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事件 |
令和
4年
(ワ)
18353号
発信者情報開示請求事件
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5原告株式会社MBM 同訴訟代理人弁護士 杉山央 被告KDDI株式会社 同訴訟代理人弁護士 今井和男 小倉慎一 10 山本一生 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2023/03/16 |
権利種別 | 著作権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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全容
15 第1 請求 主文同旨 第2 事案の概要 1 本件は、原告が、氏名不詳者ら(以下「本件発信者ら」という。)がいわゆる ファイル交換共有ソフトウェアであるBitTorrentを使用して、別紙侵20 害著作物目録記載の各動画(以下「本件動画」という。)を送信可能化したこと により、本件動画に係る原告の送信可能化権を侵害したと主張して、被告に対し、 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する 法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)5条1項に基づき、別紙発信者 情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案25 である。 2 前提事実(証拠等の記載のないものは当事者間に争いがない。なお、証拠を摘 1 示する場合には、特に記載のない限り、枝番を含むものとする。) ? 当事者 ア 原告は、本件動画の著作権を有する株式会社である。(甲2、13ないし 17、弁論の全趣旨) 5 イ 被告は、インターネットサービスプロバイダ事業等を営む株式会社であり、 プロバイダ責任制限法2条3号にいう特定電気通信役務提供者に該当する。 (弁論の全趣旨) ? BitTorrentの仕組み(甲4、5、8、10、11、弁論の全趣旨) BitTorrentは、いわゆるP2P形式のファイル共有のネットワー10 クであり、その概要や利用の手順は、以下のとおりである。 ア BitTorrentを通じて特定のファイルをダウンロードしようと するユーザーは、まず、「インデックスサイト」と呼ばれるウェブサイトに 接続し、当該ファイルの所在等の情報が記録されたトレントファイルをダウ ンロードする。 15 そして、ユーザーは、当該トレントファイルをBitTorrentクラ イアントソフトに読み込ませることにより、トラッカーサイトに接続し、当 該ファイルを保有している他のユーザーのIPアドレスを取得し、それらの ユーザーと接続した上で、当該ファイルをダウンロードする。なお、ダウン ロード中のユーザー(まだ完全な状態のファイルを復元できていない者)は、 20 「リーチャー」と呼ばれる。 イ ユーザーは、ダウンロードした当該ファイルについて、ピア(目的のデー タを持っているコンピュータをいう。以下同じ。)としてトラッカーサイト に登録されるので、他のピアからの要求があれば、当該ファイル(分割され たファイル〔以下「ピース」という。〕を含む。)を提供しなければならな25 いため、ダウンロードと同時にアップロードが可能な状態となる。すなわち、 リーチャーは、目的のファイルをダウンロードすると同時に、当該ファイル 2 について同時にアップロード可能な状態に置かれることになり、他のリーチ ャーに当該ファイルの一部を送信することが可能な状態になっている。 ウ ユーザーは、ピースの取得を続け、完全な状態のファイルを復元すると、 「シーダー」と呼ばれ、シーダーになると、アップロードのみを行うように 5 なる。 ? 原告による著作権侵害調査の概要(甲1、4、5、8) ア 原告は、本件訴訟の提起に先立って、株式会社utsuwa(以下「本件 調査会社」という。 に対し、 ) 本件動画に係る著作権侵害についての調査(以 下「本件調査」という。)を依頼した。 