• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

関連ワード 著作者 /  複製物 /  同一性 /  類似性 /  放送 /  録音 /  再生 /  著作者人格権 /  同一性保持権 /  保護期間 /  ライセンス /  登録 /  著作権侵害 /  差止 /  損害賠償 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙1PDFを見る pdf
事件 平成 10年 (ワ) 21141号 損害賠償等請求事件
原告 【A】
原告 デール・カーネギー・アン ド・アソシエイツ・インコーポレイテッド 右代表者社長兼最高業務執行役員 【B】
原告 サイモン・アンド・シュス ター・インク 右代表者副社長 【C】
原告 株式会社創元社 右代表者代表取締役 【D】
原告 パンポテンシア株式会社 右代表者代表取締役 【E】
原告ら訴訟代理人弁護士 森内憲隆
同 左高健一
同 小舘浩樹
同訴訟復代理人弁護士 大島葉子
被告 株式会社騎虎書房右代表者清算人 【F】
被告 株式会社エス・エス・アイ右代表者代表取締役 【F】
被告 【G】こと【F】
被告ら訴訟代理人弁護士 本橋 光一郎
同 小川昌宏
同 下田俊夫
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2000/09/29
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一1 被告株式会社騎虎書房及び被告【G】こと【F】は、別紙目録(一)記載の書籍の発行、印刷、製本、販売又は頒布をしてはならない。
2 被告株式会社騎虎書房及び被告【G】こと【F】は、別紙目録(一)記載の書籍を廃棄せよ。
二1 被告株式会社エス・エス・アイ及び被告【G】こと【F】は、別紙目録(二)記載のカセットテープセットの発行、製作、販売又は頒布をしてはならない。
2 被告株式会社エス・エス・アイ及び被告【G】こと【F】は、別紙目録(二)記載のカセットテープセットを廃棄せよ。
三 被告らは、その営業上の施設又は活動に、「SSI D・カーネギー・プログラムス」という表示を使用してはならない。
四1 被告株式会社騎虎書房及び被告【G】こと【F】は、原告【A】に対し、連帯して、金二五六万八三四五円及びこれに対する平成一〇年六月一日以降支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 被告株式会社エス・エス・アイ及び被告【G】こと【F】は、原告【A】に対し、連帯して、金三八八八万二三七四円及び別紙遅延損害金一覧表(一)記載の金員を支払え。
3 被告株式会社エス・エス・アイ及び被告【G】こと【F】は、原告デール・カーネギー・アンド・アソシエイツ・インコーポレイテッドに対し、連帯して、金二三四二万三六四二円及び別紙遅延損害金一覧表(二)記載の金員を支払え。
4 被告株式会社エス・エス・アイ及び被告【G】こと【F】は、原告パンポテンシア株式会社に対し、連帯して、金一億一四四七万九二三六円及び別紙遅延損害金一覧表(三)記載の金員を支払え。
五 原告らの被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。
六 訴訟費用については、原告【A】に生じた訴訟費用の五分の四及び被告らに生じた訴訟費用の二五分の四を原告【A】の負担とし、原告デール・カーネギー・アンド・アソシエイツ・インコーポレイテッドに生じた費用の一〇分の九及び被告らに生じた訴訟費用の五〇分の九を原告デール・カーネギー・アンド・アソシエイツ・インコーポレイテッドの負担とし、原告株式会社創元社に生じた訴訟費用の全部及び被告らに生じた訴訟費用の五分の一を原告株式会社創元社の負担とし、原告サイモン・アンド・シュスター・インクに生じた訴訟費用の全部及び被告らに生じた訴訟費用の五分の一を原告サイモン・アンド・シュスター・インクの負担とし、
原告パンポテンシア株式会社に生じた費用の二分の一及び被告らに生じた訴訟費用の一〇分の一を原告パンポテンシア株式会社の負担とし、その余については被告らの負担とする。
七 この判決は、第一項ないし第四項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
一 被告らは、別紙目録(一)記載の書籍の発行、印刷、製本、販売又は頒布をしてはならない。
二 被告らは、別紙目録(一)記載の書籍を廃棄せよ。
三 被告らは、別紙目録(二)記載のカセットテープセットの発行、製作、販売又は頒布をしてはならない。
四 被告らは、別紙目録(二)記載のカセットテープセットを廃棄せよ。
五 被告らは、その営業上の施設又は活動に、「SSI D・カーネギー・プログラムス」その他「デール・カーネギー」、「D・カーネギー」、「カーネギー」、「DALE CARNEGIE」、「Dale Carnegie」、
「D.CARNEGIE」、「D・Carnegie」、「CARNEGIE」、
「Carnegie」を含む表示を使用してはならない。
六1 被告らは、連帯して、原告【A】に対し、金三億九九二六万〇〇〇一円及び、うち金四六万四六七九円に対する平成八年一〇月一日から、うち金八一万九九三八円に対する平成八年一一月一日から、うち金三〇六万三二五七円に対する平成八年一二月一日から、うち金一三八万二〇八九円に対する平成九年一月一日から、
うち金二一九万二二九〇円に対する平成九年二月一日から、うち金五九八万〇七〇三円に対する平成九年三月一日から、うち金一〇六六万二一八一円に対する平成九年四月一日から、うち金九一二万一一三二円に対する平成九年五月一日から、うち金七四三万一七六七円に対する平成九年六月一日から、うち金四四七〇万九四五七円に対する平成九年七月一日から、うち金三八一八万〇九六五円に対する平成九年八月一日から、うち金二九七四万〇九七九円に対する平成九年九月一日から、うち金三六八九万一〇二六円に対する平成九年一〇月一日から、うち金一三二八万〇九七四円に対する平成九年一一月一日から、うち金四六〇九万〇三八三円に対する平成九年一二月一日から、うち金二一四七万二四五九円に対する平成一〇年一月一日から、うち金一〇三四万三六六七円に対する平成一〇年二月一日から、うち金一六四八万八九一二円に対する平成一〇年三月一日から、うち金一九五五万三八六五円に対する平成一〇年四月一日から、うち金一二九九万五〇六六円に対する平成一〇年五月一日から、うち金六八三九万四二一三円に対する平成一〇年六月一日から、
各支払済みまで、年五分の割合による金員を支払え。
2 被告らは、連帯して、原告デール・カーネギー・アンド・アソシエイツ・インコーポレイテッドに対し、金四億二四八三万四九七七円及び、うち金五〇万二八四一円に対する平成八年一〇月一日から、うち金八八万七二七六円に対する平成八年一一月一日から、うち金三三一万四八二九円に対する平成八年一二月一日から、うち金一四九万五五九四円に対する平成九年一月一日から、うち金二三七万二三三四円に対する平成九年二月一日から、うち金六四七万一八七二円に対する平成九年三月一日から、うち金一一五三万七八一九円に対する平成九年四月一日から、
うち金九八七万〇二一一円に対する平成九年五月一日から、うち金八〇四万二一〇五円に対する平成九年六月一日から、うち金四八三八万一二四八円に対する平成九年七月一日から、うち金四一三一万六六〇〇円に対する平成九年八月一日から、うち金三二一八万三四七四円に対する平成九年九月一日から、うち金三九九二万〇七二三円に対する平成九年一〇月一日から、うち金一四三七万一六八二円に対する平成九年一一月一日から、うち金四九八七万五五八四円に対する平成九年一二月一日から、うち金二三二三万五八九七円に対する平成一〇年一月一日から、うち金一一一九万三一四七円に対する平成一〇年二月一日から、うち金一七八四万三〇七四円に対する平成一〇年三月一日から、うち金二一一五万九七三八円に対する平成一〇年四月一日から、うち金一四〇六万二二九三円に対する平成一〇年五月一日から、
うち金六六七九万六六三六円に対する平成一〇年六月一日から、各支払済みまで、
年五分の割合による金員を支払え。
3 被告らは、連帯して、原告サイモン・アンド・シュスター・インクに対し、金二〇三〇万七三四三円及び、うち金一万五七一四円に対する平成八年一〇月一日から、うち金二万七七二七円に対する平成八年一一月一日から、うち金一〇万三五八八円に対する平成八年一二月一日から、うち金四万六七三七円に対する平成九年一月一日から、うち金七万四一三五円に対する平成九年二月一日から、うち金二〇万二二四六円に対する平成九年三月一日から、うち金三六万〇五五七円に対する平成九年四月一日から、うち金三〇万八四四四円に対する平成九年五月一日から、うち金二五万一三一六円に対する平成九年六月一日から、うち金一五一万一九一四円に対する平成九年七月一日から、うち金一二九万一一四四円に対する平成九年八月一日から、うち金一〇〇万五七三四円に対する平成九年九月一日から、うち金一二四万七五二三円に対する平成九年一〇月一日から、うち金四四万九一一五円に対する平成九年一一月一日から、うち金一五五万八六一二円に対する平成九年一二月一日から、うち金七二万六一二二円に対する平成一〇年一月一日から、うち金三四万九七八六円に対する平成一〇年二月一日から、うち金五五万七五九六円に対する平成一〇年三月一日から、うち金六六万一二四二円に対する平成一〇年四月一日から、うち金四三万九四四七円に対する平成一〇年五月一日から、うち金九一一万八六四五円に対する平成一〇年六月一日から、各支払済みまで、年五分の割合による金員を支払え。
4 被告らは、連帯して、原告株式会社創元社に対し、金三億四九二三万七九七二円及び、うち金四一万七五三七円に対する平成八年一〇月一日から、うち金七三万六七五六円に対する平成八年一一月一日から、うち金二七五万二四九二円に対する平成八年一二月一日から、うち金一二四万一八七七円に対する平成九年一月一日から、うち金一九六万九八八四円に対する平成九年二月一日から、うち金五三七万三九六五円に対する平成九年三月一日から、うち金九五八万〇五一〇円に対する平成九年四月一日から、うち金八一九万五八〇〇円に対する平成九年五月一日から、うち金六六七万七八一九円に対する平成九年六月一日から、うち金四〇一七万三七一五円に対する平成九年七月一日から、うち金三四三〇万七五三四円に対する平成九年八月一日から、うち金二六七二万三七七八円に対する平成九年九月一日から、うち金三三一四万八四五八円に対する平成九年一〇月一日から、うち金一一九三万三六二九円に対する平成九年一一月一日から、うち金四一四一万四五四七円に対する平成九年一二月一日から、うち金一九二九万四〇九三円に対する平成一〇年一月一日から、うち金九二九万四三〇九円に対する平成一〇年二月一日から、うち金一四八一万六一二四円に対する平成一〇年三月一日から、うち金一七五七万〇一三九円に対する平成一〇年四月一日から、うち金一一六七万六七二六円に対する平成一〇年五月一日から、うち金五一九三万八二七八円に対する平成一〇年六月一日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
5 被告らは、連帯して、原告パンポテンシア株式会社に対し、金三億三一三七万〇三三九円及び、うち金三九万五〇八九円に対する平成八年一〇月一日から、
うち金六九万七一四六円に対する平成八年一一月一日から、うち金二六〇万四五〇九円に対する平成八年一二月一日から、うち金一一七万五一一〇円に対する平成九年一月一日から、うち金一八六万三九七六円に対する平成九年二月一日から、うち金五〇八万五〇四二円に対する平成九年三月一日から、うち金九〇六万五四二九円に対する平成九年四月一日から、うち金七七五万五一六五円に対する平成九年五月一日から、うち金六三一万八七九七円に対する平成九年六月一日から、うち金三八〇一万三八三八円に対する平成九年七月一日から、うち金三二四六万三〇四二円に対する平成九年八月一日から、うち金二五二八万七〇一六円に対する平成九年九月一日から、うち金三一三六万六二八三円に対する平成九年一〇月一日から、うち金一一二九万二〇三六円に対する平成九年一一月一日から、うち金三九一八万七九五八円に対する平成九年一二月一日から、うち金一八二五万六七七七円に対する平成一〇年一月一日から、うち金八七九万四六一五円に対する平成一〇年二月一日から、うち金一四〇一万九五五八円に対する平成一〇年三月一日から、うち金一六六二万五五〇八円に対する平成一〇年四月一日から、うち金一一〇四万八九四五円に対する平成一〇年五月一日から、うち金五〇〇五万四五〇〇円に対する平成一〇年六月一日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
