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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成12ワ18001著作権侵害差止等請求事件 判例 特許権
平成17ワ14972不正競争行為差止等請求事件 平成17ワ22496損害賠償等請求事件 判例 不正競争防止法
平成13ネ787債務不存在確認・同,著作権債務不存在確認・各同請求控訴事件 判例 特許権
平成17ワ10324著作権侵害差止等請求事件 判例 特許権
平成14ワ3393著作権侵害差止等請求事件 判例 特許権
関連ワード 著作者 /  音楽の著作物 /  レコード /  放送 /  放送事業者 /  有線放送 /  録音 /  再生 /  上映権 /  保護期間 /  登録 /  著作権侵害 /  差止 /  損害賠償 / 
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事件 平成 13年 (ワ) 435号 損害賠償請求事件
原告 社団法人日本音楽著作権協会
訴訟代理人弁護士 北本修二
同 七堂眞紀
被告A
訴訟代理人弁護士 曽我乙彦
同 中澤洋央兒
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2002/04/18
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は、原告に対し、金204万9390円及びこれに対する平成13年1月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は、仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨 主文同旨 2 請求の趣旨に対する答弁 (1) 原告の請求を棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
当事者の主張
1 請求原因 (1)(原告の著作権等) 原告は、平成13年9月30日までは「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」(昭和14年法律第67号)に基づく許可を受け、同年10月1日から「著作権等管理事業法」(平成12年法律第131号)に基づく登録を受け、内外国の音楽の著作物の著作権者からその著作権又は支分権(演奏権、録音権、上映権等)の移転を受けるなどしてこれを管理し、国内のラジオ・テレビの放送事業者をはじめ、レコード、映画、出版、興行、社交場及び有線放送等各種の分野における音楽の著作物の利用者に対して、音楽の著作物の利用を許諾し、許諾の対価として利用者から著作物使用料を徴収し、これを内外国の著作権者に分配することを主たる目的とする社団法人である。なお、本訴で損害賠償の対象となっている平成3年11月15日から平成11年5月11日までは、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」が施行され、適用されていた。
原告は、社交場等において、カラオケの伴奏により歌唱されるほとんどすべての音楽著作物について、内国の音楽の著作物については著作権者との著作権信託契約を締結し、外国の音楽の著作物については我が国の締結した著作権条約に加盟する諸外国の著作権仲介団体との相互管理契約を締結することによりその著作権又は支分権の移転を受けるなどしてこれを管理している(以下、原告が管理している音楽著作物を「管理著作物」という。)。
(2)(被告の行為) ア 被告は、平成3年11月15日、大阪市〈以下略〉において、飲食店「B」(以下「本件店舗」という。)を開店し、以後、平成11年5月11日まで営業してきた。
その間、被告は、本件店舗に営業用の設備としてカラオケ装置を設置し、その営業時間中、飲食を提供するかたわら、原告の管理著作物に含まれる楽曲を、原告の許諾を受けないで、カラオケ装置の伴奏により従業員又は顧客等に歌唱させて演奏し、来集した不特定の客に聞かせていた。
本件店舗における原告の管理著作物である楽曲の1日当たりの演奏曲数は10曲を下らず、本件店舗の営業日数は、1か月平均20日を下らなかった。
被告は、このような行為により、原告が管理著作物について有する著作権(演奏権)を侵害した。
イ 被告は、本件店舗が開店した平成3年11月15日以降、本件店舗をその所有者(以下「家主」という。)から賃借していた。
