がなかったことにならないことも当然である。【G】作品が本件第一著作物とよく似ていることは、原判決も認めているとおりであり、このような事実がある以上、「当該作品を制作した者などから事実を確認するなどして、真実著作権を侵害する行為があったか否かを十分に調査」する義務は緩やかに解されるべきである。本件では、控訴人らは、被控訴人【G】が、本件舞台装置は自分のオリジナル作品だ、と主張していること、すなわち、被控訴人【G】からの事実確認などの調査は無意味であることを確認しているのであるから、控訴人らに、これ以上の調査義務を課すことは現実的ではなく、酷というものである。したがって、控訴人らには不法行為責任は成立しない。
二 当審における被控訴人らの主張の要点 1 著作権侵害について (一) 控訴人らは、原判決が【G】作品と本件第一著作物の類似性については認めているとしている。しかし、原判決が「類似」という言葉を避けて「共通」という言葉を使用していることからも明らかなとおり、原判決は、決して、【G】作品と本件第一著作物について著作権侵害の要件のひとつである類似性を認めたものではなく、控訴人らが原審において主張した類似性から依拠が推認されるとの主張を検討する前提として、両作品間の限定的な共通性を摘示したものにすぎず、あえていえば、著作権侵害の要件としての類似性はかえって否定しているとみるべきである。正確には、原判決は、著作権侵害の成立要件のうち、依拠の不存在を認定して著作権侵害の成立を否定したものであるから、著作権侵害のその余の要件である類似性については判示していないとみるのが相当である。
(二) 控訴人らの主張を前提としても、被控訴人【G】にとって、本件第一著作物に接することのできる機会は極めて限られており、わけても、本件第一著作物の大部分をなす(一)、(四)及び(五)に接することのできる機会は、平成三年一一月二七日から一二月二一日までの「アジアアートロード展」しかない。控訴人らが主張していることは、右展覧会に【G】が行ったことの間接事実にすらなっておらず、「アジアアートロード展」は東京圏であまた開催されている展覧会のひとつにすぎないうえに、被控訴人【G】の活動歴とは接点がないものであることには目をつぶって、何ら証拠を示すことなく、芸術家なら「アジアアートロード展」を見に行ったはずだという以上のものではない。被控訴人【G】自身が陳述しているとおり、被控訴人【G】は右展覧会に行ったことはなく、それを覆すような証拠も一切存しないことは、原判決が認定しているとおりである。
2 名誉毀損について (一) 控訴人らが本件記者会見を開催して【G】及びスコットに対して損害を与えたことについて、控訴人らに多大な過失があることは、被控訴人らが原審において主張し、原判決が認定しているとおりである。
被控訴人スコットの事務局長である【I】及び被控訴人【G】の方では、再三にわたり、被控訴人【G】からの事情説明などを含めた話し合いの機会を設けようとしていたにもかかわらず、控訴人【A】が話し合いを拒否したものであり、そのような事情がありながら、被控訴人らが責任ある対応をしなかったなどと主張するのは、全くおこがましいことというべきである。控訴人【C】及び同【D】に至っては、本件演劇祭について控訴人【A】から話を聞いて記者会見を開くまでに、被控訴人らには何らの連絡も取ろうとしておらず、そもそも被控訴人らの対応を云々できる立場にすらないのである。
控訴人らが著作権侵害の事実があるかどうかについて調査すべき義務を怠って軽率に本件記者会見を開催したことは、控訴人らにおける重度の過失によるものであって、これにつき被控訴人らには何らの落ち度も存しない。
(二) 一般に、記事の材料を提供する者が、当該事項が事実に反し虚偽であることを知らなかったとしても、知らなかったことに過失があり、自己の情報提供によりその内容に従った記事が掲載される蓋然性が高いことを予測し、これを容認しながら、あえて情報提供をし、かつ右記事が掲載、頒布されれば、記事の内容から当然にある者の名誉が段損されるに至ることを認識できるような場合には、情報提供行為と記事掲載との間には直接的な因果関係があるというべきであるから、提供者は不法行為責任を負うものである(福岡地裁平成五年九月一六日判決・判例タイムズ八四〇号一四七頁、東京地裁昭和五九年六月二四日判決・判例時報一一二〇号九頁参照)。
控訴人らは、新聞記者らに対して、被控訴人スコット及び同【G】が剽窃を行った旨の記者会見の案内を送付し、自ら開催した記者会見において、被控訴人スコット及び同【G】が著作権侵害を行ったとの発表を行ったのであるから、当然のことながら、こうした情報提供によりその内容に従った記事が新聞に掲載される蓋然性が高いことを予測し、これを容認していたものである。しかも、控訴人らの記者発表に従った記事が掲載、頒布されれば、記事の内容から当然に被控訴人スコット及び同【G】の名誉が段損されるに至ることは明らかであり、控訴人らにおいてこれを認識していたことは疑いを容れないのであって、それゆえにこそ、控訴人らの記者発表と新聞記事との間には直接的な因果関係があり、控訴人らはこれにつき不法行為責任を負うのである。
しかも、控訴人らは、新聞記者らから求められて情報を提供したというのではなく、それまで新聞記者らが全く関心を持っていなかった事項について、敢えて、自ら多数の新聞記者らに案内を送付して記者会見を開催したうえ、情報を提供したものであり、控訴人らの記事掲載の蓋然性の認識及び記事掲載に対する積極性は極めて顕著であって、控訴人らの記者発表と新聞記事による名誉及び声望の毀損との間の直接的な因果関係に何ら欠けるところはない。
3 附帯控訴について (一) 損害賠償額について 原判決は、被控訴人スコット及び同【G】の名誉及び声望の毀損による損害賠償額の算定を不当に低額に算定したものであり、右損害を償う額としては、
少なくとも、被控訴人スコットについて五〇〇万円、被控訴人【G】について五〇〇万円とするのが相当である。
控訴人らによる名誉、声望の毀損は、これまでの著作権関連事件における名誉、声望を侵害された多くの事件にない特質を有している。すなわち、控訴人らは、被控訴人【G】の言い分を聴かず、軽率に、多くの新聞記者等を集めて、虚偽の事実を流布したのである。
控訴人【A】は、まず、【G】作品が本件第一著作物に係る同人の著作権を侵害していないことを知らなかったことに過失があり、また、被控訴人スコットが責任逃れのために被控訴人【G】との話し合いを勧めたと誤解したことに過失があり、さらに、被控訴人スコット及び同【G】が、通常考え得る最も真摯な対応を取っていたにもかかわらず、被控訴人【G】との話し合いを拒否して記者会見を開催したことに常軌を逸した重大な過失が存在するものである。控訴人【C】、同【D】には、控訴人【A】から聞いた話の真実性につき、調査・検証を一切しないままに、軽率に、【G】作品が本件第一著作物に係る同人の著作権を侵害していると判断したことに過失がある。
(二) 控訴人らは、【G】作品が控訴人【A】の作品を盗作したとの主張を公表するだけの目的で、記者会見を行い、これに基づき、主要な新聞の多くが控訴人らの発表を記事として取り上げた。控訴人【C】は、評論家としてテレビ等に出演して意見を公表することを業とするもので、社会的責任ある地位にあり、しかも、マスコミがその発言を重大に受けとめ得る人物であったものであり、控訴人【D】も、当時、大学の助教授であり、社会的責任ある地位にあったものであるから、これらの人物が記者会見に加わることによって、及ばされる影響はより大きなものとなった。被控訴人スコットは、世界的に有名な日本を代表する劇団であったのが、その舞台美術が著作権を侵害したと公表されたため、これまでにない極めて重大な影響を受け、その名誉、声望が回復できない状況に置かれることとなった。
また、被控訴人【G】も、美術界では「殺人」を犯したと同等の評価をされることになり、美術家としての生命にかかわる、「盗作」だとする虚偽の事実を公表され、その名誉、声望が回復できない状況に置かれることとなった。
これらの事情を斟酌すると、被控訴人スコット及び同【G】の被った精神的損害の額は、それぞれ五〇〇万円とするのが相当である。