七 被告らは、原告【A】に対して、別紙謝罪広告目録(一)の謝罪文を、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞及び日本経済新聞の各全国版に、標題部の写植を一三級の活字、その余の部分を一一級の活字でもって、各一回掲載せよ。
八 被告らは、原告デール・カーネギー・アンド・アソシエイツ・インコーポレイテッドに対して、別紙謝罪広告目録(二)の謝罪文を、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞及び日本経済新聞の各全国版に、標題部の写植を一三級の活字、その余の部分を一一級の活字でもって、各一回掲載せよ。
九 被告らは、原告らに対し、別紙謝罪広告目録(三)の謝罪文を、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞及び日本経済新聞の各全国版に、標題部の写植を一三級の活字、
その余の部分を一一級の活字でもって、各一回掲載せよ。
事案の概要
一 争いのない事実等 1 当事者等 (一) 【H】 (1) 【H】は、文筆家・講演家で、アメリカ合衆国国民であったが、一九五五年(昭和三〇年)に死亡した。
(2) 【H】は、一九三六年(昭和一一年)に、「How to Win Friends and Influence People」と題する書籍(以下「本件第一著作物」という。)を著作した(弁論の全趣旨)。
(3) 【H】は、一九三八年(昭和一三年)に、「How to Win Friends and Influence People」と題する講演原稿(以下「本件第二著作物」といい、その著作権を「本件著作権」という。)を著作した(弁論の全趣旨)。
(二) 原告【A】(以下「原告【A】」という。) 原告【A】は、【H】の子であるアメリカ合衆国国民であり、著作権を含む【H】の遺産を相続した。
(三) 原告デール・カーネギー・アンド・アソシエイツ・インコーポレイテッド(以下「原告アソシエイツ」という。)及び原告パンポテンシア株式会社(以下「原告パンポテンシア」という。) (1) 原告アソシエイツは、アメリカ合衆国(ニューヨーク州)法人であって、【H】の死去後、【H】が行っていた「デール・カーネギー・コース」等の教育事業を承継し、同事業を自ら実施するか又はライセンシーを通じて実施してきている(甲四二ないし四六、弁論の全趣旨)。
(2) 原告パンポテンシアは、原告アソシエイツから日本国内における独占的ライセンスを受け、一九九四年(平成六年)以降、日本国内において、「デール・カーネギー・トレーニング」の名称により、「デール・カーネギー・コース」等の教育事業(以下、「本件教育事業」という。)を実施している(甲一、弁論の全趣旨)。
(四) 原告サイモン・アンド・シュスター・インク(以下「原告サイモン」という。)及び原告株式会社創元社(以下「原告創元社」という。) (1) 原告サイモンは、アメリカ合衆国(ニューヨーク州)法人であり、本件第一著作物について、原告【A】から許諾を受け、出版を行っている(弁論の全趣旨)。
(2) 原告創元社は、原告サイモンから本件第一著作物の日本語訳版の独占的出版許諾を受け、「人を動かす(How to Win Friends and Influence People)」(B六版、三一二頁)(以下、「本件第一著作物・日本語訳版」という。)及びその朗読カセットテープセット(カセットテープ八巻等により構成されるもの。以下、「本件第一著作物・日本語訳版朗読カセットテープセット」という。)を発行し販売している(検甲三、五、弁論の全趣旨)。
(五) 被告ら (1) 被告株式会社騎虎書房(以下「被告騎虎書房」という。)は、被告【G】こと【F】(以下「被告【F】」という。)が本件第二著作物を日本語に翻訳した別紙目録(一)記載の書籍(以下「本件書籍」という。)を、平成八年五月以降、定価一二六二円(消費税別)で発行販売している。
(2) 被告株式会社エス・エス・アイ(以下「被告エス・エス・アイ」という。)は、本件第二著作物を日本語訳した別紙目録(二)記載のカセットテープセット(以下、「本件カセットテープセット」という。)を、平成八年後半から、本件カセットテープセット単体として、又は「D・カーネギー ハイエンド・プログラム(D.Carnegie's High-End Program)」(本件カセットテープセットと「D・カーネギー パワー パースエイション・プログラム(D. Carnegie's Power Persuasion Program)」とを組み合わせた商品)の一部として、発行販売している。
(3) 被告騎虎書房及び被告エス・エス・アイは、いずれも被告【F】が代表者を務めている。
2 原告アソシエイツの商標権について 原告アソシエイツは、日本国内において別紙商標権目録記載の商標権(以下、これらを「本件商標権」といい、これらの登録商標を「本件商標」という。別紙商標権目録記載(一)の登録商標を「本件商標(一)」、同目録記載(二)の登録商標を「本件商標(二)」という。)を有している(甲二の一、二、甲三の一、二)。
二 本件は、原告らが、被告らに対し、著作権、著作者人格権、商標権、不正競争防止法に基づいて、本件書籍及び本件カセットテープセットの発行等の差止め、
廃棄を求めるとともに、これらの侵害を理由として、損害賠償及び謝罪広告を求める事案である(各請求の詳細は、後記第四の四(原告らの主張)2参照)。
本件の争点
一 著作権及び著作者人格権に基づく請求 1 本件著作権の日本における保護期間 2 被告らによる本件著作権及び著作者人格権(同一性保持権)侵害行為の有無 二 商標権に基づく請求 被告らによる本件商標権侵害行為の有無 三 不正競争防止法に基づく請求 被告らによる原告らに対する不正競争防止法2条1項1号、二号違反行為の有無 四 原告らの被った損害等
争点に関する当事者の主張
一 争点一について (原告【A】の主張) 1 本件著作権の日本における保護期間 (一) 一九三八年(昭和一三年)から一九五二年(昭和二七年)四月二八日まで 一九〇五年一一月一〇日に締結された「日米間著作権保護ニ関スル条約」(以下、「日米著作権条約」という。)が旧著作権法(明治三十二年法律第三十九号)28条の「条約」に該当し、同条約1条により、本件著作権は、日本国民が旧著作権法下で享受するのと全く同様の保護を受けており、保護期間著作者の死後三〇年であった。しかし、同条約2条により、翻訳については、自由翻訳制度が採られていた。
日米著作権条約は、一九五二年四月二八日に日本国との平和条約(以下、「平和条約」という。)が発効したことにより、効力を失った。
(二) 一九五二年(昭和二七年)四月二八日から一九五六年(昭和三一年)四月二七日まで 平和条約並びにそれに基づいて一九五三年一一月一〇日に結ばれた「平和条約第12条に基く著作権に関する内国民待遇の相互許与に関する日米交換公文」及びその「附属書簡」(以下、右日米交換公文及びその附属書簡を「日米暫定協定」という。)が旧著作権法28条の「条約」に該当し、本件著作権は、翻訳権も含めて、日本国民が旧著作権法下で享受するのと全く同様の保護を受けていた。
平和条約に基づいて制定された旧著作権法の特別法である「連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律」(以下、「連合国特例法」という。)4条に基づき、保護期間著作者の死後三〇年プラス三七九四日まで延長された。
日米暫定協定は、一九五六年四月二七日に効力を失い、同月二八日から万国著作権条約が日本について効力を生じたのに伴い、同条約が日本とアメリカ合衆国との関係を規律することになった。
(三) 一九五六年(昭和三一年)四月二八日から一九七〇年(昭和四五年)一二月三一日まで 万国著作権条約及び平和条約が旧著作権法28条の「条約」に該当し、
万国著作権条約に基づき制定された旧著作権法の特別法である「万国著作権の実施に伴う著作権法の特例に関する法律」(以下、「万国条約特例法」という。)11条により、本件著作権は、翻訳権も含めて、日本国民が旧著作権法下で享受するのと全く同様の保護を受けていた。
この時期、保護期間は、旧著作権法の数次にわたる改正で、著作者の死後三八年プラス三七九四日まで延長されることとなった。
(四) 一九七一年(昭和四六年)一月一日以降 一九七一年(昭和四六年)一月一日に現行著作権法が施行となった後は、万国著作権条約及び平和条約が現行著作権法6条3号の「条約」に該当し、万国条約特例法11条により、本件著作権は、翻訳権も含めて、日本国民が現行著作権法下で享受するのと全く同様の保護を受けている。
著作権法の改正によって保護期間が延長されたため、保護期間著作者死後五〇年プラス三七九四日となった。
(五) 以上からすると、本件第二著作物は、日本国内で現在も著作権保護期間内にある。
なお、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(以下、「ベルヌ条約」という。)は、著作権者にとってより有利な国内立法がされることを許容しているから、本件第二著作物を日本国内で保護することがベルヌ条約に違反することはない。
(六) 旧著作権法7条1項における一〇年の起算点は、「発行ノトキヨリ」と規定されているところ、右「発行」は、現行著作権法の「発行」と同義であるから、本件第二著作物は、発行されていない。したがって、旧著作権法7条1項の適用はない。
2 被告らによる本件著作権及び著作者人格権侵害行為 (一) 本件著作権侵害行為について 本件書籍及び本件カセットテープセットは、本件第二著作物を翻訳したものであるから、被告らによる本件書籍及び本件カセットテープセット発行行為は、本件著作権を侵害する行為である。
被告らは、本件書籍及び本件カセットテープセットを頒布の目的をもって所持しているが、このような所持行為は、著作権侵害行為であるとみなされる行為である。
(二) 著作者人格権侵害行為について (1) 本件書籍の第一六〇頁においては、第四行目以下に、【H】自身が読者に直接話しかける形で「このようなノウハウを皆さんにお伝えして本当にうれしいのは、全国のさまざまな人々から『成功ノウハウ』を家庭や職場で利用して成果をあげている、という手紙をいただくことです。このような私の紹介するノウハウを使って、こんないいことがあったということがありましたら、その経験を、手紙でお寄せ下さい[日本での宛先・・・〒△△△-△△ 東京都新宿区<以下略> SSI D・カーネギー・プログラムス係]。」との記載がある。さらに、第一六〇頁と第一六一頁との間には、「SSI D・カーネギー・プログラムス」宛のアンケート返信用はがきが挟まれており、同はがきには、「アンケートにお答えいただいた方には、もれなく、特製の成功手帳とデール・カーネギーのオーディオ・プログラムに関する豪華資料をお送りいたします。」との記載がある。
右の記載は、本件第二著作物中には存在しなかったから、右の記載を付け加えることは、【H】が存命であるとしたならば、その同一性保持権の侵害となるべき行為であり、著作権法60条に違反する。
また、本件書籍の巻末に被告エス・エス・アイのために本件カセットテープセット等の広告を掲載することも、同様の趣旨により同一性保持権の侵害となるべき行為であり、同法60条に違反する。
(2) 本件カセットテープセットは、本件第二著作物と比較して、章構成が全く異なったものとされている。また、本件カセットテープセット中のEXトランプは、本件第二著作物の内容を抜粋したものであるが、これも【H】が全く想定していなかった態様での本件第二著作物の改変である。
したがって、本件カセットテープセットについても、【H】が存命であるとしたならば、その同一性保持権の侵害となるべき行為があり、著作権法60条に違反する。
(3) 被告エス・エス・アイは、購入者との間で法的紛争が絶えない会社であり、被告らにとって本件書籍は、不当に高額な本件カセットテープセットを読者に購入させるための広告としての役割があるにすぎない。したがって、本件書籍発行行為及び本件カセットテープセット発行行為は、いずれも【H】の名誉又は声望を害する方法により本件第二著作物を利用する行為であるから、【H】が存命であるとしたならば、その著作者人格権の侵害となるべき行為であり、著作権法60条に違反する。
(4) 被告らが、右のように著作者人格権を侵害する行為によって作成された本件書籍及び本件カセットテープセットについて、頒布の目的をもって所持している行為は、著作者人格権の侵害行為であるとみなされる行為である。
(被告らの主張) 1 本件著作権侵害の点について (一) 本件著作権は、アメリカ合衆国においては、公表又は登録後二八年を経過した一九六六年(昭和四一年)に、保護期間満了により消滅した。