10 イ 本件調査会社は、本件調査を踏まえ、原告に対し、別紙発信者情報目録記 載の日時に、同記載のIPアドレスの割り当てを受けた発信者ら(本件発信 者ら)が本件動画に係るファイル(以下「本件ファイル」という。)のダウ ンロード及びアップロードを行っていたことを報告した。 ? 本件発信者情報の保有15 被告は、本件発信者情報を保有している。 3 争点及びこれに対する当事者の主張 本件における争点は、権利侵害の明白性であり、具体的には、本件調査の信用 性である(令和5年1月11日付け経過表参照)。 ? 原告の主張20 ア 本件調査会社は、BitTorrentを利用した違法ダウンロード及び アップロードの特定に際しては、μtorrentというクライアントソフ トを利用しているが、同ソフトは、BitTorrentを利用しやすくす るために開発されたソフトウェアであり、BitTorrentを利用して 特定のファイルのダウンロードを行っているピアのIPアドレスを機械的25 に取得して表示するものであるから、そこに恣意が入る余地はない。 そして、本件調査会社は、本件調査において、μtorrentを利用し 3 て、本件発信者らが、別紙発信者情報目録記載の日時頃、同目録記載のIP アドレスの割当てを受けて、BitTorrentのネットワークに参加し、 本件ファイルのダウンロード及びアップロードを行っていることを確認し ている。 5 イ 以上によれば、本件発信者らが、別紙発信者情報目録記載の日時頃、被告 の提供するインターネット接続サービスを利用し、同目録記載のIPアドレ スの割当てを受けてインターネットに接続し、BitTorrentを用い て、本件動画を複製したファイルを、不特定多数の他のBitTorren tの利用者からの求めに応じて自動的に送信し得る状態にしたことが認め10 られる。 そして、本件発信者らの上記行為につき、違法性阻却事由の存在をうかが わせる事情は認められないから、本件動画に係る原告の送信可能化権が侵害 されたことは明白であるといえる。 ? 被告の主張15 ア 原告の主張は、本件調査に基づき作成された甲4号証、甲5号証及び甲8 号証に依拠しているところ、これらの各書証の作成者である本件調査会社は、 μtorrentの開発者ではない上、BitTorrentのネットワー クを通じてファイルをダウンロードし、アップロード可能な状態に置いたI Pアドレスの特定に関し、専門技術を有する者であるか否かも不明である。 20 したがって、上記各書証は、本件調査の信用性を裏付けるものであるとはい えない。 また、本件調査会社は、本件調査におけるIPアドレスの特定に際し、発 信時刻を単に「00秒」と示すのみであり、秒単位で正確であったかは不明 である。現に、意見照会の結果、当該発信時刻に自宅にいなかった旨の回答25 (乙1)があることからしても、本件調査の結果取得されたIPアドレスが、 本件動画の送信可能化権を侵害したIPアドレスではない可能性が高い。 4 さらに、市販のソフトウェアを用いてIPアドレスを変更することは可能 であることからすれば、BitTorrentにおいて、IPアドレス等に 関して暗号化や偽装の介入する余地がないとはいえないため、本件発信者ら 以外の第三者が、別紙発信者情報目録記載のIPアドレスを偽装した可能性 5 も排除できない。 イ 以上によれば、本件発信者らが本件動画に係る原告の送信可能化権を侵害 したことが明らかであるとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実10 前記前提事実、証拠(甲1、4ないし6、8ないし11)及び弁論の全趣旨に よれば、本件調査につき、次の事実が認められる。 ? μtorrentは、BitTorrentのクライアントソフトの一つで あり、BitTorrentを用いて実際に特定のファイルをアップロード及 びダウンロードしている最中のユーザーにつき、そのIPアドレスを特定した15 上で、当該IPアドレスとともに、当該ユーザーが当該ファイルをアップロー ドする際の上り速度や、ダウンロードする際の下り速度、ダウンロード量及び アップロード量等を画面上に表示するという機能を有している。 ? 本件調査会社は、μtorrentを起動し、本件動画に係るトレントファ イルをμtorrentに読み込ませた上で、BitTorrentを通じて、 20 本件動画のファイルのダウンロードを行った。 