4 弁護士費用について 本件のような事案において、一律に認容額から割合的に弁護士費用額を考えることは実態に即しておらず、不法行為の被害者に対して実損害を賠償するという面からみて妥当ではない。
本件訴訟は、美術作品を対象とした事実上の争点を含み、原判決までに三年以上を要し、利賀村における作品の調査、事実上の検証手続等を要し、さらに、
控訴審における訴訟遂行に係る弁護士報酬も相当なものである。このような事件を全額で数十万円という低額の弁護士報酬で受任し得る訴訟代理人は、現実的にも観念的にも想定し得ない。ちなみに、本件における訴訟物の価額(四八七四万六五〇〇円)に弁護士報酬基準を当てはめると、着手金二一六万円、成功報酬四三二万円となり、本件訴訟に係る被控訴人代理人の受任契約の着手金、成功報酬は、被控訴人スコット及び同【G】のそれぞれにつき着手金一〇〇万円(消費税三万円)、成功報酬一〇〇万円(消費税五万円)であるから、右基準による額をはるかに下回るものである。
5 謝罪広告の必要性について 前述のとおり、控訴人らは、被控訴人スコット及び同【G】の名誉、声望を侵害したものであり、その責任は重大である。控訴人らは、記者会見において、
被控訴人スコットについて、「劇団スコットが盗作した」との虚偽の事実を摘示し、それに基づき、同旨の記事が全国紙に掲載され、その結果、世界的に著名な演出家である【E】が代表者を務める日本でも指折りの劇団である被控訴人スコットは、その声望、名誉を著しく傷つけられた。また、作家である被控訴人【G】は、
その作品が盗作であると新聞で公表されたことにより、その声望、名誉を著しく傷つけられ、いわば作家生命にかかわる状況に置かれた。
本件訴訟は、被控訴人ら及び控訴人らの芸術家生命にかかわる戦いであり、作家と劇団の名誉を守る戦いである。芸術家である控訴人【A】も、言論人である控訴人【C】及び同【D】も、これを承知のうえ、覚悟のうえ、記者発表をしたのであろう。被控訴人【G】と被控訴人スコットの声望、名誉を回復するためには、裁判の場で正邪を決するとともに、これを謝罪広告で表明することが必要不可欠である。
三 新請求に係る控訴人らの主張の要点 1 控訴人【A】は、平成三年一一月までに、控訴人【A】がシリーズとして発表している「復活を待つ群」の作品群の一つである別紙第二著作物目録記載の著作物(以下「本件第二著作物」という。)を創作し、この作品を同月二七日から一二月二一日まで東京韓国文化院ギャラリーで開催された「アジアアートロード展」に出品した。
2(一) 被控訴人【G】は、平成七年一月九日までに、本件第二著作物を複製して、別紙第三物件目録1記載の作品を制作し、平成七年一月九日から同年一月一四日まで櫟画廊で開催した個展において、自己の作品として発表した。
(二) 被控訴人【G】は、右個展の案内葉書用に、本件第二著作物を複製して、別紙第三物件目録2記載の作品を制作した。
(三) 被控訴人【G】は、平成八年ころ、本件第二著作物を複製して、別紙第三物件目録3記載の作品を制作し、櫟画廊で開催した個展において自己の作品として発表した。
(四) 被控訴人【G】は、平成一一年一月二五日、別紙第三物件目録2記載の作品を別紙第四物件目録記載の作品集に収録し、これを発行した。
3 本件第二著作物と、別紙第三物件目録記載の各作品とは、実質的に類似しており、別紙第三物件目録記載の各作品は、本件第二著作物の複製であるから、被控訴人【G】は、右各行為により、控訴人【A】の著作権(複製権)を侵害したものである。また、別紙第三物件目録記載の各作品には多少の改変が加えられているから、被控訴人【G】は、本件第二著作物の変形権を、さらに、著作者人格権としての公表権及び氏名表示権を侵害したものである。
4 被控訴人【G】の右各行為によって控訴人【A】の受けた精神的損害を金銭に換算した場合、金五〇〇万円を下ることはない。
5 よって、控訴人【A】は、被控訴人【G】に対し、著作権法112条1項に基づき別紙第三物件目録記載の各作品の制作の中止を、同条二項に基づき侵害行為の組成物である別紙第四物件目録記載の作品集の回収・廃棄を、同115条に基づき名誉回復の措置として謝罪広告を、民法710条に基づき慰謝料の支払を、それぞれ求める。
四 新請求に係る控訴人らの主張に対する被控訴人らの認否 1は知らない。2は認める。3は否認する。4、5は争う。
当裁判所の判断
当裁判所は、本件第一事件についての被控訴人スコット及び同【G】の請求は、控訴人【A】、同【C】及び同【D】が、それぞれ、控訴人スコット及び同【G】に対して、連帯して、慰藉料一〇〇万円と弁護士費用四〇万円の合計一四〇万円及びこれに対する平成七年一一月二一日(不法行為の日)から支払済みまでの民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払い、その主張の謝罪広告を一回するよう求める限度で理由があり、その余は理由がなく、本件第二事件についての控訴人【A】の請求は、当審における新請求も含め、いずれも理由がないと判断する。
その理由は、次のとおりである。
著作権侵害について 1 著作権法は、その21条で「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。」と規定し、その27条で「著作者は、その著作物を・・・若しくは変形し、・・・その他翻案する権利を専有する。」と規定して、著作者に「著作物」を「複製する権利」(複製権)や変形などの方法で「翻案する権利」(翻案権)を与えている。
著作権者にこれらの権利が与えられる「著作物」とは何かについて、著作権法2条1項1号が、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定していることからすれば、
著作権法によって保護されるのは、直接には、「表現したもの」(「表現されたもの」といっても同じである。)自体であり、思想又は感情自体に保護が及ぶことがあり得ないのはもちろん、思想又は感情を創作的に表現するに当たって採用された手法や表現を生み出す本(もと)になったアイデア(着想)も、それ自体としては保護の対象とはなり得ないものというべきである。
このような立場を採った場合、思想又は感情あるいはそれを表現する手法や表現を生み出す本になったアイデア自体に創作性がなくても、表現されたものに創作性があれば、著作権法上の保護を受け得ることの反面として、思想又は感情あるいはそれを表現する手法や表現を生み出す本になったアイデア創作性があって、その結果、外観上、表現されたものに創作性があるようにみえても、表現されたもの自体に、右アイデア等の創作性とは区別されるものとしての創作性がなければ、著作権法上の保護を受けることができないことになる。そうでなければ、表現されたものの保護の名の下に思想又は感情あるいはこれを表現する手法や表現を生み出す本になったアイデア自体を保護することにならざるを得ないからである。
右に述べたところを前提に、著作権法によって著作権者に専有権の与えられている複製あるいは翻案(以下、これらをまとめて「複製・翻案」という。)とはどういうものであるかを具体的にいうと、既存の著作物に依拠してこれと同一のものあるいは類似性のあるものを作製することであり、ここに類似性のあるものとは、「既存の著作物の、著作者の思想又は感情を創作的に表現したものとしての独自の創作性の認められる部分」についての表現が共通し、その結果として、当該作品から既存の著作物を直接感得できる程度に類似したものであるということになる(最高裁判所昭和五五年三月二八日第三小法廷判決・民集三四巻三号二四四頁参照)。
なお、ここで注意すべきことは、複製・翻案の判断基準の一つとしての類似性の要件として取り上げる「当該作品から既存の著作物を直接感得できる程度に」との要件(直接感得性)は、類似性を認めるために必要ではあり得ても、それがあれば類似性を認めるに十分なものというわけではないことである。すなわち、