ベルヌ条約7条(8)は、著作物の保護期間は、本国において定められる保護期間を超えることはない旨規定しているから、本件著作権は、本国たるアメリカ合衆国において保護期間満了により消滅した以上、日本において保護されない。
万国著作権条約17条に関する附属宣言cは、同条約は、ベルヌ同盟国を本国とする著作権の保護については、ベルヌ同盟国間では適用されないと規定しているから、本件著作権には、万国著作権条約は適用されず、それに基づく万国条約特例法も適用されない。
また、著作権法6条3項は、「条約によりわが国が保護の義務を負う著作物」と規定しているのみで、「法律によりわが国が保護の義務を負う著作物」と規定していないから、万国条約特例法は、保護の義務を負う根拠とならない。
さらに、実質的に見ても、本国たるアメリカ合衆国において保護期間満了により消滅した著作権を日本において保護すべき理由はない。
(二) 本件第二著作物は、すべてラジオ番組の台本であり、その内容には、
【H】のコメントや他人のインタビューのほか、ドラマ仕立ての部分も含まれているから、これは日米著作権保護条約2条にいう「演劇脚本」に該当する。仮にそうでないとしても、同条の「其の他各種ノ文書」に該当する。また、本件第二著作物は、一九三八年(昭和一三年)にアメリカ合衆国におけるラジオ放送で公にされている。したがって、本件第二著作物は、右条約2条の要件を充たし、自由に翻訳することができたものである。
その後、日米暫定協定によって、平和条約発効時(昭和二七年四月二八日)に遡って翻訳権についても内国民待遇を与えることとなったが、右発効時には本件第二著作物の翻訳権は既に日本の旧著作権法で保護の対象になっていなかった。すなわち、旧著作権法7条1項における一〇年の起算点は、「発行ノトキヨリ」と規定されているところ、右「発行」とは、公にすることと同義である。本件第二著作物は、昭和一三年にラジオ放送で公にされているから、右条項に該当する。そして、本件第二著作物は、右ラジオ放送の翌年から一〇年内にその翻訳物の発行がされていないから、昭和二三年の経過によって、本件第二著作物の翻訳権は消滅した。したがって、本件第二著作物の翻訳権は日米暫定協定によっても保護されない。 よって、原告【A】が本件第二著作物について翻訳権を主張することはできない。 2 著作者人格権侵害について (一) 本件書籍と本件第二著作物との間に若干の異同があったとしても、それは、本件第二著作物の内容、趣旨を変更せず、本件第二著作物の思想、主張を広く伝える必要に応じてなされたものであって、同一性保持権を害したとはいえない。
(二) 前記のように本件著作権は、既にアメリカ合衆国において公有となっているところ、さらに著作者人格権侵害を肯定すると、実質的に著作権の保護期間を延長する結果となるから、著作者人格権侵害を肯定すべきではない。
二 争点二について (原告アソシエイツの主張) 1 本件書籍について (一) 被告らは本件商標の指定商品である印刷物である本件書籍中の綴じ込みはがき及び奥付に、「SSI D・カーネギー プログラムス」の標章を付している。
(二) 商標的使用について (1) 書店で本件書籍に関心を持ち手に取った需要者(購入者)が、その内容を確認するためにページをめくることは、ごく普通のことであるところ、綴じ込みはがきは他のページよりも固く厚い紙質でできており、かつ、ひとまわり小さいため、右はがきが綴じ込まれているページが真っ先に開き、その結果、右はがきは需要者の目に容易に触れる。また、右はがきにおいて「SSI D・カーネギー プログラムス」は、本件書籍の読者アンケートの宛先として記載されており、かつ、右はがき上の他の文字に比べて大きく、しかも太い文字で書かれている。したがって、綴じ込みはがきにおける「SSI D・カーネギー プログラムス」標章は、自他商品識別のため、すなわち「商標的に使用」されているということができる。
(2) 需要者は書籍を購入する際には、奥付の記載されたページを開いて当該書籍に関する情報を得るのが通常であるところ、奥付において「SSI D・カーネギー プログラムス」は、本件書籍の問合せ先として記載されており、しかも奥付が記載されたページの中で最も大きく、かつ、太い文字で記載されているから、右標章は、自他商品識別のため、すなわち「商標的に使用」されているということができる。
(三) 本件商標と被告ら標章との類似性について 本件商標と被告らが付している「SSI D・カーネギー プログラムス」標章とは、自他商品識別力のある要部である「D・カーネギー」の部分が、外観及び称呼において類似しているとともに、世界的に著名な文筆家・講演家である【H】という観念も共通にするものである。
(四) したがって、被告らが本件書籍に「SSI D・カーネギー プログラムス」の標章を付して印刷販売する行為は、本件商標権の侵害行為である。
2 本件カセットテープセットについて (一) 被告らは、「D・カーネギー ゴールデンルール・プログラム」、「D. Carnegie's Golden Rules Program」、「D・カーネギー ヒューマンモティベーション・システム」、「D. Carnegie's Human Motivation Systems」及び「SSI D・カーネギー プログラムス」等の標章を本件カセットテープセットに付して製作販売している。
(二) 本件商標と被告ら標章との類似性及び商品の類似性について 被告らが使用している各標章は、本件商標と類似するものであって、これらの各標章が付されている商品は、カセットテープ、その収録内容がそのまま記載されたマニュアル文書、その収録内容が抜粋記載されたEXトランプなるカード等をセットにした商品であるから、本件商標の指定商品である印刷物と類似するものである。
(三) 商標法26条1項2号該当性について 被告らが使用している各標章からは、世界的に著名な文筆家・講演家である「【H】」の観念を生じ、同部分は自他商品識別機能を有する。したがって、
被告らが使用している各標章は、本件カセットテープセットの内容を単に示すにすぎない「題号」としての使用ではないから、商標法26条1項2号の適用はない。
(四) よって、被告らが本件カセットテープセットに「SSI D・カーネギー プログラムス」の標章を付して製作販売する行為は、本件商標権の侵害行為である。
(被告らの主張) 1 本件書籍について (一) 商標的使用について 本件書籍において「SSI D・カーネギー プログラムス」は、綴じ込みはがきの送付先又は奥付上部に記載された問合せ先として表示されているにすぎない。このような表示は、自他商品を識別するためのものとはいえないから、
「商標の使用」には該当しない。
(二) 本件商標と被告ら標章との類似性について 本件書籍における「SSI D・カーネギープログラムス」と本件商標とは、「カーネギー」の部分が同一であるものの、その部分の前に「SSI D」が、後に「プログラムス」がそれぞれ付されているから、称呼及び外観が異なる。
また、本件書籍の表示からは、SSIのカーネギーに関する方式又は計画という観念を想起させるから、本件商標が、外国人の個人を想起させるのとは異なる。したがって、本件商標と本件書籍における「SSI D・カーネギー プログラムス」とは類似しない。
2 本件カセットテープについて (一) 本件商標と被告ら標章との類似性について 本件カセットテープセットに付された「D・カーネギー ゴールデンルール・プログラム」、「D. Carnegie's Golden Rules Program」、「D・カーネギー ヒューマンモティベーション・システム」、「D. Carnegie's Human Motivation Systems」及び「SSI D・カーネギー プログラムス」等の標章と本件商標とは、右1(二)と同様に、称呼、外観、観念において異なるから、類似しない。
(二) 商品の類似性について 本件カセットテープセットは、書籍等の印刷物とは、その生産部門において異なり、原材料及び品質も異なり、完成品と部品の関係もない。また、用途も、聴覚に訴えるものであり、再生装置を利用するから、書籍とは異なる。さらに、本件カセットテープセットは、書店で販売しているものではない。したがって、本件カセットテープセットは、印刷物とは類似しない。
(三) 商標法26条1項2号該当性について 本件商標のうち、「DALE CARNEGIE」については、「ただし、この商標が特定の著作物の表題(題号)として使用される場合を除く」として登録されている。これは、書籍の題号は直ちに当該書籍の特定の内容を示すので、商標法3条1項3号の品質表示に該当するからである。この点は、登録に当たって、特に但書のない「デール・カーネギー」についても同様である。したがって、仮に他人が単行本に「DALE CARNEGIE」又は「デール・カーネギー」の題号を使用して出版しても、本件商標の商標権の効力は及ばない(商標法26条1項2号)。この点は、カセットテープセットについても同様であるところ、本件カセットテープセットにおいて、右(一)の各標章は、題号として使用されているにすぎない。
三 争点三について (原告らの主張) 1 原告らの商品表示及び営業表示について (一) 原告創元社に係る商品表示 原告創元社は、その発行している本件第一著作物・日本語訳版(同朗読カセットテープセットを含む。)に、日本文題名「人を動かす」、英文題名「How to Win Friends and Inflnence People」、日本文著者名「【H】」、英文著者名「Dale Carnegie」という各商品表示を付している(以下、これらの表示を「本件商品表示」という。)。
(二) 原告パンポテンシアに係る営業表示 原告パンポテンシアは、本件教育事業に関して自社を表章するものとして、「デール・カーネギー・コース」、「デール・カーネギー・トレーニング」という営業表示を使用している(以下、これらの表示を「本件営業表示」という。)。
2 本件商品表示及び本件営業表示が商品等表示として周知性、著名性を有することについて (一) 本件第一著作物・日本語訳版は、一九五八年の初版発行以来、約四〇年の長きにわたり、日本国内で約三〇〇万部の売上げを誇るロングベストセラーであり、自己啓発関連の文学作品の中では極めて突出した存在であることからすれば、本件商品表示は、不正競争防止法2条1項1号、二号の商品等表示に当たり、
かつ、同号の規定する周知性、著名性を有するということができる。
(二) 文筆家、講演家である【H】が日本国内さらには全世界において著名であること、【H】は、自らの名称を使用して教育事業を行っていたところ、原告アソシエイツは、一九五五年(昭和三〇年)の【H】の死去後、コースの名称に【H】の氏名を含む「デール・カーネギー・コース」等の教育事業を承継し、同事業を自ら実施するか、又は世界七〇数か国(日本も含む。一九六二年(昭和三七年)以降。)のライセンシーを通じて実施してきており、一九一二年の開始以降、「デール・カーネギー・コース」等の修了者は世界中で四五〇万人を超えており、日本国内に限っても既に四万人の修了者がいること等に鑑みれば、本件営業表示は、不正競争防止法2条1項1号、二号の商品等表示に当たり、かつ、同号の規定する周知性、著名性を有するということができる。
3 被告らが使用している表示について 被告騎虎書房は、本件書籍について、「こうすれば人は動く」、「How to Win Friends and Influence People」、「【H】」、「Dale Carnegie」及び「SSI D・カーネギー プログラムス」という各商品表示を付し、本件カセットテープセットについて、「D・カーネギー ゴールデンルール・プログラム」、「D.Carnegie's Golden Rules Program」、「D・カーネギー ヒューマンモティベーション・システム」、「D.Carnegie's Human Motivation Systems」及び「SSI D・カーネギー プログラム」の各商品表示を付している。また、被告らは、その営業上の施設又は活動に、「SSI D・カーネギー プログラムス」の表示(以下、これを「被告営業表示」という。)を使用している。
4 本件商品表示及び本件営業表示と被告らが使用している右2の表示は、類似しており、被告らが右2の表示を使用することにより、被告らが「【H】」の承継者若しくはその正当なライセンシー、又は少なくともそれらと緊密な営業上の関係が存する団体であると需要者を誤信させるおそれがある。
そうすると、原告らは、営業上の利益を害されることになる。
5 したがって、被告らが、右2の表示を使用する行為は、原告らに対して、
不正競争行為となる。
(被告らの主張) 1 本件商品表示及び本件営業表示の商品等表示該当性について (一) 本件商品表示のうち「人を動かす」は、「人」も「動かす」も一般的な概念であり、誰もが通常使う表現である。したがって、このような表現に関して、不正競争防止法2条1項1号、二号の商品等表示に当たるとして、原告らに独占的な使用を認めるべきではない。
