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事件 平成 14年 (ワ) 8277号 損害賠償請求事件
原告A
訴訟代理人弁護士 石田文三
同 川村哲二
同 昇慶一
被告 学校法人西沢学園
訴訟代理人弁護士 木村保男
同 的場悠紀
同 川村俊雄
同 中井康之
同 福田健次
同 青海利之
同 飯島奈絵
同 大川治
同 柴野高之
同 山本淳
同 野村祥子
同 小関伸吾
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2003/12/18
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨 (1) 被告は、原告に対し、金100万円及びこれに対する平成13年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
(3) 仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁 主文同旨
当事者の主張
1 請求原因 (1) 当事者 原告は、平成8年4月から平成10年3月まで、被告の経営する大阪コンピュータ専門学校(以下「被告専門学校」という。)に学生として在籍し、平成10年11月から被告専門学校に非常勤講師として勤務し、平成13年3月31日付けで退職した者である。
被告は、被告専門学校を始めとする専門学校を経営する学校法人である。
(2) 著作権 ア 原告作品 原告は、被告専門学校に学生として在籍中、同校の実習設備を用いて次のコンピュータグラフィックス(以下「CG」という。)の作品を作成した。
(ア)a 題名 「AZUSA3」 b 内容 人間型のロボットが佇立した姿勢のまま、右腕を肩の高さまで持ち上げた後、その前腕部分が分離し、ロケット噴射しながら飛び出していくという情景を描いたもの c 画像の一部 別紙記載1のとおり (以下、「AZUSA3」を「原告作品@」という。) (イ)a 題名 「Mi24」 b 内容 軍用ヘリコプターが洋上を飛行中に爆発する情景を描いたもの c 画像の一部 別紙記載2のとおり (以下、「Mi24」を「原告作品A」という。) (ウ)a 題名 「ARES」 b 内容 戦闘機を描いたもの c 画像 別紙記載3のとおり (以下、「ARES」を「原告作品B」という。) イ 著作物 原告作品@ないしBは、原告の著作物である。
CG制作の専門家であっても、各種の画像作成ソフトを利用して、サンプル画像を取り込んだり、各種の数値を入力することによって画像を制作していくから、画像が全くのコピーというようなものでない限り、その巧拙とは別に、創作的な表現であれば、著作物として保護される。
ウ 著作権 原告は、原告作品@ないしBの各画像につき著作権を有し、その支分権として複製権を有する。
(3) 複製 ア 原告作品の複製 (ア) 被告は、平成10年11月ごろ、被告のテレビコマーシャルに使用するために、原告作品@、Aの画像を複製した。
(イ) 被告は、平成10年11月ごろ、被告のパンフレット及びホームページに使用するために、原告作品@ないしBの画像を静止画として複製した。
複製権侵害 前記ア(ア)の原告作品@、Aの画像の複製、(イ)の原告作品@ないしBの画像の静止画としての複製は、原告が原告作品@ないしBの各画像について有する複製権を侵害する。
(4) 故意過失 被告には、原告が原告作品@ないしBの各画像について有する複製権を侵害するにつき、故意又は過失があった。
(5) 損害 ア 原告作品@、Aの画像をテレビコマーシャルに使用するために複製し、
原告作品@ないしBをパンフレット及びホームページに使用するために静止画として複製することにつき原告が受けるべき金銭の額は90万円を下らず、この金額が、著作権法114条2項により原告の受けた損害の額とされる。
イ 原告は、原告作品@ないしBの複製権が侵害されたことにより精神的損害を被ったものであり、その損害は金銭に換算すると10万円を下らない。
ウ したがって、損害の合計額は100万円を下らない。
(6) 結論 よって、原告は、原告作品@ないしBの著作権に基づき、被告に対し、損害賠償として100万円及びこれに対する著作権侵害の後である平成13年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する認否及び被告の主張 (1) 請求原因(1)(当事者)の事実は認める。
(2)ア 請求原因(2)(著作権)ア(原告作品)の事実は認める。
イ 請求原因(2)イ(著作物)の事実は否認し、主張は争う。
原告作品@ないしBは、被告専門学校の演習の一環としてソフトウェアの機能を学習するために指導講師の指示の下に作成されたものであり、思想感情を創作的に表現したものとはいえない。また、次のとおり、表現に創作性が認められない。
(ア) 原告作品@について ロボットがロケットパンチを発射する情景が描かれているだけであり、ストーリー性はなく、何らの思想感情も感得することができない。前腕が発射される際の噴射火炎は、CG作成用ソフトウェアであるエイリアス・パワーアニメーターの機能のうち、ダイナミックス機能でパーティクルエフェクトを実行しただけのものであるから、表現に創作性はない。
