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関連ワード 複製物 /  複製権 /  著作権侵害 /  差止 /  損害賠償 / 
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事件 平成 17年 (ワ) 1311号 損害賠償等請求事件
原告 P1
訴訟代理人弁護士 木村吉治
同 河本成男
同 樹下康夫
被告 株式会社JALブランドコミュニケーション
被告 株式会社アイ・ピー・エス
被告 株式会社ドトールコーヒー
被告ら訴訟代理人弁護士 柳田直樹
同 中村比呂恵
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2005/12/08
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告株式会社JALブランドコミュニケーション及び被告株式会社アイ・ピー・エスは、原告に対し、連帯して、3万円及びこれに対する平成16年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告株式会社JALブランドコミュニケーションは、原告に対し、3万円及びこれに対する平成16年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告株式会社ドトールコーヒーは、別紙パンフレット目録記載のパンフレットを頒布してはならない。
4 被告株式会社ドトールコーヒーは、別紙パンフレット目録記載のパンフレットを廃棄せよ。
5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
6 訴訟費用はこれを50分し、その1を被告らの連帯負担とし、その余を原告の負担とする。
7 この判決は、第1項ないし第3項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
1 被告らは、原告に対し、連帯して、50万円及びこれに対する平成16年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告株式会社JALブランドコミュニケーション及び被告株式会社アイ・ピー・エスは、原告に対し、連帯して、250万円及びこれに対する平成16年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告株式会社JALブランドコミュニケーションは、原告に対し、300万円及びこれに対する平成16年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 主文第3項及び第4項と同旨
事案の概要
本件は、写真の著作権者であると主張する原告が、被告株式会社JALブランドコミュニケーション(以下「被告JALブランド」という。)との間で、その写真を第三者に使用させるための受委託契約を締結していたが、@同被告が、上記契約の終了後に、原告の許諾なく、第三者が発行頒布したパンフレットに当該写真を使用させ、A同被告の代理店であった被告株式会社アイ・ピー・エス(以下「被告アイ・ピー・エス」という。)が、上記契約の終了後に、原告の許諾なく、被告株式会社ドトールコーヒー(以下「被告ドトール」という。)が発行頒布したパンフレットに当該写真を使用させたところ、これらはいずれも故意又は過失による原告の著作権(複製権)侵害であると主張して、被告らに対し、損害賠償を、被告ドトールに対し、パンフレットの頒布差止め及び廃棄を、それぞれ請求した事案である。
1 前提となる事実等(証拠により認定した事実は末尾に証拠を掲げた。その余は争いがない。) (1) 被告JALブランドは、広告・宣伝業その他を目的とする株式会社である。
被告アイ・ピー・エスは、各種映像写真に関するコンサルタント及び斡旋その他を目的とする株式会社である。
被告アイ・ピー・エスは、被告JALブランドの代理店として、同被告が受託した写真の貸出業務を行っている(甲5)。
被告ドトールは、コーヒーの焙煎加工及び販売その他を目的とする株式会社である。
(2) 別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)は、原告の父親であるP2が撮影したものであり、平成5年6月ころ、同人は、本件写真の著作権を原告に譲渡した(乙1、弁論の全趣旨)。