(二) 本件営業表示は、「【H】」という個人の氏名と普通名称とを組み合わせたものにすぎず、不正競争防止法2条1項1号、二号の商品等表示に当たるということはできない。
2 本件商品表示及び本件営業表示の周知性、著名性について 「【H】」という名称が、周知、著名であるということはできないし、ましてや、「人を動かす」や本件営業表示には、周知性、著名性はない。
3 原告らのうち、原告アソシエイツ及び原告パンポテンシアは、教育事業を営む者であり、書籍の出版等を行う被告らとは営業を異にするから営業上の利益を害されることはない。また、被告らが使用している「SSI D・カーネギープログラムス」という表示は、最初に「SSI」という部分があり、「SSI」が被告エス・エス・アイを示していることは容易に推認できるから、被告らの行為によって原告らの営業と混同を生じるおそれはない。 四 争点四について (原告らの主張) 1 本件書籍及び本件カセットテープセットの販売により被告らは、別紙販売額・利益額一覧表(1)及び同(2)の1ないし3記載のとおりの利益を得た。
2 原告【A】の請求 (一) 本件著作権及び著作者人格権侵害に基づく請求 (1) 損害賠償請求について @ 逸失利益 右1のとおり、被告らが本件書籍発行行為及び本件カセットテープセット発行行為により受けた利益は、それぞれ一六七二万三四〇九円及び三億二〇六二万九二四九円を下らないので、原告【A】は、右両行為により少なくとも三億三七三五万二六五八円の損害を受けたものと推定される。
A 慰謝料 著作権侵害行為について 五五〇万円 著作者人格権侵害行為について 五五〇万円 B 弁護士費用 著作権侵害行為について 三〇〇〇万円 著作者人格権侵害行為について 六〇万円 C 遅延損害金 遅延損害金に関しては、本件カセットテープセットの売上げに関する損害賠償請求については、売上げのあった月の翌月一日以降支払済みまで、本件書籍の売上げ、精神的苦痛及び弁護士費用相当額に関する損害賠償請求については、平成一〇年六月一日以降支払済みまで、民法所定の年五分の割合による金員である。
(2) 差止等請求について @ 差止請求 原告【A】は、本件第二著作物の著作権及び著作者人格権に基づき、被告らに対して、本件書籍の発行、印刷、製本、販売又は頒布の差止請求権及び本件カセットテープセットの発行、製作、販売又は頒布の差止請求権並びに本件書籍及び本件カセットテープセットの廃棄請求権を有する。
A 謝罪広告 【H】の著作者人格権の侵害により毀損された同人の名誉又は声望を回復するためには、被告らに別紙謝罪広告目録(一)記載に係る謝罪させ、これを広告する必要がある。
(二) 不正競争防止法違反に基づく請求 (1) 損害賠償請求について @ 逸失利益 右1のとおり、被告らが本件書籍発行行為及び本件カセットテープセット発行行為により受けた利益は合計で三億三七三五万二六五八円を下らない。
原告【A】は、本件第一著作物・日本語訳版(朗読カセットテープを含む。)について小売価格の三・五パーセントのロイヤリティを得ることができたから、本件商品表示に関して、右利益額の三・五パーセントに当たる一一八〇万七三四三円の損害を受けた。
A 信用毀損による無形損害 五五〇万円 B 弁護士費用 三〇〇万円 C 遅延損害金 遅延損害金に関しては、本件カセットテープセットの売上げに関する損害賠償請求については、売上げのあった月の翌月一日以降支払済みまで、本件書籍の売上げ、無形損害及び弁護士費用相当額に関する損害賠償請求については、
平成一〇年六月一日以降支払済みまで、民法所定の年五分の割合による金員である。
(2) 差止等請求について @ 差止請求 原告【A】は、不正競争防止法に基づいて、被告らに対して、本件書籍の発行、印刷、製本、販売又は頒布の差止請求権及び本件カセットテープセットの発行、製作、販売又は頒布の差止請求権、本件書籍及び本件カセットテープセットの廃棄請求権並びに被告営業表示の使用禁止請求権を有する。
A 謝罪広告 被告らの不正競争防止法違反行為により毀損された原告【A】の業務上の信用の回復のためには、被告らに別紙謝罪広告目録(三)記載に係る謝罪させ、これを広告する必要がある。
3 原告アソシエイツの請求 (一) 本件商標権侵害に基づく請求 (1) 損害賠償請求について @ 逸失利益 右1のとおり、被告らが本件書籍発行行為及び本件カセットテープセット発行行為により受けた利益はそれぞれ一六七二万三四〇九円及び三億二〇六二万九二四九円を下らないので、原告アソシエイツは、右各行為により少なくとも三億三七三五万二六五八円の損害を受けたものと推定される。
A 無形損害 原告アソシエイツは、被告らによる本件商標権侵害行為により、業務上の信用を害される損害を被った。これを補填するに足りる金員は、五五〇万円を下らない。
B 弁護士費用 三〇〇〇万円 C 遅延損害金 遅延損害金に関しては、本件カセットテープセットの売上げに関する損害賠償請求については、売上げのあった月の翌月一日以降支払済みまで、本件書籍の売上げ、無形損害及び弁護士費用相当額に関する損害賠償請求については、
平成一〇年六月一日以降支払済みまで、民法所定の年五分の割合による金員である。
(2) 差止等請求について @ 差止請求 原告アソシエイツは、本件商標権に基づき、被告らに対して、本件書籍の発行、印刷、製本、販売又は頒布の差止請求権及び本件カセットテープセットの発行、製作、販売又は頒布の差止請求権並びに本件書籍及び本件カセットテープセットの廃棄請求権を有する。
A 謝罪広告 被告らの本件商標権侵害行為により毀損された原告アソシエイツの業務上の信用の回復のためには、被告らに別紙謝罪広告目録(二)記載に係る謝罪させ、これを広告する必要がある。
(二) 不正競争防止法違反に基づく請求 (1) 損害賠償請求について @ 逸失利益 右1のとおり、被告らが本件書籍発行行為及び本件カセットテープセット発行行為により受けた利益は合計で三億三七三五万二六五八円を下らない。
原告アソシエイツは、原告パンポテンシアからその売上金額の一二パーセントをロイヤリティとして支払を受ける権利を有している。したがって、原告アソシエイツは、本件営業表示に関して、四〇四八万二三一九円(一二パーセント相当額)の損害を受けた。
A 信用毀損による無形損害 五五〇万円 B 弁護士費用 六〇〇万円 C 遅延損害金 遅延損害金に関しては、本件カセットテープセットの売上げに関する損害賠償請求については、売上げのあった月の翌月一日以降支払済みまで、本件書籍の売上げ、無形損害及び弁護士費用相当額に関する損害賠償請求については、
平成一〇年六月一日以降支払済みまで、民法所定の年五分の割合による金員である。
(2) 差止等請求について 差止請求と謝罪広告に関しては、前記2(二)(2)と同様である。 4 原告サイモンの請求(不正競争防止法違反に基づく請求) (一) 損害賠償請求について (1) 逸失利益 右1のとおり、被告らが本件書籍発行行為及び本件カセットテープセット発行行為により受けた利益は合計で三億三七三五万二六五八円を下らない。原告サイモンは、原告【A】に対し、原告創元社から受け取ったロイヤリティ(小売価格の七パーセント)の五〇パーセントをロイヤリティとして支払う義務を負っている。したがって、原告サイモンは、本件商品表示に関して、合計一一八〇万七三四三円(三・五パーセント相当額)の損害を受けた。
(2) 信用毀損による無形損害 五五〇万円 (3) 弁護士費用 三〇〇万円 (4) 遅延損害金 遅延損害金に関しては、本件カセットテープセットの売上げに関する損害賠償請求については、売上げのあった月の翌月一日以降支払済みまで、本件書籍の売上げ、無形損害及び弁護士費用相当額に関する損害賠償請求については、平成一〇年六月一日以降支払済みまで、民法所定の年五分の割合による金員である。
(二) 差止等請求について 差止請求と謝罪広告に関しては、前記2(二)(2)と同様である。
5 原告創元社の請求(不正競争防止法違反に基づく請求) (一) 損害賠償請求について (1) 逸失利益 右1のとおり、被告らが本件書籍発行行為及び本件カセットテープセット発行行為により受けた利益は合計で三億三七三五万二六五八円を下らない。原告創元社は、原告サイモンに対して、本件第一著作物・日本語訳版については小売価格の七パーセント、その朗読カセットテープセットについては小売価格の八パーセント(ただし、最初の五〇〇〇セットについては七パーセント)のロイヤリティを支払う義務を負っている。したがって、原告創元社は、本件商品表示に関して、
合計三億一三七三万七九七二円(九三パーセント相当額)の損害を受けた。
(2) 信用毀損による無形損害 五五〇万円 (3) 弁護士費用 三〇〇〇万円 (4) 遅延損害金 遅延損害金に関しては、本件カセットテープセットの売上げに関する損害賠償請求については、売上げのあった月の翌月一日以降支払済みまで、本件書籍の売上げ、無形損害及び弁護士費用相当額に関する損害賠償請求については、平成一〇年六月一日以降支払済みまで、民法所定の年五分の割合による金員である。
(二) 差止等請求について 差止請求と謝罪広告に関しては、前記2(二)(2)と同様である。 6 原告パンポテンシアの請求(不正競争防止法違反に基づく請求) (一) 損害賠償請求について (1) 逸失利益 右1のとおり、被告らが本件書籍発行行為及び本件カセットテープセット発行行為により受けた利益は合計で三億三七三五万二六五八円を下らない。原告パンポテンシアは、原告アソシエイツに対して、右売上金額の一二パーセントをロイヤリティとして支払う義務を負っている。したがって、原告パンポテンシアは、本件営業表示に関して、合計二億九六八七万〇三三九円(八八パーセント相当額)の損害を受けた。
(2) 信用毀損による無形損害 五五〇万円 (3) 弁護士費用 二九〇〇万円 (4) 遅延損害金 遅延損害金に関しては、本件カセットテープセットの売上げに関する損害賠償請求については、売上げのあった月の翌月一日以降支払済みまで、本件書籍の売上げ、無形損害及び弁護士費用相当額に関する損害賠償請求については、平成一〇年六月一日以降支払済みまで、民法所定の年五分の割合による金員である。
(二) 差止等請求について 差止請求と謝罪広告に関しては、前記2(二)(2)と同様である。
7 被告らによる共同不法行為等 被告騎虎書房及び被告エス・エス・アイは、いずれも被告【F】が代表者を務めると同時に、実質的に支配している。また、株主構成を見ても、被告騎虎書房は被告エス・エス・アイの一〇〇パーセント子会社であり、被告株式会社エス・エス・アイの発行済株式総数九万一二五〇株のうち約八六パーセントに当たる七万八四〇〇株を被告【F】が有している。したがって、本件書籍発行行為、本件カセットテープ発行行為及び被告営業表示行為は、いずれも被告【F】が立案し、これを行っているものであって、被告三者が共同の意思のもとに行っている共同不法行為である。
なお、被告エス・エス・アイは、本件被告ら訴訟代理人を通じて、「騎虎書房に対する原告の債権については判決等で認められた場合には、株式会社エス・エス・アイが騎虎書房の負担部分についても保証する意向である」と明言している。
(被告らの主張) 1 本件書籍の利益額について (一) 売上高について (1) 取次料について 原告らは、本件書籍の売上高を算出するに当たり、取次料を控除していないが、出版流通において取次店の存在は必要不可欠である。右取次料は、取次店の利益となるものであるから、被告騎虎書房の売上高算出に当たっては、右取次料を控除すべきである。
本件における取次料は、定価の三三パーセントである。
したがって、本件書籍の売上高は、二二九九万三六四〇円(本件書籍の定価一二六二円に販売冊数一万八二二〇を乗じたもの)に〇・六七を乗した一五四〇万五七三九円となる。
(2) 消費税分について 消費税分は、被告騎虎書房の利益となるものではないから、売上高算出に当たっては、消費税分を加算する必要はない。
(二) 売上原価について 本件書籍の売上原価(製造原価)としては、材料費(カバーデザイン費、印刷費)の他、労務費(編集費)、製造経費があり、これらも控除すべきである。
(1) 書籍の出版に当たって、労務費(編集費)、製造経費がかかることは出版界の常識であり、右費用は、必要不可欠のものである。
(2) 本件書籍のみの具体的な労務費(編集費)、製造経費を算出することは困難であるが、本件書籍販売期間における被告騎虎書房全体の労務費(編集費)、製造経費に売上高比率を乗じて算出すると、本件書籍の労務費(編集費)、
製造経費の合計は、一一八万六二六三円となる。
(3) したがって、本件書籍の売上原価は、未販売分も含めた材料費一一一一万三三八五円に右金額を加えた一二二九万九六四八円となる。