(イ) 原告作品Aについて 軍用ヘリコプターが洋上を飛行中に爆発する情景を描いたものであって、ストーリー性はなく、何らの思想感情も感得することができない。ヘリコプターのモデルデータは、インターネット上のサンプルデータをダウンロード、又はフリーのモデルデータ(素材集など)を流用したものであり、原告が独自に作成したものではないし、爆発の様子、海洋の質感も、ソフトの機能によって自動的に作成されたものにすぎないから、表現に創作性はない。
(ウ) 原告作品Bについて 実在する米軍戦闘機の写真等を参考にしたものであって、ストーリー性はなく、何らの思想感情も感得することができない。
ウ(ア) 請求原因(2)ウ(著作権)の事実は否認し、主張は争う。
(イ) 著作権の帰属 原告作品@ないしBは、映画の効果に類似する視覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物(ハードディスクなど)に固定されているから、著作物であるとすれば、映画の著作物(著作権法10条1項7号)に該当する。映画の著作物著作者は、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の全体的形成に創作的に寄与した者である必要があるが(著作権法16条)、原告作品@ないしBについて、その課題を与えたのは被告専門学校の講師であり、原告は若干のモデリングとソフトウェアの機能を選択しただけであって、ほとんどすべてのアニメーション効果はソフトウェアによって自動的に形成されたものである。そして、
原告作品@ないしBを作成するに当たって用いられたハードウェア及びソフトウェアは、いずれも被告の所有物であり、教育目的で学生に使用させるための使用許諾を得たのも被告であり、これらの設備の設置等の経済的負担を行っていたのも被告である。これらの事実に鑑みれば、原告作品@ないしBの著作者は原告ではなく被告である。
また、原告は被告専門学校における実習の一環として原告作品@ないしBを作成しているから、被告が原告作品@ないしBの製作について発意と責任を有しており、被告は少なくとも映画製作者(著作権法2条1項10号)に当たり、
原告が原告作品@ないしBの著作者であるとしても、映画製作者である被告に対し、原告作品@ないしBの製作に参加することを約束しているから、原告作品@ないしBの著作権は映画製作者である被告に帰属する(著作権法29条1項)。
(ウ) 設備の使用目的による制限 被告は、高額の投資をして被告専門学校のハードウェア、ソフトウェアの設備を整え、学生に対し、実習に用いる範囲でその使用を許諾しているのであり、学生が自らの資産としての著作物を作成し、その著作権を主張することは、被告専門学校の設備の使用許諾の範囲を逸脱している。
また、被告は、CG作成用ソフトウェアであるエイリアス・パワーアニメーターについて、その製造者であるエイリアス・ウェーブフロント社の我が国における代理店である住商エレクトロニクス株式会社から使用許諾を受け、使用料を支払っているが、その使用許諾の目的は、営利目的ではなく、被告専門学校における教育目的に利用することに限定されている。そうであるとすると、被告が学生にエイリアス・パワーアニメーターを使用させることができるのは、実習の範囲に限られており、学生個人の資産としての著作物を作成するためにエイリアス・パワーアニメーターを使用させることは、使用許諾の目的を逸脱する。学生個人の資産としての著作物を作成した場合には、エイリアス・ウェーブフロント社の著作権を侵害することになる。
したがって、学生であった原告は、エイリアス・パワーアニメーターを含む被告の設備を使用して作成した作品について、著作権を主張することができない。
(エ) 第三者の著作権の侵害 エイリアス・パワーアニメーターの場合、CGを作成するに当たり、
同ソフトウェアがあらかじめ用意したデータや表現が利用されることになり、これは著作物の一部の複製に該当する。
同ソフトウェアの正当な使用許諾を得ておらず、又は使用許諾の範囲を超えて、同ソフトウェアを使用して作成した作品は、ソフトウェアに組み込まれたデータに関するエイリアス・ウェーブフロント社の有する著作権(その支分権としての複製権)を侵害することになる。
他人の著作権を侵害する作品については、著作権法上、差止めの対象となるものであって、著作物として保護されることはない。したがって、そのような作品を利用したからといって、それが著作権侵害になることはないし、仮に形式的に著作権侵害に該当するとしても、他人の著作権を侵害した作品に関する著作権を根拠とする権利行使は、権利を濫用するものとして許されないというべきである。
そこで、本件についてみると、原告作品@ないしBは、被告と原告との専門学校契約に基づき、被告所有の設備及びソフトウェアを使用して作成されたものであり、同設備及びソフトウェアは、被告専門学校における教育目的の範囲でのみ使用することが許諾されているから、実習作品として用いる限りにおいて許諾がされているというべく、それを超えて、原告個人の財産としての著作物であるというのであれば、それは明らかに使用許諾の範囲を逸脱し、少なくともエイリアス・ウェーブフロント社の著作権を侵害するものというべきである。
また、原告作品@ないしBが、被告専門学校における実習時間外に作成された作品であるとすれば、被告所有の設備及びソフトウェアを違法に使用して作成したことになるから、使用許諾を得ずにソフトウェアを使用したことになり、