ある作品に接した者が当該作品から既存の著作物を直接感得できるか否かは、表現されたもの同士を比較した場合の共通性以外の要素によっても大きく左右され得るものであり(例えば、表現された思想又は感情あるいはそれを表現する手法や表現を生み出す本になったアイデア自体が目新しいものであり、それを表現した者あるいはそれを採用した者が一人である状態が生まれると、表現されたものよりも、目新しい思想又は感情あるいは手法やアイデアの方が往々にして注目され易いから、
後に同じ思想又は感情を表現し、あるいは同じ手法やアイデアを採用した他の者の作品は、既存の作品を直接感得させ易くなるであろうし、逆に、表現された思想又は感情あるいはそれを表現する手法や表現を生み出す本になったアイデア自体がありふれたものであり、それを表現した者あるいはそれを採用した者が多数いる状態の下では、思想又は感情あるいはアイデアが注目されることはないから、後に同じ思想又は感情を表現し、あるいは同じ手法やアイデアを採用した他の者の作品が現われても、そのことだけから直ちに既存の作品を直接感得させることは少ないであろう。)、必ずしも常に、類似性の判断基準として有効に機能することにはならないからである。
著作権法による保護を、このようなものとして把握する場合、特許法、実用新案法が思想(技術的思想)までを保護する(特許法2条、実用新案法2条参照)のとは異なり、思想や感情あるいはそれを表現する手法や表現を生み出すアイデアが保護されることはなく、その結果、著作権法による保護の範囲が、見方によれば狭いものとなることがあることは事実であろう。しかしながら、それは、著作権法の趣旨から当然のことというべきである。すなわち、著作権法においては、手続的要件としても、特許法、実用新案法におけるような権利取得のための厳密な手続も権利範囲を公示する制度もなく、実体的な権利取得の要件についても、新規性、進歩性といったものは要求されておらず、さらには、第三者が異議を申し立てる手続も保障されておらず、表現されたものに創作性がありさえすれば、極めてと表現することの許されるほどに長い期間にわたって存続する権利を、容易に取得することができるのであり、しかもこの権利には、対世的効果が与えられるのであるから、不可避となる公益あるいは第三者の利益との調整の観点から、おのずと著作権の保護範囲は限定されたものとならざるを得ないからである。換言すれば、著作権という権利が右のようなものである以上、これによる保護は、それにふさわしいものに対してそれにふさわしい範囲においてのみ認められるべきことになるのである。それゆえにこそ、著作権法は、「表現したもの」のみを保護することにしたものと解すべきであり、前述のとおり、著作者の思想又は感情を創作的に表現したものと同一のものを作製すること、あるいは、これと類似性のあるもの、すなわち、
著作者の思想又は感情を創作的に表現したものとしての独自の創作性の認められる部分についての表現が共通し、その結果として、当該作品から既存の著作物を直接感得できる程度に類似したものを作製することのみが複製・翻案となり得るのである。
2 本件第一著作物について (一) 証拠(乙第一号証、乙第二八号証、乙第四七号証、乙第四九号証)によれば、本件第一著作物は、控訴人【A】が制作した「復活を待つ群」と題する一群の造形美術作品の中の一部(二五点)であること、控訴人【A】は、韓国に伝わる古代巨石墓のうちで、三枚以上の支石墓の上に天井石を乗せた構造物(ドルメン)を素材とし、天井石の外された個々の支石墓に、抑圧から解放され、復活を待つ死者を観念し、この個々の支石墓の形態を、衝立状の麻布貼りパネルの上に、金泥と藍染めの技法を用いて、主題である「復活を待つ死者」を象徴する円柱様の形状のもの(以下「円柱様の造形物」ということがある。)を描いたものであることが認められる。そして、控訴人らは、右のとおり、控訴人【A】が制作した「復活を待つ群」と題する一群の造形美術作品の中の一部である二五点のそれぞれに依拠し、類似したものが【G】作品に存在するので、同作品は右二五点につき控訴人【A】の有する著作権を侵害していると主張しているものである。
(二) 本件第一著作物の創作性の内容について検討する。
(1) パネル 別紙第一著作物目録(一)ないし(六)(枝番は省略する。以下同じ)別紙写真表示の造形美術作品によれば、本件第一著作物のパネルの形状は、頂部が扁平の縦長の四角形か、頂部が右上がりに扁平とされた縦長の四角形か、頂部が等辺の山形の縦長の五角形か、頂部が不等辺の山形の縦長の五角形の形状かのいずれかであることが認められる。
頂部が扁平の縦長の四角形は、極めてありふれた形状であること、また、右上がりに扁平とされた縦長の四角形、頂部が等辺の山形又は不等辺の山形とされた縦長の五角形の形状も、ありふれた形状であること、さらに、パネルを衝立状に配置するということに、格別の創作性が認められないことも、当裁判所に顕著である。したがって、本件第一著作物のパネルの形状は、著作者の思想又は感情を創作的に表現したものとして独自の創作性の認められるものとはいえないことが明らかである。
また、本件第一著作物は、いずれも、金色と濃い藍色(ここに濃い藍色は、実際には、黒色に近いものである。)で彩色されていることが認められる。
甲第一八号証によれば、我が国において広く知られている位牌の大半は、金色と黒色の配色であることが認められ、濃い藍色自体もありふれた色であることは当裁判所に顕著である。これらのことからすると、本件第一著作物のパネルの色彩の選択も配色も、著作者の思想又は感情を創作的に表現したものとして独自の創作性の認められるものとはいえないというべきである。
(2) 円柱様の造形物 ドルメンを素材として、支石墓を抽象化し、抑圧から解放され、復活を待つ死者を象徴するという発想自体は、著作者の思想又は感情そのものであるから、たといそこに創作性が認められるとしても、著作権法上の保護の対象とはなり得ない。
別紙第一著作物目録(一)ないし(六)別紙写真表示の造形美術作品によれば、本件第一著作物のパネルに描かれた円柱様の造形物は、円柱様の形状を基本的な形状とし、これの大きさ、高さ、幅、外形線、先端の形状、下端の形状等に種々の変化を与え、また、金色と黒色に近い濃い藍色による種々の配色、ときには幻想的な紋様の付与などによって、多様なバリエーション(変形、変種)の円柱様の形状とし、これによって控訴人【A】の思想又は感情を表現しているものと認められる。
証拠(甲第一三号証〜甲第一七号証)及び弁論の全趣旨によれば、我が国には、古来、全国的に、石や板を素材とした、おびただしい数の墓石、墓碑、
石碑、塔婆が存在し、これらの造形物の多くは、円柱様あるいは角柱様の形状を基本的な形状とし、大きさ、高さ、幅、外形線、先端の形状、下端の形状、表面形状(これらのものの多くには、表面に、文字、絵、模様などが示されている。)等に種々の変化を与えて、多様なバリエーション(変形、変種)を有する円柱様あるいは角柱様の形状のものであることが認められる。また、甲第一八号証によれば、位牌は、そのほとんどが、控訴人ら主張の後記「∩状先端を有する円柱様の形態」をしていることが認められる。さらに、人が大きな布を頭から被って立っている状態は、図案化すれば、円柱様の形状となることが明らかである(甲第一二号証参照)。
そうすると、本件第一著作物のパネルに描かれた円柱様の形状自体は、ありふれた形状であり、著作者の思想又は感情を創作的に表現したものとして格別の創作性の認められるものとはいえないことが明らかであり、また、これをパネルに描くことにも格別の創作性が認められないことも明らかである。要するに、
本件第一著作物においては、前記多様なバリエーションにこそ控訴人【A】の思想又は感情を表現したものとしての独自の創作性が表われているのであり、このようなバリエーションを捨象した円柱様の形状自体には、右創作性は現われていないといわざるを得ないのである。
(3) 本件第一著作物に共通する、頂部が偏平、等辺又は不等辺の山形とされた縦長の四角形あるいは五角形のパネルに、「内側に∩状先端を有する円柱様形態」の円柱様の造形物が描かれており、その彩色が濃い藍色と金色であるという点は、「表現された」本件第一著作物の表現手法あるいは表現を生み出す本になったアイデアであり、「表現された」本件第一著作物自体ではないことが明らかである。したがって、たといそこに創作性が認められるとしても、著作権法上の保護の対象とはなり得ないことは前述のとおりである。