(三) 販売管理費について 本件書籍の販売に当たっては、広告費用、倉庫費用等の販売、管理に関する費用が必要である。このような費用に関しても、右売上原価算出と同様に、本件書籍販売期間における被告騎虎書房全体の販売管理費に売上比率を乗じて算出すると、六六八万七八七〇円となる。
(四) 販売利益(純利益) 右売上高から、右の売上原価及び販売管理費を控除すると、三五八万一七七九円の赤字となるから、被告騎虎書房には、本件書籍による利益はない。
2 本件カセットテープセットの利益額 (一) 売上高について (1) 本件速聴機について 本件カセットテープセットのうち、カセットテープとセットで売られている速聴機(四GXーMー〇〇R。以下「本件速聴機」という。)は、以下述べるとおり、カーネギープログラムスとは別個の価値を有するものである。
@ 本件速聴機は、通常のテープレコーダーと異なり、ノーマル再生から最高四倍速まで再生スピードを自由に調整でき、高速再生しても音のひずみやノイズがない音質を再生する性能を有する高性能の速聴専用のテープレコーダーである。
A 被告エス・エス・アイは、本件速聴機のみのパンフレットを作成し、雑誌等で本件速聴機の有用性を宣伝している。
B 本件速聴機は、カーネギープログラム専用に販売しているテープレコーダーではなく、右プログラム以外に関しても、本件速聴機を組み合せて販売している。
したがって、本件カセットテープセットの売上高を算出するに当たっては、速聴機の価格(一九九七年(平成九年)三月までは二三万八〇〇〇円(消費税込み)、同年四月からは二四万八〇〇〇円(消費税込み))を控除すべきである。
また、仮に、本件速聴機が本件カセットテープセットと別個独立のものとはいうことができないとしても、本件カセットテープセットの販売において速聴機が果たした役割は大きい。本件カセットテープセットの売上げの大部分は、被告らの営業努力、技術力、顧客吸引力などを結集して作成された速聴機人気の賜物であり、これらは被告ら自身の努力によって利益を上げたということができる。したがって、この寄与分を売上高から控除すべきである。
(2) 消費税分について 消費税分は、被告エス・エス・アイの利益となるものではないから、
売上高算出に当たって除外すべきである。
(3) 以上によると、本件速聴機を除く本件カセットテープセットの売上高は、一億六八〇四万三五四二円となる。
(二) 売上原価について 本件カセットテープセットについては、製作費用の他に、売上原価として、【I】に対する一〇〇万円の支払を控除すべきである。
(三) 販売管理費について 本件カセットテープセットは、資料請求に基づいて顧客に対して販売しているところ、このような販売形態においては、通信費、販売電話料、広告費等が必要不可欠である。
各期別の被告エス・エス・アイ全体の販売管理費に売上比率を乗じて本件カセットテープセットのみの販売管理費用を算出すると、九六一二万〇三七六円となる。
(四) 販売利益(純利益) 右売上高から、未販売部数も含めた製作費用、【I】に対する支払及び販売管理費を控除すると、九八六五万九七三九円の赤字となる。したがって、被告エス・エス・アイには本件カセットテープセットによる利益はない。
3 重畳的適用について 原告らは、著作権侵害、商標権侵害、不正競争防止法違反を理由として、
各権利に関し、被告ら商品全体による利益額を基準として損害額を算定しているが、これら複数の権利が存在する場合、被告の商品販売の影響が各権利者に一〇〇パーセント及ぶものではないことからすると、各権利者ごとに被告商品の利益を一〇〇パーセントの損害と認めることはできない。
当裁判所の判断
一 争点一について 1 本件第二著作物の保護期間について (一) 前記第二・一・1の事実、裁判所に顕著な事実及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められる。
(1) 一九〇五年(明治三八年)一一月一〇日に日米著作権条約が締結された。同条約には、内国民待遇(1条)及び翻訳自由(2条)の規定が設けられていた。
(2) 一九三八年(昭和一三年)、【H】は、本件第二著作物を著作し、アメリカ合衆国において著作権登録された。
本件第二著作物はラジオ放送により公表されたが、複製物として頒布されることはなかった。
(3) 一九五二年(昭和二七年)四月二八日、平和条約が発効し、日米著作権条約は、効力を失った。
アメリカ合衆国は、平和条約25条に規定する連合国である。
平和条約12条に基づいて日米暫定協定が締結され、日本とアメリカ合衆国は、昭和二七年四月二八日に遡って、同日から四年間、互いに、翻訳権を含めて、著作権を内国民待遇で保護する旨約した。
(4) 一九五五年(昭和三〇年)【H】が死亡した。
(5) アメリカ合衆国は、万国著作権条約の締約国であったところ、一九五六年(昭和三一年)四月二八日、日本について、同条約が発効したことにより、同日以降、日本とアメリカ合衆国との間において、万国著作権条約が適用されるようになった。
(6) 万国条約特例法は、万国著作権条約の実施に伴い、著作権法の特例を定めることを目的として、昭和三一年四月二八日に施行された法律で、11条には、日本国との平和条約25条に規定する連合国で、この法律の施行の際、万国著作権条約の締約国であるもの及びその国民は、この法律施行の際平和条約12条に基づく旧著作権法による保護を受けている著作物については、この法律施行後も引き続き、その保護(現行著作権法の施行の際当該保護を受けている著作物については、同法による保護)と同一の保護を受ける旨規定されている(これは、現行著作権法施行の際に改正された後の規定である。)。また、同法附則2条は、この法律(11条を除く。)は、発行されていない著作物でこの法律施行前に著作されたもの及び発行された著作物でこの法律施行前に発行されたものについては、適用しないと規定している。
(7) 一九七一年(昭和四六年)一月一日、現行著作権法が施行された。
(8) 日本は、ベルヌ条約の締約国であったところ、一九八九年(平成元年)、アメリカ合衆国についてベルヌ条約が発効し、以降、日本とアメリカ合衆国の間において、ベルヌ条約が適用されることになった。
(二) 以上を前提として、本件著作権の日本における保護期間について検討する。
(1) 右(一)で述べたところによると、アメリカ合衆国は、平和条約25条に規定する連合国で、万国条約特例法の施行の際、万国著作権条約の締約国であったこと、同法の施行の際、本件著作権は、平和条約12条に基づく日米暫定協定により旧著作権法によって保護されていたことが認められるから、アメリカ合衆国の国民は、本件著作権について、同法11条により、同法施行後も同一の保護を受けることができる。そして、旧著作権法の規定によると、現行著作権法施行の際、本件著作権の保護期間は満了していなかったから、本件著作権は、現行著作権法による保護を受けるというべきである。
そうすると、本件著作権の日本における保護期間は、著作者の死後五〇年に、連合国特例法による戦時加算三七九四日を加えた期間となるから、本件口頭弁論終結時点において、保護期間が終了していないことは明らかである。
(2) 万国著作権条約17条に関する附属宣言cは、万国著作権条約はベルヌ条約により創設された国際同盟の加盟国の一を同条約の規定に基づいて本国とする著作物の保護に関する限り、ベルヌ同盟国間の関係については適用しない旨規定している。本件第二著作物は、ベルヌ条約においてアメリカ合衆国を本国とする著作物であるから、ベルヌ条約と万国著作権条約が競合する場合、著作物の保護は、
ベルヌ条約によって定められることとなる。
ベルヌ条約7条(8)は、著作物の保護期間は、本国において定められる保護期間を超えることはない旨規定しており、現行著作権法58条は、ベルヌ条約の右規定に従った規定であるが、ベルヌ条約は、著作物の保護期間について、本国において定められる保護期間を超えることはないことを原則としつつも、国内法において本国において定められる保護期間よりも長い保護期間を定めることを認めており、また、万国条約特例法は、著作権法の特別法であるから、ベルヌ条約7条(8)や現行著作権法58条の規定いかんにかかわらず、万国条約特例法は、著作物保護の根拠となるというべきである。
また、万国条約特例法11条は、平和条約12条に基づいて保護されていた著作物を引き続き同一の条件で保護するために設けられた規定であって、万国著作権条約に基づく保護に関する規定ではない(万国条約特例法11条による保護を受けている本件第二著作物には、附則2条によって万国著作権条約に基づく保護に関する規定は適用されない。)から、万国条約特例法11条が適用されるかどうかは、本件第二著作物に万国著作権条約が適用されるかどうかとは関係がないというべきである。
さらに、万国条約特例法は、著作権法の特別法であるから、現行著作権法6条の規定いかんにかかわらず、著作物保護の根拠となるというべきである。
(3) 右(一)で述べたとおり、平和条約12条に基づく日米暫定協定による保護は、翻訳権を含むから、万国条約特例法11条による保護にも翻訳権が含まれている。
ところで、右(一)で述べたとおり、本件第二著作物はラジオ放送により公表されたが、複製物として頒布されたことはなかったのであるから、旧著作権法7条の「発行」があったということはできない。したがって、本件第二著作物については、旧著作権法7条により翻訳権が消滅することはない。
そうすると、本件第二著作物の翻訳権についても、他の権利と同様に、万国条約特例法11条によって、現行著作権法の保護を受けるということができる。
なお、右(一)で述べたとおり、日米著作権条約には、翻訳自由の規定が設けられていたから、本件第二著作物の翻訳権については、連合国特例法による戦時加算の適用はないが、本件口頭弁論終結時点において、保護期間が終了しないことは明らかである。
2 著作者人格権の保護について 万国条約特例法11条によると、本件第二著作物には、現行著作権法による保護が与えられるから、本件第二著作物について、現行著作権法による著作者人格権の保護が与えられる。
3 被告らによる著作権侵害行為について 前記第二・一・1・(五)のとおり、本件書籍及び本件カセットテープセットの各内容は、本件第二著作物を日本語訳したものであるから、被告騎虎書房による本件書籍の発行行為及び被告エス・エス・アイによる本件カセットテープセットの発行行為は、本件著作権を侵害する行為である。
4 被告らによる著作者人格権(同一性保持権)侵害行為について (一) 証拠(検甲六)及び弁論の全趣旨によると、本件書籍一六〇頁部分には、【H】自身が読者に直接話しかける形で「このようなノウハウを皆さんにお伝えして本当にうれしいのは、全国のさまざまな人々から『成功ノウハウ』を家庭や職場で利用して成果をあげている、という手紙をいただくことです。このような私の紹介するノウハウを使って、こんないいことがあったということがありましたら、その経験を、手紙でお寄せ下さい[日本での宛先・・・〒△△△-△△ 東京都新宿区<以下略> SSI D・カーネギー・プログラムス係]。」との記載があること、右記載は、本件第二著作物中には存在していないこと、以上の事実が認められる。この事実からすると、被告騎虎書房による本件書籍の発行行為は、本件第二著作物の著作者である【H】が生存しているとしたならば、その著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為であるということができる(著作権法60条違反)。
被告らは、本件書籍と本件第二著作物との間に若干の異同があったとしても、それは、本件第二著作物の内容、趣旨を変更せず、本件第二著作物の思想、
主張を広く伝える必要に応じてなされたものであって、同一性保持権を害したとはいえないと主張するが、右の改変の程度、内容からすると、被告らの右主張を採用することはできない。
(二) 証拠(検甲六)によると、本件書籍第一六〇頁と第一六一頁との間には、「SSI D・カーネギー・プログラムス」宛のアンケート返信用はがきが挾まれていること、本件書籍の巻末には、本件カセットテープセット等の広告が掲載されていること、以上の事実が認められ、原告【A】は、これらについても、著作者人格権(同一性保持権)の侵害を主張するが、証拠(検甲六)によると、これらは、本件第二著作物を翻訳した部分とは明確に区別されているから、これらの部分について、本件第二著作物に関する著作者人格権(同一性保持権)の侵害を認めることはできない。
(三) 本件カセットテープセットは、後記二2のような構成のものであるところ、証拠(検甲一の一ないし二三、甲四の一ないし一二)及び弁論の全趣旨によると、本件カセットテープセットのうち、カセットテープ及びマニュアルは、本件第二著作物を翻訳したものであること、本件カセットテープセット及びマニュアルは、本件第二著作物と比較して章の構成が異なっていること、EXトランプは、本件第二著作物の一部を抜粋して各トランプに記載したものであること、以上の事実が認められる。この事実からすると、被告エス・エス・アイによる本件カセットテープセットの発行行為は、本件第二著作物の著作者である【H】が生存しているとしたならば、その著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為であるということができる(著作権法60条違反)。