同様にエイリアス・ウェーブフロント社の著作権を侵害する作品というべきである。
したがって、原告作品@ないしBは、他人の著作権を侵害するものであるから、原告は、原告作品@ないしBについて著作権を主張することができない。
(3)ア(ア) 請求原因(3)(複製)ア(原告作品の複製)(ア)のうち、被告が、
平成10年11月ごろ、原告作品@、Aの画像を被告のテレビコマーシャルに使用したこと、(イ)のうち、被告が、平成10年11月ごろ、原告作品@ないしBの画像を静止画として被告のパンフレット及びホームページに使用したことは認めるが、被告が原告作品@ないしBの複製を行ったことは否認する。
(イ) 著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することであり、写真により再製する場合には、一般人の通常の注意力を基準とした上で、当該著作物の写真において、その思想、感情の創作的な表現部分を直接感得することができる程度に再現されていることを要する。原告作品@ないしBは、いずれも特段のストーリー性を有するものではないので、その思想、感情の創作的な表現部分は、CGによって描き出されたロボットやヘリコプターのキャラクターの形状、色、質感の描写その他の美的要素及びアニメーションにより表現された爆発その他の動作の様子などの美的要素に求めざるを得ない。
ところで、原告作品@、Aの画像のテレビコマーシャルにおける使用は、わずか数秒間、一画面で同時に放映された四つの学生の作品の一つとして使用されたものであって、映画の著作物としての創作的な表現部分を直接感得できるような態様での使用とはいえない。また、原告作品@ないしBの静止画としての被告のパンフレットへの使用は、一こま当たりのサイズが5センチメートル四方であるから、三次元のCGとしての美的要素を直接感得することができる程度には再現されていない。
イ 請求原因(3)イ(複製権侵害)の主張は争う。
(4) 請求原因(4)(故意過失)の事実は否認し、主張は争う。
(5) 請求原因(5)(損害)アないしウの事実は否認し、主張は争う。
(6) 請求原因(6)(結論)の主張は争う。
3 抗弁 (1) 原告の同意 ア 包括的同意 被告専門学校においては、被告の実習設備を用いて作成された学生の作品は被告専門学校に提出され、同校の管理下に置かれてその自由な処分、保存、管理に服することが実習報告書(乙第2号証)において定められ、学生もこれを承諾して実習を受講していた。そして、被告専門学校は、学生の作成した作品のうち優秀なものをパンフレットやテレビコマーシャルに使用してきており、作品がそのように使用されることは学生も承知していた。
また、被告専門学校においては、実習時間以外にも学生に実習設備の利用を認め、それによって作成された作品を「Nishizawa Forum 2000」などの名称によるコンテストに提出させていたが、このようなコンテストの応募登録用紙には、提出された作品の著作権を被告に帰属させることを明記しており、原告は、被告専門学校の実習設備を使用して作成した作品の著作権が被告に属することを認識していた。
したがって、被告専門学校においては、その実習設備を用いて作成された学生の作品をパンフレットやテレビコマーシャルに使用することにつき、学生は、少なくとも黙示的に、包括的に同意していた。
イ 個別の同意 (ア) 被告のパンフレットに掲載された原告作品@の横には、原告の顔写真とコメントが掲載されており、また、平成9年12月18日ごろ、被告の学校紹介ビデオを作成した際、コンピュータを操作して原告作品Aを編集する原告のインタビューシーンが収録されたが、撮り直しなどがあったにもかかわらず、原告は終始協力的であり、編集画面の説明まで行っており、原告は、原告作品@ないしBが被告のテレビコマーシャル、パンフレット及びホームページに使用されることについて積極的に同意し、そのことを喜んでいた。
(イ) 平成10年11月10日ごろ、被告理事長B、被告専門学校学校長Aは、被告専門学校において原告と面談し、原告の在学中の作品を広報で継続して使用すること、広報で使用する作品を新たに制作すること、非常勤でマルチメディア科の実習助手として稼働することを申し入れたところ、原告がこれを承諾したので、被告は、原告を非常勤講師として採用することとした。被告は、通常、講師を採用するに当たっては、非常勤、助手であっても、採用学科試験を実施しているところ、原告については、在学中の作品の広報での継続的使用及び広報用の作品の制作を条件として採用学科試験を免除し、原告は喜んでこれを承諾した。したがって、原告は、被告に非常勤講師として採用される際、原告作品@ないしBが広報に使用されることに同意していた。
被告専門学校において、被告の実習設備を用いて作成された学生の作品は、同校の管理下に置かれるが、被告は、原告を採用する際に、念のため、原告の在学中の作品を広報で継続して使用することについて個別の同意を取ったものである。
(ウ) 原告は、原告作品@ないしBが被告のテレビコマーシャル、パンフレット及びインターネットに使用されたことに対して異議を述べたことはなかった。原告が著作権の主張をするようになったのは、平成13年4月27日ごろ、被告が原告に対して、同年3月31日付けで退職したものとする旨の解任通知を送付した後であり、解任されたことに対する嫌がらせの目的で著作権の主張をするに至ったものである。