(4) 以上によれば、本件第一著作物において著作権法上の保護の対象として考慮すべき創作性は、円柱様の形状における多様なバリエーション、これとパネル、色彩、紋様との具体的な組合せにあるものというべきである。そして、本件の作品のように、単純な形状、構図、色彩によって思想又は感情を表現しようとする場合には、具体的な形状、構図、色彩の差によって、表現全体のイメージ(心象)が大きく変わり得ることは、当裁判所に顕著な事実である。
(三) 控訴人らは、本件第一著作物の特徴であるとして、@内側に∩状先端を有する円柱様形態を配した独創的な構図、A藍染の地色に金泥で着彩した大胆な配色、Bプリミティブな紋様、C偏平、等辺又は不等辺山形の先端を持つ縦長の群立させた衝立状の全体的形状、という新鮮で洗練された特徴を備える造形美術作品であることを掲げている。しかし、前述したところに照らせば、「内側に∩状先端を有する円柱様形態」は、形状における多様なバリエーションに作者独自の創作性が認められる限りにおいて創作性が認められるにすぎないのであり、「藍染の地色に金泥で着彩」すること自体に創作性を認めることはできず、「プリミティブな紋様」は、具体的な紋様が独創的である限りにおいて創作性が認められるにすぎないのであり、「偏平、等辺又は不等辺山形の先端を持つ縦長」のパネル自体には創作性を認めることはできず、群立させた点については、そもそも、本件で、本件第一著作物の個別的な著作物性を主張しているのであるから、これを根拠にすることができないことは明らかである。
3 【G】作品と本件第一著作物との対比 控訴人らは、【G】作品一と本件第一著作物(一)1ないし3、【G】作品二、三と本件第一著作物(二)1ないし4、【G】作品四ないし一〇と本件第一著作物(三)1ないし13、【G】作品一一、一二と本件第一著作物(四)、【G】作品一三と本件第一著作物(五)、【G】作品一四と本件第一著作物(六)1ないし3とが、それぞれ類似する旨主張するので、その当否について検討する。
(一) 本件第一著作物(一)1ないし3と【G】作品一 (1) 本件第一著作物(一)1ないし3(別紙第一著作物目録(一)1ないし3) 本件第一著作物(一)1は、頂部が扁平とされた縦長の四角形で金色に彩色されたパネルの中央に、濃い藍色に彩色された縦長の円柱様の造形物が、宙に浮いた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部が略∩型で、下方に向かってわずかに幅広となった円柱形状であることが認められる。
本件第一著作物(一)2は、頂部が扁平とされた縦長の四角形で金色に彩色されたパネルの中央に、濃い藍色に彩色された縦長の円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部が∩型で、下方に向かってかなり幅広となった円柱形状であることが認められる。
本件第一著作物(一)3は、頂部が扁平とされた縦長の四角形で金色に彩色されたパネルの中央に、濃い藍色に彩色された縦長の円柱様の造形物が、宙に浮いた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部が右に傾いた∩型で、下方に向かってかなり幅広となった円柱形状であることが認められる。
本件第一著作物(一)1ないし3の右表現全体をみると、ありふれたものではないことが明らかであるから、このような表現全体について創作性を認めることができる。
(2) 【G】作品一(別紙第二物件目録一) 【G】作品一は、頂部が右上がりに扁平となった縦長の四角形で、金色と濃い藍色との斑に彩色されたパネルのほぼ全面に、濃い藍色に彩色された縦長の円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、縦長で中央部のやや膨らんだ円錐形に近い形状であることが認められる。
(3) 右(1)、(2)によれば、【G】作品一は、本件第一著作物(一)1ないし3の表現全体と、それぞれ対比して、パネルの形状、円柱様の造形物の形状、彩色において大きく相違しており、表現全体として別異のイメージ(心象)を与えるものであり、また、【G】作品一は、本件第一著作物(一)1及び3のように、円柱様の造形物が宙に浮いた状態ではない。これらの相違がある以上、【G】作品一を本件第一著作物(一)1ないし3と類似しているものとすることはできないというべきである。
(二) 本件第一著作物(二)1ないし4と【G】作品二、三 (1) 本件第一著作物(二)1ないし4(別紙第一著作物目録(二)1ないし4) 本件第一著作物(二)1ないし4は、頂部が扁平とされた縦長の四角形で濃い藍色に彩色されたパネルの中央よりやや左側又は中央に、縦長の円柱様の造形物が描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部が右に傾いた略∧型で、下方に向かって幅が変化しないか、あるいは、わずかに幅広となるかした円柱形状であり、円柱様の造形物の左側の辺には、上から下まで造形物の厚みを表わすかのような帯状の部分があり、円柱様の造形物の内側は金色に、帯状の部分は金色に濃い藍色の網掛けをしているように彩色されていることが認められる。
本件第一著作物(二)1ないし4の右表現全体をみると、ありふれたものではないことが明らかであるから、このような表現全体について創作性を認めることができ、特に、帯状の部分は、特異な印象を与えるものであるから、表現されたものとしての創作性がみられるということができる。
(2) 【G】作品二、三(別紙第二物件目録二、三) 【G】作品二は、頂部が右上がりに扁平となった縦長の四角形で、濃い藍色に彩色されたパネルのほぼ全面に、金色に変化を持たせて彩色された縦長の円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、縦長で中央部のやや膨らんだ円錐形に近い形状であることが認められる。
(3) 右(1)、(2)によれば、【G】作品二、三は、本件第一著作物(二)1ないし4の表現全体と、それぞれ対比して、いずれも、パネルの形状、円柱様の造形物の形状、彩色において相違しており、表現全体として別異のイメージ(心象)を与えるものであり、また、【G】作品二、三は、本件第一著作物(二)1ないし4のような帯状の部分を有していない。これらの相違がある以上、【G】作品二、三を本件第一著作物(二)1ないし4と類似しているものとすることはできないというべきである。
(三) 本件第一著作物(三)1ないし13と【G】作品四ないし一〇 (1) 本件第一著作物(三)1ないし13(別紙第一著作物目録(三)1ないし13) 本件第一著作物(三)1は、頂部が不等辺の山形とされた縦長の五角形で、濃い藍色に彩色されたパネルの中央に、縦長の円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部が∩型で、
下方に向かってかなり幅広となった円柱形状であり、上方の約三分の一及び下方の約三分の一が金色の地に薄く藍色を塗ったように彩色され、中間は金色に彩色されていることが認められる。
本件第一著作物(三)2、9は、頂部が不等辺あるいは等辺の山形とされた縦長の五角形で、濃い藍色に彩色されたパネルの中央に、ずんぐりした円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部が右に傾いた略∧型で、下方に向かってかなり幅広となった円柱形状であり、円柱様の左側の辺には、上から下まで造形物の厚みを表わすかのような帯状の部分があり、円柱様の造形物の内側は金色に、帯状の部分は金色に濃い藍色の網掛けをしているように彩色されていることが認められる。
本件第一著作物(三)3、8は、頂部が不等辺あるいは等辺の山形とされた縦長の五角形で、濃い藍色に彩色されたパネルの右寄りに、縦長の円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部が略∩型で、下方に向かってやや幅広となった円柱形状であり、円柱様の左側の辺には、上から下まで造形物の厚みを表わすかのような帯状の部分があり、