(3)ア 平成5年6月30日、原告は、被告JALブランド(当時の商号は「株式会社日本航空文化事業センター」である。)との間で、「JALフォトサービス写真受委託契約書」(乙1)を締結し(以下「本件契約」という。)、同被告に本件写真を委託した。
本件契約には、@原告は、自己の写真の利用促進のため、写真を同被告に委託し、同被告がこれを受託すること(第1条)、A同被告は、原告から委託を受けた写真を、第三者に有償で貸与して利用させる等の態様で利用すること、(第2条2号)、B同被告の受託業務手数料は原則として同被告の定める使用料金表による利用対価の40パーセントとし、カタログに掲載された写真については、利用対価の50パーセントとすること(第5条)、C「本契約に関して訴訟の必要が生じた場合に東京裁判所のみを管轄裁判所とします。」(第18条)、等の条項がある(乙1)。
イ 本件契約の締結と本件写真の受託後、被告JALブランドは、被告アイ・ピー・エスに対し、本件写真についての貸出代理業務を委託し、本件写真のデュープポジを引き渡した。
ウ 平成12年の遅くとも半ばころまでに、原告と被告JALブランドは、
本件契約を合意解除し、同被告は、本件写真を原告に返還した。
しかし、被告JALブランド及び被告アイ・ピー・エスは、その後も、
本件写真のデュープポジを保有していた。
また、被告JALブランドは、そのころ、被告アイ・ピー・エスに対し、本件契約が終了した旨を通知した。
(4) 平成15年末ころ、被告JALブランドは、少なくともその過失により、
原告の許諾を受けずに、本件写真を日新航空サービス株式会社がパンフレット製作を依頼した会社に貸与し、日新航空サービス株式会社が発行する旅行の宣伝パンフレット(甲1。以下「本件パンフレット1」という。)の表紙の3分の1強を占める部分に、本件写真をカラーで掲載させた(甲1、弁論の全趣旨)。
本件パンフレット1は、そのころ、多数複製され、日新航空サービス株式会社が頒布した(この本件写真の使用を以下「本件使用1」という。)。
(5) 平成16年初旬ころ、被告アイ・ピー・エスは、原告の許諾を受けずに、
本件写真を被告ドトールがパンフレット製作を依頼した会社に貸与し、同被告が発行する商品及び旅行のパンフレット(甲2。以下「本件パンフレット2」という。)の中の半頁を占める部分に、本件写真をカラーで掲載させた(甲2、弁論の全趣旨)。
本件パンフレット2は、そのころから、多数複製され、同被告が頒布した(この本件写真の使用を以下「本件使用2」といい、本件使用1と合わせて以下「本件各使用」という。)。
本件使用2は、被告JALブランドが、本件契約解除後に、その代理店であった被告アイ・ピー・エスから本件写真のデュープポジを回収しなかったために行われたものであり、この点で、被告JALブランドには少なくとも過失があった。
2 争点 (1) 〔本案前の主張〕当裁判所が本件訴えについて土地管轄権を有しないとして、本件訴えは却下されるべきか 〔被告らの主張〕 本件契約において、原告と被告JALブランドは、「本契約に関して訴訟の必要が生じた場合に東京裁判所のみを管轄裁判所とします。」(第18条)との合意をしており、本件契約に関して訴訟に必要が生じた場合には、東京地方裁判所を専属的合意管轄裁判所とする書面による合意が存在している。
本件訴えは、本件契約に基づき被告JALブランドに原告が委託した写真の、本件契約解除後の使用に関する訴えであり、上記「本契約に関して訴訟の必要が生じた場合」にあたる。
なお、原告は、本件契約は既に合意解除されているから、管轄合意も効力を失っていると主張するが、契約終了後であっても、当該契約に関連する紛争には、管轄合意の適用があるものと解するべきである。
したがって、本件訴えにつき土地管轄権を有するのは東京地方裁判所のみ
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よって、本件訴えは却下されるべきである。
〔原告の主張〕被告が専属的合意管轄の根拠とする本件契約は、平成12年に合意解除されているのであるから、管轄の合意はその時点で効力を失っている。
(2)本件使用2についての被告アイ・ピー・エスの過失の有無〔原告の主張〕被告アイ・ピー・エスは、被告JALブランドから本件契約が解除されたことの連絡を受けておきなから、本件使用2をさせたものである。
以上のような被告アイ・ピー・エスの行為は、少なくとも過失に基づくものである。