(2) 相殺 ア 被告は、学生に対し、実習に用いる範囲でその設備の使用を許諾しているのであるから、学生が自らの資産としての著作物を作成するために被告の設備を使用することは、使用許諾の範囲を逸脱しており、そのような使用は不法行為に当たり、それによって、被告には設備の使用料相当の損害が発生している。
本件において、被告の設備が原告作品@ないしBの作成に使用されたことによる使用料相当の損害の額は、100万円を下らない。
イ 被告は、原告に対し、平成15年5月27日の第7回弁論準備手続期日において、前記アの損害賠償請求権をもって、原告の被告に対する原告作品@ないしBの著作権侵害に基づく損害賠償請求権と対当額で相殺する旨の意思表示をした。
4 抗弁に対する認否 (1)ア 抗弁(1)(原告の同意)ア(包括的同意)の事実のうち、被告専門学校が、学生の作成した作品をパンフレットやテレビコマーシャルに使用していたこと、「Nishizawa Forum 2000」の応募登録用紙に、提出された作品の著作権を被告に帰属させることが記載されていたことは認め、その余は否認する。
実習報告書(乙第2号証)が原告作品@ないしBの作成当時に存在したかどうか不明であるが、実習報告書においても、作品は「本校管理下におかれます」と記載されているだけで、著作権の譲渡や著作物の使用について記載されていない。
また、「Nishizawa Forum 2000」などコンテストの応募用紙には、提出された作品の著作権を主催者に帰属させる旨記載されることが多いが、そうであるとしても、本件において原告作品@ないしBの著作権が被告に帰属することにはならない。
イ(ア) 抗弁(1)イ(個別の同意)(ア)の事実のうち、被告のパンフレットに掲載された原告作品@の横に、原告の顔写真とコメントが掲載されていること、平成9年12月18日ごろ、被告の学校紹介ビデオを作成した際、コンピュータを操作して原告作品Aを編集する原告のインタビューシーンが収録されたこと、その際、撮り直しなどがあったことは認めるが、その余は否認する。
被告の学校紹介ビデオの作成に協力したことと著作権の帰属は関係がない。被告の学校紹介ビデオに撮影された原告作品Aは、着色前の段階のものであり、そのような段階の作品が被告の学校紹介ビデオに使用されることを原告が黙認していたとしても、完成した後の原告作品Aの使用までも許諾したことにはならない。
(イ) 抗弁(1)イ(イ)の事実のうち、平成10年11月10日ごろ、被告理事長B、被告専門学校学校長Aが、被告専門学校において原告と面談したこと、被告が原告を非常勤講師として採用することとしたことは認め、その余は否認する。
面談の際、原告の在学中の作品を継続して使用することについての話はされなかった。被告の主張によれば、在学中の作品を被告が使用することは自由なはずであって、面談においてその点の了承を得たというのは矛盾である。広報で使用する作品の制作について、原告は、被告から、その面談の後日告げられた。原告は、被告から、常勤講師として勤務するよう申し入れられたが、原告が常勤となることを断り、非常勤講師として採用された。講師への採用に当たって学科試験を免除されていた者は、原告のほかにもいた。
(ウ) 抗弁(1)イ(ウ)の事実は否認する。
原告は、平成10年12月ごろ、被告の学校紹介ビデオに原告作品Aが使用されていることについて、ビデオ作成を担当していた被告専門学校のX講師に抗議した。
原告は、原告作品@、Aがテレビコマーシャルに使用されていることを被告専門学校の学生から聞き、平成10年12月ごろ、被告専門学校のY教務部長に苦情を述べた。
(2)ア 抗弁(2)(相殺)アの事実は否認し、主張は争う。
イ 抗弁(2)イの事実は認める。
原告の被告に対する原告作品@ないしBの著作権侵害に基づく損害賠償請求権は、不法行為に基づく損害賠償請求権であるところ、不法行為に基づく損害賠償請求権を受働債権として相殺をすることはできないから(民法509条)、抗弁(2)の主張は、主張自体失当である。
理 由1(1) 請求原因(1)(当事者)の事実は当事者間に争いがない。
(2)ア 請求原因(2)(著作権)ア(原告作品)の事実は当事者間に争いがない。
イ 請求原因(2)イ(著作物)について検討する。
(ア) 著作権法により保護される著作物であるというためには、思想又は感情を創作的に表現したものでなければならない(著作権法2条1項1号)。
思想又は感情を表現するとは、単なる事実にとどまらず、精神的な活動の成果を表現することを意味し、また、創作的に表現するとは、必ずしも独創性が高いことを要せず、作成者の何らかの個性が表現されていることを意味するというべきである。
(イ) そこで、原告作品@ないしBにつき、それぞれ、著作物と認められるかについて検討する。
a 原告作品@ 原告作品@は、前記ア(請求原因(2)ア(ア)b)のとおり、人間型のロボットが佇立した姿勢のまま、右腕を肩の高さまで持ち上げた後、その前腕部分が分離し、ロケット噴射しながら飛び出していくという情景を描いたものである。