5 被告らの損害賠償責任等について (一) 以上の1ないし4で述べたところに弁論の全趣旨を総合すると、被告騎虎書房及び被告エス・エス・アイの代表者である被告【F】は、右の著作権及び著作者人格権侵害行為について、少なくとも過失があったものと認められる。
したがって、被告騎虎書房及び被告【F】は、本件書籍の発行による本件著作権侵害行為によって、被告エス・エス・アイ及び被告【F】は、本件カセットテープセットの発行による本件著作権侵害行為によって、それぞれ原告【A】が被った損害を賠償する責任がある。
なお、被告騎虎書房は、被告エス・エス・アイと代表者が同じである等の原告ら主張(前記第四の四原告らの主張7)に係る事実によっても、本件カセットテープセットの発行による本件著作権侵害行為について責任があるとは認められないし、被告エス・エス・アイは、被告騎虎書房と代表者が同じである等の原告ら主張(前記第四の四原告らの主張7)に係る事実によっても、本件書籍の発行による本件著作権侵害行為について責任があるとは認められない。
(二) 右4のとおり、被告騎虎書房による本件書籍の発行行為及び被告エス・エス・アイによる本件カセットテープセットの発行行為は、本件第二著作物の著作者である【H】が生存しているとしたならば、その著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為であるということができるが、著作権法は、著作権法60条違反の効果として、差止めと名誉回復等の措置のみを認めており、損害賠償請求は認めていないから、原告【A】は、著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為が存したことを理由として、被告らに対して損害賠償請求をすることはできない。 本件書籍一六〇頁部分は、【H】が読者にその経験を手紙で寄せることを求めるもので、その日本での宛先が「SSI D・カーネギー・プログラムス係」となっているのであるが、右部分の改変行為が、直ちに【H】の社会的な名誉声望を毀損する行為であるとまでいうことはできない。また、原告らは、被告エス・エス・アイは、購入者との間で法的紛争が絶えない会社であり、被告らにとって本件書籍は、不当に高額な本件カセットテープセットを読者に購入させるための広告としての役割があるにすぎないとも主張するが、これらの事実を認めるに足りる的確な証拠はないから、これらの事実に基づいて、右部分の改変行為が、【H】の社会的な名誉声望を毀損する行為であると認めることはできず、他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。さらに、本件カセットテープセットに関する右改変が、デール・カーネギーの社会的な名誉声望を毀損する行為であるとまでいうべき事情は認められない。そうすると、
謝罪広告の請求は認められない。
二 争点二について 1 本件書籍について (一) 証拠(検甲六)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められる。
(1) 本件書籍の表紙には、大きな文字で「こうすれば人は動く」と記載され、その下にそれよりも小さいアルファベット文字で「How to Win Friends andInflnence People」、さらにその下に右アルファベット文字よりも小さい文字で「【H】著」との記載がされている。
(2) 本件書籍奥付上部には本件書籍に関する問合せ先として、被告騎虎書房の住所の下に「SSI D・カーネギー・プログラムス」と記載されている。
(3) 本件書籍に綴じ込まれている感想等を書いて送付するはがきには、被告騎虎書房の住所の下に「SSI D・カーネギー・プログラムス行」と記載されている。
(二) 右(一)認定の事実によると、右の本件書籍奥付部分及び綴じ込みはがきにおける「SSI D・カーネギー・プログラムス」の記載は、いずれも本件書籍を読んだ感想等を送付するための送付先を示すものであることは明らかであって、本件書籍中における右各記載が、自他商品識別機能、出所表示機能を有しているとは認められない。したがって、本件書籍において、「SSI D・カーネギー・プログラムス」の表示が商標として使用されているとは認められない。
(三) 以上によると、本件商標権侵害を理由とする原告アソシエイツの請求は、本件書籍に関する部分については、理由がない。 2 本件カセットテープセットについて (一) 証拠(甲四一の一ないし一三、甲五三の一ないし七、検甲四の一ないし一二)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められる。
(1) 本件カセットテープセットは、本件第二著作物を日本語訳したものを録音したカセットテープ一二巻、その内容を印刷したマニュアル一二冊、カセットテープ二巻とマニュアル二冊を収納するケース六個、カセットテープ及びマニュアルの内容の一部を印刷したEXトランプ、右ケースに入ったカセットテープとマニュアルをすべて収納することができる木製ラック、本件速聴機、納品明細書、プログラムガイドのカセットテープとそのケース等が一体になったもので、これらが収納ケースに入っている。
(2) 本件カセットテープセット全体が入っている収納ケース、各カセットテープ、各マニュアル、カセットテープとマニュアルを収納するケースには、「D. Carnegie's Golden Rules Program」という標章が付されている。
各カセットテープ、納品明細書には、「D・カーネギー ゴールデンルール・プログラム」という標章が付されている。
納品明細書、プログラムガイドのカセットテープには、「D・カーネギー ヒューマンモティベーション・システム」という標章が付されている。
木製ラック、EXトランプ、本件速聴機の本体及びそれを収納する箱には、「D. Carnegie's Human Motivation Systems」という標章が付されている。
本件カセットテープセット全体が入っている収納ケース、各マニュアル、カセットテープとマニュアルを収納するケース、納品明細書、プログラムガイドのカセットテープを収納するケース、本件速聴機を収納する箱には、「SSI D・カーネギー プログラムス」という標章が付されている。
(二) 本件商標と被告ら標章との類似性について 右(一)で認定した本件カセットテープセットに付されている各標章を本件商標と比較した場合、本件商標には存しない「ゴールデンルール・プログラム」、「Golden Rules Program」、「ヒューマンモティベーション・システム」、「Human Motivation Systems」、「SSI」、「プログラムス」の各表示が存する。これらの各表示のうち、「SSI」を除く表示は、いずれも一般的抽象的な概念を示す言葉である。また、「SSI」は、被告エス・エス・アイを示すものであるが、それのみでは、直ちに被告の会社名を示すことを認識することは困難である。
証拠(甲二一ないし四〇、六一)によると、【H】は、文筆家、講演家として、アメリカ合衆国のみならず、日本においても、広く知られているものと認められる。
以上の事実に、本件カセットテープセットが【H】の著作をもとにしたものであることを併せ考えると、右(一)で認定した本件カセットテープセットに付されている各標章の要部は「D・カーネギー」又は「D. Carnegie」の部分であるというべきである。
そして、本件商標と右(一)で認定した本件カセットテープセットに付されている各標章とを対比すると、その称呼が類似しているうえ、両者は、いずれも、文筆家、講演家である【H】の観念を生じると認められる。また、右(一)で認定した本件カセットテープセットに付されている標章のうち、「D・カーネギー」を含むものは、本件商標(一)と、「D. Carnegie」を含むものは、本件商標(二)と、
それぞれ外観が類似する。
したがって、本件商標と右(一)で認定した本件カセットテープセットに付されている各標章は類似していると認められる。
(三) 商品の類似性について 右(一)認定のとおり、本件カセットテープセットには、カセットテープの内容を印刷したマニュアルやその内容の一部を印刷したEXトランプが含まれているのであって、それらが、カセットテープ等と一体となって一つの商品を構成しているのであるから、本件カセットテープセットは、本件商標権における指定商品である「印刷物」と類似していると認められる。
(四) 商標法26条1項2号該当性について 右(一)で認定した本件カセットテープセットに付されている各標章は、
右(一)で認定したその使用態様からすると、単に題号として使用されているということはできない。
その他、右(一)で認定した本件カセットテープセットに付されている各標章が、商品の品質を普通に用いられる方法で表示したものというべき事情は認められない。
したがって、右各標章について、商標法26条1項2号の適用はない。
(五) よって、被告エス・エス・アイが本件カセットテープセットに、右(一)の各標章を付して製作販売する行為は、本件商標権を侵害する。
そして、右行為について、被告エス・エス・アイ及びその代表者である被告【F】には、過失があったことが推定されるから、右両名は、右商標権侵害行為によって原告アソシエイツが被った損害を賠償する責任がある。
なお、被告騎虎書房については、被告エス・エス・アイと代表者が同じである等の原告ら主張(前記第四の四原告らの主張7)に係る事実によっても、右商標権侵害行為について責任があるとは認められない。
(六) 後記四・2・(一)認定の本件商標の使用状況等からすると、本件商標権侵害に基づく、信用回復措置としての謝罪広告の請求は認められない。
三 争点三について 1 本件商品表示及び本件営業表示について (一) 本件商品表示について 前記第二・一・1・(四)の事実に証拠(甲二一ないし三三、三五、検甲三、五)及び弁論の全趣旨を総合すると、(1)原告創元社は、本件第一著作物・日本語訳版(同朗読カセットテープセットを含む。)について、日本文題名「人を動かす」、英文題名「How to Win Friends and Influence People」、日本文著者名「D・カーネギー」という表示を、本件第一著作物・日本語訳版には、これら加えて、英文著者名「D. Carnegie」という表示をそれぞれ付して販売していること、(2)本件第一著作物・日本語訳版は、昭和三三年の初版発行以来、四〇年以上にわたって増刷を重ね、日本国内で約三〇〇万部を売り上げたこと、(3)本件第一著作物・日本語訳版は、日本において、ビジネスマン向けの雑誌などに多く取り上げられていること、以上の事実が認められる。
以上の事実によると、本件商品表示は、原告創元社の商品を表示するものとして広く知られていたものと認められる。しかし、それが著名であるとまでは認められない。
(二) 本件営業表示について 前記第二・一・1・(三)の事実に証拠(甲三三ないし三五、四二ないし四六、四八ないし五一)及び弁論の全趣旨を総合すると、原告アソシエイツは、一九五五年(昭和三〇年)の【H】の死去後、【H】が行っていた「デール・カーネギー・コース」等の教育事業を承継し、同事業を自ら実施するか、又は世界七〇数か国(日本も含む)のライセンシーを通じて実施してきており、一九一二年の開始以降、「デール・カーネギー・コース」等の修了者は世界中で四五〇万人を超えていること、日本においては、昭和三八年から、「デール・カーネギー・コース」等の各コース(本件教育事業)が、全国の各都市において継続して開講され、その修了者はこれまでに六万人以上に達していること、右の各コースは、コミュニケーション能力の向上、リーダーシップの養成等を目的とするものであり、受講対象者は、
主としてビジネスマンであるが、各コースの内容等により、高校生から企業の経営者まで幅広いものであること、右の各コースは、官公庁や各企業の研修にも多く利用されていること、平成六年から、原告パンポテンシアが、原告アソシエイツの許諾(売上金額の一二パーセントのロイヤリティを支払うとの約定)を受けて本件教育事業を行っており、事業を総称するものとして、「デール・カーネギー・トレーニング」の名称を使用していること、以上の事実が認められ、これらの事実からすると、「デール・カーネギー・コース」、「デール・カーネギー・トレーニング」の各表示は、原告パンポテンシア及び原告アソシエイツの本件教育事業を表示するものとして、広く知られていたものと認められる。しかし、それが著名であるとまでは認められない。 2 被告らの行為とその不正競争行為該当性について (一) 本件書籍について 証拠(検甲六)によると、被告騎虎書房は、本件書籍に、「こうすれば人は動く」、「How to Win Friends and Influence People」、「【H】著」という各表示を付していることが認められる。