飲食店を営業するためには、保健所の営業許可を得なければならないところ、本件店舗の営業許可は被告の子であるCの名義で取得されており、被告がCの名義を利用して手続を行ったものである。なお、平成11年5月6日、営業許可の名義はDに変更された。
被告の主張によれば被告が本件店舗を経営していないはずの平成11年7月16日の実態調査の時点で、被告は、本件店舗において、「ママ」として営業を指揮しており、飲食代金の送金先としては被告名義の銀行口座が指定されていた。
本件店舗が開店した平成3年11月15日から平成8年までの5年間、
カラオケ装置のリース契約の当事者の名義は、本件店舗の家主であったが、平成8年のカラオケ装置の入替えに際しては、リース契約の当事者の名義は被告とされた。被告は、平成11年9月には、本件店舗のカラオケ装置をカラオケ業者に引き上げさせた。
これらの事実に鑑みると、本件店舗の経営者は、平成3年11月15日から平成11年5月11日まで、被告であったというべきである。
ウ 被告は、本件店舗を転貸していたと主張するが、本件店舗を自ら経営せずに転貸をすることについて合理的な理由はなく、また、転貸の契約書や転貸料の支払を証明する書類など、転貸借を裏付ける客観的な資料が皆無であるから、転貸していたとは考えられない。
エ 著作物の利用主体であることは、著作物の利用に対する管理支配と、著作物の利用による利益の収受により認定されるべきであるところ、本件店舗を転貸していたという被告の主張を仮に前提とするとしても、被告は、本件店舗に業務用カラオケ装置を設置し、これを営業のために利用させ、かつ、転貸料、紹介料名目の金銭を得ることを通じて管理著作物の無断利用による利益を得ていたものであるから、管理著作物の利用主体に当たり、被告は、本件店舗における著作権侵害について、損害賠償責任を負う。
仮に被告が著作物の利用主体でないとしても、少なくとも、著作権侵害の幇助者としての責任を負う。
(3)(被告の責任) 被告は、本件店舗において、原告の管理著作物である楽曲をカラオケ装置の伴奏により演奏することが、原告の著作権を侵害することを知りながら、又は過失により知らないで、前記(2)アのとおり、原告の許諾を受けないで、原告の管理著作物を演奏し、原告の著作権を侵害したものであるから、これにより原告が被った損害を賠償すべき義務がある。
(4)(損害) 原告は、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」に基づき、「著作物使用料規程」及び「著作物使用料規程取扱細則」を定め、文化庁長官の認可を受けていたが、これによると、原告の管理著作物の1曲当たりの著作権等の行使につき受けるべき金銭の額である使用料は、社交場における演奏等については、業種、演奏の方法、店舗の座席数(面積)、標準単位料金(社交場をその営業の目的に従って利用する場合に客1人当たりにつき通常支払うことを必要とされる税引き後の料金相当額をいい、その基準については「著作物使用料規程取扱細則」に定める。)等によって類別区分された料金表により算出された金額に消費税相当額を加算した額とされる(「著作物使用料規程」第2章第2節5)。
本件店舗は、業種が、バー、クラブ、カフェーなど酒類の提供を主たる目的とするものであって、ホステス等の社交員の接待が通常伴うものに該当し、座席数が40席まで、標準単位料金が5000円を超え1万円までに該当するから、カラオケ伴奏による歌唱1曲1回使用時間5分までの使用料は、「著作物使用料規程」第2章第2節別表16の1により110円とされる。
したがって、損害額は、次の@ないしCの合計である204万9390円(1万4720円+145万0240円+57万7500円+6930円=204万9390円)である。
@ 平成3年11月15日から同月30日まで(営業日数13日、消費税3パーセント) 110円×10曲×13日×1.03=1万4720円(10円未満切り捨て) A 平成3年12月から平成9年3月まで(営業期間64か月、消費税3パーセント) 110円×10曲×20日×64か月×1.03=145万0240円 B 平成9年4月から平成11年4月まで(営業期間25か月、消費税5パーセント) 110円×10曲×20日×25か月×1.05=57万7500円 C 平成11年5月1日から同月11日まで(営業日数6日、消費税5パーセント) 110円×10曲×6日×1.05=6930円 (5)(結論) よって、原告は、被告に対し、著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき、204万9390円及びこれに対する不法行為の後である平成13年1月28日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する認否 (1) 請求原因(1)は認める。