円柱様の造形物の内側は金色に、帯状の部分は金色に濃い藍色の網掛けをしているように彩色されていることが認められる。
本件第一著作物(三)4、5は、頂部が不等辺の山形とされた縦長の五角形で、濃い藍色に彩色されたパネルのほぼ中央に、ずんぐりした円柱様の造形物が、宙に浮いた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部が右に傾いた略∩型で、下方に向かってかなり幅広となった円柱形状であり、円柱様の左側の辺には、上から下まで造形物の厚みを表わすかのような帯状の部分があり、円柱様の造形物の内側は金色に、帯状の部分は金色に濃い藍色の網掛けをしているように彩色されていることが認められる。
本件第一著作物(三)6は、頂部が等辺の山形とされた縦長の五角形で、濃い藍色に彩色されたパネルの中央に、縦長の円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部が右に傾いた略∧型で、下方に向かってかなり幅広となった円柱形状であり、金色に彩色されていることが認められる。
本件第一著作物(三)7は、頂部が等辺の山形とされた縦長の五角形で、濃い藍色に彩色されたパネルのほぼ中央に、縦長の円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部が右に傾いた略∧型で、下方に向かってわずかに幅広となった円柱形状であり、筋を伴って金色に彩色されていることが認められる。
本件第一著作物(三)10は、頂部が等辺の山形とされた縦長の五角形で、濃い藍色に彩色されたパネルの右寄りに、縦長の円柱様の造形物が、宙に浮いた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部が略∩型で、下方に向かってやや幅広となった円柱形状であり、円柱様の左側の辺には、上から下まで造形物の厚みを表わすかのような帯状の部分があり、円柱様の造形物の内側は金色に、帯状の部分は金色に濃い藍色の網掛けをしているように彩色されていることが認められる。
本件第一著作物(三)11は、頂部が等辺の山形とされた縦長の五角形で、濃い藍色に彩色されたパネルの中央に、ずんぐりした円柱様の造形物が、宙に浮いた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部がやや右に傾いた略∩型で、下方に向かってやや幅広となった円柱形状であり、円柱様の左側の辺には、上から下まで造形物の厚みを表わすかのような帯状の部分があり、
円柱様の造形物の内側は金色に、帯状の部分は金色に濃い藍色の網掛けをしているように彩色されていることが認められる。
本件第一著作物(三)12、13は、頂部が等辺の山形とされた縦長の五角形で、濃い藍色に彩色されたパネルの中央に、縦長の円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部が略∩型あるいはやや右に傾いた略∩状で、下方に向かってわずかに幅広となった円柱形状であり、円柱様の左側の辺には、上から下まで造形物の厚みを表わすかのような帯状の部分があり、円柱様の造形物の内側は金色に、帯状の部分は金色に濃い藍色の網掛けをしているように彩色されていることが認められる。
本件第一著作物(三)1ないし13のそれぞれ表現全体をみると、ありふれたものではないことが明らかであるから、このような表現全体について創作性を認めることができ、特に、帯状の部分は、特異な印象を与えるものであるから、ここにも表現されたものとしての創作性がみられるということができる。
(2) 【G】作品四ないし一〇(別紙第二物件目録四ないし一〇) 【G】作品四は、頂部が等辺の山形となった縦長の五角形で、やや藍色の混じった金色に彩色されたパネルの全面に、金色に彩色された縦長の円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、縦長で、長楕円を縦割りにしたような形状であることが認められる。
【G】作品五は、頂部が等辺の山形となった縦長の五角形で、藍色に彩色されたパネルのほぼ全面に、濃い藍色に彩色された縦長の円柱様の造形物が、
据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、縦長で中央部のやや膨らんだ円錐形に近い形状であることが認められる。
【G】作品六は、頂部が不等辺の山形となった縦長の五角形で、金色と濃い藍色との斑に彩色されたパネルのほぼ全面に、金色に彩色された縦長の円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、縦長で中央部の外形線に左右非対称の凹凸のある円錐形に近い形状であることが認められる。
【G】作品七は、頂部が不等辺の山形となった縦長の五角形で、藍色に彩色されたパネルの全面に、縦長の円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、縦長で、長楕円を縦割りにしたような形状であり、金色の地色をわずかに残して藍色に彩色されていることが認められる。
【G】作品八は、頂部が等辺の山形とされた縦長の五角形で、濃い藍色に彩色されたパネルの中央に、縦長の円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部が右にやや傾いた略∧状で、下方に向かってかなり幅広となった円柱形状であり、藍色の地色を所々に残して金色に彩色されていることが認められる。
【G】作品九は、頂部が等辺の山形となった縦長の五角形で、濃い藍色に彩色されたパネルのほぼ全面に、金色に彩色された縦長の円柱様の造形物が、
据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、縦長で中央部の外形線に左右非対称の凹凸のある円錐形に近い形状であることが認められる。
【G】作品一〇は、頂部が不等辺の山形となった縦長の五角形で、濃い藍色に彩色されたパネルのほぼ全面に、縦長の円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部が略∩状で、
下方に向かってかなり幅広となった円柱形状であり、上方が金色に、下方が金色と藍色との斑に彩色されていることが認められる。
(3) 右(1)、(2)によれば、【G】作品四ないし一〇は、それぞれ、本件第一著作物(三)1ないし13の各々の表現全体と対比したときに、いずれも、円柱様の造形物の形状、その配置、ときにはパネルの形状、彩色において大きく相違しており、表現全体として別異のイメージ(心象)を与えるものであり、また、【G】作品四ないし一〇は、本件第一著作物(三)2ないし5、8ないし13のような帯状の部分を有しておらず、本件第一著作物(三)4、5のように円柱様の造形物が宙に浮いた構図ともなっていない。これらの相違がある以上、【G】作品四ないし一〇を本件第一著作物(三)1ないし13と類似しているものとすることはできないというべきである。
(四) 本件第一著作物(四)と【G】作品一一、一二 (1) 本件第一著作物(四)(別紙第一著作物目録(四)) 本件第一著作物(四)は、頂部が等辺の山形となった縦長の五角形で、
金色に彩色されたパネルの中央に、濃い藍色に彩色された縦長の円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、
頂部が略∩状で、下方に向かってわずかに幅広となった円柱形状であることが認められる。
本件第一著作物(四)の表現全体をみると、ありふれたものではないことが明らかであるから、このような表現全体について創作性を認めることができる。
(2) 【G】作品一一、一二(別紙第二物件目録一一、一二) 【G】作品一一は、頂部が不等辺の山形となった縦長の五角形で、金色に彩色されたパネルの全面に、濃い藍色に彩色された縦長の円柱様の造形物が、
据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、縦長の円錐形に近い形状であることが認められる。
