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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成27ワ2570 著作権侵害差止等請求事件 判例 特許権
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事件 平成 30年 (ワ) 12524号 損害賠償請求事件
5
原告A
原告訴訟代理人弁護士 平野敬
被告E 10 被告訴訟代理人弁護士 白濱重人
同 西尾祐一郎
同 古田博大
同 西森雄紀
同 香川広志 15 同居石孝男
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2018/09/13
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,原告に対し,30万円及びこれに対する平成26年8月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
20 3 訴訟費用はこれを10分し,その7を原告の,その余を被告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
被告は,原告に対し,99万円及びこれに対する平成26年8月3日から支払25 済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 本件は,原告が,被告に対し,原告が著作権を有するイラスト3点を被告がそ の運営するウェブサイトに掲載した行為は上記各イラストについての原告の送 信可能化権(著作権法23条1項)を侵害するものであると主張して,送信可能 化権侵害の不法行為に基づき,著作権法114条3項により損害賠償金及び遅延 5 損害金の支払を求める事案である。
1 前提事実(後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実) 原告は, 「B」という筆名によって,イラストレーターとして活動している者 である。(甲1,2,弁論の全趣旨) 被告は「ニュースちゃんねる」と題するウェブサイト(以下「本件サイト」10 という。 の運営に関与する者である。
) 本件サイトは,主に他のウェブサイトに 掲載されている文章や画像を転載するというものである。(甲3,弁論の全趣 旨) 別紙1ないし3のイラスト3点(以下,これらを「本件各イラスト」と総称 する。)は,平成26年7月頃, 「B(C)」というツイッターアカウントで公開15 され,その後, 「DさんのTwitterイラストまとめ-B.info」と題 するウェブサイト等に掲載された。(甲1,2,21) 本件サイトでは,平成26年8月3日,【壁ドン】男子必見!「色々な壁ド 「 ン」をご紹介(※画像あり)」と題する記事(以下「本件記事」という。)が公 開され,本件記事の中で,原告の許諾を得ないまま,本件各イラストが転載さ20 れていた。(甲1,3) 原告は,平成29年10月18日,本件につき,被告に対して損害賠償を求 める訴えを東京簡易裁判所に提起した(東京簡易裁判所平成29年(ハ)第3 7358号損害賠償請求事件) 東京簡易裁判所は, 。 平成30年2月14日,上 記事件につき,被告が原告に対して30万円を分割して支払うことなどを内容25 とする和解に代わる決定をしたが,同決定は被告が異議を申し立てたために効 力を失った。その後,東京簡易裁判所は,同年4月10日に上記事件を東京地 2 方裁判所に移送する旨の決定をした。(弁論の全趣旨) 2 争点及び争点に関する当事者の主張 本件各イラストの著作権者が原告であるか否か(争点1) (原告の主張) 5 本件各イラストは「B」名義で公表されたものであり,本件各イラスト内に は「C」というツイッターアカウント名が記載されている。そして,原告は実 名でも漫画家として活動し,その旨を「B」名義のウェブサイトで告知してい る。これらの事情に照らせば,本件各イラストの著作権者が原告すなわち「B」 であることは明らかである。
10 原告は,実績のある職業的イラストレーターであり,本件イラストと同じ絵 柄で多数の仕事を受任している。原告が第三者になりすましたり,第三者の作 品を自らの作品として公開したりしながら,公に活動し得る実質的な可能性は ない。
(被告の主張)15 本件各イラストが原告自身によって作成されたものであるか否かは明らか でなく,原告において,第三者が作成したイラストをツイッターに掲載するこ とも可能である。本件各イラストについて,原告が著作権者であることの立証 は不十分である。