(2)ア 請求原因(2)アのうち、被告が本件店舗において、平成10年2月から平成11年2月までの13か月間、営業を行っていたことは認め、その余の事実は否認し、主張は争う。
イ(ア) 請求原因(2)イのうち、被告が、本件店舗が開店した平成3年11月15日以降、本件店舗を家主から賃借していたこと、飲食店を営業するためには、
保健所の営業許可を得なければならないところ、本件店舗の営業許可は被告の子であるCの名義で取得され、平成11年5月6日、営業許可の名義がDに変更されたこと、同年7月16日の実態調査の時点で、被告が本件店舗におり、「ママ」と呼ばれ、飲食代金の送金先として被告名義の銀行口座が指定されていたこと、平成3年11月15日から平成8年までの5年間、カラオケ装置のリース契約の当事者の名義は、本件店舗の家主であったが、平成8年のカラオケ装置の入替えに際して、
リース契約の当事者の名義が被告に変更されたこと、被告が、平成11年9月、本件店舗のカラオケ装置をカラオケ業者に引き上げさせたことは認め、その余の事実は否認し、主張は争う。
(イ) 被告は、本件店舗を、店舗内の什器備品と保健所の許可を備えた賃貸店舗として転貸してきたことから、保健所の営業許可の名義が被告の子のCとされたり、カラオケ装置のリース契約の当事者の名義が被告とされたものである。
平成11年7月16日の実態調査の時点で、被告が本件店舗におり、
飲食代金の送金先が被告の銀行口座であったのは、転借人であるDが若年で接客業の経験が浅く、銀行口座を有していなかったため、Dに接客業の指導をしながら店の手伝いをし、被告の銀行口座を使用させていたからである。また、被告が本件店舗で「ママ」と呼ばれていたのは、被告がDよりはるかに年長で、平成10年2月から平成11年2月まで自ら「ママ」として本件店舗で営業を行っていたからである。
ウ(ア) 請求原因(2)ウの事実は否認し、主張は争う。
(イ) 平成3年当時、被告の年齢や景気の低迷から、被告が自らラウンジ等を経営することは非常に難しい情勢にあった。そこで、被告は、本件店舗を賃借後、自らは経営をせず、本件店舗を転貸してきた。
被告は、本件店舗を家主から賃借後、直ちに本件店舗をEに転貸し、
平成3年11月15日から、Eが「B」というラウンジを開店して営業していた。
Eが本件店舗を営業していた間、被告はEから転貸料を受け取るとともに、本件店舗の従業員として稼働していた。Eは、平成7年11月、営業を止め、本件店舗を被告に返還した。被告は、同月、Fに本件店舗を転貸し、Fから転貸料を受け取るとともに、Fに客を紹介して紹介料を受け取っていた。Fは、平成9年8月、営業を止め、被告に本件店舗を返還した。被告は、同月、Gに本件店舗を転貸したが、
Gは平成10年2月に営業を止め、本件店舗を被告に返還した。その後、本件店舗の転借人が見つからなかったため、被告は、平成10年2月から平成11年2月までの13か月間、転借人を探しながら本件店舗を自ら営業していた。被告は、平成11年2月、Dに本件店舗を転貸し、Dが本件店舗において営業をして現在に至っている。
エ(ア) 請求原因(2)エの事実は否認し、主張は争う。
(イ) 本件店舗において、カラオケ装置の伴奏によって客やホステスに歌唱させて音楽著作物を利用していたのは営業主であるEら転借人であり、被告が歌唱させていたわけではないから、被告が著作権侵害による損害賠償責任を負う理由はない。
オ 原告は、本件店舗における原告の管理著作物である楽曲の1日当たりの演奏曲数は10曲を下らないと主張する。
しかし、本件店舗は、客とホステスの会話を中心としたラウンジであり、カラオケは一応置いてあるものの、歌う客はほとんどおらず、カラオケは、多く使って、1か月に10曲程度である。3回の実態調査のうち被告が店に出ていた平成11年7月16日の調査時には、原告の関係者が6人もの人数でやって来て、
めいめいが自らカラオケを歌っただけでなく、店のホステスや他の客を故意に扇動して、必要以上にカラオケを歌わせていたものであり、このような調査結果をもとに1日当たりの演奏曲数が10曲を下らないとする原告の主張は、不当である。
(3) 請求原因(3)の事実は否認し、主張は争う。
(4) 請求原因(4)の事実は否認し、主張は争う。
仮に、被告に損害賠償義務があるとすれば、原告とDの間の音楽著作物利用許諾契約によってDが原告に支払うべき著作物使用料が月額4500円であるから、それと同額の月額4500円に被告が営業を行っていた13か月を乗じた5万8500円の限度にとどまる。
