運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙1PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙2PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙3PDFを見る pdf
事件 令和 4年 (ワ) 12062号 損害賠償請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2023/08/24
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
令和 5 年 8 月 24 日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

令和 4 年(ワ)第 12062 号 損害賠償請求事件

口頭弁論終結日 令和 5 年 7 月 6 日

判 決

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

5 主 文

1 被告は、原告らそれぞれに対し、以下の額及びこれに対する令和 5 年 6

月 30 日から支払済みまで年 3%の割合による金員を支払え。

(1) 原告アスミック・エースに対し、1987 万円

(2) 原告 KADOKAWA に対し、678 万円

10 (3) 原告ギャガに対し、2277 万円

(4) 原告松竹に対し、675 万円

(5) 原告 TBS テレビに対し、2076 万円

(6) 原告東映に対し、213 万円

(7) 原告東映ビデオに対し、1395 万円

15 (8) 原告東宝に対し、6502 万円

(9) 原告日活に対し、1 億 8576 万円

(10) 原告日本テレビ放送網に対し、5688 万円

(11) 原告ハピネットファントム・スタジオに対し、3308 万円

(12) 原告フジテレビジョンに対し、6394 万円

20 (13) 原告 WOWOW に対し、231 万円

2 訴訟費用は、被告の負担とする。

3 この判決は、仮に執行することができる。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

25 主文同旨


1
第2 事案の概要

1 本件は、原告らが、被告、A及びB(以下、A及びBを「Aら」という。)は

原告らの著作物である別紙著作物目録記載の映画の著作物を編集して作成した動画

をインターネット上の動画投稿サイト「YouTube」に投稿し、これによって原告ら

5 の著作権(翻案権、公衆送信権)を侵害したと主張して、被告に対し、民法 709 条

(損害額につき、著作権法(以下「法」という。)114 条 3 項)に基づき、一部請求

として、前記主文記載の額の損害賠償及びこれらに対する令和 5 年 6 月 30 日(訴

状送達の日(公示送達の効力発生日)の翌日)から支払済みまで民法所定の年 3%

の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

10 2 本件訴訟の経過

原告らは、令和 4 年 5 月 19 日、被告及びAらに対し、本件訴訟を提起した。

当裁判所は、同年 6 月 30 日、被告についての口頭弁論を分離した。Aらに係る

事件において、Aらは請求原因事実をいずれも認める旨陳述し、当裁判所は、同年

11 月 17 日、原告らのAらに対する請求を全部認容する判決を言い渡した。

15 他方、本件において、被告は、公示送達による呼出しを受けたが、口頭弁論期日

に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しなかった。

3 原告らの主張

(1) 原告らは、いずれも映画の製作・配給等を目的とする株式会社である。

(2) 別紙著作物目録記載の各映画作品(以下「本件各映画作品」という。)は、い

20 ずれも映画の著作物(法 10 条 1 項 7 号)であり、別紙侵害行為一覧の「映画作品

名(正式名称)」欄記載の各映画作品につき、対応する同別紙「著作権者」欄記載の

原告が著作権を有する。

(3) 被告及びAらは、共謀して、本件各映画作品をそれぞれ編集して、約 2 時間

の作品全体の内容を把握し得るように 10〜15 分程度の動画(以下「本件各動画」

25 という。)を作成し、もって原告らが本件各映画作品につきそれぞれ有する著作権

翻案権)を侵害した上、本件各動画を別紙侵害行為一覧の「投稿日」欄記載の日


2
に同別紙「タイトル」欄記載のタイトル及び「URL」欄記載の URL により YouTube

に投稿し、もって原告らが本件各映画作品につきそれぞれ有する著作権(公衆送信

権)を侵害した。

(4) 本件各動画は、それぞれ YouTube 上で利用者によってストリーミング再生

5 された。その再生回数は、別紙侵害行為一覧の「再生数」欄記載のとおりである。

これにより、被告及びAらは、少なくとも 700 万円程度の広告収益を得た。

(5) 本件各映画作品につき、消費者がストリーミング形式で一時閲覧する権利を

購入するにあたり YouTube 上で支払う価格は、概ね 400 円を下らない。この額か

ら、プラットフォーム手数料(30%)を控除した上、本件各動画が本件各映画作品

10 の全体をアップロードしたものではないことを考慮しても、「著作権…の行使につ

