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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成26ネ10063 著作権侵害行為差止等請求控訴事件 判例 特許権
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事件 平成 26年 (ワ) 30442号 損害賠償請求事件
東京都中央区<以下略>
原告 株式会社トレードトレード
同 訴訟代理人弁護士中澤佑一
同 松本紘明
同 柴田佳佑
同 西郷豊成
同 船越雄一 福岡県筑紫野市<以下略> (送達場所 福岡市中央区<以下略>)
被告株式会社Clara 福岡市<以下略>
被告A
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2015/04/24
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告らは,原告に対し,連帯して,100万円及びこれに対する平成25年2月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の,その余を被告らの負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求の趣旨
1 被告らは,原告に対し,連帯して,297万円及びこれに対する平成25年 2月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
3 仮執行宣言
事案の概要
1 事案の要旨 本件は,原告のブログに掲載された記事を被告らが複製した上,被告らの ブログに別紙投稿記事目録記載のとおり投稿して送信可能化及び公衆送信し たとして,被告らに対し,著作権侵害に基づく損害賠償として,連帯して2 97万円及びこれに対する最終の不法行為日(記事投稿日)である平成25 年2月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の 支払を求めた事案である。
2 請求原因事実 (1) 原告は,FX・株式・海外投資から始まる資産運用をテーマにコンテンツ を提供しており,「Bの為替相場と楽しく付き合う方法」というブログサ イト(以下「原告ブログ」という。)を管理運営している(甲2,3)。
被告株式会社Clara(以下「被告会社」という。)はインターネッ トによる投資等の情報提供サービス等を行っている会社である。
被告A(以下「被告A」という。)は被告会社の代表取締役であり,投 資に関するセミナーなどを自ら行っている(甲4の1,2,甲5の1ない し3)。
被告らは,インターネット上のブログサイト「アメーバブログ」(以下 「被告らブログ」という。)において,別紙投稿記事目録記載のとおり, 各記事(以下「被告ら各記事」という。記事の内容については,別紙「原 告ブログと被告ブログの記事の対照表」の「被告らブログ」欄記載のとお り。甲6の1ないし5)の投稿を行った。
(2) 原告は,平成20年3月20日,訴外株式会社ワカバヤシエフエックス アソシエイツ(以下「訴外ワカバヤシ」という。)との間で,同社の代表 取締役である訴外B(以下「訴外B」という。)が原告ブログに記事を作 成し,これを原告ブログに掲載して公開する契約を締結した。同契約は, 現在まで継続(更新)されているところ,原告ブログに掲載された著作物 の著作権は原告に帰属することとされている(甲7)。
そして,原告は,平成25年1月11日付け(甲3の1),同月16日 付け(甲3の2),同月25日付け(甲3の3),同年2月8日付け(甲 3の4),同月26日付け(甲3の5)で,原告ブログに記事を掲載した ところ,その各記事(以下「原告著作物」という。その内容については, 別紙「原告ブログと被告ブログの記事の対照表」の「原告ブログ」欄記載 のとおり。)は,為替相場の動向を踏まえた値動きの予測に関する訴外B の思想又は感情を創作的に表現したものとして著作物性を有するものであ る。
(3) 被告らは,別紙投稿記事目録記載のとおりの投稿日時に,被告ら各記事 を被告らブログに投稿してウェブサイトに掲載したところ,被告ら各記事 は,別紙「原告ブログと被告ブログの記事の対照表」記載のとおり,原告 著作物のデッドコピーであり,被告ら各記事は,原告著作物と表現上の本 質的な特徴の同一性があって,これに接する者が原告著作物の表現上の本 質的な特徴を直接感得できる著作物であるところ,被告ら各記事の投稿日 時が原告著作物のブログへの掲載と同一日,ないし,その後の極めて近接 した日にされていることからしても,被告ら各記事が原告著作物に依拠し て制作された複製物であることは明らかである。
(4) 被告Aは,原告著作物をコピーした上,さも自分が著作者であるかのよう に別紙投稿記事目録記載のとおり投稿して被告らブログに掲載した。被告 会社は,被告Aが代表を務めるところ,投資関係を主たる事業とし,被告 Aのブログである被告らブログのURLのハイパーリンクを自社のフェイ スブックやセミナー情報サイトに設定していた(甲4,5)。