【G】作品一二は、頂部が不等辺の山形となった縦長の五角形で、金色に彩色されたパネルのほぼ全面に、濃い藍色に彩色された縦長の円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、
縦長の円錐形で、中間付近がやや歪んであるという形状であることが認められる。
(3) 右(1)、(2)によれば、【G】作品一一、一二は、本件第一著作物(四)の表現全体と対比して、パネルの形状、円柱様の造形物の形状、その配置において大きく相違しており、表現全体として別異のイメージ(心象)を与えるものである。これらの相違がある以上、【G】作品一一、一二を本件第一著作物(四)と類似しているものとすることはできないというべきである。
(五) 本件第一著作物(五)と【G】作品一三 (1) 本件第一著作物(五)(別紙第一著作物目録(五)) 本件第一著作物(五)は、頂部が不等辺の山形となった縦長の五角形で、金色に彩色されたパネルの中央に、縦長の円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部がわずかに左に傾いた略∧状で、下方に向かってかなり幅広となった円柱形状であり、金色と濃い藍色の斑に彩色されていることが認められる。
本件第一著作物(五)の表現全体をみると、ありふれたものではないことが明らかであるから、このような表現全体について創作性を認めることができる。
(2) 【G】作品一三(別紙第二物件目録一三) 【G】作品一三は、頂部が等辺の山形となった縦長の五角形で、濃い藍色に彩色されたパネルのほぼ全面に、縦長の円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、縦長の円錐形に近い形状であり、金色がわずかに混じった濃い藍色に彩色されていることが認められる。
(3) 右(1)、(2)によれば、【G】作品一三は、本件第一著作物(五)の表現全体と対比して、パネル及び円柱様の造形物の彩色、パネルの形状、円柱様の造形物の面積がパネル全体の面積に占める割合において大きく相違しており、表現全体として別異のイメージ(心象)を与えるものである。これらの相違がある以上、
【G】作品一三を本件第一著作物(五)と類似しているものとすることはできないというべきである。
(六) 本件第一著作物(六)1ないし3と【G】作品一四 (1) 本件第一著作物(六)1ないし3(別紙第一著作物目録(六)1ないし3) 本件第一著作物(六)1は、頂部が等辺の山形となった縦長の五角形のパネルの右寄りに、金色に彩色され、ずんぐりした円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部が略∩状で、下方に向かってかなり幅広となった形状であり、パネルには、濃い藍色の地色の上に、浮遊する多数の幻想的な金色の模様(唐草模様)が描かれていることが認められる。
本件第一著作物(六)2は、頂部が不等辺の山形となった縦長の五角形で、金色に彩色されたパネルの中央に、ずんぐりした円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部が右側に傾いた略∧状で、下方に向かってかなり幅広となった形状であり、円柱様の造形物には、濃い藍色の地色の上に、浮遊する多数の幻想的な金色の模様(唐草模様)が描かれており、また、右パネルの背後には、ほぼ同形で濃い藍色に彩色されたパネルが、前方のパネルに少しずらして重ねて配置されていることが認められる。
本件第一著作物(六)3は、頂部が不等辺の山形となった縦長の五角形で、金色に彩色されたパネルの中央に、縦長の円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部が左側に傾いた略∩状で、下方に向かってかなり幅広となった形状であり、円柱様の造形物には、
濃い藍色の地色の上に、浮遊する多数の幻想的な金色の模様(唐草模様)が描かれており、また、右パネルの背後には、頂部の勾配を異にする縦長の五角形で濃い藍色に彩色されたパネルが重ねて配置されていることが認められる。
本件第一著作物(六)1ないし3のそれぞれの表現全体をみると、ありふれたものではないことが明らかであるから、このような表現全体について創作性を認めることができる。
(2) 【G】作品一四(別紙第二物件目録一四) 【G】作品一四は、頂部が等辺の山形となった縦長の五角形のパネルのほぼ全面に、縦長の円柱様の造形物が、据え置かれた状態で描かれているという構図であり、その円柱様の造形物は、頂部が丸く、下方に向かってかなり幅広となった円柱形状であり、濃い藍色の地色の上に、浮遊する大小多数の不定形の金色の紋様が描かれており、パネルは、上方が金色で、下方が金色と藍色の斑に彩色されていることが認められる。
(3) 右(1)、(2)によれば、【G】作品一四は、本件第一著作物(六)1ないし3の表現全体とそれぞれ対比して、円柱様の造形物の形状、その配置、彩色、紋様の形状のいくつかにおいて大きく相違しており、表現全体として別異のイメージ(心象)を与えるものである。これらの相違がある以上、【G】作品一四を本件第一著作物(六)1ないし3と類似しているものとすることはできないというべきである。
(七) その他、本件第一著作物及び【G】作品のその余の組合せで対比しても、【G】作品のうちのいずれにもせよ、本件第一著作物のうちのいずれかと類似しているものとすることはできない。
(八) 本件第一著作物と【G】作品とを対比した場合、一見、後者から前者が直接感得できるように感じられるのは事実である。しかし、これは、本件第一著作物における、頂部が偏平、等辺又は不等辺の山形とされた縦長の四角形あるいは五角形のパネルに、「内側に∩状先端を有する円柱様形態」の円柱様の造形物を描き、その彩色を濃い藍色と金色とするという表現手法あるいはアイデアについて、
【G】作品も共通しており、しかも、右表現手法あるいはアイデアが本件第一著作物において目新しいものであったことによるものと考えられる。しかし、たとい右表現手法あるいはアイデア創作性が認められるとしても、それ自体としては著作権法上の保護の対象となり得ないことは、前述のとおりである。
(九) 一般論としては、著作物の保護範囲を決する際に行われる類似性の判断に当たって、表現手法あるいはアイデアにおける創作性が何らかの影響を与える可能性があることは、当然に予想されるところである。しかし、本件において、この点を検討してみても、右表現手法あるいはアイデアにおける創作性が、前記(一)ないし(七)の類似性の判断を左右するような事情は、見出すことができない。
(一〇) 仮に、前記表現手法やアイデアについて、著作権法上の保護を与えるならば、以後極めて長い期間にわたって、著作権者以外の何人も、頂部が偏平、
等辺又は不等辺の山形とされた縦長の四角形あるいは五角形のパネルに、「内側に∩状先端を有する円柱様形態」の円柱様の造形物を描き、その彩色を濃い藍色と金色とするという表現手法やアイデアと同一あるいはこれと類似の表現手法やアイデアを含む創作活動を行うことができないこととなる。これが著作権という権利としてふさわしい範囲の保護といえないことは自明であり、著作権法1条にいう文化的所産の公正な利用に反し、文化の発展に寄与することを目指す著作権法の目的にも反するものというべきである。
4 依拠性について 右認定のとおり、【G】作品は、表現手法あるいはアイデアにおいて本件第一著作物と共通している部分があり、そのために、原審以来、右共通点の生じたいきさつをめぐって、依拠性が激しく争われてきたものである。しかし、前述のとおり、表現手法あるいはアイデアは著作権法上の保護の対象となり得ず、両者の「表現したもの」を対比すると、いずれも類似しているとはいえないのであるから、依拠の点は論ずるまでもなく、本件第一著作物を複製・翻案したものとはいえないことが明らかである。
二 名誉毀損について 1 証拠(各項目ごとに括弧内に摘示する。)によれば、次の事実が認められる。