甲第1号証、乙第1号証、第5号証及び原告本人尋問の結果によれば、ロボットの形状は、原告が考えて作成し、ロボットの表面の質感や火花の出方も、原告が条件を設定して作成したことが認められ、それらの点に原告の精神的活動の成果が表現されており、また、そこに原告の個性の発現としての創作性が認められる。
人間型のロボットが従前から存在し、人間型のロボットが佇立した姿勢のまま、右腕を肩の高さまで持ち上げた後、その前腕部分が分離し、ロケット噴射しながら飛び出していくという情景を描いたアニメーションなどが従前存在したとしても、従前存在したものの中に、原告作品@のロボットの形状や質感、火花の出方などが同一のものが存在することを認め得る証拠はないから、それらのアニメーションなどが従前存在したことによって原告作品@が原告の著作物であることが否定されることはないというべきである。
また、前腕が発射される際の噴射火炎が、CG作成用ソフトウェアであるエイリアス・パワーアニメーターの機能のうち、ダイナミックス機能でパーティクルエフェクトを実行したことにより作成されたとしても、甲第1号証、原告本人尋問の結果によれば、その機能を実行するに当たっての条件の設定は原告が行ったものと認められる。
したがって、原告作品@は原告の著作物であると認められる。乙第7号証及び被告代表者A本人尋問の結果のうち、この認定に反する部分は、採用することができない。
b 原告作品A 原告作品Aは、前記ア(請求原因(2)ア(イ)b)のとおり、軍用ヘリコプターが洋上を飛行中に爆発する情景を描いたものである。
甲第1号証、乙第1号証、第5号証及び原告本人尋問の結果によれば、海面とヘリコプターを組み合わせることは原告が考えたこと、ヘリコプターの原型は、無料で使用できるサンプルデータ中にあったものであるが、燃料タンク部分のデータを削除しないと着色ができないというバグがあったので、原告が燃料タンク部分を削除して形状を補正したこと、ヘリコプターの着色、質感、爆発の時の煙の量や流れ方の様子、海面の質感は、原告が条件を設定して作成したことが認められ、それらの点に原告の精神的活動の成果が表現されており、また、そこに原告の個性の発現としての創作性が認められる。
したがって、原告作品Aは原告の著作物であると認められる。乙第7号証及び被告代表者A本人尋問の結果のうち、この認定に反する部分は、採用することができない。
c 原告作品B 原告作品Bは、前記ア(請求原因(2)ア(ウ)b)のとおり、戦闘機を描いたものである。
甲第1号証、乙第1号証、第5号証及び原告本人尋問の結果によれば、原告作品Bは、実在する戦闘機の遠距離から撮影した3枚の写真を基に、原告が、写真に撮影されていない部分の図面を作成するなどして戦闘機の形状を作成し、質感、光の当たる様子を、原告が条件を設定して作成したことが認められ、それらの点に原告の精神的活動の成果が表現されており、また、そこに原告の個性の発現としての創作性が認められる。
したがって、原告作品Bは原告の著作物であると認められる。乙第7号証及び被告代表者A本人尋問の結果のうち、この認定に反する部分は、採用することができない。
ウ 請求原因(2)ウ(著作権)について検討する。
(ア) 前記イ(イ)aないしcの認定のとおり、原告作品@ないしBは原告の著作物であると認められるから、原告は、それらの著作権を有しており、その支分権としての複製権を有するものと認められる。
(イ) 被告は、原告作品@ないしBの著作権は原告ではなく被告に帰属し、
又は原告は著作権を主張することができないとし、その根拠としてるる主張し、乙第7号証及び被告代表者A本人尋問の結果のうちには、そのような主張に沿う陳述がある。そこで、被告のこれらの主張について検討する。
a 被告は、原告作品@ないしBは映画の著作物に該当するとし、これらの作品について課題を与えたのは被告専門学校の講師であり、原告は若干のモデリングとソフトウェアの機能を選択しただけであって、ほとんどすべてのアニメーション効果はエイリアス・パワーアニメーターによって自動的に形成されたものであるから、原告は映画の著作物著作者に該当しない旨主張する。
前記ア(請求原因(2)ア)のとおり、原告作品@ないしBは、原告が被告専門学校に学生として在籍中に同校の実習設備を用いて作成したものである。また、被告代表者A本人尋問の結果中には、被告専門学校の講師が、エイリアス・パワーアニメーターのいくつかの機能を実際に使ってみるという課題を与えた旨の供述がある。しかし、講師がそのような課題を与えたとしても、使用する機能の選択や組合せ、各機能について設定する条件については、選択の余地があり、作成者の個性を反映する余地があるものと認められる。原告作品@ないしBがエイリアス・パワーアニメーターのアニメーション効果を利用したものであり、アニメーション効果の中に、エイリアス・パワーアニメーターによって自動的に決められる部分があったとしても、前記イ(イ)aないしcの認定のとおり、原告が各機能の条件の設定等を行ったものであるから、原告作品@ないしBが映画の著作物であるとしても、その著作者は原告であり、著作権は原告に属するというべきである。
b 被告は、原告作品@ないしBを作成するに当たって用いられたハードウェア及びソフトウェアは、いずれも被告の所有物であり、それらを教育目的で学生に使用させるための使用許諾を得たのは被告であり、これらの設備の設置等の経済的負担を行っていたのも被告であると主張する。
