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事件 平成 30年 (ネ) 10008号 独立当事者加事件
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裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2018/03/19
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成30年3月19日判決言渡

平成30年(ネ)第10008号 独立当事者参加事件

基本事件 平成27年(ネ)第10022号

判 決



参 加 人 X



控 訴 人 Y



被 控 訴 人 株 式 会 社 幻 戯 書 房



主 文

1 本件独立当事者参加の申出を却下する。

2 訴訟費用は参加人の負担とする。

事実及び理由

第1 参加の趣旨及び理由

参加の趣旨及び理由は,別紙「独立当事者参加申出書」及び「再審訴状」のとお

りである。要するに,本件は,控訴人及び被控訴人間の当庁平成27年(ネ)第1

0022号損害賠償等請求控訴事件(以下「基本事件」という。)について,当庁

が平成28年1月27日に言い渡した確定判決(以下「本件判決」という。)に対

し,参加人が,再審の訴えを提起するとともに,再審開始の決定が確定した場合の

訴訟に独立当事者参加をする旨申し出た事案である。

第2 当裁判所の判断

1 確定判決の存在及び再審の訴えの提起等

一件記録によれば,以下の事実が認められる。

(1) 控訴人は,被控訴人を被告として,東京地方裁判所平成25年(ワ)第2



1
2541号損害賠償等請求事件を提起したが,同裁判所は,平成27年1月22日,

控訴人の請求をいずれも棄却する旨の判決を言い渡した。

(2) 控訴人は,上記判決を不服として控訴を提起したが(基本事件),当庁は,

平成28年1月27日,控訴人の控訴を棄却する旨の判決(本件判決)を言い渡し,

同判決の正本は,同月29日,控訴人に送達された。

(3) 控訴人は,上記判決を不服として上告及び上告受理の申立てをしたが(最

高裁判所平成28年(オ)第645号,同年(受)第810号),最高裁判所は,

平成28年6月23日,上告を棄却し,上告審として受理しない旨の決定をし,同

日,上記判決は確定した。

(4) 参加人は,平成30年1月26日,当庁に対し,本件判決について,再審

の訴えを提起し(当庁平成30年(ム)第10001号。以下「本件再審の訴え」

という。,同日,基本事件について,民事訴訟法47条により独立当事者として参


加する旨の本件独立当事者参加の申出をした。

2 独立当事者参加申出の適法性について

? 本件独立当事者参加の申出は,参加人が,本件再審の訴えを提起するととも

に,再審開始の決定が確定した場合の訴訟に独立当事者参加をする旨申し出た事案

であり,本件再審の訴えが,原告適格を有する者によりされた適法なものであるこ

とを前提とするものである。

? 再審の訴えは,前訴訟の判決が確定した後に当該判決にその効力を是認する

ことができないような欠陥があることが判明した場合に,具体的正義のため法的安

定を犠牲にしても,当該判決の取消しを許容しようとする非常手段であるから,当

該判決の効力を受ける者に対し,その不利益を免れることができるようにするため,

訴えの提起を許すものと解される(最高裁昭和42年(ヤ)第20号同46年6月

3日第一小法廷判決・裁判集民事103号87頁)。したがって,確定判決に対す

る再審の訴えの原告適格を有するというためには,当該確定判決の効力を受ける者

であることが必要である。



2
基本事件は,控訴人が,別紙書籍目録記載の書籍(以下「本件書籍」という。)

編集著作物であり,控訴人がその編集著作者であるところ,被控訴人による本件

書籍の複製及び販売は,控訴人の有する編集著作物に係る著作権(複製権,譲渡

権)及び著作者人格権氏名表示権)を侵害する行為である旨主張して,被控訴人

に対し,@著作権法112条1項に基づき,本件書籍の複製及び販売の差止め,A

同条2項に基づき,本件書籍の廃棄及びその版下データの消去,B著作権及び著作

者人格権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害金238万円(印税

相当額の損害38万円及び慰謝料200万円の合計額)及び遅延損害金の支払を求

めるとともに,C同法115条に基づき,編集著作者としての名誉及び声望の回復

措置として謝罪広告等の掲載を求めた事案である。

参加人は,基本事件に対して本件再審の訴えを提起するところ,上記のとおり,

基本事件は,控訴人が,被控訴人に対し損害賠償等を請求した訴えであり,本件判

決はこれを棄却する確定判決である。そして,参加人は,基本事件の当事者ではな

く,口頭弁論終結後の承継人等でもないことから,本件判決の効力を受ける者では

ない(民事訴訟法115条)。

したがって,参加人が本件再審の訴えの原告適格を有しているということはでき

ない。

? なお,参加人は,本件判決につき,民事訴訟法338条1項3号所定の再審

事由が存在するとして,本件再審の訴えを提起するとともに本件独立当事者参加の

申出をしている。

しかし,参加人は本件判決の効力を受ける者ではないため,本件再審の訴えの原

告適格を有する者であるといえないことについては,前記?のとおりである。参加

人が独立当事者参加の申出をすることにより,本件再審の訴えの原告適格を有する

ようになると解することはできない。

? 以上のとおり,参加人が本件再審の訴えの原告適格を有しているということ

はできず,本件再審の訴えは不適法である。そして,前記?のとおり,本件独立当



3
事者参加の申出は,本件再審の訴えが適法であることを前提とするものであるから,

本件独立当事者参加の申出も不適法である。

3 結論

よって,参加人の本件独立当事者参加の申出は不適法であるから却下することと

し,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第4部



裁判長裁判官 部 眞 規 子




裁判官 山 門 優




裁判官 片 瀬 亮




4
別紙

書 籍 目 録

書名 ツェッペリン飛行船と黙想

発行日 平成24年12月9日

発行者 A

発行所 幻戯書房

ISBN 978−4−86488−010−7




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