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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20ワ11762著作権侵害差止等請求事件 判例 特許権
平成9ワ12402約定金請求事件 判例 特許権
平成10ワ10259損害賠償請求事件 判例 特許権
平成24ワ5771著作権侵害差止請求権不存在確認等請求事件 判例 特許権
平成12ワ10231慰謝料請求事件 判例 特許権
関連ワード 創作性 /  アイデア /  プログラムの著作物 /  翻案 /  同一性 /  類似性 /  データベース /  複製権 /  登録 /  著作権侵害 /  差止 /  損害賠償 / 
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事件 平成 11年 (ワ) 12875号 損害賠償等請求事件
原告 シーエーエヌ株式会社
訴訟代理人弁護士 中井克洋
同 奥苑泰弘
同 山本英雄
被告 株式会社ドッドウェルビー・エム・エス
訴訟代理人弁護士 石本哲敏
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2002/04/23
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告は、被告が販売している「自治体専用 公共土木設計積算システム」と称するプログラム(以下「被告ソフト」という。)を複製・頒布・翻案してはならない。
2 被告は、別紙「営業秘密目録」記載の営業秘密(以下「本件営業秘密」という。)を、被告ソフトの作成・製造・販売に使用し、又はこれを開示してはならない。
3 被告は、本件営業秘密を使用して開発製造した被告ソフトを廃棄せよ。
4 被告は、原告に対し、金5605万円及びこれに対する平成11年10月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は、「公共工事設計積算システム」と称するプログラム(以下「原告ソフト」という。)の著作権を有している原告が、被告に対し、@被告ソフトの作成、販売は、原告ソフトについての原告の著作権(複製権翻案権)を侵害するとして、被告ソフトの複製・頒布・翻案差止めを請求し、A被告は、原告ソフトに関する本件営業秘密が不正に取得されたことにつき悪意若しくは重過失でこれを取得し(不正競争防止法2条1項5号)、又は本件営業秘密の取得後に、本件営業秘密について不正取得行為が介在したことにつき悪意若しくは重過失で本件営業秘密を使用若しくは開示した(同項6号)として、本件営業秘密の使用及び開示の差止め並びに原告ソフトを使用して開発した被告ソフトの廃棄を求め、B著作権侵害又は不正競争防止法4条に基づく損害賠償を請求している事案である。
1 争いのない事実等(証拠の掲記のないものは当事者間に争いがない。) (1) 原告は、昭和62年から63年にかけて、原告ソフトの創作開発を開始した。A、B、C、D、E(上記5名を併せて「Aら5名」という。)は、昭和63年から平成5年にかけて原告会社に入社し、原告の職務として、原告ソフトの開発や顧客への営業を行ってきた。原告ソフトの著作権は原告に帰属する。
原告ソフトは、開発言語として「dbマジック」を用いており、市町村が道路等の土木工事を民間に発注する際に入札の前提となる予定価格を公正に計算したり、その基礎となる単価や歩掛かりの情報を処理するためのものであり、具体的には土木積算ソフト、業務積算ソフト、切取り盛土ソフトがある。
Aら5名は、平成7年7月22日ころ、株式会社ジェイソフト(旧商号:日本コンピューターシステム株式会社。以下「ジェイソフト」という。)の代表者と共謀して、原告ソフトを無許可で複製した。
Aら5名は、その後、平成7年7月から平成8年1月にかけて次々に退社してジェイソフトに入社し、平成7年12月ころから、原告ソフトを無断複製したものをジェイソフトが開発したソフトウエアとして各市町村に営業販売した(以下、このソフトを「dbマジック版複製ソフト」という。)。
なお、Aら5名は、上記複製行為について著作権法違反で起訴され、平成11年3月24日、罰金刑の宣告を受け(広島地方裁判所平成9年(わ)第705号)、控訴及び上告したものの、同罰金刑は確定した(甲1、5)。
(2) ジェイソフト及び被告は新規に自治体向けの積算システム(被告ソフト)を共同で開発する旨の合意をし、C、B、Dらの関与のもとで、平成10年2月までの間に、原告ソフトの開発言語である「dbマジック」を用いるのではなく、
「Oracleデータベース」をベースとし、その開発及びプログラミングに際しては、プログラミング言語「VisualBASIC」、同「VisualC++」のほか、Oracle社の「Developer2000」という開発ツールを用いて被告ソフトを作成した(乙3の1・2)。
ジェイソフトは、被告ソフトにつき、平成10年7月14日、財団法人ソフトウエア情報センターにおいて、同年3月10日に創作した旨の創作年月日の登録を受けた上で(乙1)、これを自治体に販売した(なお、原告は、ジェイソフトの販売行為について被告が協力関係にあったと主張している。)。