〔被告アイ・ピー・エスの主張〕一般に、著作権者から委託を受けた事業者から更に写真の委託を受ける写真貸出業者は、斡旋の委託を受けた写真に関しては、著作権者から委託を受けた事業者において必要な著作権処理を行っていることを信用し、第三者に使用させるにあたって著作権者から委託を受けた事業者あるいは著作権者に事前に連絡して適切な著作権処理がなされているかを確認することは、原則として行わない。
同被告は、これに倣い、被告JALブランドから受領し保有していた本件写真のデュープポジの使用についても、通常どおり、必要な著作権処理はJALブランドにおいて尽くされていると信じて特段調査を行わなかったものである。
したがって、被告アイ・ピー・エスには本件写真の使用が著作権の侵害にあたるか否かについて慎重に調査判断する義務はなく、本件使用2についても、同被告に過失はない。
(3)本件使用2についての被告ドトールの故意又は過失の有無〔原告の主張〕多数作成して広く一般に頒布するパンフレットに著作物たる写真を使用する場合、その使用者としては、著作権を侵害しないよう慎重に配慮、調査をする義務があるというべきである。
被告ドトールは、そのような配慮も調査もせず、安易に本件使用2に及んだものであって、同被告の行為は、故意に基づくものか、少なくとも過失に基づくものである。
〔被告ドトールの主張〕被告ドトールに本件使用2について故意があったことは否認する。
同被告は、コーヒーの焙煎加工及び販売その他を業とする会社であり、パンフレット製作を事業として展開しているわけではない。同被告は、単に、自己の製品の宣伝等のためのパンフレットを製作会社に依頼し、その後、完成したパンフレットを受け取り、店舗に備置して頒布しただけである。同被告が委託したい製作会社は従前からパンフレットやカタログ等の製作を業としており、同被告はそのような者にパンフレット製作を委託した顧客にすぎない。
したがって、同被告に、自己が製作を委託したパンフレットに使用される写真が著作権を侵害しないよう配慮、調査する義務はなく、原告が主張するような義務違反は同被告にはない。
よって、本件使用2についても、同被告に過失はない。
(4)損害の額〔原告の主張〕ア財産的損害原告は、その父親であるP2と共に「K1」を経営している。
K1では、写真をパンフレット等に利用させる場合、使用料として1点につき5万円を得ている(甲3の1・2)。
また、P2は、社団法人日本写真家協会に所属しているところ、同協会では著作物である写真を無断で他の用途に使用した場合は、通常の使用料の10倍の金額の使用料を請求することになっているが、一般的にも、写真の無断使用の場合、その使用料は通常の使用料の10倍とされるのが通常である。なお、社団法人日本写真家協会にも商業写真家である会員は多く存在しており、被告らが主張するように作家性の強い写真家の団体ではない。
したがって、本件各使用により、原告の著作権(複製権)が侵害されたことによって原告が被った損害は、それぞれ50万円である(著作権法114条3項)。
イ精神的損害原告は、被告JALブランドの態度に不信感を持ったため、本件契約を合意解除した。
被告JALブランドは、本件契約が合意解除された時点で、本件写真の他、その全ての複製物を原告に返還すべきであったのに、これを保有し続け、原告に無断でこれを使用させた(本件各使用)。
また、被告アイ・ピー・エスも、被告JALブランドから本件契約の終了の連絡を受けておきながら、本件写真の複製物の貸出しを行わないための措置等を全く取ることなく、漫然とその複製物を保有し続け、原告に無断でこれを使用させた(本件使用2)。
上記両被告は、著作物たる写真などを扱うことによって営業しているものであり、著作物については特別慎重に取り扱うべき立場にあるにもかかわらず、
これを怠って、本件各使用を引き起こした。
原告は、上記両被告は、著作物を扱うことによって営業しているものであるから、本件契約を解除した後は、本件写真が原告に無断で使用されるなどとは思いもよらなかったところ、本件写真を無断で使用されたことによって非常な精神的損害を被った。
これらの精神的損害を慰謝するためには、本件各使用のそれぞれにつき、250万円が相当である。
ウまとめよって、被告JALブランドに対し、本件使用1に係る財産的損害として50万円、精神的損害として250万円の、被告らに対し、連帯して、本件使用2に係る財産的損害として50万円の、被告JALブランド及び被告アイ・ピー・エスに対し、連帯して、本件使用2に係る精神的損害として250万円の賠償を、
それぞれ求める。