き受けるべき金銭の額に相当する額」(法 114 条 3 項)は、1 再生当たり 200 円を

下らない。これに別紙侵害行為一覧の「再生数」欄記載の再生数を乗じると、本件

各映画作品のそれぞれに係る損害額は、同別紙「損害額」欄記載の金額を下らない。

(6) よって、原告らは、被告に対し、同別紙「損害額(一部請求における権利者

15 合計)」欄記載の額の損害賠償(一部請求)及びこれに対する訴状送達の日(公示送

達の効力発生日)の翌日である令和 5 年 6 月 30 日から支払済みまで民法所定の年

3%の割合による遅延損害金の支払を求める。

第3 当裁判所の判断

1 証拠(甲 1〜10)及び弁論の全趣旨によれば、原告ら主張の事実はいずれも認

20 められる。これによれば、被告及びAらは、故意により、いずれも映画の著作物

ある本件各映画作品について原告らがそれぞれ有する著作権(翻案権、公衆送信権

を侵害したといえる。

2 損害額について

(1) 弁論の全趣旨によれば、YouTube の利用者が YouTube 上でストリーミング

25 形式により映画を視聴するためには所定のレンタル料を支払う必要があることが認

められる。再生対象の映画の著作権者は、当該レンタル料から著作権の行使につき


3
受けるべき対価を得ることを予定しているものと理解されることから、本件におい

て、原告らが本件各映画作品に係る著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当

する額は、YouTube 上で視聴する場合の本件各映画作品それぞれのレンタル価格等

を考慮して定める金額に、本件各動画の YouTube 上での再生数を乗じて算定する

5 のが相当である。

(2) 弁論の全趣旨によれば、YouTube における本件各映画作品の各レンタル価格

(HD 画質のもの)は、1 作品当たり 400〜500 円程度であり、400 円を下らないこ

と、うち 30%が YouTube に対するプラットフォーム手数料に充当されること、本

件各動画は、それぞれ、約 2 時間の本件各映画作品を 10〜15 分程度に編集したも

10 のであるものの、本件各映画作品全体の内容を把握し得るように編集されたもので

あることが認められる。これらの事情を総合的に考慮すると、被告及びAらが本件

侵害行為によって得た広告収益が 700 万円程度であること(弁論の全趣旨)を併せ

考慮しても、
「著作権…の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」(法 114 条

3 項)は、原告らの主張のとおり、本件各動画の再生数 1 回当たり 200 円とするの

15 が相当である。

(3) 上記算定方法によると、本件において原告らが本件各映画作品に係る著作権

の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額は、それぞれ、別紙侵害行為一覧の

「損害額」欄記載のとおりとなる。

したがって、原告らは、被告に対し、上記金額を自己が受けた損害の額としてそ

20 の賠償を請求し得る。この額は、いずれも、本件において原告らが一部請求として

被告に対して支払を求める損害賠償額を上回る。

3 以上によれば、原告らは、被告に対し、民法 709 条に基づき、本件における

請求額全額の損害賠償請求権及びこれに対する訴状送達の日(公示送達の効力発生

日)の翌日である令和 5 年 6 月 30 日から支払済みまで民法所定の年 3%の割合によ

25 る遅延損害金請求権を有することが認められる。

第4 結論


4
よって、原告らの請求はいずれも理由があるから、これらをいずれも認容するこ

ととして、主文のとおり判決する。



東京地方裁判所民事第 47 部

5




裁判長裁判官



杉 浦 正 樹

10




裁判官



15 久 野 雄 平




裁判官

20


吉 野 弘 子




5
別紙

当事者目録



原 告 アスミック・エース株式会社

(以下「原告アスミック エース」
・ という。)




原 告 株式会社 KADOKAWA

(以下「原告 KADOKAWA」という。)




原 告 ギャガ株式会社

(以下「原告ギャガ」という。)




原 告 松竹株式会社

(以下「原告松竹」という。)




原 告 株式会社 TBS テレビ

(以下「原告 TBS テレビ」という。)




原 告 東映株式会社

(以下「原告東映」という。)




6
原 告 東映ビデオ株式会社

(以下「原告東映ビデオ」という。)




原 告 東宝株式会社

(以下「原告東宝」という。)




原 告 日活株式会社

(以下「原告日活」という。)




原 告 日本テレビ放送網株式会社

(以下「原告日本テレビ放送網」という。)




原 告 株式会社ハピネットファントム・スタジ



(以下「原告ハピネットファントム・ス

タジオ」という。)




原 告 株式会社フジテレビジョン

(以下「原告フジテレビジョン」という。)




7
原 告 株式会社 WOWOW

(以下「原告 WOWOW」という。)



原告ら訴訟代理人弁護士 前田哲男

同 中島博之

同 小山紘一




被 告 C




8
別紙

著作物目録

1 題号 ヘルタースケルター

著作権者 原告アスミック・エース

公表年 2012 年



2 題号 犬神家の一族(2006)