被告は、平成11年2月15日、ジェイソフトから、被告ソフトの著作権を譲り受けてその旨の登録を了し、これを販売するようになった。なお、Aら5名のうちEを除く4名は、被告に雇用されている。
2 争点 (1) 被告ソフトは、原告ソフトを複製ないし翻案したものか。
(2) 被告は、原告ソフトの著作権を侵害する行為をしたか。
(3) 被告は、原告ソフトに関する本件営業秘密が不正に取得されたことにつき悪意若しくは重過失でこれを取得し、又は本件営業秘密の取得後に、本件営業秘密について不正取得行為が介在したことにつき悪意若しくは重過失で本件営業秘密を使用若しくは開示したか(不正競争防止法2条1項5号、6号)。
(4) 損害の発生及び額
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(被告ソフトは、原告ソフトを複製ないし翻案したものか。)について 〔原告の主張〕 ジェイソフト及び被告会社が原告ソフトにアクセスしたこと、被告ソフトは、原告ソフトとの間に実質的同一性、実質的類似性があることは、以下の(1)、(2)の事情から明らかであるから、被告ソフトは、原告ソフトの重要部分をプログラム言語とデータベースエンジンを変えただけの無断複製若しくは無断翻案であると推定できる。
(1) 原告ソフトと被告ソフトの同一性類似性について 次のア〜ウの事情に照らせば、原告ソフトと被告ソフトは偶然を超えた類似性を示していることは明らかである。
ア 条件値のチェック方法 原告ソフトにおいては、@使用条件のチェック(あらかじめ選択された「条件」を使用不可能にする機能)、A関連チェック(他の条件との整合性のない条件が入力されないようにする機能)、B範囲チェック(実数入力の場合に、入力値の範囲をチェックする機能)の3種類のチェック方法を準備したが、被告ソフトにおいても、同じ3種類のチェック方法が用いられている。
イ 仕様書(金抜き設計書)の出力禁止情報の制御方法 公共土木工事の設計積算において、官公庁の内部資料においては、入札条件を出すために出力しなければならないが、入札にかけるために業者に対して渡す仕様書においては、自治体のコードブックによって秘すべきことが指定されている使用機械や単価の計算方式等を秘したもの(金抜き設計書)を作成しなけばならないことがあり、一定の情報を出力禁止情報としてこれを制御する必要がある。
原告ソフトは、この出力禁止情報の制御方法について、次の(ア)、(イ)の課題ないし特徴を有しているが、被告ソフトでもこれらの点で同じである。
(ア) 自治体コードブックによれば、「名称」「規格1」「規格2」「摘要」のほか「条件値名称」についても出力禁止処理を要することがあるが、「条件値名称」については出力禁止情報の制御機能を有していない。
(イ) 「名称」「規格1」「規格2」「摘要」のそれぞれについて、区切り文字(区切り文字以降のデータについて出力禁止処理がなされる。区切り文字の既定値は「;」)を個別に設定できるようになっているが、これは例外的な構造である。
ウ 既定値の表記及び処理内容について 既定値(Default Value)とは、ある項目に値を入力する際に、特別に何も入力しない場合には当然にその値(既定値)が表示されるものであり、最も入力される可能性が高い値を設定しておくことにより、入力の手間を省くために使用される値のことである。この既定値について、原告ソフトと被告ソフトでは次の(ア)、(イ)の共通点がある。
(ア) 正しくは「既定値」と漢字表記すべきところを、「規定値」と表記されている部分がある。
(イ) 既定値の設定について、施工単価表に指定された単価の記載がない場合等において、基礎単価若しくは損料等を読み込んで設定するという処理が行われている。
なお、「基礎単価」という用語自体、原告ソフトの作成に当たって使用した原告の特殊な用法であり、また、施工単価表において、一定の場合に指定された単価の記載がなく個別に入力する場合があるということも、一定の官公庁において特に定められた方式であって、長年官公庁からの発注によりそうしたノウハウを有する原告のみが上記(イ)記載のような機能を有するシステムを構築できたものというべきであるから、被告ソフトが原告ソフトに依拠して作成されたことを示すものである。
(2) 被告ソフトの開発等に関する以下の経緯は、被告ソフトが原告ソフトを複製ないし翻案したものであることを示すものである。
ア 原告ソフトを無断複製したA、B、C、Dの4名は、現在被告会社に雇用されている。
イ 原告会社は、現在の原告ソフトを開発するのに、昭和62年から10年以上を要したものであるから、被告が平成9年1月ころから平成10年2月ころまでに被告ソフトを独自に開発することは不可能である。
被告ソフトの作成は、原告ソフトを無断複製した原告の元社員のCらが手がけたものであり、しかも、Cらは平成9年9月ころからdbマジック版複製ソフトに係る刑事事件で捜査、逮捕されているから、上記の開発期間はさらに短くなる。さらに、被告は平成9年版の自治体のコードブックに従ったと主張するが、自治体のコードブックは少なくともその年の6月末から7月にならなければ入手できないものであるから、自治体のコードブックを入手してから、上記の捜査、逮捕時期までの短期間に被告ソフトを開発することは不可能であり、このことは、平成9年版の自治体のコードブックに従ったとの被告主張が虚偽であることを示すものともいえる。