〔被告らの主張〕ア財産的損害について(ア)原告の主張は争う。
(イ)原告が通常の使用料の根拠としている甲第3号証の1・2は、P2が写真を委託した会社が写真を貸し出す際の規定であるが、仮にこれに基づいて写真の使用料を算出するとしても、写真が貸し出され、パンフレットに使用された場合に受けるべき金額は、3万円又は3万5000円である。
(ウ)本件において原告が著作権の行使により受領する金額を算定するにあたっては、本件契約に基づき、原告が支払いを受ける使用料収受額を参考とすべきである。原告は、被告JALブランドのような、貸出しに関する営業力を有していないのであるから、写真貸出業者の写真貸出料を、原告の受領する通常の使用料と考えることはできない。
本件契約及び所定の写真使用料金表(乙2)によれば、本件各使用による原告の本件写真の使用料収受額は、本件使用1については1万2500円、本件使用2については1万5000円となる。
しかも、この料金表は定価表であり、実際の貸出料は使用者と交渉の結果決定されるため、原告が支払いを受ける実際の使用料収受額はより低くなるのが通常である。本件各使用についての実際の貸出料は、本件使用1は1万2000円、本件使用2は1万8000円である(乙8、9)。
したがって、本件契約により、実際に、原告が本件各使用により受ける使用料収受額は、本件使用1は6000円、本件使用2は9000円となる。
(エ)被告JALブランド以外の写真貸出業者による写真貸出料を見ても、本件使用1については3万1500円ないし4万円、本件使用2については2万5000円ないし4万5000円であり、写真家の取得する通常の使用料は、これらの金額から写真貸出業者の委託手数料を差し引いた金額である。
これに照らしても、原告の主張が不相当に高額であることは明らかである。
(オ)無断使用の場合に使用料を増額すべきとは、一概にいえない。
仮に、許諾を受けて使用する場合の通常の料金と、無断使用の場合の使用料に差異を設けるべきとしても、写真の無断使用の場合一般に、使用料が通常の使用料の10倍とされるのが通常であるということはない。故意による無断使用ではない本件の場合には、なおさら10倍にすることが通常であるとはいえない。
また、原告が主張する日本写真家協会の例は、本件写真のような広告等の写真を撮影する商業写真家ではなく、作家性の強い写真家の団体である同協会が、その会員の写真価値を高めるために、写真家に有利な条件を定めたものであるから、本件写真の使用料の算出根拠となるものではない。
イ精神的損害について財産権の侵害の場合に生じる精神的苦痛は、原則として、当該財産的損害の賠償により慰謝されると解すべきであるから、被告らによる著作権の侵害を理由として、精神的損害に対する慰謝料を請求することは認められるべきではない。
著作権という財産権の侵害を理由として、慰謝料請求に値するような精神的苦痛を被ったと認められるためには、侵害された財産権が当該被害者にとって特別の精神的価値があり、そのため、単に侵害の排除又は財産上の損害の賠償だけでは到底償いがたい程の甚大な精神的苦痛を被ったと認めるべきような特段の事情を要すると解すべきである。
しかし、原告は、本件写真の著作権を撮影者から譲り受けただけである。また、原告は、本件写真について、何に写真が掲載されて利用されるかわからない本件契約に基づいて、これを被告JALブランドに委託し、複数の媒体への掲載を許していたものである。加えて、原告の主張によれば、そのような契約の下で本件写真が多く利用されることを希望していたというのである。
以上からすれば、本件写真が原告にとって特別の精神的価値があったとは認めがたく、本件各使用により、原告が甚大な精神的苦痛を被ったものとは認められない。
(5)頒布差止め及び廃棄請求の当否〔原告の主張〕被告ドトールは、本件パンフレット2を頒布しているものであるから、著作権法112条1項に基づき、その頒布の差止めを、同条2項に基づき、その廃棄を、それぞれ求める。
〔被告ドトールの主張〕被告ドトールは、本件パンフレット2の頒布を既に終了し、遅くとも平成16年8月31日までに、自己所有分の在庫は廃棄した。したがって、被告ドトールに対する本件パンフレット2の頒布の差止め及び廃棄の請求は、却下ないし棄却されるべきである。
第3当裁判所の判断1争点(1)(当裁判所が本件訴えについて土地管轄権を有しないとして、本件訴えは却下されるべきか)について(1)被告らは、当裁判所が本件訴えについて土地管轄権を有しないから、本件訴えを却下すべきであると主張する。