(一) 平成七年一一月三日から二一日までの間、東京で、第二回BeSeTo演劇祭が開催され、被控訴人スコットは、その参加作品として、同被控訴人の制作で、被控訴人【H】作・演出に係る舞台演劇「赤穂浪士」(以下「本件演劇」という。)を、同月一〇日から一二日までの間、新宿区<以下略>のパナソニック・グローブ座において上演した。その際、【G】作品を組み込んだ本件舞台装置が使用された。
(甲第一号証、甲第三一号証、乙第一号証、乙第三三号証) (二) 控訴人【A】は、本件演劇の初日である平成七年一一月一〇日、右演劇を見た際、本件舞台装置に組み込んだ【G】作品を見て、本件第一著作物を含む控訴人【A】の作品と酷似していると考え、演劇終演後、被控訴人スコットの事務局長である【I】及び被控訴人【H】に面会を求め、同人らに対して、本件舞台装置に組み込んだ【G】作品が控訴人【A】の作品と似ており、自分の作品が本件舞台装置に使用されている旨抗議し、これに対して、【I】は、確認してみる旨伝えた。
(甲第三一号証、乙第四三号証、原審における第一事件被告、第二事件原告【A】尋問の結果) (三) 【I】は、翌一一日、被控訴人【G】に電話連絡をして、【A】からの抗議の内容を伝えたのに対し、被控訴人【G】は、控訴人【A】という者は知らないし、【G】作品が控訴人【A】の作品を盗作したものでもない旨返答した。その際に、【I】と被控訴人【G】は、相談のうえ、被控訴人【G】と控訴人【A】とが話し合う場を設けることにし、【I】が、これを設定することになった。
(甲第三一号証、原審における第一事件原告、第二事件被告【G】尋問の結果) (四) 控訴人【A】は、一一月一〇日、前記演劇を見た後、【I】の了承を得て、舞台装置の写真を撮影した。控訴人【A】は、同日、旧知の控訴人【C】に、翌一一日、同じく旧知の控訴人【D】に電話をかけて、被控訴人スコットと同【G】が控訴人【A】の作品を盗作していると告げ、控訴人【C】、同【D】は、
控訴人【A】を支援することにした。控訴人【A】及び同【C】は、一三日、仁平弁護士事務所に赴き、法的手段を講ずることを依頼した。両名は、被控訴人スコットの態度が不誠実であるとし、同人及び控訴人【G】を糾弾すべく記者会見を行うことに決し、控訴人【D】とも連絡を取って、承諾を得、三名で、記者会見を催すことにした。
(甲第三一号証、乙第四三号証、乙第五一号証、乙第五二号証、原審における第一事件被告【D】尋問の結果) (五) 【I】は、同日から一三日にかけて、被控訴人【G】と控訴人【A】とが話し合う場を設けるべく、控訴人【A】と電話やファックスで連絡を取った。
【I】が一三日に控訴人【A】に電話連絡をした際、控訴人【A】が、一方的に、
被控訴人スコットと同【G】が控訴人【A】の作品を盗作しているという態度であったので、【I】は、被控訴人【G】は、自分のオリジナルの作品で盗作していないといっていると告げ、スコットとは関係ない問題なので作家同士で話し合ってもらいたいといった。控訴人【A】は、被控訴人スコットと同【G】が控訴人【A】の作品を盗作していると考えていたため、被控訴人スコットを抜きにして、被控訴人【G】と盗作かどうかという問題で話し合う意思はなかったので、それならば会う必要がない旨を伝え、電話を切った。
(甲第三一号証、原審における第一事件被告、第二事件原告【A】尋問の結果) (六) 控訴人【C】及び同【D】は、控訴人【A】から示された本件第一著作物の写っている写真と、【G】作品の写っている写真を見て、これらの比較だけで、類似しており、著作権侵害に当たると考え、それ以上の検討はしなかった。控訴人らは、一七日、新宿の喫茶店で、記者会見についての打ち合わせをし、控訴人【C】が記者会見の文案を作成した。控訴人【A】は、控訴人【C】、同【D】と打ち合わせたとおり、控訴人【C】が作成した文案に従って、一八日、控訴人【A】、同【C】、同【D】連名で、「劇団SCOTによる舞台美術剽窃事件に関する記者会見のお知らせ」と題する記者会見の案内をワープロで清書し、これを五大全国紙を含む新聞社、通信社、雑誌社合計一〇数社宛てにファックス送信した。
右文書には、「BeSeTo演劇祭において、作品の剽窃が発覚いたしました」、
「この演劇を見た【A】本人が気づき、終演後、演劇祭事務局と同劇団に抗議と釈明要求を申し入れました。しかし、同祭事務局と劇団はいまだ、誠意ある回答をしていません。」、「法的手続きは既に準備しております」等と記載されていた。
(甲第一号証、乙第五一号証、乙第五二号証、原審における第一事件被告【D】、同【C】尋問の結果) (七) 控訴人らは、二一日三時から、財団法人国際文化会館において、記者会見を開催し、控訴人【D】の司会で、控訴人【C】及び同【A】が記者への発表及び応答を行い、記者に対し、本件第一著作物の写っている写真及び【G】作品の写っている写真を記者に提供し、【G】作品は控訴人【A】の作品を盗作したものであるとし、被控訴人スコット代表者の【E】、被控訴人【G】らに責任があること、謝罪広告や損害賠償を求める意図があることなどを告げた。翌二二日、朝日新聞は、「私の作品と酷似」との見出しで、産経新聞は、「酷似!?」、「韓国の美術家が「剽窃」と抗議」との見出しで、讀賣新聞は、「「舞台装置、盗作だ」」、
「「赤穂浪士」(劇団SCOT)に抗議」との見出しで、東京新聞は、「「舞台装置は盗作」韓国人美術家抗議」との見出しで、統一日報は、「舞台装置は盗用?」「造形美術家【A】さん日本の劇団に抗議」との見出しで、それぞれ、記者会見において控訴人らが発表した内容を要約した記事を掲載し、合わせて、被控訴人【G】又は被控訴人スコットの若干の反論ないし言い分をも併記して掲載した。
(甲第二号証ないし甲第六号証、甲第二二号証) 2 右認定のとおり、控訴人らは、記者会見の席を設けて、【G】作品は控訴人【A】の作品を盗作したものであり、被控訴人らに責任があるなどの事実を告知し、これが、朝日新聞、産経新聞、讀賣新聞、東京新聞、統一日報によって、全国に広く報道されるところとなった。また、その結果、被控訴人【G】及び同スコットが控訴人【A】の作品を「盗作」をしたのではないかとの疑いの目、好奇の目にさらされることになったことは容易に推測し得るところであり、被控訴人らの名誉、声望が著しく毀損されたことは明らかというべきである。
本件第一著作物と【G】作品とは、一見しても、いわゆるデッドコピーでないことは明白であり、直ちに著作権法上の「複製」や「翻案」に該当することにはならないのであるから、著作権法上の「複製」や「翻案」に該当するかどうか慎重に検討する必要があるのであり、控訴人らが、敢えて、被控訴人らが著作権を侵害していると公に発表しようというのであれば、十分な裏付けを基に慎重のうえにも慎重になすべきことであったというべきである。
ところが、控訴人らは、本件第一著作物を含む控訴人【A】制作の「復活を待つ群れ」と題する一群の造形美術作品と本件舞台装置との比較で、基本的な構図、色彩等が共通しているところにのみ着目して、短絡的に、【G】作品が本件第一著作物を複製・翻案したものに当たると即断し、右共通性が真に著作権法にいう「複製」や「翻案」に当たるかどうかについての検討を一切せず、被控訴人【G】から、作者同士で話し合おうとの提案がされていたにもかかわらず、これを拒否し、一方的に、被控訴人らを糾弾すべく記者会見を催したのであるから、これが、
不法行為の要件としての違法性のある行為を故意によって行った場合に該当することは明らかである。
右のとおり、控訴人らの行為は、不法行為を構成するものであるから、控訴人らは、右行為によって被控訴人スコット及び同【G】に生じた損害を賠償する義務がある。
3 控訴人らは、被控訴人スコットや被控訴人【H】らが責任逃れに終始し何らの誠意ある対応をなさなかったため、控訴人らは、このままでは被控訴人らの責任がうやむやになってしまうことを憂慮し、このような事態について学術的問題を提起することによって、【A】の芸術家としての名誉を擁護するとともに被控訴人らに対し文化活動に携わるものとしての自覚を喚起すべく、新聞人に広報し記者会見を開くとともに、一方、法的手続について弁護士に依頼し裁判所の判断を仰ぐべく本訴提起に至ったのであり、控訴人らのこれらの行為は、何ら責められるべきものではない旨主張する。
