運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17ワ14972不正競争行為差止等請求事件 平成17ワ22496損害賠償等請求事件 判例 不正競争防止法
関連ワード 録音 /  再生 /  上映権 /  ビデオ /  私的使用 /  著作権侵害 /  差止 /  損害賠償 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 13年 (ワ) 3152号 著作権侵害損害賠償請求事件

原告 社団法人日本音楽著作権協会
同訴訟代理人弁護士 葛西栄二
被告 有限会社B
被告 D株式会社
被告C
裁判所 名古屋地方裁判所
判決言渡日 2001/10/01
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告有限会社Bは,原告に対し,139万8450円及び別紙1の使用料相当額一覧表の各「使用料相当額」欄記載の金員に対する各「起算日」欄記載の日から各支払済みまでいずれも年5分の割合による金員を支払え。
2 被告D株式会社は,原告に対し,440万0860円及び別紙2及び同3の使用料相当額一覧表の各「使用料相当額」欄記載の金員に対する各「起算日」欄記載の日から各支払済みまでいずれも年5分の割合による金員を支払え。
3 原告の被告有限会社B社及び被告D株式会社に対するその余の請求並びに被告Cに対する請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用中,原告と被告有限会社B社及び被告D株式会社との間に生じたものはこれを6分し,その1を原告の,その余は被告有限会社B社及び被告D株式会社の各負担とし,原告と被告Cとの間に生じたものは原告の負担とする。
5 この判決は,第1,第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
1 被告有限会社B社及び被告Cは,原告に対し,連帯して166万8450円及び別紙4の使用料相当額一覧表の各「使用料相当額」欄記載の金員に対する各「起算日」欄記載の日から各支払済みまでいずれも年5分の割合による金員を支払え。
2 被告D株式会社及び被告Cは,原告に対し,連帯して528万0860円及び別紙5及び同6の使用料相当額一覧表の各「使用料相当額」欄記載の金員に対する各「起算日」欄記載の日から各支払済みまでいずれも年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,原告がカラオケボックスを経営する被告会社らに対し,同会社らによる著作権無許諾使用行為を原因として,不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還及びこれに対する履行期後の日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金又は悪意受益者の利息金の支払を求めるとともに,上記各会社の代表者である被告個人に対し,有限会社法30条の3又は商法266条の3に基づく損害賠償及びこれに対する履行期後の日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認定可能な事実) (1) 原告は,著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律(昭和14年法律第67号,以下「法」という。)に基づく許可を受けた音楽著作権仲介団体であり,内外国の音楽著作物の著作権者からその著作権ないし支分権(演奏権,録音権,上映権等)の移転を受けるなどしてこれを管理し,国内の音楽使用者に対して音楽著作物の利用を許諾し,使用者から著作物使用料を徴収すると共に,これを内外の著作権者に分配することを主たる目的とする社団法人である。
(2) 別紙カラオケ楽曲リスト記載の音楽著作物は,いずれも原告が著作権を管理する音楽著作物(以下「管理著作物」という。)であって,カラオケの伴奏で歌唱された使用実績を有する主要な曲目に該当し,今日,カラオケ装置を設置している一般の社交飲食店において,日常的に反復使用されている歌唱曲である。
(3) 被告有限会社B社(以下「被告B社」という。)は,平成7年3月1日,名古屋市<以下略>において,カラオケ歌唱室(いわゆるカラオケボックス)「カラオケ××××」(以下「本件店舗」という。)を開店し,同店舗内に営業設備としてカラオケ装置(ビデオカラオケ)を設置して,平成10年1月31日まで営業していた。被告B社は,本件店舗の経営を平成10年2月1日に被告D株式会社(以下「被告D社」といい,被告B社と併せて「被告両会社」という。)に引き継ぎ,被告D社は,同日以降平成13年3月31日に本件店舗を閉店廃業するまで,前記場所において同様の営業を継続していた。
被告Cは,被告B社及び被告D社の代表取締役である。
(4) 被告両会社は,前記各営業期間中,原告の許諾を得ることなく,本件店舗において,金,土曜日は午前10時から翌日午前2時まで,その他の曜日は午前10時から翌日午前0時までの営業時間中,来店した顧客に対し,被告両会社の従業員らがカラオケ関連機器を設置した部屋を指定して,各部屋において顧客に前記カラオケ機器を操作させ,管理著作物を再生,演奏し,また,伴奏音楽に合わせて顧客に歌唱させていた。
(5) 原告は,平成13年2月6日,当裁判所に対し,被告D社を債務者として,本件店舗における著作権侵害行為の差止めを求める仮処分命令の申立て(平成13年(ヨ)第109号)を行ったが,被告D社が同年3月31日をもって本件店舗を閉店廃業したため,同年4月5日に上記申立てを取り下げた。
(6) 管理著作物を利用する者が原告に支払うべき使用料は,法3条1項に基づき原告が文化庁の認可を受けて定めた「著作物使用料規程」によるものとされており,本件に関する部分は次のとおりである。