しかしながら、受訴裁判所が土地管轄権を有しないときは、事件を管轄裁判所に移送すべきものであって(民事訴訟法16条1項)、訴えを却下すべきものではない。
よって、被告らの本案前の主張は理由がない。
(2)もっとも、上記のとおり、受訴裁判所が土地管轄権を有しないときは、事件を管轄裁判所に移送すべきものであるところ、被告らは本案前の答弁をしていることにより、民事訴訟法12条による応訴管轄は生じていないから、本件訴えにつき当裁判所が土地管轄権を有しているか、職権により判断する。
ア被告JALブランドに対する本件訴えは、本件契約の終了後に生じた著作権侵害の不法行為による損害賠償の請求である。
そして、本件契約の第18条は、「本契約に関して訴訟の必要が生じた場合に東京裁判所のみを管轄裁判所とします。」との条項となっている。
そこで検討するに、確かに、本件契約の合意解除により、本件契約による上記管轄合意の効力が失われるとは解されないものの、本件訴えに係る著作権侵害の不法行為は、本件契約の終了後に生じたものである。
したがって、このような紛争についてまで、上記「本契約に関して訴訟の必要が生じた場合」に該当すると解することはできず、上記管轄合意の効力は本件訴えには及ばないものと解するのが相当である。
イなお、本件契約は原告と被告JALブランドとの間でされたものであるから、その管轄合意の効力が被告アイ・ピー・エス又は被告ドトールに及ばないことは当然である。
ウそこで、各被告に対する本件訴えについて当裁判所が土地管轄権を有するか検討する。
被告JALブランドに対する本件訴えは上記アのとおりであり、被告アイ・ピー・エスに対する本件訴えも同様である。
また、被告ドトールに対する本件訴えは、著作権侵害の不法行為による損害賠償の請求と、著作権法112条1項及び2項に基づく本件パンフレット2の頒布の差止め及び廃棄の請求である。
ここで、原告の住所地は肩書地である大阪市である。したがって、各被告に対する損害賠償請求に係る、不法行為による損害賠償債務の履行地はいずれも大阪市となり、民事訴訟法5条1号により、それぞれ当裁判所が土地管轄権を有するものである。
したがって、被告ドトールに対する著作権法112条1項ないし2項に基づく各請求についても、民事訴訟法7条本文により、当裁判所が管轄権を有することとなる。
(3)以上のとおり、被告らの本案前の主張は理由がなく、当裁判所は、本件訴えについて管轄権を有しているものであるから、以下、本案について判断を進める。
2争点(2)(被告アイ・ピー・エスの過失の有無)について前記〔前提となる事実等〕(3)ウ及び(5)のとおり、被告アイ・ピー・エスは、被告JALブランドから、本件契約が解除されたことの通知を受けたにもかかわらず、その後に、本件写真のデュープポジを貸し出し、本件使用2に至らせたものである。
したがって、この点において、被告アイ・ピー・エスに過失があることは明らかである。
3争点(3)(被告ドトールの故意又は過失の有無)について(1)被告ドトールが、本件使用2について、故意を有していたと認めるに足りる証拠はない。
(2)そこで、過失について検討する。
ア被告ドトールは、コーヒーの焙煎加工及び販売その他を目的とする株式会社であり、宣伝広告の広告主となることはあっても、自ら広告を制作することを業とする会社ではない。
このような会社が、少なくとも、顧客として、パンフレット製作会社にパンフレットの製作を依頼して、完成したパンフレットの納入を受けてこれを頒布するにあたっては、そのパンフレットに使用された写真について、別に著作権者が存在し、使用についてその許諾が得られていないことを知っているか、又は知り得べき特別の事情がある場合はともかく、その写真の使用に当たって別途著作権者の許諾が必要であれば、パンフレット製作会社からその旨指摘されるであろうことを信頼することが許され、逐一、その写真の使用のために別途第三者の許諾が必要か否かをパンフレット製作会社に対して確認し、あるいは、自らこれを調査するまでの注意義務を負うものではないと解すべきである。
なぜならば、一般に、パンフレット製作会社がパンフレットの製作にあたって使用した写真が、誰の撮影に係るものであるか、顧客には直ちに知り得ないものであり、その著作権についても、当該撮影者が有していたり、第三者に譲渡されていたり、あるいは既に消滅していたりと、様々な状況があり得るのであって、
これも顧客には直ちに知り得ないものであるからである。
