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事件 令和 2年 (ワ) 7411号 発信者情報開示請求事件
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原告A
同訴訟代理人弁護士 大熊裕司
同 島川知子 10 被告 株式会社NTTドコモ
同訴訟代理人弁護士 横山経通
同 上村哲史
同 南谷健太 15 同渡邉峻
同 二神拓也
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2020/09/24
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
20 2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
請求
主文同旨
事案の概要
25 本件は,原告が,経由プロバイダである被告に対し,氏名不詳者が,インター ネット上のウェブサイトに原告が著作権を有する別紙写真目録の写真(以下「本 件写真」という。)を掲載し原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害した ことが明らかであるなどと主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の 制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づ き,上記著作権の侵害に係る発信者情報である別紙発信者情報目録記載の各情報 5 の開示を求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容 易に認めることができる事実) ? 当事者 ア 原告は,横浜市中区所在の店舗で令和2年2月まで「B」という名称で10 稼働していた者である(甲1,2)。
イ 被告は,電気通信事業を営む株式会社である(争いのない事実)。
? 本件投稿等 ア 氏名不詳者は,別紙投稿記事目録の「投稿日時」欄記載の日時に,イン ターネット上の掲示板サービス「ホストラブ」に本件写真を投稿した(以15 下「本件投稿」といい,本件投稿をした氏名不詳者を「本件投稿者」とい う。(甲3) ) 。
イ 本件投稿は,被告の提供するインターネット接続サービスを経由して発 信されたものであり,その際に割り当てられていたIPアドレスは,別紙 投稿記事目録の「アイ・ピー・アドレス」欄記載のとおりである(甲4な20 いし6)。
ウ 被告は,本件投稿に係る別紙発信者情報目録記載の各情報を保有してい る(甲7)。
2 争点 ? 本件投稿による権利侵害の明白性25 ? 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無 3 争点に対する当事者の主張 ? 争点?(権利侵害の明白性)について 【原告の主張】 本件写真は,原告が左手にスマートフォンを持って自撮りしたものである から,原告は本件写真の著作権を有し,また,本件写真の著作権について, 5 著作権の権利制限規定のいずれかに該当する事実もないことからすれば,本 件投稿によって原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されているこ とは明白である。
【被告の主張】 本件写真について,原告が実際に撮影を行ったか不明であり,原告に著作10 権が帰属しているか疑義がある上に,本件投稿に本件写真があることをもっ て直ちに原告の複製権及び公衆送信権が侵害されたとまでは言い難い。そし て,本件投稿について違法性阻却事由が不存在であるとの立証がされている とはいえない。したがって,権利侵害が明白であるとまではいえない。
? 争点?(発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無)について15 【原告の主張】 原告は,本件投稿者に対して,不法行為に基づく損害賠償等の請求をする 予定であるが,そのためには,被告が保有する別紙発信者情報目録記載の各 情報の開示を受ける必要がある。
【被告の主張】20 原告は,氏名又は住所の開示を受けることができれば,損害賠償請求権の 行使が可能であり,電子メールアドレスについては開示の必要性がなく,開 示に「正当な理由」がない。
当裁判所の判断
1 争点?(権利侵害の明白性)について25 ? 本件写真の著作物性について 証拠(甲9,10)及び弁論の全趣旨によれば,本件写真は,被写体につ き構図や撮影角度,被写体との距離,シャッターチャンスの捕捉,被写体と 光線との関係等について撮影者の個性・独自性が表れているといえ,「写真 の著作物」(著作権法10条1項8号)と認めることができる。
? 原告の著作権侵害について 5 前記前提事実?ア,証拠(甲2,9,10)及び弁論の全趣旨によれば, @原告は,令和元年12月5日,自らのスマートフォンを用いて,原告自身 を被写体とする写真を撮影したこと,Aその後,原告は,当該写真に勤務先 での名称である「B」との文字を付記した本件写真を作成し,これを勤務先 の店舗に関連するウェブサイトに掲載したこと,B本件投稿者は,当該ウェ10 ブサイトに掲載された写真を複製し,本件投稿をしたことが認められる。
これらの事実からすれば,原告は,本件写真の著作権者といえ,本件投稿 者は,本件投稿によって,本件写真についての原告の複製権及び公衆送信権 を侵害したといえる。
他方,本件投稿者による本件写真の複製及び公衆送信につき,著作権法上15 の権利制限事由の存在及びその他不法行為の成立を阻却する事由の存在を基 礎づける事実は認められない。
したがって,本件投稿によって,原告の著作権(複製権及び公衆送信権) が侵害されたことは明らかといえる。
2 争点?(発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無)について20 証拠(甲10)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件投稿者に対し,著 作権(複製権,公衆送信権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求 をする意思を有していることが認められるところ,原告が損害賠償請求権を行 使するためには,発信者を特定する別紙発信者情報目録記載の各情報について 開示を受ける必要があるといえ,その開示を受けるべき正当な理由があると認25 めることができる。
被告は,上記各情報のうち,電子メールアドレスについては開示の必要性が ないと主張する。しかし,法4条1項,特定電気通信役務提供者の損害賠償責 任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第4条第1項の発信者情報を定め る省令は,開示請求をすることができる発信者情報として,発信者等の氏名又 は名称(1号),住所(2号)とともに,電子メールアドレス(3号)を列挙 5 している。被告が保有する氏名又は名称,住所に関する情報が正確性を欠くな どの理由から発信者の特定が不十分となる場合に電子メールアドレスの情報に よって発信者を特定することができる可能性もあるし,訴訟の提起に先立って 電子メールを利用して裁判外で任意の履行請求をすることも考えられるから, 電子メールアドレスは,発信者の特定及び原告の権利行使に資する情報といえ,10 原告には,電子メールアドレスを含めた別紙発信者情報目録記載の各情報の開 示を受けるべき正当な理由があるといえる。被告の上記主張は採用できない。
3 結論 よって,原告の請求は理由があるから認容することとし,主文のとおり判決 する。
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官 棚井啓
裁判官 佐藤雅浩
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