理 由1 請求原因(1)は、当事者間に争いがない。
2ア 請求原因(2)アのうち、被告が本件店舗において、平成10年2月から平成11年2月までの13か月間、営業を行っていたこと、同(2)イのうち、被告が、本件店舗が開店した平成3年11月15日以降、本件店舗を家主から賃借していたこと、飲食店を営業するためには、保健所の営業許可を得なければならないところ、
本件店舗の営業許可は被告の子であるCの名義で取得され、平成11年5月6日、
営業許可の名義がDに変更されたこと、同年7月16日の実態調査の時点で、被告が本件店舗におり、「ママ」と呼ばれ、飲食代金の送金先として被告名義の銀行口座が指定されていたこと、平成3年11月15日から平成8年までの5年間、カラオケ装置のリース契約の当事者の名義は、本件店舗の家主であったが、平成8年のカラオケ装置の入替えに際して、リース契約の当事者の名義が被告に変更されたこと、被告が、平成11年9月、本件店舗のカラオケ装置をカラオケ業者に引き上げさせたことは、当事者間に争いがない。
これらの当事者間に争いのない事実と、甲第4ないし第8号証、第9号証の1、2、第10ないし第12号証、第13号証の1、2(後記の信用することができない部分を除く。)、第14号証、第20号証及び第21号証の各1、2(後記の信用することができない部分を除く。)、第22ないし第26号証、乙第1号証(後記の信用することができない部分を除く。)、証人Hの証言、被告本人尋問の結果(後記の信用することができない部分を除く。)並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(ア) 被告は、平成3年11月ごろ、家主との間で賃貸借契約を締結し、本件店舗を借り受けた。
本件店舗に設置されたカラオケ装置については、家主を当事者とするリース契約が締結され、本件店舗における営業に使用された。平成8年、カラオケ装置が新しいものに入れ替えられ、リース契約の当事者が、家主から被告に変更された。
本件店舗が飲食店として営業するために必要な保健所の営業許可は、被告が、被告の子であるCの名義を用いて取得した。なお、Cは、本件店舗の経営には無関係であった。
本件店舗は、平成3年11月15日、開店し、被告は、開店後、本件店舗に出て接客等の営業活動を中心となって行った。本件店舗においては、ホステスなどの社交員が客を接待し、酒類を主とする飲食を提供するかたわら、原告の管理著作物に含まれる楽曲を、カラオケ装置の伴奏により従業員又は顧客等に歌唱させて演奏し、来集した不特定の客に聞かせるという営業が行われていた。本件店舗において被告と共に接客等を中心となって行っていたのは、平成3年11月15日から平成7年11月まではEであり、同月から平成9年8月まではFであり、同月から平成10年2月まではGであり、平成11年2月からはDであった。
平成11年7月16日、原告から委託を受けた調査員が、本件店舗で実態調査を行った際、被告は「ママ」として接客等を指揮しており、飲食代金の送金先は、被告名義の銀行口座に指定されていた。
平成10年7月13日、原告の職員が本件店舗の従業員に尋ねたところ、
経営者は「I(A及びCの姓)」である旨の返答を得た。被告は、平成11年3月9日、原告の職員に対し、電話で、本件店舗の経営は自分が行っており、Cは関係がない旨述べた。同年4月13日、原告の職員が家主に電話をした際、家主は、本件店舗の経営者が被告であると認識している旨述べた。
(イ) 原告は、平成11年1月20日、Cを債務者として、本件店舗におけるカラオケ装置を用いた原告の管理著作物である楽曲の演奏の差止め等を求め、当庁に仮処分を申立てた(当庁平成11年(ヨ)第20009号)。Cは、自分は本件店舗の経営者ではなく、仮処分事件に関係ない旨の答弁書を提出した。同年4月12日の審尋期日には、Cと被告が出頭し、Cは、本件店舗の経営に無関係である旨述べ、被告は、Cは本件店舗の経営に関係がない旨述べた。原告は、その後、Cに対する仮処分を取り下げた。
平成11年5月6日、本件店舗における飲食店の営業許可の名義が、CからDに変更された。
原告は、平成11年8月25日、被告を債務者として、本件店舗におけるカラオケ装置を用いた原告の管理著作物である楽曲の演奏の差止め等を求め、当庁に仮処分を申立てた(当庁平成11年(ヨ)第20064号)。同年9月9日の審尋期日には、被告が出頭し、被告は、本件店舗は同年4月からDが経営していること、同年8月の仮処分申立て後、リース業者にカラオケ装置の撤去を申し入れ、同年9月6日、カラオケ装置を撤去したことなどを述べた。