著作権者 原告 KADOKAWA

公表年 2006 年



3 題号 蛇にピアス

著作権者 原告ギャガ

公表年 2008 年



4 題号 東京喰種

著作権者 原告松竹

公表年 2017 年



5 題号 犬と私の 10 の約束

著作権者 原告松竹

公表年 2008 年



6 題号 こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話

著作権者 原告松竹

公表年 2018 年




9
7 題号 おくりびと

著作権者 原告 TBS テレビ

公表年 2008 年



8 題号 感染列島

著作権者 原告 TBS テレビ

公表年 2009 年



9 題号 ビリギャル〜学年ビリのギャルが 1 年で偏差値を 40 上げて慶應大

学に現役合格した話

著作権者 原告 TBS テレビ

公表年 2015 年



10 題号 スマホを落としただけなのに

著作権者 原告 TBS テレビ

公表年 2018 年



11 題号 孤高のメス

著作権者 原告東映

公表年 2010 年



12 題号 花宵道中

著作権者 原告東映ビデオ

公表年 2014 年



13 題号 百円の恋


10
著作権者 原告東映ビデオ

公表年 2014 年



14 題号 恋は雨上がりのように

著作権者 原告東宝

公表年 2018 年



15 題号 告白

著作権者 原告東宝

公表年 2010 年



16 題号 君の膵臓をたべたい

著作権者 原告東宝

公表年 2017 年



17 題号 モテキ

著作権者 原告東宝

公表年 2011 年



18 題号 ぼくは明日、昨日のきみとデートする

著作権者 原告東宝

公表年 2016 年



19 題号 シン・ゴジラ

著作権者 原告東宝

公表年 2016 年


11
20 題号 神さまの言うとおり

著作権者 原告東宝

公表年 2014 年



21 題号 悪の教典

著作権者 原告東宝

公表年 2012 年



22 題号 アオハライド

著作権者 原告東宝

公表年 2014 年



23 題号 アイアムアヒーロー

著作権者 原告東宝

公表年 2016 年



24 題号 火花

著作権者 原告東宝

公表年 2017 年



25 題号 冷たい熱帯魚

著作権者 原告日活

公表年 2011 年



26 題号 ブタがいた教室


12
著作権者 原告日活

公表年 2008 年



27 題号 日本で一番悪い奴ら

著作権者 原告日活

公表年 2016 年



28 題号 凶悪

著作権者 原告日活

公表年 2013 年



29 題号 かもめ食堂

著作権者 原告日活

公表年 2006 年



30 題号 八日目の蝉

著作権者 原告日活

公表年 2011 年



31 題号 藁の楯

著作権者 原告日本テレビ放送

公表年 2013 年 4 月 26 日



32 題号 ツナグ

著作権者 原告日本テレビ放送

公表年 2012 年 10 月 6 日


13
33 題号 太平洋の奇跡 −フォックスと呼ばれた男−

著作権者 原告日本テレビ放送

公表年 2011 年 2 月 11 日



34 題号 謝罪の王様

著作権者 原告日本テレビ放送

公表年 2013 年 9 月 28 日



35 題号 九月の恋と出会うまで

著作権者 原告日本テレビ放送

公表年 2019 年 3 月 1 日



36 題号 桐島、部活やめるってよ

著作権者 原告日本テレビ放送

公表年 2012 年 8 月 11 日



37 題号 俺物語!!

著作権者 原告日本テレビ放送

公表年 2015 年 10 月 31 日



38 題号 映画 ホタルノヒカリ

著作権者 原告日本テレビ放送

公表年 2012 年 6 月 9 日



39 題号 DEATH NOTE


14
著作権者 原告日本テレビ放送

公表年 2006 年 6 月 17 日



40 題号 3D 彼女 リアルガール

著作権者 原告日本テレビ放送

公表年 2018 年 9 月 14 日



41 題号 22 年目の告白-私が殺人犯です-

著作権者 原告日本テレビ放送

公表年 2017 年 6 月 10 日



42 題号 20 世紀少年 第1章 終わりの始まり

著作権者 原告日本テレビ放送

公表年 2008 年 8 月 30 日



43 題号 ウルルの森の物語 A Tale of Ululu's Wonderful Forest

著作権者 原告日本テレビ放送

公表年 2009 年 12 月 19 日



44 題号 私の男

著作権者 原告ハピネットファントム・スタジオ

公表年 2014 年



45 題号 葛城事件

著作権者 原告ハピネットファントム・スタジオ

公表年 2016 年


15
46 題号 容疑者 X の献身

著作権者 原告フジテレビジョン

公表年 2008 年



47 題号 真夏の方程式

著作権者 原告フジテレビジョン

公表年 2013 年



48 題号 ミックス。

著作権者 原告フジテレビジョン

公表年 2017 年



49 題号 帝一の國

著作権者 原告フジテレビジョン

公表年 2017 年



50 題号 それでもボクはやってない

著作権者 原告フジテレビジョン

公表年 2007 年



51 題号 ステキな金縛り

著作権者 原告フジテレビジョン

公表年 2011 年



52 題号 サバイバルファミリー


16
著作権者 原告フジテレビジョン

公表年 2017 年



53 題号 エイプリルフールズ

著作権者 原告フジテレビジョン

公表年 2015 年



54 題号 散歩する侵略者

著作権者 原告 WOWOW

公表年 2017 年 9 月 9 日




17
(別紙侵害行為一覧 省略)




18