また、平成8年6月14日に広島地方裁判所における証拠保全手続により保全されたプログラムの中に、被告ソフトが使用できる形にデータをコンバートするためのプログラムが含まれていたから、被告は、少なくとも平成8年6月ころから、dbマジック版複製ソフトに依拠して、dbマジック版でプログラムを組んだ後に、翻案をわかりにくくするために、データベースをオラクル版、開発言語を「Developer2000」にして被告ソフトを作成したことが明白である。
ウ 平成9年9月16日にジェイソフトが著作権侵害事件が強制捜査された際に、「Developer2000」版のプログラムとパソコン、プリンターが差し押さえられた。
エ 被告ソフトの自治体向けの提案書(甲8)は、ジェイソフトがdbマジック版複製ソフトを販売するに当たって作成した自治体向け提案書(甲7)とは、
システム概要や序文、システム説明文の内容、項目の並びがほとんど同じであり、
句読点、「てにをは」、接続詞を若干変えているが、内容は完全に一致している。
オ 被告ソフトの購入自治体は、ジェイソフトのdbマジック版複製ソフトの販売先であったところであり、しかも被告ソフトの営業活動は、ジェイソフトの担当者であったAらが行っている。
〔被告の主張〕 被告ソフトは、被告及びジェイソフトが独自に開発したものであって、原告ソフトを無断複製ないし無断翻案したものではない。原告ソフトと被告ソフトは、
そもそも異なる言語、開発ツールを用いて作成されており、この点で決定的に異なっている。原告が主張する原告ソフトと被告ソフトの同一性類似性及び被告ソフトの開発等に関する経緯は、以下に述べるように、いずれも、被告ソフトが原告ソフトを無断複製ないし無断翻案したものであることを基礎付けるものではない。
(1) 原告ソフトと被告ソフトの同一性類似性について ア 条件値のチェック方法について 原告ソフト及び被告ソフトが、@使用条件のチェック、A関連チェック、B範囲チェックの3種類のチェック方法を用いていることは認める。
しかし、上記3種類のチェック方法が用いられているのは、それが準拠した自治体のコードブック(平成9年版)に記載された3種類のチェック方法に従ったためにすぎない。
イ 仕様書(金抜き設計書)の出力禁止情報の制御方法について (ア) 原告ソフトは、Cが原告の従業員として設計した時点では、金抜き印刷を指定すると、「条件値名称」についても出力禁止処理の機能を有していたはずである。また、被告ソフトも、「条件値名称」についても出力禁止処理の機能を有している。
(イ) 区切り文字の設定は、これをシステム全体で行うと個々の項目を出力したいときに対応できなくなるので、区切り文字は個々の項目ごとに設定した方が一般に使い勝手がよく、事後のメンテナンスも楽であるから、むしろ、個々の項目ごとに設定する方が原則である。
ウ 既定値の表記及び処理内容について (ア) 原告ソフト及び被告ソフトにおいて、「既定値」と表記すべきところを「規定値」と表示されている部分があることは認めるが、これは、全くの誤変換によるものである。
なお、原告ソフトに関し原告が提出したソースコード(甲13)では、「既定値」が23か所、「規定値」が12か所ある。一方、被告ソフトのソースコード(乙5)では、「既定値」が48か所であり、「規定値」が1か所しかない。このように、原告ソフトと被告ソフトでは、誤謬の生じ方が全く異なる。
しかも、マイクロソフト社のワード2000(IME2000搭載)によって「きていち」と入力して漢字変換すると、初めに出るのは「規定値」の語であることや、コンピュータ関連のホームページの多くも「規定値」の表記を誤用していることからすると、「既定値」とすべきところを「規定値」と誤表記したことも、やむを得ないものである。
(イ) 原告の「基礎単価」に関する主張は、原告ソフトと被告ソフトとで「基礎単価」に関する処理が具体的にどのような形で扱われているかを比較するものではなく、原告ソフトと被告ソフトの類似性に関する主張としては特定に欠ける。
なお、「基礎単価」なる語は、原告ならではの特殊な用法ではなく、
多数の設計積算ソフトが使用している。
(2) 被告ソフトの開発等に関する経緯について ア 原告の主張(2)ア記載の事実は認める。
イ 同イ記載のうち、Cらが被告ソフトを開発したことは認めるが、その余の事実は否認し争う。
原告が原告ソフトの完成に要した期間は約1年であり、その後はこれを改良したにすぎない。
また、dbマジック版複製ソフトに係る刑事事件で捜査、逮捕された者は、平成9年9月16日から同年11月中旬までの2か月弱の間、開発の作業ができなかったにすぎない。被告ソフトが完成したのは平成10年2月であり、この間十分な開発期間が取れる。
ウ 同ウ記載の事実は認める。ただし、ジェイソフトは保有していた全パソコンが押収されたのであって、オラクル(Oracle)版のプログラムが記録されたものがことさらに捜索対象とされたものではない。