ア 平成9年8月10日まで 著作物使用料規程(平成9年8月11日認可前のもの。)の第2章第2節演奏等3の「演奏会以外の催物における演奏」の(7)「その他の演奏」の規定に基づき定められた「カラオケ歌唱室の使用率表」(甲4)によることとされており,同使用率表によると,カラオケ歌唱室(ビデオカラオケを使用する場合)における管理著作物の使用料(ビデオカラオケ)は,一部屋の定員が10名までの場合には,一部屋当たり月額4000円,一部屋の定員が10名を超え30名までの場合には,一部屋当たり月額8000円である。
イ 平成9年8月11日以降 著作物使用料規程(甲3,5)の第2章第2節演奏等4の「カラオケ施設における演奏等」の(1)により,カラオケ歌唱室における管理著作物の使用料(標準単位料金500円まで)は,一部屋の定員が10名までの場合には,一部屋当たり月額9000円,一部屋の定員が10名を超え30名までの場合には,一部屋当たり月額1万8000円である。
(7) 本件店舗には,開店時から平成11年4月27日までの期間については,一部屋の定員が10名までの部屋が8室あり,そのいずれの部屋にもビデオカラオケが設置されていた。同様に,平成11年4月28日から平成13年3月31日までの期間については,一部屋の定員が10名までの部屋が13室,一部屋の定員が10名を超え30名までの部屋が1室あり,そのいずれの部屋にもビデオカラオケが設置されていた。
3 争点及び争点に関する当事者の主張 (1) 原告の損害の有無及び損害額 (原告の主張) ア 原告は,被告らが本件店舗において,原告の許諾を得ることなく,本件店舗に設置したカラオケ機器を利用して管理著作物を演奏し,原告の著作権を侵害したことにより,本件店舗が閉店廃業した平成13年3月31日までに使用料相当額(消費税相当額を含む。)の損害を被った。
イ また,被告らは,管理著作物を原告の許諾を得ることなく使用したことにより,法律上の原因なく,前記使用料相当の利益(消費税相当額を含む。)を受け,そのために原告に同額の損失を与えた。
ウ 本件店舗を営業していた期間中の原告の損害ないし被告らが原因なくして得た利得を計算すると,別紙4ないし6の使用料相当額一覧表の各合計欄のとおりであり,これに弁護士費用相当額(被告B社につき27万円,被告D社につき88万円,被告Cにつき115万円)を加えた額が原告の損害額となる。各被告が原告に与えた使用料相当損害金の額は次のとおりである。
(ア) 被告B社 139万8450円 (イ) 被告D社 440万0860円 (ウ) 被告C 579万9310円((ア),(イ)の合計額) (被告らの主張) いずれも否認する。個人が音楽を聴いたり,歌ったりするのに著作権使用料はかからないはずである。原告の使用料の設定に当たっては,稼働率が加味されておらず,著しく不公平である。
(2) 被告らの責任 (原告の主張) ア 被告両会社の責任 (ア) 被告両会社は,本件店舗の経営者として,原告の管理する著作権を侵害したから,民法709条,715条により原告に前記の損害を賠償すべき責任がある。
(イ) 前記(1)原告の主張イのとおり,被告両会社は,民法703条により,原告に対し上記不当利得を返還すべき責任があり,かつ,原告の再三にわたる請求や警告を受けながら,原告の管理著作物を使用してきたものであるから,悪意の受益者として民法704条により,受けた利益に利息を付して返還すべき義務がある。
(ウ) (ア),(イ)は選択的に主張するものであり,一方が認容されたことにより一方の請求の一部が棄却されるとしても,その結果は甘受する。
イ 被告Cの責任 被告Cは,被告両会社の各代表取締役として,法令を遵守して被告両会社の業務執行をなすべき義務があるところ,原告の再三にわたる請求や警告を受けながら,これを無視して,悪意又は重大な過失により,原告の管理する著作権を侵害したものであるから,有限会社法30条の3又は商法266条の3に基づき,原告の損害を賠償すべき責任がある。
(被告らの主張) 否認ないし争う。カラオケは個人が歌唱し,楽しむものであり,その経営者に著作権使用料を払う義務はない。
当裁判所の判断
1 他人の音楽著作物を公に演奏及び上映して使用する者は,法律に定める除外規定に該当する場合でない限り,その著作物の使用について著作権者の許諾を受けなければならない(著作権法22条,22条の2,63条)ところ,前記第2の1(4)のとおり,被告両会社は,原告の許諾を得ることなく,本件店舗において,来店した顧客に対し,被告両会社の従業員らがカラオケ関連機器を設置した部屋を指定して,各部屋において顧客に前記カラオケ機器を操作させ,管理著作物を再生,演奏し,また,伴奏音楽に合わせて顧客に歌唱させたものである。
したがって,被告両会社は,原告の許諾を得ることなく,原告の管理著作物を使用したことにより,法律上の原因なく,管理著作物の使用料相当額の利益を受け,そのために原告に同額の損失を与えたことは明らかであり,民法703条,704条に基づき上記使用料相当額の利益及びその利息について不当利得返還義務を負う。
この点につき,被告らは,カラオケは個人が歌唱して楽しむものであることを理由に責任を否定するが,不特定多数の顧客に対して管理著作物の再生,演奏,歌唱の機会を提供する行為が著作権法30条1項私的使用に当たらないことは明白であり,被告らの同主張は採用できない。
なお,上記のとおり,不当利得返還請求権を前提とする以上,被告両会社に対する弁護士費用相当額の不当利得返還請求及び被告Cに対する請求は,いずれも根拠を欠くものであって理由がない。
2 以上の次第で,原告の各請求は上記の限度において理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条,64条本文,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 加藤幸雄
裁判官 橋本都月
裁判官 富岡貴美