被告が本件記事の投稿について不法行為責任を負うか否か(争点2)20 (原告の主張) 本件訴訟に先立ち,原告が本件サイトのメールフォームを経由して本件サイ トの運営者に連絡したところ,その連絡を受けて被告が原告との間でメールの やり取りをするなど対外的な折衝を行っていた。また,本件サイトのドメイン 名の保有者は被告であり,ドメイン名を維持するためには登録費用の支払を要25 するにもかかわらず,現在に至るまで変更登録の手続は行われていない。これ らの事情に照らせば,被告が本件サイトの管理者であることは明らかであるし, 3 仮に,本件サイトの管理に携わる者が他に存在するとしても,構成員間の役割 分担として,本件サイトの管理,運営の主たる判断権限及び責任が被告にあっ たというべきであるから,被告は,本件記事の投稿についての不法行為責任を 負う。
5 (被告の主張) 被告は,インターネット上で知り合った人物から依頼されて本件サイトを立 ち上げたものの,現在では本件サイトのサポートを行うだけであり,本件記事 その他の記事の作成及び投稿等は一切行っていないし,本件サイトの管理人で もないから,被告は本件記事の投稿について不法行為責任を負わない。
10 原告が,ツイッターの利用規約等を根拠として,本件各イラストを本件サイ トに掲載することを許可していたといえるか否か(争点3) (被告の主張) 平成28年9月30日以降,ツイッターの利用規約において,「ユーザーが 本サービスを介して送信,投稿,送信またはそれ以外で閲覧可能としたコンテ15 ンツに関して,Twitter,またはその他の企業,組織もしくは個人は, ユーザーに報酬を支払うことなく,当該コンテンツを上記のように追加的に使 用できます。」との定めがあり,そこにいう「上記のように追加的に使用」でき る場合とは「コンテンツを他の媒体やサービスで配給,放送,配信,プロモー ションまたは公表すること」を指す。原告は,本件各イラストをツイッター上20 に公開した以上,ツイッターの利用規約によって,第三者が原告に対して報酬 を支払うことなく本件各イラストを他の媒体によって公表等することについ て許可していたというべきであるから,被告が原告の許諾を得ないまま本件各 イラストを本件サイトに掲載したとしても,そのことには原告の許可があった というべきである。
25 (原告の主張) 原告は,ツイッター社に対して,利用規約に基づき,本件各イラストに関し 4 て一定の条件を前提とした再使用許諾権を含めた使用許諾をしているが,再使 用許諾を経ない無断転載を許容するものではない。すなわち,ツイッターに投 稿された画像を第三者が再利用する場合,同社が定める利用条件に従わなけれ ばならないのであって,そのような利用条件が満たされた場合にのみ,当該第 5 三者は同社から適法な再利用許諾を受けたことになる。被告は,そのような条 件を満たしていない。
原告に生じた損害の有無及びその損害額(争点4) (原告の主張) 原告は,被告に対し,通常受けるべきライセンス料相当額を損害額として著10 作権侵害を理由とした損害賠償を請求することができる(著作権法114条3 項) 原告は, 。 専門的な技能を有し,出版社等から依頼を受けてイラストを作成 することを生業とするイラストレーターであり,通常の取引ではカラーイラス ト1点の1年間のライセンス料として10万円(消費税を除く。)を請求して いるところ,本件では本件各イラスト(イラスト3点)が平成26年8月3日15 から平成29年6月8日までの約2年10月にわたって無断使用されていた のであり,原告は著作物の掲載の許諾を1年間単位としているから,少なくと も90万円の損害が認められるべきである。また,原告に生じた弁護士費用相 当額としては9万円が相当である。
(被告の主張)20 本件各イラストは,原告がインターネット上に自ら無料で公開したイラスト であるところ,インターネットを利用する者であれば誰でも無料で閲覧するこ とが可能であるし,インターネットの特性として一度公開された情報が転々流 通していくことは周知の事実であるから,有償で作成を依頼されたイラストと 無料で公開されたイラストの価値を同視すべきではない。また,ツイッターの25 規約上,第三者は無償で本件各イラストを他の媒体やサービスで公表等するこ とができるとされている。これらの事情に照らせば,本件各イラストを他のホ 5 ームページ上に第三者が転載したとしても,原告に損害は発生しない。
仮に,原告に何らかの損害が発生するとしても,原告がイラストレーターと してイラストの作成を生業としているとしても,その価格設定には大きな幅が あり,中にはイラスト1点につき3000円という場合もあることからすれば, 5 本件各イラスト1点につき年間10万円という損害額は高額に過ぎる。
当裁判所の判断
1 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