エ 同エ記載の事実について、同事実が被告ソフトが原告ソフトを複製ないし翻案したことの根拠事実となることについては争う。
被告ソフトの自治体向けの提案書(甲8)と、dbマジック版複製ソフトの同提案書(甲7)の内容が似ていたとしても、提案書はプログラムの達成しようとする目的を記載したものにすぎず、そのことと、被告ソフトが原告ソフトを複製ないし翻案したものであるということとは別個のことであり、関連性がない。
オ 同オ記載の事実のうち、ジェイソフトのdbマジック版複製ソフトの販売先であった自治体に、被告ソフトが納入されている事実は認めるが、その余の事実は否認する。被告は、被告ソフトを販売しているのではなく、ジェイソフトが販売した被告ソフトの保守をしているにすぎない。
なお、原告の主張(2)ア〜オ記載のような、外部的な経緯や、被告ソフトの自治体向け提案書とdbマジック版複製ソフトの自治体向け提案書との比較によっては、被告ソフトが原告ソフトを複製ないし翻案したものであることが基礎付けられるものではない。原告としては、それぞれのプログラム自体を比較して原告ソフトと被告ソフトの実質的類似性と被告ソフトの原告ソフトへの依拠を具体的に主張、立証すべきである。
2 争点(2)(被告は、原告ソフトの著作権を侵害する行為をしたか。)について 〔原告の主張〕 (1) 被告は、ジェイソフトと共同で、原告ソフトを翻案して被告ソフトを作成し、地方自治体に対し営業活動し、被告ソフトを販売しており、被告の行為は、原告ソフトの著作権(複製権ないし翻案権)を侵害する。
(2) また、被告が主張するように、被告が被告ソフトの保守行為を行っていたとしても、同保守行為は、被告ソフトが原告ソフトを翻案したものであることを知って行っているものであるから、同行為自体が原告ソフトの著作権(複製権ないし翻案権)を侵害する行為というべきである。
〔被告の主張〕 (1) 被告は、ジェイソフトと被告ソフトを共同開発する旨の合意をしたが、現実にはジェイソフトの従業員が開発したもので、被告は被告ソフトの開発を行っておらず、結果的には、被告ソフトの著作権はジェイソフトが単独でプログラム登録したものである。
(2) 被告は、別紙「被告の納入先と損害額」記載の自治体に対しては、営業活動も販売行為も行っていない。
上記自治体に対しては、ジェイソフトがdbマジック版複製ソフトについての使用許諾契約を締結して使用許諾料を得たが、その後、ジェイソフトは被告ソフトを開発し、各自治体に納入されていたdbマジック版複製ソフトを被告ソフトと入れ替えた。その後に、被告は、被告ソフトの著作権を譲り受け、被告ソフトの保守をするようになったものである。
なお、被告は、別紙「被告の納入先と損害額」記載の自治体以外の自治体に対して、被告ソフトに関する営業を行うことはあったが、契約に際しては、ジェイソフトが契約主体となって契約使用許諾契約を締結し、使用許諾料を収受している。
3 争点(3)(被告は、不正競争防止法2条1項5号、6号に反する行為をしたか。)について 〔原告の主張〕 (1) 本件営業秘密について 本件営業秘密は、次のア〜ウ記載のとおり、不正競争防止法2条4項の「営業秘密」に該当する。
ア 秘密管理性について 本件営業秘密は、費用と時間が膨大にかかるソフトの開発業務に関わることから、原告の許可なく社内の関与外社員及び社外に開示してはならないことは条理上当然のことである。
原告は、本件営業秘密を従業員らに外部に漏らさないように指導し管理するとともに、就業規則でも業務上の秘密について、他に漏らさないようにという服務心得を規定していた。
イ 非公知性について 本件営業秘密は、原告が独自に開発会得したノウハウであって、一般には全く知られていないものである。
ウ 有用性について 本件営業秘密により作成された本件プログラムは、市町村が道路等の土木工事を民間に発注する際に入札の前提となる予定価格を公正に計算するためのプログラムや、その基礎となる単価や歩掛かりの情報を処理するためのものであり、
手作業で行えば数日間を要するものを数分で行うことを可能にする極めて有用なものである。
(2) 原告会社に昭和63年から平成5年にかけて入社し、原告ソフトの開発や顧客への営業を行って、本件営業秘密を熟知しているAら5名は、原告ソフトを無断複製した後、平成7年7月から平成8年1月にかけて次々と退社し、ジェイソフトに入社した。Aら5名は、その上で、平成7年12月ころから無断複製した原告ソフトをジェイソフトの開発したプログラムソフトとして、各市町村に営業、販売していった。また、平成9年9月16日に、ジェイソフトは、著作権法違反で捜索差押を受けた後、有罪となっている。
さらに、被告ソフトには、上記争点(1)の〔原告の主張〕(2)ア〜オに記載の事情がある。
(3) かかる事情からすれば、被告会社は、Aら5名による本件営業秘密の不正手段による取得行為につき悪意若しくは重過失で取得し(不正競争防止法2条1項5号)、又は、本件営業秘密の取得後に不正取得行為が介在したことが悪意若しくは重過失でありながら、平成11年2月15日以降も使用若しくは開示したこと(同項6号)は明らかである。
〔被告の主張〕 原告の主張は争う。