しかし、仮にそうであるとしても、前記イ(イ)aないしcの認定によれば、原告作品@ないしBを作成したのは原告であるから、著作権は原告に属するというべきである。
c 被告は、原告は被告専門学校における実習の一環として原告作品@ないしBを作成しているから、被告が原告作品@ないしBの製作について発意と責任を有しており、被告は少なくとも映画製作者(著作権法2条1項10号)に当たり、原告が原告作品@ないしBの著作者であるとしても、映画製作者である被告に対し、原告作品@ないしBの製作に参加することを約束しているから、原告作品@ないしBの著作権は映画製作者である被告に帰属する(著作権法29条1項)と主張する。
しかし、原告が被告専門学校における実習の一環として原告作品@ないしBを作成したとしても、そのことにより、当然に、被告が原告作品@ないしBの製作について発意と責任を有すること、原告がその製作に参加することを約束していることにはならないし、そのほかに、被告が発意と責任を有すること、原告が製作への参加を約束したことを認めるに足りる証拠はないから、被告の上記主張は、採用することができない。
d 被告は、学生が自らの資産としての著作物を作成し、その著作権を主張することは、被告専門学校の設備の使用許諾の範囲を逸脱すること、学生個人の資産としての著作物を作成するためにエイリアス・パワーアニメーターを使用させることは、被告がエイリアス・パワーアニメーターについて、その製造者であるエイリアス・ウェーブフロント社の我が国における代理店である住商エレクトロニクス株式会社から受けている使用許諾の目的を逸脱することを主張する。また、被告は、学生個人の資産としての著作物を作成した場合には、エイリアス・ウェーブフロント社の著作権を侵害することになると主張する。さらに、被告は、正当な使用許諾を得ず又は使用許諾の範囲を超えて、エイリアス・パワーアニメーターを使用して作成した作品は、同ソフトウェアに組み込まれたデータ等に関するエイリアス・ウェーブフロント社の有する著作権(その支分権としての複製権)を侵害することになるとし、原告作品@ないしBは、他人の著作権を侵害するものであるから、原告は、原告作品@ないしBについて著作権を主張することができないと主張する。
しかし、仮に原告によるソフトウェアのプログラムの使用が使用許諾の範囲を逸脱していたとした場合、それは、使用許諾契約に違反する余地があるとしても、その故に、原告の作成した作品の著作権が原告に帰属することが否定されるとする根拠はないし、原告による著作権の主張が当然に許されなくなるとする根拠もない。また、著作権の支分権の中には使用権は含まれていないから、プログラムの著作物の使用は、著作権法113条2項に該当する場合以外は著作権侵害とはならないところ、本件では、原告によるソフトウェアのプログラムの使用が同項に該当することを認めるに足りる証拠はなく、さらに、それ以外に、原告によるソフトウェアのプログラムの使用がそのプログラムの複製権等の著作権を侵害することを認めるに足りる証拠もないから、原告がエイリアス・ウェーブフロント社の有する著作権を侵害したとは認められない。したがって、被告の上記主張は、いずれも採用することができない。
e 以上によれば、原告作品@ないしBの著作権が原告ではなく被告に帰属すること、又は原告が著作権を主張することができないことの根拠として被告の主張するところは、いずれも採用することができない。
(3)ア(ア) 請求原因(3)(複製)ア(原告作品の複製)(ア)のうち、被告が、平成10年11月ごろ、原告作品@、Aの画像を被告のテレビコマーシャルに使用したこと、(イ)のうち、被告が、平成10年11月ごろ、原告作品@ないしBの画像を静止画として被告のパンフレット及びホームページに使用したことは、当事者間に争いがない。
(イ) 著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その著作物の創作性を基礎付ける特徴的部分を再現することにより、一般人をしてその内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することである。
前記(2)イ(イ)aのとおり、原告作品@は、ロボットの形状を作成し、ロボットの表面の質感や火花の出方を、原告が条件を設定して作成した点に創作性が認められるところ、乙第1号証、第5号証及び弁論の全趣旨によれば、被告のテレビコマーシャル、被告のパンフレット及びホームページには、原告作品@のロボットの形状、ロボットの表面の質感や火花の出方など、原告作品@の創作性を基礎付ける特徴的部分が再現されており、一般人をして原告作品@の内容及び形式を覚知させるに足りるものが再製されていると認められるから、被告のテレビコマーシャル、被告のパンフレット及びホームページには、原告作品@が複製されているものと認められる。
前記(2)イ(イ)bのとおり、原告作品Aは、海面とヘリコプターを組み合わせたこと、ヘリコプターの燃料タンク部分を削除してその形状を補正したこと、