平成11年9月6日、本件店舗にカラオケ装置をリースしていたBMBミュージックは、被告の申入れを受け、本件店舗からカラオケ装置を撤去した。
平成11年11月25日ごろ、株式会社第一興商のリースにより、本件店舗にカラオケ装置が設置された。
原告は、平成11年12月3日、株式会社第一興商大阪支店を通じて、同年11月25日以降の本件店舗における管理著作物である楽曲のカラオケ装置の伴奏による利用につき、Dを申込人とした音楽著作物利用許諾契約申込書の提出を受け、平成12年6月8日及び同年9月22日にも、Dから、平成11年5月以降の本件店舗における管理著作物の利用につき、同人を申込人とした音楽著作物利用許諾契約申込書の提出を受けた。
平成12年12月13日、Dが、原告に対し、平成11年5月12日から平成12年12月31日までの使用料相当額を平成13年1月20日までに支払うことを約し、原告は、Dとの間で、本件店舗における管理著作物の利用につき、音楽著作物利用許諾契約を締結した。
平成12年8月28日、調査員が本件店舗の実態調査を行った際、本件店舗の従業員は、D及び被告の両名が共にママであり、被告は厨房に入って店にいる旨を述べ、同年9月8日、調査員が本件店舗の実態調査を行った際、従業員は、Dを「レギュラーの女の子です」と紹介した。
平成12年9月30日及び同年10月7日、調査員により、被告が本件店舗に出店するのが確認された。
以上の事実が認められる。
イ 前記ア(ア)の認定事実によれば、少なくとも平成3年11月15日から平成11年5月11日までの間において、本件店舗の経営者は被告であったものと認められる。
前記ア(イ)の認定のとおり、平成11年5月6日、本件店舗における飲食店の営業許可の名義がCからDに変更されたこと、被告が、同年9月6日、カラオケ装置をリース業者に撤去させたこと、平成12年12月13日、Dが原告との間で、本件店舗における管理著作物の利用につき、音楽著作物利用許諾契約を締結したことは認められる。しかし、前記ア(イ)の認定によれば、被告が、平成11年5月以降も、本件店舗に出店し、店の中心的な存在として接客等を行っていることが推認されるから、前記の営業許可の名義変更、カラオケ装置の撤去、Dによる音楽著作物利用許諾契約の締結は、被告が、仮処分の申立てを受け、本件店舗におけるカラオケの使用が差し止められるのを防ぐために取った措置によるものと推認され、これにより、被告が経営者であることが否定されることはないというべきである。
ウ 被告は、本件店舗を、E、F、G、Dに転貸していたと主張し、甲第13号証の2(当事者照会回答書)、第20号証及び第21号証の各2(民事事件期日報告書)、乙第1号証(被告作成の陳述書)には、それに沿う記述があり、被告本人尋問の結果中には、それに沿う供述がある。
しかし、転貸借契約の契約書や転貸料の支払を裏付ける書類の提出は一切ない。被告の主張によっても、被告は、E、Dが転貸を受けていた時期には店に出て接客等を行っていたのであるし、甲第13号証の2においては、F、Gが転貸を受けていた時期に、客の紹介料として飲食代金の10パーセントを収受していた旨を被告訴訟代理人が回答しており、被告が本件店舗の営業に深くかかわっていたことは、否定されない。また、本件店舗に在店した期間は、Eが約4年1か月、Fが約1年9か月、Gが約6か月であり、これらの者が交代しても、本件店舗は営業を続けていたものである。被告は、被告の年齢や景気の低迷を本件店舗を転貸した理由として主張するが、本件店舗を自ら経営せずに転貸する理由としては合理性が薄弱である。むしろ、前記のとおり本件店舗の営業に深くかかわっていたのであれば、
被告が本件店舗を経営していたと評価することができる。また、前記ア(イ)の認定のとおり、本件店舗の実態調査の際、Dは、調査員に、「ママ」又は「レギュラーの女の子」として紹介されていた。前記ア(ア)の認定事実に、これらの事情を合わせ考えると、本件店舗を、E、F、G、Dに転貸していたという被告の主張は、採用することができず、それに沿う各証拠の記述、供述は、信用することができない。そして、E、F、G、Dは、転借人ではなく、常雇いの従業員又は共同経営者であったものと推認される。
エ(ア) 甲第22ないし第24号証、証人Hの証言及び弁論の全趣旨によれば、
本件店舗における原告の管理著作物である楽曲の1日当たりの演奏曲数は、10曲を下らず、本件店舗の営業日数は、1か月平均20日を下らなかったことが認められる。
(イ) 被告は、本件店舗において、カラオケを歌う客はほとんどおらず、カラオケは、多く使っても1か月に10曲程度である旨主張し、乙第1号証及び被告本人尋問の結果中には、それに沿う陳述もある。