ところで、自己の商品等表示に他人の商品等表示と同一又は類似する表示が含まれているとしても、それが、専ら商品の内容、特徴等を表現するために用いられた場合は、他人の商品等表示と同一又は類似のものを使用したということはできないところ、本件書籍の右表示は、【H】の著作であること、その題名が英文では「How to Win Friends and Influence People」であること、それを日本語に訳すと「こうすれば人は動く」となることを示しているもの(この訳は、直訳ではないが、英文を訳したものでないとまではいえない。)にすぎず、専ら商品の内容、
特徴等を表現するために用いられているということができるから、本件書籍の右表示は、本件商品表示及び本件営業表示と同一又は類似のものを使用したものであるということはできない。
また、前記二・1・(一)認定のとおり、本件書籍には、奥付部分及び綴じ込みはがきに「SSI D・カーネギー プログラムス」という記載が存するが、これらは、本件書籍を読んだ感想等を送付するための送付先を示すものであって、本件書籍中における右の各記載が、被告の商品を表示するものとして用いられているとは認められない。
したがって、本件書籍については、不正競争行為は認められない。
(二) 本件カセットテープセットについて (1) 前記二2(一)認定のとおり、本件カセットテープセットには、「D・カーネギー ゴールデンルール・プログラム」、「D. Carnegie's Golden Rules Program」、「D・カーネギー ヒューマンモティベーション・システム」、「D.Carnegie's Motivation Systems」及び「SSI D・カーネギー プログラムス」という表示が付されている。そして、前記二・2・(二)認定のとおり、これらの表示の要部は、「D・カーネギー」又は「D. Carnegie」の部分である。
(2) 証拠(検甲五)によると、本件商品表示のうち、最も需要者の目をひく部分は、題名である「人を動かす」という部分であると認められるが、本件カセットテープセットに付された右の各表示には、この部分と同一又は類似した部分はなく、「How to Win Friends and Influence People」という部分と同一又は類似した部分もない。したがって、本件商品表示のうち「【H】」又は「D. Carnegie」という部分が、本件カセットテープセットに付された右(1)の各表示の要部と同一又は類似であるとしても、全体として、本件商品表示と本件カセットテープセットに付された右の各表示が類似すると認めることはできない。
したがって、本件カセットテープセットについて、本件商品表示に関する不正競争行為は認められない。
(3) 本件営業表示は、「【H】」と「コース」又は「トレーニング」を組み合わせたものであるが、「コース」又は「トレーニング」が一般的抽象的な概念を示すものであることや前記二2(二)認定のとおり「【H】」が広く知られていることからすると、本件営業表示の要部は、「【H】」の部分であると認められる。
そうすると、本件営業表示と本件カセットテープセットに付された表示とは、類似しているというべきである。
証拠(甲五三の一ないし三)によると、本件カセットテープセットは、コミュニケーション能力の向上、指導力の形成等を目的とした商品として販売されていると認められるから、本件教育事業とは、その目的において重なるものであり、一般的に授業の内容がカセットテープや書籍として発売されることがあり得ることを併せて考えると、被告エス・エス・アイが本件カセットテープセットに右の表示を付したことにより、需要者をして、原告パンポテンシア又は原告アソシエイツとの間に何らかの緊密な営業上の関係又は同一の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させるおそれがあるものと認められる。
したがって、被告エス・エス・アイが、本件カセットテープセットについて、右(1)の表示を使用する行為は、不正競争行為となる。
(4) 原告パンポテンシア及び原告アソシエイツは、被告エス・エス・アイの右不正競争行為によって営業上の利益を侵害されたものと認められる。
そして、以上述べたところに弁論の全趣旨を総合すると、被告エス・エス・アイの代表者である被告【F】は、右の不正競争行為について、少なくとも過失があったものと認められるから、被告エス・エス・アイ及びその代表者である被告【F】は、右不正競争行為によって原告パンポテンシア及び原告アソシエイツが被った損害を賠償する責任がある。
なお、被告騎虎書房については、被告エス・エス・アイと代表者が同じである等の原告ら主張(前記第四の四原告らの主張7)に係る事実によっても、
右不正競争行為について責任があるとは認められない。
(三) 被告営業表示について (1) 証拠(甲五三の一ないし七、甲五七)及び弁論の全趣旨によると、被告エス・エス・アイは、本件カセットテープセットの販売に当たって、その営業上の施設又は活動に、「SSI D・カーネギー プログラムス」の表示を使用していることが認められる。また、前記二1(一)認定のとおり、本件書籍には、奥付部分及び綴じ込みはがきに「SSI D・カーネギー プログラムス」という記載が存することからすると、被告騎虎書房も、本件書籍の販売に当たって、その営業上の活動に、「SSI D・カーネギー プログラムス」の表示を使用しているものと認められる。
(2) 右(二)(2)(3)で述べたとおり、「SSI D・カーネギー プログラムス」の表示は、本件営業表示と類似するが、本件商品表示とは類似しない。
そして、右(二)(3)で述べたのと同様の理由により、右の表示を付したことにより、需要者をして、被告エス・エス・アイ及び被告騎虎書房と原告パンポテンシア又は原告アソシエイツとの間に何らかの緊密な営業上の関係又は同一の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させるおそれがあるものと認められる。
したがって、被告エス・エス・アイ及び被告騎虎書房が、「SSI D・カーネギー プログラムス」の表示を使用する行為は、不正競争行為となる。
(3) 原告パンポテンシア及び原告アソシエイツは、被告エス・エス・アイ及び被告騎虎書房の右不正競争行為によって営業上の利益を侵害されたものと認められる。
そして、以上述べたところに弁論の全趣旨を総合すると、被告エス・エス・アイ及び被告騎虎書房の代表者である被告【F】は、右の不正競争行為について、少なくとも過失があったものと認められる。
(四) 原告パンポテンシア及び原告アソシエイツが、被告エス・エス・アイ及び被告騎虎書房の右の各不正競争行為によって業務上の信用を害されたというべき具体的な事情は認められないから、信用回復措置としての謝罪広告の請求は認められない。
四 争点四について 1 本件著作権侵害による損害賠償請求について (一) 前記第二・一・1の事実並びに証拠(検甲五、六)及び弁論の全趣旨によると、原告【A】が日本において許諾を与えて出版しているのは、本件第一著作物であり、本件第二著作物は全く出版されていないこと、本件第一著作物と本件第二著作物は、英文の題名は同一であるが、内容が異なる別個の著作物であること、以上の事実が認められる。
そうすると、原告【A】は、本件著作権侵害による損害賠償請求をするに当たり、被告騎虎書房及び被告エス・エス・アイの利益の額を原告【A】が受けた損害の額として損害賠償を請求することはできず、本件著作権の行使につき受けるべき金銭の額を請求することができるのみであるということができる。
(二) そこで、原告【A】が本件著作権の行使につき受けるべき金銭の額について検討する。
(1) 本件書籍について 証拠(乙五ないし七)及び弁論の全趣旨によると、被告騎虎書房は、
平成八年五月ころから平成一〇年五月三一日までの間に、本件書籍を三万冊印刷して、一万八二二〇冊販売したこと、本件書籍の定価は、一冊一二六二円(消費税別)であること、以上の事実が認められる。
弁論の全趣旨によると、原告創元社は、原告サイモンに対して、本件第一著作物・日本語訳版については小売価格の七パーセント、その朗読カセットテープセットについては小売価格の八パーセント(ただし、最初の五〇〇〇セットについては七パーセント)のロイヤリティを支払う義務を負っていることが認められる。しかし、前記三1(一)(2)のとおり、本件第一著作物・日本語訳版は、昭和三三年の初版発行以来、四〇年以上にわたって増刷を重ねてきたのに対し、本件第二著作物は本件書籍によって日本において初めて翻訳出版されたのであるから、右の本件第一著作物・日本語訳版のロイヤリティの率を、直ちに本件書籍における本件第二著作物の対価の率とすることはできない。そして、これらの事実に、その他本件にあらわれた諸般の事情を総合すると、原告【A】が本件書籍について本件著作権の行使につき受けるべき金銭の額は、本件書籍の販売価格一二六二円に消費税相当額(三パーセント)を加算した金額に、右販売冊数一万八二二〇冊を乗じた金額の一〇パーセントが相当であると認められる。
そうすると、原告【A】が本件書籍について本件著作権の行使につき受けるべき金銭の額は、二三六万八三四五円(小数点以下四捨五入。以下計算により求められる数字に関して同じ。)であると認められる。
なお、被告らは、消費税分を控除すべきであると主張するが、消費税相当額も販売価格の一部としてそれに含まれているから、損害額の算定に当たって消費税相当額を控除すべき理由はない。
(2) 本件カセットテープセットについて 証拠(乙二)及び弁論の全趣旨によると、@被告エス・エス・アイは、平成八年九月ころから平成一〇年五月三一日までの間に、本件カセットテープセットを二〇〇〇セット製作し、本件カセットテープセットを七九一セット、
「D・カーネギー ハイエンド・プログラムス」(本件カセットテープセットと「D・カーネギー パワーパースエーション・プログラム」により構成されている。)を一五〇セット販売したこと、A右の期間における売上合計額(消費税を含む)は、本件カセットテープセット単体が三億一三八三万八〇〇〇円、「D・カーネギー ハイエンド・プログラムス」が九〇〇一万七四〇〇円であったこと、B「D・カーネギー ハイエンド・プログラムス」における本件カセットテープセットと「D・カーネギー パワーパースエーション・プログラム」との価格を、それぞれ最も多数の販売がされた価格である四九万八〇〇〇円と三九万八〇〇〇円の比によって求めると、右の「D・カーネギー ハイエンド・プログラムス」の売上合計額のうち本件カセットテープセットの価格に相当する部分は、〇・四四四二を乗じた三九九八万五七二七円となり、これを本件カセットテープセット単体の売上合計額(消費税を含む)と合計すると、三億五三八二万三七二六円となること、その月別の内訳は、別紙本件カセットテープセット売上表(1)記載のとおりとなること、以上の事実が認められる。
次に、原告【A】が本件カセットテープセットについて本件著作権の行使につき受けるべき金銭の額の販売価格に対する率について検討するに、本件カセットテープセットにおいて、本件第二著作物は、カセットテープ、マニュアル、
EXトランプと多岐にわたって利用されていることが認められる。しかし、本件カセットテープセットには、本件速聴機が含まれているところ、証拠(検甲四の一三、甲五四、五七、乙一八の一、二、乙一九の一ないし三、乙二〇の一ないし四)及び弁論の全趣旨によると、被告エス・エス・アイは、原則として、本件速聴機のみの販売を行っておらず、本件速聴機単体での価格を設定していなかったが、本件速聴機は、本件カセットテープセットのカセットテープ以外のカセットテープでも利用することができ、被告エス・エス・アイは、他の著作物と組み合わせたセットとしても、本件速聴機の販売をしていることが認められるから、本件速聴機は、それ自体として、本件第二著作物とは独立の価値を有するものと認められる。そして、以上の事実に、右(1)で認定した事実及びその他本件にあらわれた諸般の事情を総合すると、原告【A】が本件カセットテープセットについて本件著作権の行使につき受けるべき金銭の額は、本件カセットテープセットの右売上合計額(消費税を含む)の一〇パーセントが相当であると認められる。
そうすると、原告【A】が本件カセットテープセットについて本件著作権の行使につき受けるべき金銭の額は、三五三八万二三七四円(月別の内訳は、