ヘリコプターの着色、質感、爆発の時の煙の量や流れ方の様子、海面の質感を、原告が条件を設定して作成したことなどの点に創作性が認められるところ、乙第1号証、第5号証及び弁論の全趣旨によれば、被告のテレビコマーシャル、被告のパンフレット及びホームページには、海面とヘリコプターの組合せ、燃料タンク部分を削除して補正されたヘリコプターの形状、ヘリコプターの着色、質感、爆発の時の煙の量、煙の流れ方の様子、海面の質感など、原告作品Aの創作性を基礎付ける特徴的部分が再現されており、一般人をして原告作品Aの内容及び形式を覚知させるに足りるものが再製されていると認められるから、被告のテレビコマーシャル、被告のパンフレット及びホームページには、原告作品Aが複製されているものと認められる。
前記(2)イ(イ)cのとおり、原告作品Bは、原告が、写真に撮影されていない部分の図面を作成するなどして戦闘機の形状を作成し、質感、光の当たる様子を、原告が条件を設定して作成したことなどの点に創作性が認められるところ、乙第1号証及び弁論の全趣旨によれば、被告のパンフレット及びホームページには、
戦闘機の形状、質感、光の当たる様子など、原告作品Bの創作性を基礎付ける特徴的部分が再現されており、一般人をして原告作品Bの内容及び形式を覚知させるに足りるものが再製されていると認められるから、被告のパンフレット及びホームページには、原告作品Bが複製されているものと認められる。
イ 被告は、原告作品@、Aの画像のテレビコマーシャルにおける使用は、わずか数秒間、一画面で同時に放映された四つの学生の作品の一つとして使用されたものであって、映画の著作物としての創作的な表現部分を直接感得できるような態様での使用とはいえないと主張し、また、原告作品@ないしBの静止画としての被告のパンフレットへの使用は、一こま当たりのサイズが5センチメートル四方であるから、三次元のCGとしての美的要素を直接感得することができる程度には再現されていないと主張する。乙第5号証によれば、原告作品@、Aの画像のテレビコマーシャルにおける使用は、数秒間であり、一画面で同時に放映された四つの学生の作品の一つとして使用されたものであることが認められ、乙第1号証及び弁論の全趣旨によれば、原告作品@ないしBの静止画としての被告のパンフレットへの使用は、一こま当たりのサイズが5センチメートル四方であることが認められる。しかし、再製の態様がそのようなものであり、原告作品@ないしBのすべてがそのまま再製されていないとしても、前記アの認定のとおり、原告作品@ないしBの創作性を基礎付ける特徴的部分が再現されており、一般人をしてそれらの作品の内容及び形式を覚知させるに足りるものが再製されていると認められるから、それらの作品の複製を認めることは妨げられないものというべきである。
2 抗弁(1)(原告の同意)について検討する。
(1) 抗弁(1)ア(包括的同意)の事実のうち、被告専門学校が、学生の作成した作品をパンフレットやテレビコマーシャルに使用していたこと、「Nishizawa Forum 2000」の応募登録用紙に、提出された作品の著作権を被告に帰属させることが記載されていたことは、当事者間に争いがない。
上記当事者間に争いのない事実と乙第2、第3号証、第7号証及び被告代表者A本人尋問の結果を合わせ考えても、被告専門学校の学生が、実習設備を用いて作成した作品が同校のパンフレットやテレビコマーシャルに使用されることを包括的に同意していたことは、認めることができず、他にそのような事実を認めるに足りる証拠はない。
(2) 抗弁(1)イ(個別の同意)(ア)の事実のうち、被告のパンフレットに掲載された原告作品@の横に、原告の顔写真とコメントが掲載されていること、平成9年12月18日ごろ、被告の学校紹介ビデオを作成した際、コンピュータを操作して原告作品Aを編集する原告のインタビューシーンが収録されたこと、その際、撮り直しなどがあったことは、当事者間に争いがない。
抗弁(1)イ(イ)の事実のうち、平成10年11月10日ごろ、被告理事長B、
被告専門学校学校長Aが、被告専門学校において原告と面談したこと、被告が原告を非常勤講師として採用することとしたことは、当事者間に争いがない。
(3)ア 前記(2)記載の当事者間に争いのない事実と乙第1号証、第4ないし第6号証、原告本人尋問の結果(後記の信用することができない部分を除く。)、被告代表者B、同A各本人尋問の結果を総合すれば、次の事実が認められる。
(ア) 被告専門学校のパンフレットに同校の学生の作品を掲載することは、
原告が同校に入学する前から行われていた。
(イ) 原告作品@ないしBは、被告専門学校のパンフレットに、同校で撮影された原告の顔写真と共に掲載されていた。
(ウ) 原告が学生として在籍中の平成9年12月18日ごろ、被告専門学校の学校紹介ビデオが作成され、原告が、原告作品Aの作成過程で演算式をコンピュータに入力して物理計算を行っている途中でインビューを受け、そのとき行っている作業の説明や、入学希望者へのメッセージを述べる場面が収録された。その際、
原告の背後のディスプレイに原告作品Aのヘリコプターのワイヤーフレームが分解するシーンが表示されているのも撮影された。この撮影に当たっては、複数回にわたって撮り直しが行われたが、原告は終始協力的であった。
(エ) 原告は、平成10年3月に被告専門学校を卒業し、いったん就職したが、短期間で辞め、新たな就職先を探していた。被告専門学校の講師らは、原告が就職先を探していることを知り、原告が在学中に作成した作品が評価されていたことから、同校において広報の制作や実習の補助などをさせるために雇用するよう、