しかし、前記ア(イ)の認定のとおり、本件店舗においては、平成11年9月6日にカラオケ装置が撤去されたが、約2か月半後の同年11月25日ごろには、再びカラオケ装置が設置された。また、甲第22ないし第24号証によれば、
調査員の歌唱を除いても、平成11年7月16日の調査時には、3時間の間に27曲、平成12年8月28日の調査時には、2時間30分の間に12曲、同年9月8日の調査時には2時間25分の間に17曲の歌唱が行われたこと、本件店舗の営業時間が、平日でも1日6時間であること、従業員等により、カラオケ装置の操作、
歌唱の誘引、早見目次集の配布、従業員の歌唱などが行われていたことが認められる。さらに、被告本人尋問の結果によれば、本件店舗において、カラオケ装置のリース料として、1か月5万円程度が支払われていることが認められる。これらの事実に鑑みると、1日平均少なくとも10曲の歌唱が行われていたと認めることができる。
(ウ) 被告は、平成11年7月16日の調査時には、原告の関係者が、ホステスや他の客を故意に扇動して必要以上にカラオケを歌わせていたと主張し、乙第1号証及び被告本人尋問の結果中には、それに沿う陳述もある。
しかし、そのような事実を認めるに足りる証拠はない。また、平成11年7月16日の調査時には、3時間の間に調査員の歌唱を除いても27曲の歌唱が行われていたのであり、仮に調査員の関与によって通常以上の歌唱が行われた可能性があり、その影響を除いて考えるべきだとしても、本件店舗の営業時間が、平日でも1日6時間であることに鑑みれば、 1日平均少なくとも10曲の歌唱が行われていたことは、優に認めることができ、被告のこの点に関する主張は、採用することができない。
3 請求原因(3)について検討する。
被告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、被告は、20歳代のころからクラブ等でホステスとして稼働し、本件店舗の開店前に、自ら、ピアノ演奏を行うクラブを経営したこともあると認められるから、本件店舗の開店時に、クラブ等における音楽著作物の利用について音楽著作物利用許諾契約の締結及び著作物使用料の支払が必要であることを知っていたものと推認できる。また、著作物を公に演奏する権利を著作者が専有すること及び著作権の保護期間は著作権法の定めるところであり、昭和63年3月15日、最高裁判所が「スナック等の経営者が、カラオケ装置と音楽著作物たる楽曲の録音されたカラオケテープとを備え置き、客に歌唱を勧め、客の選択した曲目のカラオケテープの再生による伴奏により他の客の面前で歌唱させるなどし、もって店の雰囲気作りをし、客の来集を図って利益をあげることを意図しているときは、同経営者は、当該音楽著作物の著作権者の許諾を得ない限り、客による歌唱につき、その歌唱の主体として演奏権侵害による不法行為責任を免れない」旨の判決を言い渡し(最高裁判所昭和59年(オ)第1204号同63年3月15日第3小法廷判決・民集42巻3号199頁)、同判決が当時マスコミ等により報道されたことは当裁判所に顕著である。したがって、仮に被告が、本件店舗開店時に、カラオケ装置により他人が著作権を有する音楽著作物を無断で演奏することが著作権侵害に当たることを知らなかったとしても、法を知らなかったことを理由に過失を免れるものではない。さらに、弁論の全趣旨によれば、本件店舗のような店でカラオケ伴奏による歌唱により演奏される曲の多くは、近年一般の人気を博している曲であり、これらは、著作権の保護期間内のものである蓋然性が高く、かつこのことは一般に周知のことであると推認されるから、仮に演奏された個々の音楽著作物が保護期間内のものか否かを被告が知らなかったとしても、知らなかったことにつき過失があったものといわざるを得ない。
したがって、被告は、本件店舗において、原告の著作権を侵害することを知りながら、又は少なくとも過失により知らないで、原告の管理著作物を演奏したことにより原告の著作権を侵害したものであるから、これにより原告が被った損害を賠償すべき義務がある。
4 請求原因(4)について検討する。
ア 甲第1ないし第3号証、第22ないし第24号証及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
