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審判番号(事件番号) データベース 権利
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平成20ワ21343損害賠償等請求事件 判例 特許権
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平成17ネ1300損害賠償請求控訴事件 判例 特許権
平成17ネ10049著作権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許権
関連ワード 著作者 /  翻案 /  公衆送信 /  送信可能化(送信可能化権) /  著作者人格権 /  複製権 /  公衆送信権 /  引用 /  著作権侵害 /  差止 / 
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事件 平成 13年 (ワ) 22110号 著作権侵害差止等請求事件
原告A
同 B
同 C
同 D
同 E
同 F
同 G
同 H
同 I
原告ら訴訟代理人弁護士 伊藤真
被告 有限会社コメットハンター
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2001/12/03
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,別紙各書籍要約文を自動公衆送信又は自動公衆送信可能化してはならない。
2 被告は,被告の開設するウェブサイトから,別紙各書籍要約文を削除せよ。
3 被告は,各原告に対し,それぞれ金110万円及びこれに対する平成13年10月28日から各支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
5 この判決は仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の求めた裁判(訴状どおり)
主文と同旨
当事者の主張(訴状どおり)
1 請求原因 (1) 原告ら及びその著作権 原告らは,それぞれ各界著名の評論家,文化人ないし経営者であって,それぞれ,大手出版社による書籍の出版などを通じ,その著作活動についても広く知られている著名人である。
原告らは,別紙書籍目録記載の各書籍(以下「本件各書籍」という。)の著作者であり,各書籍につきそれぞれ著作権及び著作者人格権を有している。
(2) 被告の行為 被告は,「速読本舗」なるウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)を訴外ビックエル・グループが提供するサーバーにおいて開設して有料の会員を募り,ビジネス書を中心とした書籍を改変した要約文(以下「書籍要約文」と言う。)を作成し,これをインターネットを利用したメールサービスによって会員に公衆送信し,また,一部の書籍要約文については本件ウェブサイトにおいて公開(送信可能化)し,本件ウェブサイトにアクセスした者に対して広く公衆送信している。その概要は以下の通りである。
ア 書籍要約文送信の方法 (ア) 会員(有料)に対し,毎月4冊の新刊書籍の書籍要約文を,インターネットを利用した電子メールにより原則として有料で送信する。
(イ) 既に送信した書籍要約文についても,その後に入会した会員に対して,その希望に応じて電子メールにより有料で送信する。
(ウ) 本件ウェブサイトにおいて上記の会員を募集し,上記の会員に対し毎月送信する4冊の書籍要約文のうち1冊分については,本件ウェブサイト上にて無料サンプルとして公開(送信可能化)し,会員,非会員を問わずアクセスした者に対して広く公衆送信する。
(エ) 過去3年を経過した書籍要約文については,過去に送信したすべての書籍要約文を本件ウェブサイト上にて無料公開(送信可能化)し,会員,非会員を問わずアクセスした者に対して広く公衆送信する。
このように,(ア)及び(イ)については,有料で会員に公衆送信するとともに,(ウ)及び(エ)については会員,非会員を問わず本件ウェブサイトにアクセスした者すべてに公衆送信される状態となっている。
イ 会員の種別及び会費(購読料) このような会員の種類は,個人及び法人の別となっており,会費については,毎月の「購読料金」として,個人については月額1000円(半年コース)ないし1500円(1年コース),法人については,資本金の額に応じて,1万円から10万円(半年コース)ないし2万円から20万円(1年コース)との低廉な価格設定がなされている。
また,入会以前の書籍要約文の購読料金については,さらに低廉な購読料金が設定されている。
ウ 会員数及びアクセス数 本件ウェブサイトの会員数及びアクセス数の詳細は不明であるが,本件ウェブサイトにおいて被告自身が平成13年6月16日発表として公開しているアンケートの結果によれば,同年5月7日から同月20日の期間に行われたアンケートの回答総数は4823名であり,うち会員は2836名,非会員は1987名であったとのことである。
アンケート非回答者の存在をも考慮すれば,わずか2週間の間に相当数のアクセスがあったのであり,本件ウェブサイト開設以来現在まで,多数の者が会員となっているとともに,会員以外にも極めて多数の者が本件ウェブサイトにアクセスし,無料公開されている書籍要約文を利用していることは明らかである。
被告は,別紙書籍目録記載の各書籍について,原告らの許諾を得ることなく,上記行為の一環として,書籍要約文の公衆送信を行っている。
被告の作成した書籍要約文は,対照表(このうち,原告Aに係る対照表は別紙のとおりである。)からも明らかなとおり,10行程度の書籍紹介の文章を付した上で,それ以外は書籍の文章に改変,修正を施し,また,本件各書籍の文章のポイントと思われる部分を抜き書きして,その内容の要約としたにすぎないものであり,本件各書籍を翻案したといえる。そして,本件各書籍要約文においては,被告が本件各書籍を紹介する表現部分はごくわずかしか存在しないのであって,書評といいうるような書籍の評価論評など被告独自の著作物の中に従たる関係で原告らの著作物が用いられているものでは到底なく,被告の掲示行為が著作権法32条の「引用」に該当しないことは明らかである。
以上によれば,被告の行為は,原告らが本件各書籍について有する翻案権,原著作者として有する複製権並びに公衆送信権及び公衆送信可能化権を侵害するとともに,原告らの許諾なく本件各書籍を改変しているものであるから,著作者人格権を侵害する。
(3) 損害 各原告が被った損害額は,以下のとおり,それぞれ金110万円を下らない。
著作権侵害による損害額 被告は,本件書籍要約文を会員に対し有料で提供するのみならず,全世界からアクセスが可能であるインターネットウェブサイトを通じて広く公衆に無料で公開してこれを自動公衆送信している。
さらに,前記(2)アないしウ記載の事実から推計される本件ウェブサイトへのアクセス数,会員数及び会費金額,並びに,原告ら著名人の知名度,本件各書籍の出版社による販売宣伝活動の成果その他の諸事情に鑑みれば,被告の行為によって,各原告が被った損害は,慰謝料を含め,少なく見積もっても,各金100万円を下らない。
イ 弁護士費用 また,各原告に生じた弁護士費用のうち,被告による著作権及び著作者人格権侵害行為と相当因果関係のある損害額は,各原告につき金10万円を下らない。
(4) 結論 よって,原告らは,被告に対し,原告らが本件各書籍について有する翻案権,複製権,公衆送信権,公衆送信可能化権及び著作者人格権に基づき,本件各書籍要約文の自動公衆送信又は自動公衆送信可能化差止め,被告の開設するウェブサイトからの本件各書籍要約文の削除,それぞれ金110万円及びこれに対する平成13年10月28日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
理由
被告は,本件口頭弁論期日に出頭せず,答弁書その他の準備書面を提出しない。したがって,被告において請求原因事実を争うことを明らかにしないものとして,これを自白したものとみなす。
上記の事実によれば,原告らの請求はいずれも理由がある。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 今井弘晃
裁判官 石村智