被告代表者らに推薦した。
(オ) 被告代表者Bは、平成10年11月12日ごろ、被告専門学校において原告と面接し、被告専門学校のパンフレットに使用された原告作品@ないしBなどが評価されていることを伝え、それらの作品をその後も継続的に広報等に使用させてもらう旨述べるとともに、広報に使用する作品の制作を補助すること、実習の補助をすることなどを業務の内容として非常勤で採用することを申し入れた。原告は好意的に応対し、採用の申入れを承諾し、同被告代表者は、勤務時間などの詳細を後日書類で知らせる旨述べた。被告専門学校の職員は、学科試験と面接を経て採用されることもあったが、原告は、被告専門学校の卒業生であり、在学中の作品が評価されていたことから、学科試験を免除され、面接の結果のみにより採用された。
(カ) 被告は、原告に対し、平成10年11月14日ごろ、広報用の2次元媒体及びCGの作成、並びにマルチメディア実習などを行う非常勤助手として採用することと、勤務時間、賃金額などを記載した書面を送付した。
(キ) 原告作品@、Aを掲載したテレビコマーシャルは、原告が被告専門学校に雇用された後放映された。
(ク) 原告は、被告専門学校において、広報用のロゴや恐竜のCGを作成し、実習の補助をするなどした。
(ケ) 原告が被告専門学校に在職する間に、原告が実習の補助をすることについて、学生から被告専門学校に対して苦情があり、被告は、一部の学生が同校を退学した理由が、学生の原告に対する不満にあったと認識するに至った。そして、
そのようなことから、被告は、原告の雇用を継続することは適当でないと判断し、
原告に対して退職するよう申し入れ、原告は、平成13年3月31日付けで被告を退職した。原告は、退職時の被告の対応等に不満を抱き、退職後も被告専門学校を訪れることがあった。
以上の事実が認められる。
イ 原告は、平成10年12月ごろ、被告の学校紹介ビデオに原告作品Aが使用されていること、及び原告作品@、Aがテレビコマーシャルに使用されていることについて、被告専門学校の講師、教務部長に対して抗議し又は苦情を述べた旨主張し、甲第1号証、原告本人尋問の結果中には、それに沿う陳述もある。しかし、
前記ア(ウ)の認定のとおり、原告作品Aの作成過程で収録された学校紹介ビデオの作成に当たって、原告は終始協力的であったものであり、また、原告本人も、そのような抗議、苦情の申入れをした後も、原告が、被告専門学校において、広報用のロゴや恐竜のCGを作成していた旨供述している。さらに、これらの抗議又は苦情の申入れについて、甲第1号証には、申入れの時期、相手方、具体的な状況は記述されておらず、原告本人尋問の結果中においても、申入れの時期、申入れを行った際の具体的な状況や被告側の反応についての供述は、曖昧なものにとどまっている。これらの事情並びに乙第6号証及び被告代表者B本人尋問の結果に照らして、原告が、被告専門学校の講師、教務部長に対して上記のような抗議をし又は苦情を述べた旨の甲第1号証、原告本人尋問の結果中の陳述は信用することができず、原告の上記主張は、採用することができない。
その他、甲第1号証、原告本人尋問の結果のうち、前記アの認定に反する部分は、乙第6号証、被告代表者B、同A各本人尋問の結果に照らし、信用することができず、他に上記認定を左右するに足りる証拠はない。
(4) 前記1(3)ア、イ記載のとおり、被告のテレビコマーシャルには原告作品@、Aが複製されており、被告のパンフレット及びホームページには原告作品@ないしBが複製されているものと認められ、これに前記(3)ア、イの認定を合わせ考えると、原告は、被告に雇用されるときの面接の際に、原告作品@ないしBの静止画がパンフレットに複製され使用されていることを知っていたものと推認され、また、原告作品@ないしBを含む原告の作品が被告のパンフレットのほかホームページやテレビコマーシャルなどに複製されて使用されることがあり得ることも認識していたものと推認される。そして、その上で、同面接の際に、広報に使用する作品の制作の補助などを業務の内容として被告に雇用されることを承諾するとともに、
原告作品@ないしBが被告のパンフレットに複製されて使用されていること、及びその後も原告作品@ないしBが被告のパンフレット、ホームページ、テレビコマーシャルなどに複製されて使用されることに同意を与えたと認めるのが相当である。
したがって、被告の抗弁(1)イ(個別の同意)は理由がある。
3 以上によれば、原告作品@ないしBは、原告の著作物であり、その著作権は原告が有し、被告のテレビコマーシャルは原告作品@、Aを複製したものであり、被告のパンフレット及びホームページは、原告作品@ないしBを複製したものであるが、原告は、原告作品@ないしBが被告のパンフレットに複製されて使用されていること、及び原告作品@ないしBが被告のパンフレット、ホームページ、テレビコマーシャルなどに複製されて使用されることに同意を与えていたものである。
したがって、本件においては、その余の点について判断するまでもなく、原告の著作権侵害の主張は理由がない。
4 よって、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 中平健
裁判官 大濱寿美
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