そして、本件調査会社は、上記ダウンロードの際、μtorrentの上記 機能を利用して、その時点において、本件ファイルにつき、BitTorre ntを通じてアップロード及びダウンロードを行っている他のユーザーの存 否を確認したところ、別紙発信者情報目録記載の日時に、同記載のIPアドレ25 スの割当てを受けたユーザーが、本件ファイルに係るピースをダウンロードす ると同時にアップロードしていることを確認した。 5 2 権利侵害の明白性 ? 前提事実記載のBitTorrentの仕組み及び前記認定事実によれば、 本件発信者らは、本件ファイルに係るピースをその端末にダウンロードして、 当該ピースを不特定多数の者からの求めに応じ、BitTorrentを通じ 5 て自動的に送信し得るようにした上、被告から別紙発信者情報目録記載のIP アドレスの割当てを受けてインターネットに接続し、同記載の日時において、 ダウンロードと同時に不特定多数にアップロードが可能な状態となる本件調 査会社の端末に、本件ファイルのピースを実際にダウンロードさせたことが認 められる。 10 これらの事情を踏まえると、本件発信者らが、別紙発信者情報目録記載の日 時において本件動画に係る原告の送信可能化権を侵害したと認めるのが相当 である。そして、本件全証拠及び弁論の全趣旨によっても、侵害行為の違法性 を阻却する事由が存在することをうかがわせる事情を認めることはできない。 したがって、権利侵害の明白性を認めるのが相当である。 15 ? これに対し、被告は、本件調査会社による本件調査には信用性が認められな いとして、権利侵害の明白性が認められない旨主張する。 しかしながら、被告は、本件調査会社がIPアドレスの特定に係る専門技術 を有するか不明であるとか、本件調査会社が特定したIPアドレスは第三者に より偽装されたものである可能性があるなどとして、抽象的な事情や可能性を20 指摘するにとどまり、本件調査の信用性を左右する事情を具体的に主張するも のではない。 かえって、証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば、少なくとも、被告が意 見照会をした者は、自身の子供が使用するパソコンにおいてBitTorre ntが起動していたことを認め、再発防止に努める旨陳述していることが認め25 られる上、上記認定に係る本件調査の内容(甲12)等を踏まえれば、被告の 主張は、発信時刻の特定を含め、送信可能化に係る上記認定を覆すに足りない 6 というべきである。 したがって、被告の主張は、いずれも採用することができない。 3 正当な理由 弁論の全趣旨によれば、原告は、本件発信者らに対し、損害賠償請求を予定し 5 ていることが認められることからすると、原告には、本件発信者情報の開示を受 けるべき正当な理由があるものといえる。 4 したがって、原告は、被告に対し、プロバイダ責任制限法5条1項に基づき、 本件発信者情報の開示を求めることができる。 5 結論10 よって、原告の請求は理由があるから、これを認容することとして、主文のと おり判決する。 |
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追加 | |
15裁判長裁判官中島基至20裁判官古賀千尋25裁判官7國井陽平8別紙発信者情報目録以下の日時に以下のIPアドレスを割り当てられた契約者の氏名又は名称、住所及び電子メールアドレス欠番欠番欠番欠番欠番欠番欠番欠番令和4年(2022年)5月14日日時919時24分00秒IPアドレス(省略)令和4年(2022年)5月19日日時1015時5分00秒IPアドレス(省略)欠番欠番欠番令和4年(2022年)5月26日日時1417時45分00秒IPアドレス(省略)15日時令和4年(2022年)5月27日916時13分00秒IPアドレス(省略)令和4年(2022年)6月6日日時1613時40分00秒IPアドレス27.83.1.160欠番欠番令和4年(2022年)6月10日日時1918時17分00秒IPアドレス(省略)欠番欠番欠番欠番欠番欠番令和4年(2022年)6月26日日時2614時25分00秒IPアドレス(省略)欠番欠番欠番欠番欠番32日時令和4年(2022年)6月29日1017時14分00秒IPアドレス(省略)欠番欠番欠番欠番11別紙侵害著作物目録(省略)512 |