4 争点(4)(損害の発生及び額)について 〔原告の主張〕 (1) 被告会社は、別紙「被告の納入先と損害額」記載のとおり、被告ソフトのうち「土木積算ソフト」を山口市ほか9市町村に対し1個当たり235万円で17個(合計3995万円)、「業務積算ソフト」を山口市ほか6市町村に対し1個当たり195万円で8個(合計1560万円)、「切取り盛土ソフト」1個を大崎町に対し50万円で販売し、合計5605万円の利益を得た。
(2) 被告会社の原告ソフトの著作権侵害行為ないし不正競争防止法2条1項5号、6号該当の不正競争行為により被った原告の損害は、上記5605万円と推定される(著作権法114条1項、不正競争防止法5条1項)。
〔被告の主張〕 (1) 被告は、原告の主張する自治体に対して被告ソフトを販売していない。販売したのは、ジェイソフトである。
被告は、平成11年2月15日にジェイソフトから被告ソフトの著作権を譲り受けたものであり、それ以前は、被告において被告ソフトの販売ないし使用許諾契約を締結して代金を受領する立場にない。
(2) 被告は、原告の主張する自治体に対し、被告ソフトとハードウエアの保守の業務を提供しているにすぎないから、被告ソフトの販売価格をもって被告の利益とし、その金額を原告の損害として請求することはできない。
また、原告の主張する被告ソフトの販売価格も否認する。
争点に対する判断
1 争点(1)(被告ソフトは、原告ソフトを翻案したものか。)について (1) 原告ソフトと被告ソフトのソースコードの比較について ア 著作権法により保護される著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」(同法2条1項1号)とされているように、著作権法は、創作性ある「表現」を保護の対象としている。しかも、プログラムの著作物(同法10条1項9号)に対する保護は、その著作物を作成するために用いる解法(プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法)に及ばない(同法10条3項)とされている。
したがって、プログラムの著作物は、プログラムの創作性ある「表現」について著作権法上の保護が及び、「表現」されたものの背後にある原理、アイデア等についてはその保護が及ぶものではないと解される。
原告は、原告ソフトと被告ソフトとが類似することの根拠として、@条件値のチェック方法、A仕様書(金抜き設計書)の出力禁止情報の制御方法、B既定値の表記及び処理内容を指摘するが、既定値の表記に関する主張事項を除けば、
いずれもプログラムの表現上の類似点ではなく、アイデアに属する部分の類似点であるというべきである。
しかしながら、原告ソフト及び被告ソフトにおけるこうした類似性も、
プログラムの表現上の類似性を示す徴表となり得る余地があるので、以下検討する。
イ 条件値のチェック方法について (ア) 原告ソフト及び被告ソフトは、いずれも、@使用条件のチェック(あらかじめ選択された「条件」を使用不可能にする機能)、A関連チェック(他の条件との整合性のない条件が入力されないようにする機能)、B範囲チェック(実数入力の場合に、入力値の範囲をチェックする機能)の3種類のチェック方法を用いていることは争いがない。
(イ) しかしながら、乙9によれば、広島県等の公共土木のコードブックにおいて、使用条件チェックとして「A条件33〜36のみ計上」、関連チェックとして「C<3、H<3のときはエラーとなる」、範囲チェックとして「範囲:1〜36か月」などの表現により、3種類のチェック方法が記載されていることが認められ、これによれば、上記3種類のチェック方法は上記のコードブックの記載に従い、これを被告ソフトに取り込んだものと解する余地があり、そうすると、3種類のチェック方法は誰がプログラムを作成しても同じようになる部分というべきであるから、上記の事実関係から、直ちに、被告ソフトが原告ソフトが有するユニークな特徴点において類似するとすることはできない。
ウ 仕様書(金抜き設計書)の出力禁止情報の制御方法について (ア) 乙9によれば、Cが、原告の従業員として原告ソフトを設計した時点で、「条件値名称」に区切り文字による制御の機能を持たせなかったのは、原告ソフトでは、仕様書(金抜き設計書)を印刷する際に条件値や条件値名称の項目を出力しておらず、出力しない項目に区切り文字による制御の機能を設けても意味がないからであること、被告ソフトも同様の理由から「条件値名称」には区切り文字による制御の機能を有していないことが認められる。
そうすると、原告ソフトと被告ソフトが「条件値名称」に区切り文字による制御の機能を有していない点で共通するとしても、それは、仕様書(金抜き設計書)を印刷する際には条件値や条件値名称の項目を出力させないことから当然に導かれるものであり、原告ソフトの特徴的な機能とはいえない。
(イ) また、原告は、原告ソフト及び被告ソフトにおいて、出力禁止情報の制御に用いる区切り文字(既定値は「;」)を個別に設定できるようになっているという共通点があると主張する。
そして、甲22、乙9によれば、岡山県や広島県のコードブックには「;」記号以降のデータを秘すように指示されていることが認められるから、区切り文字として既定値として指定された「;」のみを用いれば十分であり、これを個別に設定できるようにすることは独特の処理方法と見る余地がないでもない。