原告は,実名(A)名義で漫画家としても活動しており,平成22年12月 18日に「GENIE PRAYS」というタイトルの漫画(以下「本件受賞10 作品」という。)で出版社の漫画賞(集英社第11回ウルトラ漫画賞)を受賞し た。(甲19) 「B」名義のウェブサイトにおいて,平成23年10月19日,本件受賞作 品が「デビュー作「GENIE PRAYS」31P 今日(19日)発売の ウルトラジャンプ11月号に「A」名義で掲載中です。」と紹介された。また,15 上記「B」名義のウェブサイトにおいて,平成26年8月4日,本件各イラス トが,「Twitterにあげてたやつのまとめです」というコメントととも に公開された。(甲20,21) 原告は,平成29年6月8日,本件サイトが使用するメールフォームを利用 し,本件サイトの管理人に宛てて,本件サイトに掲載された本件記事で本件各20 イラストが無断で転載されていることから,本件記事を削除するとともに,そ の使用料として9万円を支払うよう求めるメールを送信した。(乙9) 被告は,上記メールを受けて原告に対して金銭的な理由により支払は不可能 であると返信したところ,原告は,平成29年6月10日,被告に対して謝罪 記事の掲載,更新停止措置又は本件サイトの閉鎖が行われるのであれば使用料25 を減免することが可能であるとの提案をした。(乙9) 被告は,平成26年4月11日時点で,本件サイトについて,ドメインの設 6 定及びブログ登録等の開設作業や,プログラム及びデザイン等のサポート業務 を担当することとされていた。(乙1,弁論の全趣旨) 本件サイトのドメインは,平成29年8月25日時点で,被告名義で登録さ れている。(甲5,6) 5 当該ドメインについて,その登録規約上,会員資格を第三者に譲渡,貸与等 をすることや運営会社の許諾がないまま第三者に会員向けサービスを利用さ せることが禁止されており,登録された会員情報の内容に変更や誤りがあった 場合には直ちに運営会社に届出を行うものとされている。また,当該ドメイン を使用するに際しては,運営会社に対し,所定の登録料金及び更新料金を支払10 う必要がある。(甲8) 本件サイトのツイッターアカウントにおいて,平成27年1月14日,本件 各イラストが本件サイトに掲載されていることを前提として,【おもしろ】女 「 の『壁ドン対策』をご覧ください」等とツイートされていた。
(甲16,弁論の 全趣旨)15 ツイッターの利用規約(平成28年9月30日発効)には, 「ユーザーは,本 サービス上にまたは本サービスを介して自ら送信,投稿または表示するあらゆ るコンテンツに対する権利を留保するものとします。, 」「ユーザーは,本サー ビス上にまたは本サービスを介してコンテンツを送信,投稿または表示するこ とによって,当社があらゆる媒体または配信方法(既知のまたは今後開発され20 る方法)を使ってかかるコンテンツを使用,コピー,複製,処理,改変,修正, 公表,送信,表示および配信するための,世界的かつ非独占的ライセンス・・・ を当社に対し無償で許諾することになります。, 」「ユーザーは,このライセン スには,Twitterが,コンテンツ利用に関する当社の条件に従うことを 前提に,本サービスを提供,宣伝および向上させるための権利ならびに本サー25 ビスに対しまたは本サービスを介して送信されたコンテンツを他の媒体やサ ービスで配給,放送,配信,プロモーションまたは公表することを目的として, 7 その他の企業,組織または個人に提供する権利が含まれていることに同意する ものとします。ユーザーが本サービスを介して送信,投稿,送信またはそれ以 外で閲覧可能としたコンテンツに関して,Twitter,またはその他の企 業,組織もしくは個人は,ユーザーに報酬を支払うことなく,当該コンテンツ 5 を上記のように追加的に使用できます。」との記載がある。(乙16) 原告は,出版社や広告会社等から,以下のような条件で,イラスト作成等の 依頼を受けたことがあった。
ア ウェブサイトに掲載する漫画につき,モノクロについては1ページ当たり 2万円,カラーについては1ページ当たり4万円。なお,掲載期間は1年間10 で,2年目以降も使用する場合には契約更新を行い,二次使用については別 途二次使用料が発生する。(甲11) イ 書籍の表紙カバー(カラー)1点当たり3万円,扉絵及び本文カット(モ ノクロ)1点当たり3000円。(甲14の1及び2,弁論の全趣旨) ウ 年賀状イラスト(カラー)につき,1点当たり2万4000円。
(甲15の15 1及び2) 2 争点1(本件各イラストの著作権者が原告であるか否か)について 原告は,本件各イラストの著作権者が原告であると主張し,その主張に沿う陳 述書(甲1)を提出する 照らせば 本件各イラストの著作権者は原告であると推認することができる。
20 これに対し,被告は,第三者が本件各イラストを作成した可能性等を指摘して 原告の主張を争うものの,被告の主張は具体的事実や証拠に基づくものではなく, 抽象的な推測を指摘するにとどまるものであるから,上記推認を覆すには足らな い。
以上によれば,本件各イラストの著作権者は原告であると認められる。
25 3 争点3(原告が,ツイッターの利用規約等を根拠として,本件各イラストを本 件サイトに掲載することを許可していたといえるか否か)について 8 事案に鑑み,次に,争点3を判断する。