原告は、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」に基づき、「著作物使用料規程」及び「著作物使用料規程取扱細則」を定め、文化庁長官の認可を受けていたが、これによると、原告の管理著作物の1曲当たりの著作権等の行使につき通常受けるべき金銭の額である使用料は、社交場における演奏等については、業種、演奏の方法、店舗の座席数(面積)、標準単位料金(社交場をその営業の目的に従って利用する場合に客1人当たりにつき通常支払うことを必要とされる税引き後の料金相当額をいい、その基準については「著作物使用料規程取扱細則」に定める。)等によって類別区分された料金表により算出された金額に消費税相当額を加算した額とされる(「著作物使用料規程」第2章第2節5)。
本件店舗は、業種が、バー、クラブ、カフェーなど酒類の提供を主たる目的とするものであって、ホステス等の社交員の接待が通常伴うもの(業種2)に該当し、座席数が40席(60u)まで、標準単位料金が5000円を超え1万円までに該当するから、カラオケ伴奏による歌唱1曲1回使用時間5分までの使用料は、
「著作物使用料規程」第2章第2節別表16の1により110円である。
以上の事実が認められる。甲第26号証(音楽著作物利用許諾書)には、本件店舗の業種について、「業種03:スナック、パブ、居酒屋、ビヤホールなど」と記載されているが、甲第22ないし第24号証、乙第1号証(前記の信用することができない部分を除く。)及び被告本人尋問の結果(前記の信用することができない部分を除く。)によれば、本件店舗の営業の実態は、ホステス等の社交員の接待が通常伴うものであり、前記のとおり「業種2」に該当するものと認められる(なお、「業種2」、「業種3」のいずれであっても、「著作物使用料規程」第2章第2節別表16の1が適用される。)。
イ 被告は、原告とDの間の音楽著作物利用許諾契約において定められた著作物使用料を損害額算定の基礎とする旨主張する。
しかし、原告の本訴請求に係る使用料の算定根拠は、適法に文化庁長官の認可を受けた「著作物使用料規程」に基づくもので、同規程に定められた使用料額が過大なものであると認めるべき証拠はない。また、甲第4号証、第25、第26号証によれば、原告とDの間の音楽著作物利用許諾契約は、包括的使用許諾契約であり(音楽著作物利用許諾契約条項第2条)、包括的使用許諾契約を締結する場合は、音楽著作物の利用者に、@著作物使用料を管理著作物の利用の有無及び回数にかかわらず支払うこと(同第4条)、A規定使用料若しくは割引使用料、又は遡及分使用料の支払を遅滞したときは、支払期限の翌日から完済に至るまで、当該債務のほかに年20パーセント(1年を365日とする日割計算)の割合による違約金を支払うこと(同第10条)、B原告の請求に従い、その指定する方法により、原告に対し、許諾書記載の利用場所における利用曲目を記録して提出すること(同第12条)などの義務が課されており、その反面として月額使用料が定められているものと認められる。そうすると、包括的使用許諾契約における月額使用料についての定めを、同契約を締結していない被告に適用すべき根拠はなく、被告のこの点に関する主張は、採用することができない。
ウ 前記2エ(ア)、4アの認定事実に基づき損害額を計算すると、損害額は、次の@ないしCの合計204万9390円(1万4720円+145万0240円+57万7500円+6930円=204万9390円)であると認められる。
@ 平成3年11月15日から同月30日まで(営業日数13日、消費税3パーセント) 110円×10曲×13日×1.03=1万4720円(10円未満切り捨て) A 平成3年12月から平成9年3月まで(営業期間64か月、消費税3パーセント) 110円×10曲×20日×64か月×1.03=145万0240円 B 平成9年4月から平成11年4月まで(営業期間25か月、消費税5パーセント) 110円×10曲×20日×25か月×1.05=57万7500円 C 平成11年5月1日から同月11日まで(営業日数6日、消費税5パーセント) 110円×10曲×6日×1.05=6930円 したがって、原告は、被告に対し、著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき、204万9390円及びこれに対する不法行為の後である平成13年1月28日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。
5 よって、本訴請求は理由があるから、これを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を、仮執行の宣言につき同法259条1項を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 中平健
裁判官 田中秀幸
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