しかし、乙9によれば、変更の可能性のある項目を予めプログラムで決定してしまうと、変更する際にいちいちプログラムを修正する必要が生じることになるから、こうした項目をシステム上で変更できるようにしてシステムに柔軟性を持たせることは、それほど特殊な処理ではないこと、また、区切り文字を各項目ごとではなくシステム全体で設定すると、ある項目でその区切り文字(例えば、
「;」記号)を出力したい場合に対応できないという不都合が生じることが認められ、こうした事実によれば、原告ソフトにおいて区切り文字を個別に設定できるような機能を有していることが、独特の処理方法であるということはできず、原告ソフトと被告ソフトにおいて、この点が共通することをもって、双方のソフトの類似性を基礎付けるものということはできない。
エ 既定値の表記及び処理内容について (ア) 弁論の全趣旨によれば、原告ソフトに関し原告が提出したソースコード(甲13)では、「既定値」が23か所、「規定値」が12か所あり、一方、
被告ソフトのソースコード(乙5)では、「既定値」が48か所であり、「規定値」が1か所しかないことが認められ、このことは、原告ソフトと被告ソフトでは、誤謬の生じ方が同一ではないことを示している。
さらに、原告ソフトの条件名称入力の画面(甲19)では、「規定値」と表示されているが、dbマジック版複製ソフトの同画面(甲20)では、中段に「既定値設定方法」、「既定値編集方法」、「既定値編集入力」とあって、
「既定値」という漢字表記が正しく表示され、一方、被告ソフトの同画面(甲21)では、中段左側に「規定値」と誤変換のまま表示されている。このように、条件名称入力の画面について見ても、原告ソフト、dbマジック版複製ソフト及び被告ソフトとでは、誤謬の生じ方が同一ではない。
さらに、乙7、弁論の全趣旨によれば、マイクロソフト社のワード2000(IME2000搭載)によって「きていち」と入力して漢字変換すると、
初めに出るのは「規定値」の語であること、インターネット上の検索サービスで「規定値」をキーワードにして検索すると、コンピュータ関連の多くのホームページにおいて、「規定値」と誤った漢字表記が用いられているとの検索結果が得られることが認められ、このことからすれば、コンピュータソフトにおいて、「既定値」を「規定値」とする誤った漢字表記が用いられることは決して稀なことではなく、原告ソフトと被告ソフトとで、そうした誤った漢字表記がなされていたとしても、そのことから直ちに、被告ソフトが原告ソフトのソースコードに依拠して作成されたことを示すものということはできない。
(イ) また、「基礎単価」を用いることについて、原告は、被告ソフトにおいて、既定値の設定について基礎単価若しくは損料等を読み込んで設定するという処理が行われていると主張するが、当該事実を認めるに足りる証拠はなく、かえって、乙9によれば、被告ソフトにおいてそのような処理は行われていないことが認められる。
さらに、原告は、「基礎単価」という用語自体、原告ソフトの作成に当たって使用した原告の特殊な用法であると主張するが、乙8、9によれば、TIS株式会社の「積蔵」、富士通株式会社「SuperESTIMA」、株式会社システムイン国際の「土木マスター」、有限会社シー・ショップの「楽っかる」、吉井システムリーサーチ株式会社の「明積」、株式会社シフトの「ゴールデンリバー土木」、株式会社ルミテックの「祐子の積算2000」、東京アプリケーションシステム株式会社の「積算システム for Windows Ver2.0」、株式会社コスモブレイン「土木積算システム Windows版」等の設計積算ソフトにおいても、「基礎単価」との用語が用いられていること、財団法人広島県建設技術センターが平成7年に県下の市町村向けに発行している、土木設計積算基準データ等の提供業務についての資料の中にも「基礎単価」という用語が使用されており、「基礎単価」について特別な説明が書かれていないことが認められる。そうすると、「基礎単価」という用語自体は、一般的に積算業務で使用されている用語というべきであって、「基礎単価」の用語が原告ソフトの作成に当たって使用した原告の特殊な用法であるとの原告の主張は理由がない。
オ(ア) なお、被告は、被告ソフトに係るソースコード(乙5)、ストアドプロシジャ及びINIファイル(乙10)を提出し、Oracleテーブル作成スクリプト、実行モジュールを提出していない。
テーブル作成スクリプトとは、データベースのテーブルの構造を示したものであり、これを実行するとデータベース内にデータを保存する領域を確保するものである。
また、実行モジュールとは、「Developer2000」等で作成されたソースコードをコンパイルすることによって作成されるもので、被告ソフトを実行させるためには、この実行モジュールが必要となる。そして、「Developer2000」等で作成されたソースコードが入手できたならば、それを用いて被告ソフトにおける画面フォーム(甲21、24)を再現することはできるが、実行モジュールがなければ、被告ソフトを起動させて、その処理手順を把握することはできない。なお、上記のコンパイルに際してテーブル作成スクリプトが必要となるから、「Developer2000」等で作成されたソースコードを入手したとしても、テーブル作成スクリプトがない状況では、実行モジュールを作成することはできない。