別紙本件カセットテープセット売上表(1)記載のとおり)であると認められる。
2 本件商標権侵害による損害賠償請求について (一) 証拠(甲六〇の一、二、乙二七の一、二)及び弁論の全趣旨によると、本件商標は、指定商品「印刷物」に使用されていないか、使用されているとしても、その使用は、原告アソシエイツから許諾を受けた原告パンポテンシアが本件教育事業において教材の一部に使用しているにすぎないと認められる。
そうすると、原告アソシエイツは、本件商標権侵害による損害賠償請求をするに当たり、被告エス・エス・アイの利益の額を原告アソシエイツが受けた損害の額として損害賠償を請求することはできず、本件商標の使用に対し受けるべき金銭の額を請求することができるのみであるということができる。
(二) そこで、原告アソシエイツが本件商標の使用に対し受けるべき金銭の額について検討する。
右(一)認定の本件商標の使用状況、前記二2(一)認定の本件カセットテープセットにおける各標章の使用態様等からすると、右金銭の額は、右1(二)(2)で認定した本件カセットテープセットの売上合計額(消費税を含む)に二パーセント(〇・〇二)を乗じた七〇七万六四七四円(月別の内訳は、別紙本件カセットテープセット売上表(1)記載のとおり)であると認められる。
(三) 右(一)認定の本件商標の使用状況等からすると、本件商標権侵害に基づく信用毀損を理由とする損害賠償の請求は認められない。
3 不正競争防止法違反による損害賠償請求について (一) 原告パンポテンシア及び原告アソシエイツは、本件教育事業を行っているから、不正競争による損害賠償請求をするに当たり、被告エス・エス・アイの利益の額を原告パンポテンシア及び原告アソシエイツが受けた損害の額として損害賠償を請求することができる。
(二) そこで、被告エス・エス・アイが本件カセットテープセットの販売によって得た利益の額について検討する。
(1) 本件カセットテープセットの売上額について 右1(二)(2)のとおり、被告エス・エス・アイが、平成八年九月ころから平成一〇年五月三一日までの間に、本件カセットテープセット単体を販売した売上合計額(消費税を含む)は、三億一三八三万八〇〇〇円、「D・カーネギー ハイエンド・プログラムス」を販売した売上合計額(消費税を含む)は、九〇〇一万七四〇〇円であることが認められる。
右1(二)(2)認定のとおり、本件速聴機は本件カセットテープセットとは独立の価値を有するものであるが、本件速聴機は本件カセットテープセットの一部であり、前記二2(一)認定のとおり、本件速聴機の本体及びそれを収納する箱には、「D. Carnegie's Human Motivation Systems」という標章が付されており、右の箱には、「SSI D・カーネギー プログラムス」という標章が付されているのであるから、本件カセットテープの売上高算定に当たって、本件速聴機の価格を控除する必要はない。
(2) 本件カセットテープセットの製作費用並びに販売費及び管理費について @ 証拠(乙三)及び弁論の全趣旨によると、別紙本件カセットテープセット価格計算式記載のとおり、本件カセットテープセットの一セット当たりの製作費用は、三万四四〇〇円、「D・カーネギー ハイエンド・プログラム」の一セット当たりの制作費用は、九万三一六二円となることが認められる。
なお、証拠(甲五三の三、甲五七)によると、本件カセットテープセット販売のためのパンフレットには、【I】の推薦文が掲載されていることが認められるから、被告エス・エス・アイが【I】に対して謝礼を支払った事実を推認することができるところ、証拠(乙二五の一、二)及び弁論の全趣旨によると、右金額は一〇〇万円と認められ、これを覆すに足りる証拠はない。したがって、本件カセットテープセットの製作費用として右金員を控除することとする。
A 右@で認定した本件カセットテープセットの一セット当たりの製作費用、「D・カーネギー ハイエンド・プログラム」の一セット当たりの制作費用に、それぞれの販売数(本件カセットテープセットが七九一、「D・カーネギー ハイエンド・プログラム」が一五〇)を乗じて、各製作費用の合計額を算出すると、本件カセットテープセットが二七二一万〇四〇〇円、「D・カーネギー ハイエンド・プログラム」が一三九七万四三三二円となり、これを、右(1)の売上金額から差し引くと、本件カセットテープセット単体が二億八六六二万七六〇〇円、
「D・カーネギー ハイエンド・プログラム」が七六〇四万三〇六八円となる。
なお、被告らは、未販売部数も含めた製作費用を控除すべきであると主張するが、販売部数に対応する製作費用が、右売上合計額に対する原価であると認められるから、販売部数に対応する製作費用のみを控除することとする。
B 証拠(甲六二の一ないし三、乙二六(枝番をすべて含む))及び弁論の全趣旨によると、被告エス・エス・アイの平成七年一一月一日から平成八年一〇月三一日までの事業年度における売上高は、六五億七〇三一万七三九〇円、販売費及び管理費の合計は、三六億八二四三万二二九〇円、平成八年一一月一日から平成九年一〇月三一日までの事業年度における売上高は、八六億一三〇五万九七〇七円、販売費及び管理費の合計は、四九億六九三五万二五四九円、平成九年一一月一日から平成一〇年一〇月三一日までの事業年度における売上高は、九五億二五四二万一二三〇円、販売費及び管理費の合計は、五三億七四〇四万九四五六円であると認められる。
右の各事業年度における販売費及び管理費をすべて合計したものの売上高をすべて合計したものに対する割合は、約五七パーセントであると認められる。
原告パンポテンシア及び原告アソシエイツが行っている事業(本件教育事業)と被告エス・エス・アイが行っている事業(本件カセットテープセットの発行、販売に関する事業)とは異なった事業であるから、原告パンポテンシア及び原告アソシエイツは、何ら追加の販売費及び管理費を要することなく、被告エス・エス・アイが得たすべての利益を得ることができたとは認められない。むしろ、かなりの費用を要したものと認められる。
以上の事実に、その他本件にあらわれた諸事情を考慮すると、販売費及び管理費として、売上高の四五パーセントを控除することが相当であると認められる。
右Aの製作費用を差し引いた後の金額から販売費及び管理費を差し引くと、本件カセットテープセット単体が一億四五四〇万〇五〇〇円、「D・カーネギー ハイエンド・プログラム」が三五五三万五二三八円となる。
(3) 本件カセットテープセットによる利益額について 本件カセットテープセット発行販売には、右1の著作権使用料及び右2の商標使用料が必要であるから、右Bの各金額から更にこれらを控除し、「D・カーネギー ハイエンド・プログラム」について、〇・四四四二を乗じて、本件カセットテープセット発行販売による利益額を求めると、一億一八七二万六四〇四円となり(月別の内訳は、別紙本件カセットテープセット売上表(2)記載のとおり)、
これが原告パンポテンシア及び原告アソシエイツの損害額であると推定される。
(4) 信用毀損による損害賠償について 原告パンポテンシア及び原告アソシエイツが、前記三で認定した被告エス・エス・アイ及び被告騎虎書房による各不正競争行為によって業務上の信用を害されたというべき具体的な事情は認められないから、信用毀損による損害賠償は認められない。
4 原告らの各請求について 以上述べたところからすると、本件各請求は、次に述べる限度で理由がある。
(一) 原告【A】の本件著作権及び著作者人格権侵害に基づく請求 (1) 損害賠償請求について @ 前記のとおり、被告騎虎書房及び被告【F】に対する、原告【A】が本件書籍について本件著作権の行使につき受けるべき金銭の額二三六万八三四五万円の請求並びに被告エス・エス・アイ及び被告【F】に対する、原告【A】が本件カセットテープセットについて本件著作権の行使につき受けるべき金銭の額三五三八万二三七四円の請求は理由がある。
A 本件事案の内容等諸般の事情を総合すると、原告【A】の弁護士費用として本件書籍に関して被告騎虎書房及び被告【F】に負担させるべき金額としては、二〇万円、本件カセットテープセットに関して被告エス・エス・アイ及び被告【F】に負担させるべき金額としては、三五〇万円が相当である。したがって、
右の各弁護士費用相当額の請求は理由がある。
なお、本件著作権侵害を理由とする慰謝料の請求については、これを認めなければならないような事情が存するとまでは認められないから、認めないこととする。
B 以上によると、原告【A】の損害額は、被告騎虎書房及び被告【F】に対して合計二五六万八三四五円、被告エス・エス・アイ及び被告【F】に対して合計三八八八万二三七四円となる。
C 遅延損害金に関しては、本件カセットテープセットに関する損害賠償請求については、売上げのあった月の翌月一日以降支払済みまで、本件書籍及び弁護士費用相当額に関する損害賠償請求については、平成一〇年六月一日以降支払済みまで、民法所定の年五分の割合による金員である。
(2) 差止等請求について 原告【A】が、本件第二著作物の著作権及び著作者人格権に基づき、
被告騎虎書房及び被告【F】に対して、本件書籍の発行、印刷、製本、販売又は頒布の差止め及び本件書籍の廃棄を求める請求並びに被告エス・エス・アイ及び被告【F】に対して、本件カセットテープセットの発行、製作、販売又は頒布の差止め及び本件カセットテープセットの廃棄を求める請求は理由がある。
(二) 原告アソシエイツの本件商標権侵害に基づく請求 (1) 損害賠償請求について 前記のとおり、被告エス・エス・アイ及び被告【F】に対する、原告アソシエイツが本件商標の使用に対し受けるべき金銭の額七〇七万六四七四円の請求は理由がある。
本件事案の内容等諸般の事情を総合すると、原告アソシエイツの弁護士費用として被告エス・エス・アイ及び被告【F】に負担させるべき金額としては、七〇万円が相当である。
以上によると、原告アソシエイツの損害額は、合計七七七万六四七四円となる。
遅延損害金に関しては、本件カセットテープセットに関する損害賠償請求については、売上げのあった月の翌月一日以降支払済みまで、弁護士費用相当額に関する損害賠償請求については、平成一〇年六月一日以降支払済みまで、民法所定の年五分の割合による金員である。
(2) 差止等請求について 原告アソシエイツが、本件商標権に基づき、被告エス・エス・アイ及び被告【F】に対して、本件カセットテープセットの発行、製作、販売又は頒布の差止め及び本件カセットテープセットの廃棄を求める請求は理由がある。
(三) 原告アソシエイツ及び原告パンポテンシアの不正競争防止法違反に基づく請求 (1) 損害賠償請求について @ 前記のとおり、原告アソシエイツ及び原告パンポテンシアが被告エス・エス・アイの不正競争行為によって被った逸失利益の額は、一億一八七二万六四〇四円と認められるところ、前記三1(二)のとおり原告アソシエイツは、原告パンポテンシアからその売上金額の一二パーセントをロイヤリティとして支払を受ける権利を有しているものと認められ、この事実に弁論の全趣旨を総合すると、原告アソシエイツの被告エス・エス・アイ及び被告【F】に対する損害賠償請求は、一四二四万七一六八円の限度で、原告パンポテンシアの被告エス・エス・アイ及び被告【F】に対する損害賠償請求は、一億〇四四七万九二三六円の限度で、それぞれ理由がある。
本件事案の内容等諸般の事情を総合すると、原告アソシエイツの弁護士費用として被告らに負担させるべき金額としては、一四〇万円が、原告パンポテンシアの弁護士費用として被告らに負担させるべき金額としては、一〇〇〇万円が相当である。
遅延損害金に関しては、本件カセットテープセットに関する損害賠償請求については、売上げのあった月の翌月一日以降支払済みまで、弁護士費用相当額に関する損害賠償請求については、平成一〇年六月一日以降支払済みまで、民法所定の年五分の割合による金員である。
(2) 差止等請求について 原告アソシエイツ及び原告パンポテンシアが、不正競争防止法に基づいて、被告エス・エス・アイ及び被告【F】に対して、本件カセットテープセットの発行、製作、販売又は頒布の差止め、本件カセットテープセットの廃棄及び被告営業表示の使用禁止を求める請求は理由がある。
なお、原告アソシエイツ及び原告パンポテンシアは、「その他「デール・カーネギー」、「D・カーネギー」、「カーネギー」、「DALE CARNEGIE」、「Dale Carnegie」、「D.CARNEGIE」、
「D.Carnegie」、「CARNEGIE」、「Carnegie」を含む表示」についても、使用の差止めを求めているが、被告営業表示以外にこれらの各表示の使用の差止めを求めることが必要であるとまでいうべき事情は認められない。
五 結論 以上の次第で、原告らの被告らに対する各請求については、主文掲記の範囲において理由がある。
裁判長裁判官 森義之
裁判官 内藤裕之
裁判官 杜下弘記
  • この表をプリントする