したがって、特段の事情のない限り、顧客としては、パンフレットに使用される写真の著作権については、パンフレット製作会社において適切な対応がされていると信じ、その写真を使用することが他者の著作権を侵害するものではないものと考えたとしても、注意義務に違反するものとはいえない。
イ本件についてこれをみるに、同被告が、本件使用2に際して、本件写真について、著作権者が存在し、その許諾を得ていないことを知っていたことを認めるに足りる証拠はなく、また、そのような事実を知り得べきであったという特別の事情が存在したことを認めるに足りる証拠もない。
以上に照らせば、同被告には注意義務違反は認めることができず、したがって、本件使用2による原告の著作権(複製権)侵害について、同被告に過失を認めることはできない。
(3)よって、その余の点につき判断するまでもなく、被告ドトールに対する損害賠償請求は理由がない。
4争点(4)(損害の額)について(1)財産的損害についてア原告は、著作権法114条3項により、原告が被った損害を算定すべきとする。
著作権法114条3項の「受けるべき金銭の額に相当する額」を算定するに当たっては、侵害行為の対象となった著作物の性質、内容、価値、取引の実情のほか、侵害行為の性質、内容、侵害行為によって侵害者が得た利益、当事者の関係その他の当事者間の具体的な事情をも参酌して算定すべきものである。
イ(ア)甲第3号証の1・2(P2と貸出業者である株式会社ピーピーエス通信社との契約書及び同社の写真貸出使用規定)によれば、同社がパンフレット用として写真を貸し出す際の基本料金は5万円であり、P2はその60パーセントに相当する3万円の配分を受けることとされていることが認められる。
(イ)乙第2号証(被告JALブランドの使用料金表)によれば、本件契約に基づいて本件各使用がされていた場合、本件各使用はいずれもカラーでの使用であり、本件使用1は旅行用パンフレットの表紙に使用したものであり、本件使用2は商品及び旅行のパンフレットの表紙以外の部分の半頁に使用したものであるから、本件各使用により使用者が同被告に支払うべき使用料額は、本件使用1については2万5000円、本件使用2については3万円となることが認められる(いずれも消費税を含まない。以下特に記載のない限り同様。)。
乙第1号証(原告と同被告との契約書)によれば、同被告は使用料の50パーセント(カタログの場合)を原告に支払うこととされているから、本件各使用により、原告が同被告から配分を受ける金額は、本件使用1については1万2500円、本件使用2については1万5000円となることが認められる。
もっとも、乙第8、第9号証によれば、現実には、本件各使用により同被告が受けた使用料額は、本件使用1につき1万2000円、本件使用2につき1万8000円であったことが認められ、これを前提とすると、原告が同被告から配分を受ける金額は、本件使用1につき6000円、本件使用2につき9000円となる。
(ウ)また、被告JALブランド以外の写真貸出業者の料金表に従ったときに、本件各使用により使用者が写真貸出業者に支払うべき使用料についてみるに、JTBフォト(乙4の1)においては、本件各使用についていずれも3万円であり、PANA通信社(乙4の2)においては、本件使用1について3万5000円、本件使用2について3万円であると認められる。
もっとも、これらはいずれも使用者が写真貸出業者に支払うべき使用料であり、写真貸出業者から権利者が配分を受ける割合は必ずしも明らかではない。
なお、アマナの料金表(乙4の3)も提出されているが、同証によれば、アマナは、部数に応じた料金設定となっており、本件各使用におけるパンフレットの部数は明らかではないから、本件各使用による使用料を算出することはできない。
ウ以上の事実を中心に、本件に表れた諸事情を総合考慮すると、本件各使用による複製権侵害について原告が受けるべき金銭の額としては、本件各使用のそれぞれについて3万円と認定するのが相当である。
エ原告は、一般的に、写真の無断使用の場合、その使用料は通常の使用料の10倍とされるのが通常であると主張する。
しかしながら、原告がその証拠として提出する、日本写真家協会会員用の写真借用書控(甲4)によっては、一般的に原告主張のような慣行があるものと認めるには足りない。
また、証拠として提出されている写真貸出業者の料金表(乙2、4の1ないし3)のうち、アマナの料金表(乙4の3)には、無断使用の場合には使用料定価の10倍の額を損害として請求する旨の記載があるが、被告JALブランド(乙2)、JTBフォト(乙4の1)、PANA通信社(乙4の2)の各料金表には、そのような記載がなく、他に、原告主張の慣行があると認めるに足りる証拠はない。