原告は、被告に対し、テーブル作成スクリプト、実行モジュール、ストアドプロシジャ及びINIファイルについて、著作権法114条の2第1項、第3項に基づいて、文書提出(ないし検証物としての提示)を命ずる旨求めたが、このうち、ストアドプロシジャ及びINIファイルについては被告が任意に提出した。残りのテーブル作成スクリプト及び実行モジュールについて、当裁判所は、同法114条の2第2項により被告に提示させた上で、被告にとって保護に値する技術上の秘密に関する事項に該当し、被告は、本件各文書の提出(ないし検証物としての提示)を拒むことについて正当な理由があるというべきであるとして、同申立てを却下した。
したがって、上記の原告ソフトと被告ソフトとのソースコードの比較は、テーブル作成スクリプト及び実行モジュールが提出されない状態で把握できた事実関係に基づくものである。
(イ) しかしながら、上記アで述べたとおり、著作権法はプログラムの創作性ある表現を保護するものであって、アイデアについてまで保護を及ぼすものではない。
そして、プログラムの表現上の類否は、本来ソースコードを対比すれば、複製権ないし翻案権を侵害するものか否かが立証できてしかるべきところ、上記イないしエで検討したとおり、原告ソフトと被告ソフトのソースコードを比較した結果に基づく立証によっても、被告ソフトが原告ソフトを複製ないし翻案したものであることを認めるには足りないというべきである。
(2) ソースコードを比較した結果によっては、被告ソフトが原告ソフトを複製ないし翻案したものであることが認められないことは前記のとおりであるが、原告は、被告ソフトの開発等に関する経緯は被告ソフトが原告ソフトを複製ないし翻案したものであることを示すものであると主張するので、念のため、この点について検討する。
ア 原告は、原告ソフトを無断複製したA、B、C、Dの4名は、現在被告会社に雇用されていること、平成9年9月16日にジェイソフトが著作権侵害事件が強制捜査された際に、「Developer2000」版のプログラムとパソコン、プリンターが差し押さえられたこと、ジェイソフトのdbマジック版複製ソフトの販売先であった自治体に被告ソフトが納入されていることは当事者間に争いがないが、こうした外部的事情は、直ちに被告ソフトが原告ソフトを複製ないし翻案したことを基礎付けるものとはいえない。
イ(ア) 被告ソフトの開発について、被告ソフトの開発は、原告ソフトを無断複製した元社員のCらが手がけたことは、当事者間に争いがなく、証拠(乙2の1〜8、乙3の1・2)によれば、次の事実が認められる。
a 被告とジェイソフトは、平成9年1月、新規に自治体向けの積算システム(被告ソフト)を共同開発することとなった。
C、Bは、システム設計を担当することとなったが、被告から、全国展開のできるようなシステムを開発して欲しいとの要望が出され、またデータベースに「ORACLE」、開発言語に「Developer2000」を使用してはどうかと提案されたことから、そうした要望や提案に従って開発を進めることとした。
b C、Bは、平成9年2月から、ORACLEとDeveloper2000を試用しながら勉強し、サンプルプログラムの作成やテスト等を行った。
c 平成9年4月から、C、B外1名で、プログラム作成を開始し、同年7月からはもう一人プログラム作成に加わり、開発言語として上記開発言語のほか、プログラミング言語「VisualBASIC」及び同「VisualC++」も使用してプログラム作成が進められた。
また、被告ソフト用のデータ作成は、D外1名が担当した。
d そして、約1年間の開発期間を経て、平成10年2月に被告ソフトが完成した。
(イ) そうすると、被告ソフトの開発に携わったCらは、原告ソフトの開発、顧客への営業を行い、これを無断複製したことがあり、原告ソフトに関する情報を得ていた者ではあるが、上記認定事実のとおり、被告とジェイソフトは、Cらの開発、製作作業を経て、約1年間かけて開発して被告ソフトを作成したものというべきであり、このことは、上記(1)のとおり原告ソフトと被告ソフトの各ソースコードの間に、複製ないし翻案したことを示す同一性類似性が認められないことにも合致するものである。
この点について、原告は、原告が現在の原告ソフトを開発するのに10年以上を要したこと、原告ソフトが被告ソフトの作成に携わったとされるメンバーは、平成9年9月ころからdbマジック版複製ソフトに係る刑事事件で捜査、逮捕されていること、被告が参照したとされる平成9年版の自治体のコードブックは平成9年6月末から7月に入手できるものであることなどを理由に、約1年間という短期間では被告ソフトを独自に開発することはできないと主張する。