しかしながら、被控訴人スコットや被控訴人【H】らが責任逃れに終始し何らの誠意ある対応をなさなかったとはいえないことは、前記認定のとおりであり、また、控訴人らが、記者会見の前に、「BeSeTo演劇祭において、作品の剽窃が発覚いたしました」、「この演劇を見た【A】本人が気づき、終演後、演劇祭事務局と同劇団に抗議と釈明要求を申し入れました。しかし、同祭事務局と劇団はいまだ、誠意ある回答をしていません。」、「法的手続きは既に準備しております」等と記載された文書をファックスで送信すること、記者会見において、控訴人らが、【G】作品は控訴人【A】の作品を盗作したものであるとし、被控訴人スコット、同【G】らに責任があるとし、謝罪広告や損害賠償を求める意図があるなどと発表することが、学術的問題の提起でないことは、それ自体で明らかである。
控訴人らの主張は、失当である。
4 また、控訴人らは、本件のような作家の著作権侵害の事案においては、
「当該作品を制作した者などから事実を確認するなどして、真実著作権を侵害する行為があったか否かを十分に調査」することは事実上不可能であるとし、著作権を侵害して作品を作成した作家が、自分がその作品を作成することの必然的な経緯を創作し、オリジナルな作品であることを主張したからといって、「真実著作権を侵害する行為」がなかったことにならないことは当然であるとし、【G】作品が本件第一著作物とよく似ていることは、原判決も認めているとおりであるから、このような事実がある以上、「当該作品を制作した者などから事実を確認するなどして、
真実著作権を侵害する行為があったか否かを十分に調査」する義務は緩やかに解されるべきである旨主張する。
しかしながら、控訴人らの主張によれば、結局、自己の作品と似ている作品については、相手方が何と弁解しようが、著作権を侵害するものとしてよく、この点について十分に調査、検討すべき義務はないということになる。当裁判所は、
このような結果となる見解を採用することができない。
5 さらに、控訴人らは、記者会見において、問題となっている作品について、双方の作品の写真を記者に提供して、記者らの検証を可能ならしめたうえで会見を行ったものであり、記者らは、これらの写真により、剽窃の疑いを確認して記事とすることが可能であり、事実、確認のうえ記事としているのだから、本件記者会見と記事の内容との間には、参加記者の判断が介在しており、直接的な因果関係はない旨主張する。
しかしながら、前記認定のとおり、朝日新聞、産経新聞、讀賣新聞、東京新聞、統一日報は、控訴人らが記者会見で発表したことを事実として報道したわけではなく、控訴人らが、記者会見の席で発表した事実を、被控訴人【G】又は被控訴人スコットの若干の反論ないし言い分も合わせて報道しただけである。そして、
このような報道によっても、全国に広く報道されることによって、被控訴人【G】及び同スコットが控訴人【A】の作品を「盗作」をしたのではないかとの疑いの目、好奇の目にさらされることになったため、被控訴人らの名誉、声望が著しく毀損されたのであるから、因果関係の有無を論ずる控訴人らの主張は、失当であることが明らかである。
三 附帯控訴について 1 損害額 被控訴人スコット及び同【G】が、【G】作品及びこれを組み込んだ本件舞台装置が、控訴人【A】の作品を「盗作」をしたのではないかとの疑いの目、好奇の目にさらされることになり、名誉、声望を著しく毀損されたことは、前記認定のとおりである。
証拠(甲第一一号証、甲第三一号証)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人スコットの代表者である【E】は、世界的にも高い評価を受けている演出家であり、同被控訴人の主宰する劇団スコットは、昭和四一年に創設されて以来、我が国のみならず海外でも数多く公演を行ってきた我が国でも屈指の現代劇団であること、被控訴人【G】は、昭和五七年以来、数多くの絵画作品を手がけて毎年のように個展を開き、平成二年からは、「マクベス」、「イワーノフ」などの演劇の衣装や舞台美術をも担当し、美術家として活動してきていたことが認められる。このような被控訴人スコット、同【G】の社会的地位に、前記認定のとおりの控訴人らの不法行為の態様、結果の重大さ、後述のとおり謝罪広告の請求が認容されること、
表現手法やアイデアが共通していたため著作権法上の複製・翻案に当たると誤解しやすい状況があったこと、その他諸般の事情を総合して、被控訴人らが、控訴人らの不法行為により被った精神的損害の金銭的評価は、【G】について一〇〇万円、
スコットについて一〇〇万円とするのが相当であると認める。
2 弁護士費用 本件事案の内容、請求額、認容された額、訴訟遂行の難易さなど一切の事情を総合して、右不法行為と相当因果関係のある弁護士費用に係る損害は、【G】及びスコットそれぞれにつき、四〇万円とするのが相当であると認める。
被控訴人らは、本件のような事案において、一律に認容額から割合的に弁護士費用額を考えることは実態に即しておらず、不法行為の被害者に対して実損害を賠償するという面からみて妥当ではない旨主張する。しかし、右主張は、民事訴訟費用の負担に関する現行制度(民事訴訟法155条2項、人事訴訟手続法3条2項ないし四項、民事訴訟費用等に関する法律2条11号、最高裁判所昭和四四年二月二七日第一小法廷判決民集二三巻二号四四一頁参照)と相容れないものであることが明らかであり、法解釈論としては採用できない。
3 謝罪広告 民法は、他人の名誉を毀損した者に対して、裁判所が被害者の請求により損害賠償に代え又は損害賠償とともに名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができると規定している(723条)。本件の場合、被控訴人スコットは、我が国でも屈指の劇団であり、被控訴人【G】も、美術家としての活動を続けてきていたものである。ところが、控訴人らは、前示のとおり、被控訴人らの名誉、声望を毀損することによって故意に被控訴人らの人格権を侵害したのである。また、本件紛争は、前記のとおり、多数の全国紙に取り上げられ、被控訴人らは、舞台装置に、
本件第一著作物を複製・翻案した【G】作品を使用したとの疑いをもたれたままの状態になっている。これらの点を考慮して、被控訴人らが本件第一著作物を盗作したものではないとの事実を確保し、その名誉を回復するための適当な措置として、
控訴人らが、被控訴人スコット及び同【G】のために、別紙謝罪広告目録一記載の謝罪広告を、見出し及び記名宛名は各一四ポイント活字をもって、本文その他の部分は八ポイント活字をもって、朝日新聞社発行の朝日新聞、産業経済新聞社発行の産経新聞、及び讀賣新聞社発行の讀賣新聞の各全国版朝刊社会面、中日新聞社発行の東京新聞の朝刊社会面、並びに統一日報社発行の統一日報にそれぞれ一回掲載することを認めるのが相当であると認める。
四 新請求について 本件第一著作物及び【G】作品を「表現されたもの」について対比すれば類似するものとはいえない、表現手法やアイデアは著作権法上の保護の対象となり得ない、とする前記認定判断を前提とするとき、控訴人らの新請求は、これを理由あらしめるに足りる主張も立証もないものといわざるを得ない。
五 以上によれば、本件第一事件についての被控訴人らの請求は、被控訴人スコット及び同【G】が、それぞれ、控訴人らに対して、慰謝料として、連帯して一〇〇万円と弁護士費用四〇万円の合計一四〇万円及びこれに対する平成七年一一月二一日(不法行為の日)から支払済みまでの民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払をするよう求め、あわせて、その主張の謝罪広告を一回するよう求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却すべきものであり、
本件第二事件についての控訴人【A】の請求は、当審における新請求も含め、いずれも理由がないから棄却すべきものであると判断する。そこで、これと異なる原判決を右のとおりに変更することとし、訴訟費用の負担について、民事訴訟法67条2項61条64条65条1項を、仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 宍戸充
裁判官 阿部正幸