(2)精神的損害についてア本件各使用によって侵害されたのは原告の著作権(複製権)であり、財産権である。
そして、一般には、財産権が侵害されたことによって、被害者に精神的苦痛が生じたとしても、その苦痛は、原則として、財産的損害が賠償されることによって慰謝されると解すべきである。
もっとも、侵害された財産権が、被害者にとって、単なる財産的価値にとどまらず、特別の精神的価値があるものであり、その侵害によって、財産的損害の賠償によって十分に慰謝されないなどといった特段の事情がある場合には、財産的損害の賠償の他に、慰謝料の請求を認める余地があると解される。
これを本件についてみるに、本件写真の著作権が、原告にとって、単なる財産的価値にとどまらない特別の精神的価値があるものであると認めるに足りる主張も証拠もない。
イ原告は、上記両被告は、著作物を扱うことによって営業しているものであるから、本件契約を解除した後は、本件写真が原告に無断で使用されるなどとは思いもよらなかったところ、本件写真を無断で使用されたことによって非常な精神的損害を被ったと主張する。
そこで検討するに、財産権侵害の不法行為であっても、加害者の加害態様の悪性が特に強く、財産的損害とは別に精神的損害が生じたと認められる場合には、財産的損害の賠償の他に、慰謝料の請求を認める特段の事情となり得るとしても、原告が上記のとおり主張するところは、財産的損害の賠償のほかに、慰謝料の請求を相当とするまでの事情とは解することができない。また、本件全証拠によっても、侵害の態様その他について、慰謝料の請求を認めるべき特段の事情を認めることもできない。
したがって、原告の精神的損害についての慰謝料の請求は、理由がない。
(3)まとめ以上のとおり、本件各使用による原告の著作権(複製権)侵害により原告が被った損害の額としては、いずれも財産的損害として、各3万円の限度で認められる。
そして、本件使用2による著作権侵害については、被告JALブランドと被告アイ・ピー・エスの共同不法行為というべきである。
したがって、原告の損害賠償請求は、上記両被告に対して連帯して3万円(本件使用2の分)及び被告JALブランドに対して3万円(本件使用1の分)のそれぞれの支払いを求める限度で理由がある。
5争点(5)(頒布差止及び廃棄請求の当否)について被告ドトールは、本件パンフレット2の頒布を既に終了し、遅くとも平成16年8月31日までに、自己所有分の在庫は廃棄したと主張し、これに沿う証拠として、廃棄確認書(乙11)を提出する。
上記乙第11号証は、同被告代表取締役が平成17年10月5日付けで作成したものであり、「当社は、平成16年8月31日までに、当社物流センターに在庫してあった、P1氏が著作権を有するキラウェア火山の写真を掲載した『あなたのための楽園』と題するパンフレットの全てを廃棄いたしました。」と記載されているものである。
そこで検討するに、同号証の記載内容を前提とするとしても、同被告の「物流センターに在庫してあった」本件パンフレット2の全てを廃棄したというにとどまり、それ以外に同被告が本件パンフレット2を保有しているか否か等は、必ずしも明らかとはなっていない。したがって、同号証のみによっては、同被告がその保有するパンフレットの全てを廃棄したと認めるには足りず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
したがって、同被告がかつて本件パンフレット2を保有し、頒布した事実が存在すること(前記「前提となる事実等」(5))に照らせば、同被告に対し、著作権法112条1項に基づき、将来の侵害の予防として、本件パンフレット2の頒布差止めを求める請求、及び、同条2項に基づき、将来の侵害防止に必要な措置として、本件パンフレット2の廃棄を求める請求は、いずれも理由がある。
6結論以上のとおりであるから、原告の請求は、主文掲記の限度で理由がある。
なお、廃棄に係る主文第4項については、仮執行の宣言は相当でないからこれを付さない。
また、主文第1項ないし第3項についての仮執行免脱宣言は、相当でないからこれを付さない。
よって、主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第26民事部裁判長裁判官山田知司裁判官高松宏之裁判官守山修生
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