しかし、甲11によれば、原告が昭和62年4月に積算システムの開発を開始し、昭和63年3月に積算システム初期バージョンを完成させたこと、その後、OS、開発言語、データベースシステムを変えるなどの仕様変更(バージョンアップ)を重ねて、平成7年2月、原告ソフト(Aら5名によって無断複製されたもの)を完成させたこと、それぞれの仕様変更に要した期間は長いものでも半年以内であったことが認められるから、こうした原告ソフトの開発期間と比較しても、被告ソフトを1年間で独自に開発することが不可能であるということはできない。また、弁論の全趣旨によれば、dbマジック版複製ソフトに係る刑事事件の捜査等で被告ソフトの作成に携わった者が作業できなかったのは、平成9年9月16日から同年11月中旬までの2か月弱の間であったことが認められ、こうした事情のほか、原告が主張するように被告が参照したとされる平成9年版の自治体のコードブックは平成9年6月末から7月にならなければ入手できないものであることを考慮に入れても、コードブック自体は前年度にも発行されており、平成9年版の改訂箇所以外の部分は前年度版を参照しても開発できるのであるから、被告ソフトを1年間で独自に開発することが不可能であるとまで推認するには足りない。
さらに、原告は、平成8年6月14日に証拠保全手続により保全されたプログラムの中に、被告ソフトが使用できる形にデータをコンバートするためのプログラムが含まれていたとの事実を主張するが、当該事実を認めるに足りる証拠はない上、仮にそうした事実があったとしても、そのことから、直ちに被告ソフトが原告ソフトを複製ないし翻案したことが認められるものでもない。
ウ また、原告は、被告ソフトの自治体向けの提案書は、ジェイソフトがdbマジック版複製ソフトを販売するに当たって作成した自治体向け提案書とは、システム概要や序文、システム説明文の内容、項目の並びがほとんど同じであり、句読点、「てにをは」、接続詞を若干変えているが、内容は完全に一致していると主張する。
しかし、原告の主張は、被告ソフトとdbマジック版複製ソフトにおけるそれぞれの提案書の内容ないし表現を比較するものであって、その比較対照の状況が、被告ソフトと原告ソフトとの比較対照の状況を直ちに示すものであるとはいえない。さらに、ソフトウエアの提案書の内容が同一であることは、システムの基本的な設計思想、すなわちソフトウエア作成におけるアイデアのレベルにおいて、
同一性ないし類似性を有することを推認させるとしても、著作権が保護の対象とするプログラムの創作性のある表現部分において、同一性ないし類似性を有することを推認させるものとはいえない。
エ 以上のとおり、原告の主張する被告ソフトの開発等の関する経緯を考慮しても、被告ソフトが原告ソフトを複製ないし翻案したものであることを推認させるには足りないというべきである。
(3) 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告ソフトの著作権(複製権翻案権)侵害を理由とする原告の請求は、理由がない。
2 争点(3)(被告は、不正競争防止法2条1項5号、6号に反する行為をしたか。) (1) 原告は、別紙「営業秘密目録」記載の文書、電磁的記録が営業秘密に当たると主張する。
同目録の1項には、地方自治体向け土木工事・設計積算システムのパソコン用プログラムソフトの開発(要求定義、システム設計、プログラム基本設計、プログラム詳細設計、コーディング、総合テスト)に関する文書、電磁的記録が掲げられ、また、同目録の2項には、上記のパソコン用プログラムソフトの各地方自治体向けの営業活動に関する文書、電磁的記録が掲げられている。
しかし、これらの文書、電磁的記録に記載されたどのような技術上又は営業上の情報が営業秘密に当たるのかについて、何ら具体的な特定がされておらず、
営業秘密であることの主張、立証はないといわざるを得ない。
なお、同目録2の(1)販売先と販売先担当者のリスト、(2)需要見込みのある地方自治体のリストについては、そうしたリストを掲載した文書ないし電磁的記録に記載されている個々の情報が営業秘密であると解する余地があるが、当該情報について非公知性、有用性についての具体的主張、立証はなく、また、当該情報が窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段(不正競争防止法2条1項4号)により取得されたものであることの主張、立証もない。
(2) したがって、不正競争防止法2条1項5号、6号を理由とする原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。
3 よって、主文のとおり判決する。
追加
(別紙)営業秘密目録被告の納入先と損害額│納入役所│土木積算│業務積算│切取り盛土│││ソフト│ソフト│ソフト││山口市│1│1│││大崎町│2│2│1││木江町│2│1│││安芸津町│2│1│││瀬戸田町│2│1│││加茂町│1│1│││中央町│2││││佐伯町│2││││玉野市│1││││建部町│2│1│││合計(A)│17│8│1││原告通常価格(B)│235万円│195万円│50万円││A×B│3995万円│1560万円│50万円│
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 阿多麻子
裁判官 前田郁勝
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