被告は,本件各イラストを原告がツイッター上に公開したことにより,ツイッ ターの利用規約に基づいて第三者による公表等を許可したことになるから,被告 が本件サイトに本件各イラストを掲載した行為は原告の著作権を侵害しないと 5 主張する。
該規約は,コンテンツ利用に関するツイッター社の条件に従うことを前提として, 一定の目的のため,ツイッター社が第三者に対して当該コンテンツを提供するこ とができ,当該第三者が当該コンテンツを使用することができるという趣旨のも10 のであると解されるところ,被告は,ツイッター社が上記規約に基づき本件各イ ラストを被告に提供したことについて具体的な主張,立証をしていない。したが って,原告が,被告に対し,上記規約に基づき本件各イラストを本件サイトに掲 載することを許可していたとは認めることはできず,被告の主張は採用すること はできない。
15 4 争点2(被告が本件記事の投稿について不法行為責任を負うか否か)について 原告は,被告が本件サイトの管理者であるか,又は本件サイトについて主たる 照らせば,被告は形式的にも実質的にも本件サイトの運営において重要な役割を 担っていたというべきであるから,少なくとも,本件記事の投稿等について共同20 不法行為に基づく法的責任を負う立場にあったものと認められる。
これに対し,被告は,本件サイトのサポートを行っているだけであり本件記事 その他の記事の作成及び投稿等は一切行っていないと主張する。しかし,これは 被告が本件記事の作成及び投稿を行っていないことを主張するにとどまるもの であり,上記に述べたところに照らし,そのことによっても被告が共同不法行為25 に基づく法的責任を負うべき立場にあるという上記判断は左右されない。
以上によれば,被告は,本件サイトの管理並びに本件記事の作成及び投稿等に 9 ついて,不法行為責任を負う立場にあると認められる。
5 争点4(原告に生じた損害の有無及びその損害額)について 上記によれば,被告は,原告が著作権を有する本件各イラストの本件サイト への掲載によって本件各イラストに係る原告の送信可能化権(著作権法23条 5 1項)を侵害し,また,前提事実及び上記1の各認定事実に照らせば少なくと も上記侵害についての被告の過失が認められるから,原告は,被告に対し,送 信可能化権侵害の不法行為に基づき著作権法114条3項により本件各イラ ストの著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額の損害賠償金の 支払を求めることができる。
10 は,一つのテーマをめぐる複数 の個別のイラストからなり,他人を笑わせる要素も含まれているもので,カラ ーで描かれた漫画に準じる部分があるとも理解できることや,漫画をウェブサ イトに掲載するに当たっては一定の掲載期間を前提とした使用料が定められ ていることなどの事情を総合的に勘案すれば,原告が本件各イラストの使用に15 対し受けるべき金額は,イラスト1点につき1年当たり3万円とするのが相当 である。
そして, 本件各イラストは平成26 年8月3日から平成29年6月8日まで本件サイトに無断で転載されていた 事実が認められることから,原告が本件各イラストの使用に対し受けるべき金20 額は合計27万円(イラスト1点につき1年当たりの使用料3万円×イラスト 3点×掲載期間3年分)となる。また,本件における弁護士費用相当額として は3万円もって相当と認める。
これに対し,被告は,本件各イラストは原告がインターネット上において無 料で公開したイラストであるから原告に損害は発生していないなどと主張す25 るが,無料で公開したイラストについても,原告が自らの管理等を離れたとこ ろで第三者により無断で利用されることを許諾したものとはいえず,同イラス 10 トが転載されたことによる損害は観念できるというべきであるから,被告の上 記主張は採用できない。
なお,被告は,平成26年8月6日以降,本件記事へのアクセスがほぼなく なった旨等が記載された証拠(乙10,15)を提出するが,平成27年1月 5 14日に本件サイトで本件各イラストが公開されていることを前提としたツ イートが の使用に 対し受けるべき金額は上記 のとおりと認める。
その他,本件各イラストの使用に対し受けるべき金銭の額について,原告は 本件各イラスト1点につき年間10万円が相当であるなどと主張し,被告は本10 件各イラスト1点につき3000円にとどまるなどと主張するが,いずれの主 張も上記説示に照らして採用できない。
6 結論 よって,原告は,被告に対し,30万円及びこれに対する不法行為日(本件各 イラストが本件サイトに掲載されたことが明らかである日)である平成26年815 月3日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で 理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文 のとおり判決する。
裁判長裁判官 柴田義明
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