これらの関連性からすれば,被告Aと被告会社とは共同して原告著作物に ついての著作権侵害(送信可能化権及び公衆送信権侵害)についての責任を 負うべきことは明らかである。
(5) 原告は訴外ワカバヤシに対し,原告著作物の情報提供料として,消費税を 含め毎月21万円を支払い,有償で訴外Bの著作した記事の著作権を取得し てきた(甲7,8)。被告らは,著作権者である原告に対して何らの使用料 も支払わずに,原告に無断で原告著作物をコピーし,被告らブログに投稿し たものであり,使用料相当額の利益を得ている。その使用料相当額は,少な くとも原告が毎月支払っている情報提供料を下回ることはない。そもそも原 告が支払う情報提供料は原告と訴外ワカバヤシとが長年の間柄であるからこ そ低価格の設定となっているものであり,原告著作物に記載された情報は, 為替市場の今後を予測するものであって投資家に多大な影響を及ぼすもので あるとともに,原告は毎営業日,月ベースで約20件提供しており(甲11 の1ないし4),著作者である訴外Bが作成する為替分析・情報の質の高さ から考えて,通常であれば,原告の支払う情報提供料の2倍以上の金額で提 供されるべきものである。
加えて,被告らは,少なくとも平成25年1月及び2月の2か月に渡り, 原告著作物の内容を,さも被告Aが分析した情報であるかのように投稿し, 被告らブログを閲覧した者を不当に被告らのビジネスに誘引し,セミナー代 等の取引上の利益も得ているところである。
以上の諸事情を考慮すると,被告らは,最低でも120万円(月額60万 円と勘案)の使用料相当額(著作権法114条3項)の利益を得ているとい うべきである。
(6) また,被告らは,その著作権侵害行為により,本来であれば原告ブログを 閲覧しなければ得ることができない高度な情報を不当にインターネット利用 者に閲覧させ,あたかも誰でも分析して提供ができる程度の情報であるかの ような印象を与え,原告著作物を含む原告ブログの情報の価値を不当に低下 させている。
さらに,原告著作物に記載された情報は,為替市場の今後を予測するもの であり,その情報をもとに多くの投資家が投資を行っていくものである。そ して,原告は,時々刻々と変化する為替市場に対応し,原告ブログの閲覧者 の損失を軽減するためにも毎営業日更新する努力を続けている。このように, 原告ブログの情報である原告著作物は,極めて重要で,投資家に対する影響 力のある情報であることから,これがコピー等されて不当に広められ,閲覧 者に誤解を与え,多大な損害を与えるような事態になってしまう危険性もあ る。このような事態になれば,原告が築き上げてきた信用や評価を低下させ てしまうことになる。
したがって,被告らの著作権侵害行為が原告の信用等の低下を招くもので あることは明らかであり,原告の被った無形の損害は150万円を下らない。
(7) 本件訴訟は著作権侵害に基づく損害賠償請求訴訟であり,専門性が高く, 高度な知識を要するものであって,弁護士に依頼せざるを得ない状況であっ たことから,弁護士費用相当額として,27万円の損害が生じている。
(8) 以上のとおり,原告は,被告らに対して,連帯して,合計297万円及び これに対する最終の不法行為日である平成25年2月26日から支払済みま で民法所定の年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うことを求める。
3 被告らは,本件口頭弁論期日に出頭せず,答弁書その他の準備書面も提出し ない。
当裁判所の判断
1 被告らは,本件口頭弁論期日に出頭せず,答弁書その他の準備書面も提出し ないから,原告の主張する請求原因事実につき自白したものとみなされる。
2 証拠(甲1ないし11の4)から認められる原告著作物の内容,その複製物 である被告ら各記事の分量及び投稿回数,原告が訴外ワカバヤシに対し情報提 供料ないし連載コンテンツ料の名目で原告著作物の取得に向けた対価として支 払った額が税抜き月20万円であること等の事実によれば,原告に生じた著作 権法114条3項に基づく損害は40万円であると認めるのが相当である。
また,上記証拠から認められる本件事実関係に鑑みると,原告が被った信用 毀損による無形損害は50万円と認めるのが相当である。
被告らによる著作権侵害行為に基づいて原告は上記損害を被り,本件訴訟提起を余儀なくされたところ,被告らの不法行為と相当因果関係にある弁護士費用としては10万円を認めるのが相当である。
そうすると,原告が被告らの著作権侵害行為により被った損害の合計は100万円となる。
3 以上によれば,被告らは,原告に対し,連帯して,損害賠償金100万円及 びこれに対する最終の不法行為の日である平成25年2月26日から支払済 みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務があることにな る。
4 よって,原告の請求は主文掲記の限度で理由があるからその範囲で認容することとし,その余は棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 東海林保
裁判官 今井弘晃
裁判官 勝又来未子